25 / 32
にゃんこ島なのニャ
第25話 猫神なのニャ
しおりを挟む
猫は、人型をしています。そして、尻尾が2本あります。
こういった猫はあやかしの類だと、わたしの脳が警告を発します。
見れば見るほど、猫の化け物です。
わたしはここで食べられてしまうのでしょうか。
「なんの用かしら」
わたしを、ギョロッとした目で見て、何かつぶやいてきました。
若い女性の声です。
対話の可能性が出てきましたが、わたしが無事生還できる保証はまだどこにもありません。
「その様子だと、わたしを化け物か何かと勘違いしているようね。言っておくけど、わたしは高天原で神の資格を得た猫又。れっきとした猫神の「クロ」よ」
「猫神……?」
わたしはあっけに取られました。
よく見てみると、そんなに怖い猫でもなさそうです。妖美なメス猫とでもいいましょうか。
突然の出来事だったので、化け物という先入観をもってしまい、怖くみえたのでしょう。
そうに違いありません。
どうやら、わたしはここで食べられる運命ではないようです。
「語尾にさまを付けなさい」
「はいっ! 猫神様!?」
つい、その猫の出す覇気のようなものに気おされて、猫神様と呼んでしまいました。
それにしても、猫神というぐらいですから、おそらく猫神の巫女と何か関係がありそうです。
「これも因果のお導き。何か聞きたいことがあって来たのでしょ。つまらないことだったら、食べるわよ。ふふっ」
猫神は、鋭い牙を光らせなが話しかけてきます。
そんなに悪い神様には見えないのですが、油断は禁物です。
つまらない話かどうかは別として、ひとまず猫神の巫女のことを聞いてみることにしました。
「あ、あの……猫神の巫女のことについてお聞きしたいのですが……」
「ふむ、猫神の巫女……あなた、それをどこで知ったのかしら」
「わたしの住んでいるところの、恩猫神社です。そこで何者かに取り憑かれた少年に、そう言われたのですが……」
「そう……ということは、あいつが復活したのね」
「あいつ……!?」
「そう。あいつとは、このわたしと時を同じくして猫又になった「シロ」のことよ」
「どうしてそこまで……わかるの?」
「さてと、猫神の巫女のことは、あまり知らないみたいね。暇だから教えてあげるわ。そのかわり……お酌を注いでもらえるかしら」
こうしてわたしは、猫神のお酒の相手をする羽目になってしまいました。
これも話を聞き出すためですので、仕方ありません。
わたしはお酌をしながら、猫神の昔話を聞かされました。
猫又になるまでの話や、神になるまでの話。そしてシロとの関係。
シロとは、神になるための修行時代の同期だったようです。
「それでね、シロったら、神の力を得てすぐに人間に復讐しに行ったわけ。それがあまりにもひどすぎてアマテラス様の怒りに触れてしまったのよ」
話によれば、シロは人間にひどい虐待を受けていたそうです。それで、力をもった途端に復讐しにいったのだと思います。
その後もゆっくりと話は続きます。
「そのせいで、わたしが討伐依頼を受けたのだけど……その時のわたしは忙しかったから、近くにいたわたしの信者に力を与えて猫神の巫女として討伐任務につかせたわけ」
「まさか……それが猫神の巫女……」
これまでの話から、猫神の巫女の由来がなんとなくわかりました。
「ま~昔のよしみもあったし、魂を封印するだけにしておいてあげたわ。それを破ったってことは、おそらく化け猫と化した可能性があるわね。まあ、封印なんて破るためにあるようなものだしね~。もしかして、それを聞くってことは……シロに何かされた?」
「はい……実は……」
恩猫神社でのことを詳しく話します。
すると、猫神は目に涙を浮かべながら、話を聞いてくれていました。
「そ……そうなのね……サクラちゃんは……ギンが目覚めるのを信じて毎日……」
「まあ……そんな感じです……(勝手に話が誇張されてる……)」
「魂が抜かれた猫たちの肉体がまだ生きているのならなんとかなりそうだけど、あまり時間はないわ。回復させるには、そのシロを浄化すればいいはずよ」
「浄化? どうすれば……」
「本当は、あなたに力を授けてもいいのだけど……おそらく、それは無理。あなたがわたしの声を聞けるのは、猫神の巫女の血が混ざっているからなのだけど……」
「わたしが、猫神の巫女の……!?」
「浄化する力を授けたいのだけど、その血が邪魔して力を受け取れる器になってないのよ」
「というと……」
猫神は深刻な顔で説明を始めました。
