タカシの異世界無双計画 ~銃と仲間と異世界と~

マイきぃ

文字の大きさ
上 下
3 / 138
第1章 仲間を見つけよう

第3話 ケンタ君

しおりを挟む
 俺とメイデンは、冒険者ギルドを探す為、広い町を探索した。だが、ただ歩き回っているだけではたどり着けない。場所を知らないのは俺も一緒だ。なので、近くの住人に聞いてみることにした。

 荷馬車のマークのような看板のある建物を見つけた。建物の奥の車庫には、幌付きの馬車と高級な馬車が置かれていた。

「ここは、貸馬車のようです」

 メイデンが答える。

「そうか……なら、話が早そうだ」

 運び屋なら、地理に詳しいだろうと考えた俺は、ここで、道を訪ねる事にした。

「すいませーん、誰かいませんか?」

 しばらくして、車庫の奥から誰かが出てきた。

「お待ちくださーい」

 出てきたのは真っ赤なロングヘアーでヒョウ柄の水着でパレオを着飾った女性だった。だが、よく見ると、下半身が馬だった。おそらく神話やゲームなどで、ケンタウロスと呼ばれている半人半馬の種族だろう。ちょっと驚いたが、異世界なら、こういう種族がいてもおかしくはない。

 ひとまず、その女性に声をかける。

「あの、冒険者ギルド探してるんだけど、場所分かりますか?」

 すると、女性は、元気よく声を上げる。

「いらっしゃいませ! なんでも運ぶ、運び屋ケンタウロスでーす。冒険者ギルドをお探しのようなら、私にご依頼ください。銀貨1枚でお送り致しまーす」

「いや、場所を聞きたいんですけど……」

「銀貨1枚でお送り致しまーす」

 ケンタウロスはニコニコしながら、同じ言葉を繰り返した。話がまるでかみ合わない。お金を取る気満々なのが手に取るようにわかる。それに、ここへ来たばかりの俺は、お金など持ち合わせてはいない。しょうがないので、メイデンの資金を訪ねてみる。

「メイデン、お金ある?」

「ないです」

 即答だった。『世の中金か……』そんな言葉が頭をよぎった。

 俺はだんだん腹が立ってきた。面倒くさくなったので、仲間銃をポケットから取り出し、ケンタウロスに銃口を向けた。

「な、何をするんですかお客様?」ケンタウロスは、銃口を向けられた事に気が付いたが、意味が分からない様子だった。

 俺は無慈悲にトリガーを引いた。銃声が車庫内に響き渡る。

「ヒギャー」

 ケンタウロスは悲鳴を上げ、感電したように倒れる。俺は周囲を気にしたが、幸い誰も近くにいなかったので、安心し、ほっとため息をついた。

 暫くしてケンタウロスは、ゆっくりと起き上がる。

「わたしは、運び屋ケンタウロスでーす。なんなりとお申し付けくださーい、ご主人様」

 ケンタウロスの俺に対する態度が変化した。ここまで態度が豹変するとなると、銃の効果を信じざるをえない。やはりこの銃は本物だと、俺は確信した。試しに、命令を出してみる。

「俺達2人を冒険者ギルドに連れて行ってくれるか、ケンタウロス……いや、名前じゃないのか。挨拶が遅れたが、俺はタカシだ。君は?」

「私はケンタウロスのアリシアでーす。ご主人様の頼みなら、何処へでもお運びしまーす」

「君の名前はケンタウロス・ノアリシア? でいいのかい?名前長いな……俺としては、ケンタ君の方がいいのだけど……いい名前だよね!」

 俺はちょっと調子に乗って、ケンタウロスを勝手に命名してみた。

「はい! ご主人様がそうおっしゃるなら! とても素晴らしい名前を有難うございまーす!」

 本当は、変な名前を付けられて困る顔を期待したのだが、あまり効果はなかった。冗談のつもりだったのだが、これも銃の効果なのだろうか。俺は、このふざけた命名にも文句を言わないケンタウロスを、足として、迎えることにした。

 さっそく俺とメイデンは、ケンタ君の背中に乗せてもらい、冒険者ギルドを目指した。ケンタ君の毛並みはとてもふさふさしていて、乗り心地も快適だ。さらにメイデンは後ろから俺の腰に手をまわして嬉しそうに抱きついていた。自転車の後ろに女の子を乗せた事のない俺が、こんな場面に出会えるなんて本当に俺は幸せ者だ。仲間銃に感謝しなくてはならない。

 俺達は、30分程度町を移動して、大きな建物のある場所に着いた。

「ご主人様、着きましたー。ここが冒険者の集うギルド施設でーす。冒険者登録は勿論、クエスト依頼、転職、装備販売、簡易医療施設、宿泊施設、食事処までありまーす」ケンタ君は、ガイドの様な口ぶりで話す。

「ここがギルドか」その大きな建物は、神殿風の外観だった。

「初心登録は無料でーす」

「無料?」

 異世界の場合、ギルドへの登録があるなら、できるときにやっておくのがセオリーだ。と、俺は記憶していた。

「俺も登録できるのか? 本当に無料なのか?」

「ご主人様も登録するなら、受付で出来ますよー」

「じゃあ、俺もやっとこうかな。よしメイデン、いこう」

「はい、タカシ様」

 俺とメイデンは、ケンタ君から降りた。その直後、ケンタ君は、少しそわそわしながら話しかけてくる。

「あと、ご主人様。少々お時間が欲しいのですが、私用で出かけてきていいですかー? 持ってきたい物があるんですけど……」

「あ、いいよ。ちゃんと迎えに来てくれるなら」

「ありがとうございまーす」そういうと、ケンタ君はさっさと何処かへ行ってしまった。

 さあ、冒険者ギルドに登録だ。俺とメイデンは、ギルド施設に足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。

Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。 それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。 そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。 しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。 命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

処理中です...