もし猫カフェのスタッフが猫と会話することができたら

マイきぃ

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にゃんこ島なのニャ

第23話 上陸なのニャ

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 わたしは新幹線に乗り、神戸を出発しました。
 本当は、飛行機で行った方が時間もかからないうえ、安上がりなのですが、新幹線を選んだのにはわけがあります。

 ──飛行機が苦手だからです。

 鉄の塊が空を飛ぶのです。信じられません。
 おまけに、あんな高い所を命綱なしで飛ぼうというのです。
 最低でもパラシュートぐらいは装備しなければ、絶対に乗る気になんてなれません。(いえ、それでも乗りません)

 それともうひとつ、新幹線で行く理由は……

「タマ、くれぐれも見つからないように隠れててね」
『はいなのニャ』

 タマを連れてきているからです。

 ちょっと大きめの旅行用かばんに、タマを詰め込んで連れてきていました。
 タマを選んだ理由としては、あの5匹の中で、一番勘がいいからです。
 何かの役に立つかもしれません。

 一応、お店の方は、ロズにリーダーを任せてきました。
 統率力はないですが、頭がいいのでなんとかなると思います。

 5時間ほどで仙台につきました。夕方になってしまったので、一度仙台市内の繭おばあさんの家に泊めてもらうことになります。
 繭おばあさんは、すでに島に渡っているのでここにはいませんが、母の姉「蚕影こかげ 亜沙実あさみ」が家にいるので一安心です。

 家に着きました。

「こんばんわ~」

 家のチャイムを鳴らすと、ドアが開きます。
 そして、おばさんが顔を出しました。
 歳は40代前半ですが、若作りです。

「おっひさ~。うちのばっちゃどもが迷惑かけるね~。まあ、上がって上がって」
「おじゃまします」

 おばさんは結構陽気な人で、話好きな人です。
 そのかわり、酒飲みで飲むと性格が変わります。
 そしてわたしは、その日の晩、酒飲みに付き合わされました。

 次の日の朝、快速列車で石巻市まで直行し、その後フェリーでにゃんこ島へと向かいました。

 頭痛がします。気分が悪いです。
 船のゆれがわたしにとどめを刺しそうです。
 あらかじめ、胃薬を持ってきていたので少しは耐えることができましたが、やはり飲み過ぎには注意しなければなりません。

 港に着きました。船を降ります。
 青い海に囲まれた美しい島に、今降り立ちました。

 漁師に魚をもらっているたくさんの猫たちがいます。
 本当に猫がいっぱいいるようです。

 時期的にちょっと寒いのがたまに傷ですが、わたしは観光で猫が目的ではありません。
 港とから離れ、曾祖母の家に向かうことにしました。

 途中でタマをかばんから降ろします。すると、毛を逆立てて周囲を警戒し始めました。
 何かの気配でも感じたのでしょうか。

『ずっと、見られている気がするのニャ』
「見られてる?」

 その時でした。

 タマが、わたしの側を離れた瞬間、3つほどの影が、タマを襲いました。

 ──猫です。

 黒猫が3匹襲ってきました。

 襲ってきた一匹目の猫は、タマの顔めがけて、引っかきます。
 タマはそれをかわし、反撃に出ましたが、相手の猫は逃げてかわしました。
 その攻撃のすきを突いて、二匹目が引っかきにきました。
 それをタマは、頭を下げてかわします。

 それを狙った最後の一匹が、タマを抑え込もうとします。
 ですが、タマはそれを体をばねのようにして弾き飛ばしました。

 そして、そこで棒立ちになり無防備の状態になったタマを、2番目に突っ込んだ猫が、背後から首筋を狙って走り込んできます。
 それを察知したタマは、月面宙返りでその攻撃をかわしました。

 この一瞬で激しい攻防が見られました。
 猫同士のけんかが、こんなにエキサイティングなものだとは知りませんでした。

 襲ってきた3匹の猫は、一度引いて態勢を立て直します。

『マスター。ちょっと用事ができたニャ』

 タマは目を輝かせてわたしに言いました。

「はいはい。あまり遅くならないでね。あと、大きな怪我しないように」
『わかってるのニャ』

 いつも、のほほんとしているタマの表情が、輝いて見えます。
 止めようと思いましたが、ここは、放っておいても大丈夫でしょう。
 基本的にわたしは猫同士のやり取りには口出しはしないことにしています。(あまりひどい場合は別ですが……)

 楽しそうにけんかをしている猫たちをよそに、わたしは曾祖母の家に向かいました。

 それにしても、心配です。
 人口の少ない島の、さらにその山奥で一人で暮らしているのですから。

 舗装された小道を抜け、草が生い茂る小道を通り抜けます。
 とても静かな場所です。風の音が聞こえるぐらいです。
 ひいおばあさんの家は、その小道の先にありました。

 けっこう古い家屋です。補修の跡が見られます
 周囲の木々が大きくなりすぎて、日差しを遮っています。
 見た目はまるで幽霊屋敷です。

 庭に小さな畑がありますが、そこは日当たりが良いみたいです。
 畑には緑色をしたひょろ長い草が生えています。
 近づくと強い香りがしてきます。これはにんにくの臭いです。
 きっと、これが長生きの秘訣なのでしょう。

 ひいおばあさんの容態はどうなのでしょうか。
 亜沙実おばさんから聞いた話だと、緊急性はないようなのですが、やはり心配です。

 玄関に移動して家の戸を叩きます。

「こんにちは~」

 すると、ゆっくりと引き戸の玄関が空きました。
 出てきたのは、繭おばあちゃんでした。

「おお、大きくなったの、ほのかちゃん」
「繭おばあちゃん。こんにちは。糸のおばあちゃんは?」
「ああ、こっちじゃよ」

 わたしは、繭おばあさんに、ひいおばあちゃんのいる部屋へと案内されました。
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