「猫神の巫女の力が薄まって別なものになってしまっているのよ。この状態でわたしが力を与えても、力が反発して暴走してしまい、最悪、あなた自身が壊れるわ」
「そ……そんなリスクが……」
「以前、わたしに力をもらいにきた人間がいたわ。毒に侵された猫を救うのに力が欲しいってね。それでわたしの力をわけてあげたのだけど……その人間もあなたと同じ巫女の血を引いていたの。そのせいで、寿命を縮めてしまったわ。その時に助けられたのが……ミケ……おいで~」
部屋の奥から、白地にクロと茶色の混ざったメスの猫又がエプロン姿で出てきました。
「わたしです。煮干しの用意ができました」
かわいらしい声で返事をして、お辞儀をしました。
そして、持ってきていた皿を、ゆっくりとベッドの上に乗せます。
「この子は徳を積んで神様になるための修行中よ」
「あの方のお嬢様に会えるとは、思ってもみませんでした」
ミケは、わたしに向かってもう一度一礼しました。
「あの方のお嬢様……!?」
(あの方っていったい……)
こういった猫はあやかしの類だと、わたしの脳が警告を発します。
見れば見るほど、猫の化け物です。
わたしはここで食べられてしまうのでしょうか。
「なんの用かしら」
わたしを、ギョロッとした目で見て、何かつぶやいてきました。
若い女性の声です。
対話の可能性が出てきましたが、わたしが無事生還できる保証はまだどこにもありません。
「その様子だと、わたしを化け物か何かと勘違いしているようね。言っておくけど、わたしは高天原で神の資格を得た猫又。れっきとした猫神の「クロ」よ」
「猫神……?」
わたしはあっけに取られました。
よく見てみると、そんなに怖い猫でもなさそうです。妖美なメス猫とでもいいましょうか。
突然の出来事だったので、化け物という先入観をもってしまい、怖くみえたのでしょう。
そうに違いありません。
どうやら、わたしはここで食べられる運命ではないようです。
「語尾にさまを付けなさい」
「はいっ! 猫神様!?」
つい、その猫の出す覇気のようなものに気おされて、猫神様と呼んでしまいました。
それにしても、猫神というぐらいですから、おそらく猫神の巫女と何か関係がありそうです。
「これも因果のお導き。何か聞きたいことがあって来たのでしょ。つまらないことだったら、食べるわよ。ふふっ」
猫神は、鋭い牙を光らせなが話しかけてきます。
そんなに悪い神様には見えないのですが、油断は禁物です。
つまらない話かどうかは別として、ひとまず猫神の巫女のことを聞いてみることにしました。
「あ、あの……猫神の巫女のことについてお聞きしたいのですが……」
「ふむ、猫神の巫女……あなた、それをどこで知ったのかしら」
「わたしの住んでいるところの、恩猫神社です。そこで何者かに取り憑かれた少年に、そう言われたのですが……」
「そう……ということは、あいつが復活したのね」
「あいつ……!?」
「そう。あいつとは、このわたしと時を同じくして猫又になった「シロ」のことよ」
「どうしてそこまで……わかるの?」
「さてと、猫神の巫女のことは、あまり知らないみたいね。暇だから教えてあげるわ。そのかわり……お酌を注いでもらえるかしら」
こうしてわたしは、猫神のお酒の相手をする羽目になってしまいました。
これも話を聞き出すためですので、仕方ありません。
わたしはお酌をしながら、猫神の昔話を聞かされました。
猫又になるまでの話や、神になるまでの話。そしてシロとの関係。
シロとは、神になるための修行時代の同期だったようです。
「それでね、シロったら、神の力を得てすぐに人間に復讐しに行ったわけ。それがあまりにもひどすぎてアマテラス様の怒りに触れてしまったのよ」
話によれば、シロは人間にひどい虐待を受けていたそうです。それで、力をもった途端に復讐しにいったのだと思います。
その後もゆっくりと話は続きます。
「そのせいで、わたしが討伐依頼を受けたのだけど……その時のわたしは忙しかったから、近くにいたわたしの信者に力を与えて猫神の巫女として討伐任務につかせたわけ」
「まさか……それが猫神の巫女……」
これまでの話から、猫神の巫女の由来がなんとなくわかりました。
「ま~昔のよしみもあったし、魂を封印するだけにしておいてあげたわ。それを破ったってことは、おそらく化け猫と化した可能性があるわね。まあ、封印なんて破るためにあるようなものだしね~。もしかして、それを聞くってことは……シロに何かされた?」
「はい……実は……」
恩猫神社でのことを詳しく話します。
