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ショータイムなのニャ
第14話 トレーニングなのニャ
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ビデオテープは、時としてラベルの内容と中身が一致しません。
それを知ったわたしは、サーカスのDVDを買いに行くことにしました。
お店のDVD売り場へ直行します。
すると、「にゃんこ大サーカス」という題名のDVDを見つけました。どうやら猫だけのサーカスのようです。なぜか、ホラージャンルの場所に置いてありましたが、間違いなくサーカスだと思います。
DVDを購入したわたしは、さっそく家に帰り、再生してみました。
猫のくせに統率が取れています。
火の輪くぐりはもちろん、空中ブランコ、タワー、ダンス、などなど、次元を超えた素晴らしいアクションが観客を沸かせています。
到底うちの猫たちにはまねできないものばかりです。
ですが、ここまでやる必要はないと思うのです。
お客様に、猫はすごいというイメージを植え付けるだけで良いのです。
後半は、マジシャンと猫とのマジックショーだったので、途中で見るのをやめました。
(わたしにマジックの才能はありませんからね……)
今の映像で、だいたいの構想が練れました。とにかく、簡単なもので良いと思います。
それでも、基礎体力は必要です。安全のために、体を鍛えなければなりません。
ひとまず、このことをうちの猫たちに報告しました。
「それでは、これから一週間、暇な時間を利用して、体力、筋力トレーニングをしたいと思います」
『何だかわからないのニャ』
『サーカスとはいったい……』
『食べ物なのかニャ~』
『聞いたことがありますねえ。もちろん見たことはないですニャ』
『なんだか、かっこいい響きだぜい』
「話しただけではよくわからないと思うので、ちょっとこれを見てもらいます」
わたしはDVDプレイヤーを再生して、猫たちに映像を見せてあげました。
『これは……なんて動きなのニャ!』
『かなり訓練されているな』
『食べ物じゃないのニャ~』
『これは……猫の身体能力を超えていますニャ』
『なんだか、おれにもできるような気がしてきたぜい』
「ここまでできるようになれとはいいません。そのかわり、わたしのメニューをこなしてもらって、簡単な技を覚えてもらうことにします」
『ぼくは、猫の可能性を見たニャ』
『ここまで強くなれれば、この地域を制圧するのも夢ではない』
『腹へったニャ~』
『まさに、エンターテイメントの境地ですニャ』
『もっとかっこいいアクションが見たいのだぜい』
「…………」
猫たちは、サーカスに見入ってしまってこちらの話を聞いていません。
ですが、いちおう興味を持ってくれたようです。
特訓は、わたしの店のすぐ目の前にある大きな公園ですることにしました。
メニュー内容は……
・公園の内周を3周(全力)
・滑り台の上り下りを10回(全力)
・ジャングルジムでの鬼ごっこ30分
・ストレッチ(背伸び)
・演技練習
このぐらいで良いかと思います。
もちろん猫だけではなく、わたしも技を練習しなければなりません。
猫たちが頑張っている間にジャグリングの練習をしてみたいと思います。
次の日の明け方、猫たちを店前の大きな公園に集めました。
気温は10月半ばなので、動くにはちょうどいいぐらいです。
まず、軽く準備運動をさせます。
猫たちは、ゴロゴロと転がったり体をひねったりしながら、まるで芋虫のように準備運動をはじめました。
「体が温まったら、始めますからね」
『首って、離れたりくっついたりするものなのかニャ』
『命がけだな……いざという時の体力も必要になるな』
『あんな箱の中で串刺しになるのはいやですニャ』
『派手に吹き飛んで、死ぬのも悪くないぜい』
猫たちは、何やら深刻そうに見当違いなことをつぶやいています。
おそらく、早起きして寝ぼけているのでしょう。
そういえば、ボブの姿が見当たりません。
「ねえ、ボブはどうしたの?」と、タマに尋ねてました。
『トイレに行ってからくるって言ってたニャ』
『それにしても長いな……腹でも壊したのか』
タマとトラは、心配そうに答えました。
「何かあったのかしら。ちょっとわたし見てきます。じゃあ、その間、公園を走ってきてね」
『わかったのニャ』
『ああ、それだけで足りるなら安いものだ』
店に戻りました。それにしても、いったい何があったのでしょうか。
控室の奥のトイレを調べます。ですが、見当たりません。
次に、キャットスペースを調べてみました。
すると、おもちゃ箱の中にある洗面器の中で、丸くなっているクリーム色のふわふわを発見しました。
……ボブです。
「ボブ……どうしたの? 具合でも悪いの?」
『お……おいらは……みんなみたいに動きが早いわけでもない。ただ、突かれてモフられて、食べる事しかできない駄目猫なのニャ~』
