もし猫カフェのスタッフが猫と会話することができたら

マイきぃ

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ショータイムなのニャ

第16話 にゃんこショーなのニャ

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 開演当日になりました。
 その日は晴天、ショーをするにはもってこいの天気です。
 一度、ペットショップに猫たちを預け、早苗にトリミングをしてもらいます。

 これで、猫たちの体は綺麗になりました。
 身だしなみもばっちりです。お客様の前に出しても恥ずかしくありません。

 11時の開演時間が迫ってきました。続々と観客が集まってきます。
 ココアと知恵、ウメと八重子おばあさんも到着です。二人を特等席に案内します。

『みなさん、頑張ってください』
『おれも、やりたかったニャ~。サクラちゃんもやるの?』
『わたしは今日は、見学です』

 ココアとウメは、今日は見学です。
 ついでにサクラも見学です。
 さすがに、訓練なしにやらせるわけにはいかないですからね。

 ステージは、ブロックと板を敷き詰め、その上にシートをかけて簡単に作りました。
 そのかわり場所を広く取っているので、猫たちは、ストレスなく暴れ回ることができることでしょう。

 開演時間が迫るにつれて、人が集まってきます。
 用意したパイプ椅子50席の三分の二が埋まりました。
 もちろん、見るのは無料です。

 時間がきました。
 音楽が流れます。

「にゃんこショー」の始まりです。

 少し緊張します。ですが、知ってる人もいないので、気楽にやることにします。

 わたしは、シルクハットをかぶったマジシャン姿でステージに上ります。
 その後から、猫たちがついてきます。

「きょうは、お忙しい中、「にゃんこショー」に来ていただき、ありがとうございます」

 まずは、全員が横一列に並んで「ニャ~」と鳴いてあいさつ。
 次に、猫たちの紹介を順番にしていきます。
 紹介が終わると猫たちは体を丸め、ステージをランダムに転がりました。

 わたしはわざと、猫に足を引っかけて転びそうになりながらステージを降ります。
 すると、観客がそれを見て笑い声を上げました。その笑い声につられて、どんどん客が集まってきます。

「おい、あの猫、ラジコンかなんかじゃないのか?」
「すげえぜ、あの猫たち」

 観客の目を引くことに成功しました。これで彼らはステージに釘付けです。

 一度、猫たちはステージを下ります。
 その後、わたしと早苗で輪っかや平均台などの障害物をいくつか用意します。

 猫たちは、設置された障害物を利用して、鬼ごっこを始めます。
 ここは、ジャングルジムで鬼ごっこをしていた時の要領で、自由に動いてもらいます。

「タマ~! 頑張れ~!」
「ロズちゃん素敵!」

 ファンも付き、猫たちを応援するお客様が増えてきました。
 タマ、トラ、ロズ、レンは真面目に追っかけっこをしています。ですが、ボブは輪っかに前足をひっかけて、だらりとぶら下がる始末。
 それでも、お客様にはそんな光景が大受けしているみたいです。

 次に、レンのソロダンス。

 80年代に流行した特攻猫を思い出させるコスチュームで踊ります。
 見た目、腕を動かして腰を振っているだけなのですが、流している音楽とレンの動きがぴったりと合うので違和感がありません。

『ネコネコダンス! ネコネコダンス!』

「ママ~、また変な踊りしてる猫がいるよ~」
「へえ~おもしろいわね~」

 その後、わたしは猫に指示をしながら、組体操、綱渡り、玉乗り、輪っかくぐり(火は使いません)と、どこぞの一座並みの芸を披露しました。

「猫ってこんなこともできるのか」
「わたしも猫、欲しくなってきたわ」
「あの娘、どこの一座の娘かしら」

 観客は、どんどん猫に興味が出てきたようです。

 ここからが、本当の見せ場です。
 今度は、わたしと猫とで、技を披露していきます。
 丸くなったボブを、新体操のボールのように扱います。

 右手から腕を左手に転がし、背中や足先までころがります。
 ボブがバランスを取っているので、落ちることはありません。(少々重いですが……)
 わたしがレオタードを着ていれば、ボールの新体操選手です。

 そして、わたしが練習した技。
「なんちゃって猫ジャグリング」です。

 今度は、タマ、トラ、ロズが丸くなり、わたしの手に乗ります。そして、わたしが腕を交互に回すと、お手玉のように勝手に飛び跳ね、まるでジャグリングをしているような光景になります。
 これをやりたいがために、腕を鍛えたようなものです。

「あのね~ちゃん。猫でジャグリングしてるぞ」
「やっぱりどこかのサーカス団員じゃないのかしら」

 恥ずかしくなるほどの注目を浴びてしまいました。
 当然、わたしは何かをしているわけではありません。
 それに、ジャグリングなんてできません。
 ただ、腕の動きに合わせて猫たちが、芸を披露してくれているだけなのです。

 そして、芸が終わりました。

「みなさま! ご来場、ありがとうございました。この猫たちは今、猫カフェキャットムーンの猫スタッフをしています。もっとお近づきになりたい方は、ご来店ください! お待ちしています!」

 お客様は大歓声で拍手をくれました。
 これにて無事、にゃんこショー終了です。

 わたしも猫も、へとへとになりました。こんなに頑張ったのは、本当に久しぶりです。

「お疲れ~ほのか。まさか、あんなすごいことができるとは思ってなかったよ。もしかして、こっちのほうが成功するんじゃない?」

 早苗がタオルを飲み物を持ってきてくれました。
 タオルを受け取り、汗をぬぐいます。

「ううん、でも……疲れるし……」
「そっか。でも、成功してよかったよ。うちの店長も気に入ったみたいだし。もし次もやるような事があれば、声をかけてくれって言ってたよ」
「そうなんだ、ありがとう」
(また、やってみようかな……)

 後片付けをして、かるく打ち上げをしたあと、わたしたちは解散しました。

 これで、わたしのお店がイメージアップするはずです。
 どのぐらいの効果が出るのか、楽しみでなりません。



 わたしたちは帰路につきました。
 駅の商店街を抜け、大きい道路側の歩道に出ます。
 猫たちは一列にならんでゆっくりと歩かせます。
 車には注意しなければいけません。

 ふと、その帰り道の途中、なにやら、きらびやかなお店を発見しました。
 壁に猫の絵が書いてあります。
 そして、その下に、英語で「Cats light TOMIMATSU GROUP」と書かれていました。

「キャッツライト、トミマツグループ? (まさか、猫カフェ……)」

 その絵を見ていたその時でした。後ろに何者かの気配を感じました。

「あら……さきほどペットショップの駐車場でジャグリングをしていた芸人さんですわね」

 声をかけられました。
 びっくりして振り向きます。すると…………

 ツインドリルの金髪で気品のオーラを持つお嬢様のような女性と、同じく気品のある8匹の猫が、わたしを威嚇するかのように囲んでいました。
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