すると、猫神は目に涙を浮かべながら、話を聞いてくれていました。
「そ……そうなのね……サクラちゃんは……ギンが目覚めるのを信じて毎日……」
「まあ……そんな感じです……(勝手に話が誇張されてる……)」
「魂が抜かれた猫たちの肉体がまだ生きているのならなんとかなりそうだけど、あまり時間はないわ。回復させるには、そのシロを浄化すればいいはずよ」
「浄化? どうすれば……」
「本当は、あなたに力を授けてもいいのだけど……おそらく、それは無理。あなたがわたしの声を聞けるのは、猫神の巫女の血が混ざっているからなのだけど……」
「わたしが、猫神の巫女の……!?」
「浄化する力を授けたいのだけど、その血が邪魔して力を受け取れる器になってないのよ」
「というと……」
猫神は深刻な顔で説明を始めました。
「猫神の巫女の力が薄まって別なものになってしまっているのよ。この状態でわたしが力を与えても、力が反発して暴走してしまい、最悪、あなた自身が壊れるわ」
「そ……そんなリスクが……」
「以前、わたしに力をもらいにきた人間がいたわ。毒に侵された猫を救うのに力が欲しいってね。それでわたしの力をわけてあげたのだけど……その人間もあなたと同じ巫女の血を引いていたの。そのせいで、寿命を縮めてしまったわ。その時に助けられたのが……ミケ……おいで~」
部屋の奥から、白地にクロと茶色の混ざったメスの猫又がエプロン姿で出てきました。
「わたしです。煮干しの用意ができました」
かわいらしい声で返事をして、お辞儀をしました。
そして、持ってきていた皿を、ゆっくりとベッドの上に乗せます。
「この子は徳を積んで神様になるための修行中よ」
「あの方のお嬢様に会えるとは、思ってもみませんでした」
ミケは、わたしに向かってもう一度一礼しました。
「あの方のお嬢様……!?」
(あの方っていったい……)
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
朝起きたら、ギルドが崩壊してたんですけど?――捨てられギルドの再建物語
六倍酢
ファンタジー
ある朝、ギルドが崩壊していた。
ギルド戦での敗北から3日、アドラーの所属するギルドは崩壊した。
ごたごたの中で団長に就任したアドラーは、ギルドの再建を団の守り神から頼まれる。
団長になったアドラーは自分の力に気付く。
彼のスキルの本質は『指揮下の者だけ能力を倍増させる』ものだった。
守り神の猫娘、居場所のない混血エルフ、引きこもりの魔女、生まれたての竜姫、加勢するかつての仲間。
変わり者ばかりが集まるギルドは、何時しか大陸最強の戦闘集団になる。
その手で、愛して。ー 空飛ぶイルカの恋物語 ー
ユーリ(佐伯瑠璃)
キャラ文芸
T-4ブルーインパルスとして生を受けた#725は専任整備士の青井翼に恋をした。彼の手の温もりが好き、その手が私に愛を教えてくれた。その手の温もりが私を人にした。
機械にだって心がある。引退を迎えて初めて知る青井への想い。
#725が引退した理由は作者の勝手な想像であり、退役後の扱いも全てフィクションです。
その後の二人で整備員を束ねている坂東三佐は、鏡野ゆう様の「今日も青空、イルカ日和」に出ておられます。お名前お借りしました。ご許可いただきありがとうございました。
※小説化になろうにも投稿しております。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

仲町通りのアトリエ書房 -水彩絵師と白うさぎ付き-
橘花やよい
キャラ文芸
スランプ中の絵描き・絵莉が引っ越してきたのは、喋る白うさぎのいる長野の書店「兎ノ書房」。
心を癒し、夢と向き合い、人と繋がる、じんわりする物語。
pixivで連載していた小説を改稿して更新しています。
「第7回ほっこり・じんわり大賞」大賞をいただきました。


夢の中でもう一人のオレに丸投げされたがそこは宇宙生物の撃退に刀が重宝されている平行世界だった
竹井ゴールド
キャラ文芸
オレこと柊(ひいらぎ)誠(まこと)は夢の中でもう一人のオレに泣き付かれて、余りの泣き言にうんざりして同意するとーー
平行世界のオレと入れ替わってしまった。
平行世界は宇宙より外敵宇宙生物、通称、コスモアネモニー(宇宙イソギンチャク)が跋扈する世界で、その対策として日本刀が重宝されており、剣道の実力、今(いま)総司のオレにとってはかなり楽しい世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる