もし猫カフェのスタッフが猫と会話することができたら

マイきぃ

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にゃんこ島なのニャ

第25話 猫神なのニャ

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 猫は、人型をしています。そして、尻尾が2本あります。
 こういった猫はあやかしの類だと、わたしの脳が警告を発します。

 見れば見るほど、猫の化け物です。
 わたしはここで食べられてしまうのでしょうか。

「なんの用かしら」

 わたしを、ギョロッとした目で見て、何かつぶやいてきました。
 若い女性の声です。
 対話の可能性が出てきましたが、わたしが無事生還できる保証はまだどこにもありません。

「その様子だと、わたしを化け物か何かと勘違いしているようね。言っておくけど、わたしは高天原で神の資格を得た猫又。れっきとした猫神の「クロ」よ」

「猫神……?」

 わたしはあっけに取られました。
 よく見てみると、そんなに怖い猫でもなさそうです。妖美なメス猫とでもいいましょうか。
 突然の出来事だったので、化け物という先入観をもってしまい、怖くみえたのでしょう。
 そうに違いありません。
 
 どうやら、わたしはここで食べられる運命ではないようです。

「語尾にさまを付けなさい」
「はいっ! 猫神様!?」

 つい、その猫の出す覇気のようなものに気おされて、猫神様と呼んでしまいました。
 それにしても、猫神というぐらいですから、おそらく猫神の巫女と何か関係がありそうです。

「これも因果のお導き。何か聞きたいことがあって来たのでしょ。つまらないことだったら、食べるわよ。ふふっ」

 猫神は、鋭い牙を光らせなが話しかけてきます。
 そんなに悪い神様には見えないのですが、油断は禁物です。
 つまらない話かどうかは別として、ひとまず猫神の巫女のことを聞いてみることにしました。

「あ、あの……猫神の巫女のことについてお聞きしたいのですが……」
「ふむ、猫神の巫女……あなた、それをどこで知ったのかしら」

「わたしの住んでいるところの、恩猫神社です。そこで何者かに取り憑かれた少年に、そう言われたのですが……」
「そう……ということは、あいつが復活したのね」

「あいつ……!?」
「そう。あいつとは、このわたしと時を同じくして猫又になった「シロ」のことよ」

「どうしてそこまで……わかるの?」
「さてと、猫神の巫女のことは、あまり知らないみたいね。暇だから教えてあげるわ。そのかわり……お酌を注いでもらえるかしら」

 こうしてわたしは、猫神のお酒の相手をする羽目になってしまいました。
 これも話を聞き出すためですので、仕方ありません。

 わたしはお酌をしながら、猫神の昔話を聞かされました。
 猫又になるまでの話や、神になるまでの話。そしてシロとの関係。
 シロとは、神になるための修行時代の同期だったようです。

「それでね、シロったら、神の力を得てすぐに人間に復讐しに行ったわけ。それがあまりにもひどすぎてアマテラス様の怒りに触れてしまったのよ」

 話によれば、シロは人間にひどい虐待を受けていたそうです。それで、力をもった途端に復讐しにいったのだと思います。
 その後もゆっくりと話は続きます。

「そのせいで、わたしが討伐依頼を受けたのだけど……その時のわたしは忙しかったから、近くにいたわたしの信者に力を与えて猫神の巫女として討伐任務につかせたわけ」
「まさか……それが猫神の巫女……」

 これまでの話から、猫神の巫女の由来がなんとなくわかりました。

「ま~昔のよしみもあったし、魂を封印するだけにしておいてあげたわ。それを破ったってことは、おそらく化け猫と化した可能性があるわね。まあ、封印なんて破るためにあるようなものだしね~。もしかして、それを聞くってことは……シロに何かされた?」
「はい……実は……」

 恩猫神社でのことを詳しく話します。
 すると、猫神は目に涙を浮かべながら、話を聞いてくれていました。

「そ……そうなのね……サクラちゃんは……ギンが目覚めるのを信じて毎日……」
「まあ……そんな感じです……(勝手に話が誇張されてる……)」

「魂が抜かれた猫たちの肉体がまだ生きているのならなんとかなりそうだけど、あまり時間はないわ。回復させるには、そのシロを浄化すればいいはずよ」
「浄化? どうすれば……」

「本当は、あなたに力を授けてもいいのだけど……おそらく、それは無理。あなたがわたしの声を聞けるのは、猫神の巫女の血が混ざっているからなのだけど……」
「わたしが、猫神の巫女の……!?」

「浄化する力を授けたいのだけど、その血が邪魔して力を受け取れる器になってないのよ」
「というと……」

 猫神は深刻な顔で説明を始めました。

「猫神の巫女の力が薄まって別なものになってしまっているのよ。この状態でわたしが力を与えても、力が反発して暴走してしまい、最悪、あなた自身が壊れるわ」
「そ……そんなリスクが……」

「以前、わたしに力をもらいにきた人間がいたわ。毒に侵された猫を救うのに力が欲しいってね。それでわたしの力をわけてあげたのだけど……その人間もあなたと同じ巫女の血を引いていたの。そのせいで、寿命を縮めてしまったわ。その時に助けられたのが……ミケ……おいで~」

 部屋の奥から、白地にクロと茶色の混ざったメスの猫又がエプロン姿で出てきました。

「わたしです。煮干しの用意ができました」

 かわいらしい声で返事をして、お辞儀をしました。
 そして、持ってきていた皿を、ゆっくりとベッドの上に乗せます。

「この子は徳を積んで神様になるための修行中よ」
「あの方のお嬢様に会えるとは、思ってもみませんでした」

 ミケは、わたしに向かってもう一度一礼しました。

「あの方のお嬢様……!?」
(あの方っていったい……)
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