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9匹の猫なのニャ
第20話 願いが叶うのニャ
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なぜ富松あかねのところにギンがいるのでしょうか。
ギンの姿をみたサクラが、驚いて声を出してしまいました。
『ギン……さん?』
『その声は、もしかして……サクラか? それに……』
「あら、あなたたちは、チープな猫カフェの……」
富松あかねがこちらに気づきました。
「チープな猫カフェじゃありません! 猫カフェ「キャットムーン」です!」
ちょっとだけ、富松あかねの言葉に腹が立ったので、怒鳴ってしまいました。
ついでなので、ギンのことを問いただします。
「どうしてあなたがギンと一緒にいるの?」
「あら、このコラットのことかしら。これは、あなたのものなのかしら……?」
「そ、それは……」
「だったら、あなたに何も言われる筋合いはないはずよ」
「たしかに……そうだけど……」
彼女に正論を叩き付けられてしまいました。言い返せません。
そんなわたしに、ギンは話しかけてきます。
『ほのかさん。その節は世話になった。こうしてまた会ったのは何かの縁だと思う。だが、今、おれは、わけあって彼女の手伝いをしている』
「そういうことなら……仕方ないか……」
『ギンさん……』
サクラは落ち込んでしまいました。
ここは見守るしかなさそうです。
事情はわかりませんが、これがギンの意思ならば仕方のないことです。
それより、あの大きなカプセルが気になります。
わたしは、黒服の男たちのすきを突いて、カプセルを確認しました。
カプセルの上部は、ガラス張りでした。中をのぞくと、酸素マスクをつけている一人の少年の姿がありました。
「こら、近づくな」
「キャッ」
黒服の男たちに邪魔されました。
これ以上は近づけさせてくれないようです。
「その少年は……」
「あなたには、関係ないですわ。ただ、わたしは願いを叶えるだけですの。ホ~ッホッホ~」
相変わらずの高笑いです。
願いとは、この少年の病気を治すとか、そういったものなのでしょうか。
だとすれば、富松あかねは悪い人ではないのかもしれません。
彼女の猫たちは、社を囲むように並びます。
カプセルは社の前へ、黒服の男たちが運びます。
その後、カプセルの手前で富松あかねがひざまずき、祈りをささげました。
「今一度、高天原よりご降臨くださいませ、やおろよずの猫神様。啓示の通り、徳を積んだ猫を9匹そろえました。わたしのお願いを、どうか聞き届けてください」
富松あかねがそう祈ると、周囲の空気が変わりました。
いままでの重い空気は、さらに重くなり、どす黒いオーラのようなものが辺りを包み込み始めました。邪悪な気配がします。
ですが、今は事の成り行きを静観するしかありません。
しばらくすると、声が聞こえてきました。
『ふ……ふはははは……良くぞ綺麗な魂の猫を9匹集めた。そして、憑代まで用意してくれるとは……』
すると、その声に富松あかねが答えます。
「猫神……様……来てくださったのですね……願い、叶えてもらえるのでしょうか」
『その猫たちの魂とひき換えだ』
「……魂? 以前はそんなことはおっしゃらなかったはず……猫たちの徳を集めるだけじゃなかったのですか」
『そう言っておったか……ふはははは』
笑い声とともに、社を取り囲むような竜巻が起こりました。
富松あかねは、慌てふためいています。
「な……何を……」
『お前に力を与えて正解だった……最高の魂だ……じゃあ、願いを叶えてやる』
「ええ、それでは話が違いますわ……」
社の周りにいた猫たちは、吸い寄せられるように社に近づいていきます。そして、その場でパタっと倒れました。
その後、少年の入っているカプセルから火花が飛び散り、ゆっくりとカプセルが開きます。
少年が目覚めました。
少年は体を起こし、体を軽く動かしています。
「なまじ、生きている分、死体と違って肉体の腐敗を気にすることもない。よい憑代だ」
「誠一郎? 違う……まさか……」
「この体に意識は戻っただろう。わたしの意識がな……ふはははは……」
「どうしてこんな……」
少年の体から、黒いオーラが噴き出てきました。富松あかねと、三人の黒服の男は、そのオーラに包み込まれ、その場に倒れてしまいました。
どうやら、少年の意識は回復したようですが、この様子だと、悪いものにでも体を乗っ取られたとしか思えない状況です。
「救急車……でいいのかな」
これは、緊急事態です。
何が起こったかはわかりませんが、今、何かできるのはわたしだけです。
すぐにスマホを出して、救急車を呼びます。
「そこにもいたか!」
少年がこちらに気がつきました。
『こっちにくるのニャ』
『ほのかはおれが守る』
『壁になるのニャ~』
『マスターに手出しはさせないですニャ』
『これはちょっと、感じ悪いのだぜい』
『……ギンを……いったいどうしたの……』
猫たちは、わたしをかばうかのように少年の目の前に立ちふさがりました。
「ふん、こざかしい! 怠惰な猫どもめ! 人間に飼い慣らされ、誇りを失った獣はわたしの餌となるがよい」
黒いオーラが猫たちに襲いかかります。
猫たちが危ないです!
わたしは思わず……
「ダメええええええ~~~~!」
と、大声で叫んでしまいました。
その時でした。
黒いオーラは、まるでわたしの声に吹き飛ばされたかのように、消失しました。
「おまえ……まさか……「猫神の巫女」か!」
少年はそう言ってわたしをにらみつけた後、この場をすぐに立ち去りました。
ともあれ、わたしの猫たちは無事でした。
「猫神の……巫女って……何?」
なんだか、謎が増えてしまいました。
ギンの姿をみたサクラが、驚いて声を出してしまいました。
『ギン……さん?』
『その声は、もしかして……サクラか? それに……』
「あら、あなたたちは、チープな猫カフェの……」
富松あかねがこちらに気づきました。
「チープな猫カフェじゃありません! 猫カフェ「キャットムーン」です!」
ちょっとだけ、富松あかねの言葉に腹が立ったので、怒鳴ってしまいました。
ついでなので、ギンのことを問いただします。
「どうしてあなたがギンと一緒にいるの?」
「あら、このコラットのことかしら。これは、あなたのものなのかしら……?」
「そ、それは……」
「だったら、あなたに何も言われる筋合いはないはずよ」
「たしかに……そうだけど……」
彼女に正論を叩き付けられてしまいました。言い返せません。
そんなわたしに、ギンは話しかけてきます。
『ほのかさん。その節は世話になった。こうしてまた会ったのは何かの縁だと思う。だが、今、おれは、わけあって彼女の手伝いをしている』
「そういうことなら……仕方ないか……」
『ギンさん……』
サクラは落ち込んでしまいました。
ここは見守るしかなさそうです。
事情はわかりませんが、これがギンの意思ならば仕方のないことです。
それより、あの大きなカプセルが気になります。
わたしは、黒服の男たちのすきを突いて、カプセルを確認しました。
カプセルの上部は、ガラス張りでした。中をのぞくと、酸素マスクをつけている一人の少年の姿がありました。
「こら、近づくな」
「キャッ」
黒服の男たちに邪魔されました。
これ以上は近づけさせてくれないようです。
「その少年は……」
「あなたには、関係ないですわ。ただ、わたしは願いを叶えるだけですの。ホ~ッホッホ~」
相変わらずの高笑いです。
願いとは、この少年の病気を治すとか、そういったものなのでしょうか。
だとすれば、富松あかねは悪い人ではないのかもしれません。
彼女の猫たちは、社を囲むように並びます。
カプセルは社の前へ、黒服の男たちが運びます。
その後、カプセルの手前で富松あかねがひざまずき、祈りをささげました。
「今一度、高天原よりご降臨くださいませ、やおろよずの猫神様。啓示の通り、徳を積んだ猫を9匹そろえました。わたしのお願いを、どうか聞き届けてください」
富松あかねがそう祈ると、周囲の空気が変わりました。
いままでの重い空気は、さらに重くなり、どす黒いオーラのようなものが辺りを包み込み始めました。邪悪な気配がします。
ですが、今は事の成り行きを静観するしかありません。
しばらくすると、声が聞こえてきました。
『ふ……ふはははは……良くぞ綺麗な魂の猫を9匹集めた。そして、憑代まで用意してくれるとは……』
すると、その声に富松あかねが答えます。
「猫神……様……来てくださったのですね……願い、叶えてもらえるのでしょうか」
『その猫たちの魂とひき換えだ』
「……魂? 以前はそんなことはおっしゃらなかったはず……猫たちの徳を集めるだけじゃなかったのですか」
『そう言っておったか……ふはははは』
笑い声とともに、社を取り囲むような竜巻が起こりました。
富松あかねは、慌てふためいています。
「な……何を……」
『お前に力を与えて正解だった……最高の魂だ……じゃあ、願いを叶えてやる』
「ええ、それでは話が違いますわ……」
社の周りにいた猫たちは、吸い寄せられるように社に近づいていきます。そして、その場でパタっと倒れました。
その後、少年の入っているカプセルから火花が飛び散り、ゆっくりとカプセルが開きます。
少年が目覚めました。
少年は体を起こし、体を軽く動かしています。
「なまじ、生きている分、死体と違って肉体の腐敗を気にすることもない。よい憑代だ」
「誠一郎? 違う……まさか……」
「この体に意識は戻っただろう。わたしの意識がな……ふはははは……」
「どうしてこんな……」
少年の体から、黒いオーラが噴き出てきました。富松あかねと、三人の黒服の男は、そのオーラに包み込まれ、その場に倒れてしまいました。
どうやら、少年の意識は回復したようですが、この様子だと、悪いものにでも体を乗っ取られたとしか思えない状況です。
「救急車……でいいのかな」
これは、緊急事態です。
何が起こったかはわかりませんが、今、何かできるのはわたしだけです。
すぐにスマホを出して、救急車を呼びます。
「そこにもいたか!」
少年がこちらに気がつきました。
『こっちにくるのニャ』
『ほのかはおれが守る』
『壁になるのニャ~』
『マスターに手出しはさせないですニャ』
『これはちょっと、感じ悪いのだぜい』
『……ギンを……いったいどうしたの……』
猫たちは、わたしをかばうかのように少年の目の前に立ちふさがりました。
「ふん、こざかしい! 怠惰な猫どもめ! 人間に飼い慣らされ、誇りを失った獣はわたしの餌となるがよい」
黒いオーラが猫たちに襲いかかります。
猫たちが危ないです!
わたしは思わず……
「ダメええええええ~~~~!」
と、大声で叫んでしまいました。
その時でした。
黒いオーラは、まるでわたしの声に吹き飛ばされたかのように、消失しました。
「おまえ……まさか……「猫神の巫女」か!」
少年はそう言ってわたしをにらみつけた後、この場をすぐに立ち去りました。
ともあれ、わたしの猫たちは無事でした。
「猫神の……巫女って……何?」
なんだか、謎が増えてしまいました。
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