なぜか、ボブの声は震えていました。いつもはこんな感じじゃないのですが、今日に限ってどうしたのでしょうか。
それを知ったわたしは、サーカスのDVDを買いに行くことにしました。
お店のDVD売り場へ直行します。
すると、「にゃんこ大サーカス」という題名のDVDを見つけました。どうやら猫だけのサーカスのようです。なぜか、ホラージャンルの場所に置いてありましたが、間違いなくサーカスだと思います。
DVDを購入したわたしは、さっそく家に帰り、再生してみました。
猫のくせに統率が取れています。
火の輪くぐりはもちろん、空中ブランコ、タワー、ダンス、などなど、次元を超えた素晴らしいアクションが観客を沸かせています。
到底うちの猫たちにはまねできないものばかりです。
ですが、ここまでやる必要はないと思うのです。
お客様に、猫はすごいというイメージを植え付けるだけで良いのです。
後半は、マジシャンと猫とのマジックショーだったので、途中で見るのをやめました。
(わたしにマジックの才能はありませんからね……)
今の映像で、だいたいの構想が練れました。とにかく、簡単なもので良いと思います。
それでも、基礎体力は必要です。安全のために、体を鍛えなければなりません。
ひとまず、このことをうちの猫たちに報告しました。
「それでは、これから一週間、暇な時間を利用して、体力、筋力トレーニングをしたいと思います」
『何だかわからないのニャ』
『サーカスとはいったい……』
『食べ物なのかニャ~』
『聞いたことがありますねえ。もちろん見たことはないですニャ』
『なんだか、かっこいい響きだぜい』
「話しただけではよくわからないと思うので、ちょっとこれを見てもらいます」
わたしはDVDプレイヤーを再生して、猫たちに映像を見せてあげました。
『これは……なんて動きなのニャ!』
『かなり訓練されているな』
『食べ物じゃないのニャ~』
『これは……猫の身体能力を超えていますニャ』
『なんだか、おれにもできるような気がしてきたぜい』
「ここまでできるようになれとはいいません。そのかわり、わたしのメニューをこなしてもらって、簡単な技を覚えてもらうことにします」
『ぼくは、猫の可能性を見たニャ』
『ここまで強くなれれば、この地域を制圧するのも夢ではない』
『腹へったニャ~』
『まさに、エンターテイメントの境地ですニャ』
『もっとかっこいいアクションが見たいのだぜい』
「…………」
猫たちは、サーカスに見入ってしまってこちらの話を聞いていません。
ですが、いちおう興味を持ってくれたようです。
特訓は、わたしの店のすぐ目の前にある大きな公園ですることにしました。
メニュー内容は……
・公園の内周を3周(全力)
・滑り台の上り下りを10回(全力)
・ジャングルジムでの鬼ごっこ30分
・ストレッチ(背伸び)
・演技練習
このぐらいで良いかと思います。
もちろん猫だけではなく、わたしも技を練習しなければなりません。
猫たちが頑張っている間にジャグリングの練習をしてみたいと思います。
次の日の明け方、猫たちを店前の大きな公園に集めました。
気温は10月半ばなので、動くにはちょうどいいぐらいです。
まず、軽く準備運動をさせます。
猫たちは、ゴロゴロと転がったり体をひねったりしながら、まるで芋虫のように準備運動をはじめました。
「体が温まったら、始めますからね」
『首って、離れたりくっついたりするものなのかニャ』
『命がけだな……いざという時の体力も必要になるな』
『あんな箱の中で串刺しになるのはいやですニャ』
『派手に吹き飛んで、死ぬのも悪くないぜい』
猫たちは、何やら深刻そうに見当違いなことをつぶやいています。
おそらく、早起きして寝ぼけているのでしょう。
そういえば、ボブの姿が見当たりません。
「ねえ、ボブはどうしたの?」と、タマに尋ねてました。
『トイレに行ってからくるって言ってたニャ』
『それにしても長いな……腹でも壊したのか』
タマとトラは、心配そうに答えました。
「何かあったのかしら。ちょっとわたし見てきます。じゃあ、その間、公園を走ってきてね」
『わかったのニャ』
『ああ、それだけで足りるなら安いものだ』
店に戻りました。それにしても、いったい何があったのでしょうか。
控室の奥のトイレを調べます。ですが、見当たりません。
次に、キャットスペースを調べてみました。
すると、おもちゃ箱の中にある洗面器の中で、丸くなっているクリーム色のふわふわを発見しました。
……ボブです。
「ボブ……どうしたの? 具合でも悪いの?」
『お……おいらは……みんなみたいに動きが早いわけでもない。ただ、突かれてモフられて、食べる事しかできない駄目猫なのニャ~』
なぜか、ボブの声は震えていました。いつもはこんな感じじゃないのですが、今日に限ってどうしたのでしょうか。
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