7 / 32
猫カフェ開店するニャ
第7話 金色の首輪なのニャ
しおりを挟む
黒服の男は、わたしの首筋にスタンガンを近づけてきます。
「はっきりいって痛いです。死にそうになります。やめてほしいです」
と、心のなかで叫んでいたつもりが声となって、男を罵倒していました。
「おまえ、立場わかってるのか?」
「知りません。勝手に決めないでください!」
わたしは抵抗しました。
前回は、不意を突かれましたが、今度はそうはいきません。
スタンガンを持っている男の手首を両手でつかんで、攻撃を受けないように遠ざけます。
──時間さえ稼げれば……。
ですが、そう簡単にはいきそうになかったようです。もう一人の男が倉庫に入ってきました。
ジャージの男です。
「おい、なに逃してんだ。見張りもできねえのか!」
「す、すいません」
ジャージの男はわたしを睨みつけます。そして、胸ぐらをつかみました。
「あまり調子に乗ってると、海に沈めるぞ!」
悪党の決まり文句です。
わたしは、その場で黙り込みました。
「さっき、着信音が聞こえたんで、中へ入ったら、この娘が外に出ていたんすよ」
「着信音? ああ、わりい。おれがそいつのスマホ置いといたんだ。で、そのスマホどこだ」
「それが……見当たらないんすよ」
「ば……馬鹿かおまえ! 位置ばれるだろ! おい、娘! スマホどこへやった!」
ジャージの男は、胸ぐらをつかんだ腕を、激しく揺さぶります。
「捨てました」
そう言うと、ジャージの男はわたしを突き飛ばしました。
相当慌てているようです。
「急げ、警察がくるまえにここを逃げるぞ」
「は……はいっ!」
「お前もこい、娘!」
わたしは、ジャージの男に髪の毛をつかまれ、引っ張られました。
どうやら、時間稼ぎは失敗したようです。
ですが、倉庫の外へ連れ去られたその時でした。
複数のサイレンが聞こえてきました。
パトカーのサイレンです。
「な……早すぎるだろ」
「どうやら、これまでのようですね」
わたしは、彼らに少しだけすごんで見せました。
どうやら、私の思惑通りにことが運んだようです。
それにしても、最近の警察は行動が早いです。
警備員並の迅速さです。
6台のパトカーが倉庫に到着します。
警官たちは倉庫を包囲し、二人を取り押さえました。
これにて、一件落着です。
その後、父に心配されて泣き付かれたり、警察に呼ばれたりと、いろいろ大変でしたが、事なきを得たわたしは、中断していた猫カフェを再開しました。
実は、今回の件でわたしが考えたスマホのGPS作戦は、あまり意味がなかったようです。
マンチカンが盗まれる事件は最近多発していました。それで、前から警察は彼らに目をつけていたそうです。
下手に突入すると、ごまかされて終わってしまうので、警察はなかなか手を出せずにいたのですけど、わたしがさらわれたおかげで警察は逮捕のきっかけをつかんだようです。
(わたしはおとりだったのでしょうか……)
知愛の通報後、警察は現場付近の監視カメラを即座に確認し、わたしを連れ込んだ車の走行ルートを調べ、場所を特定していたようです。
だから、あれだけ早く倉庫に来ることができたということです。
(まあ、ないよりはましだと思いますが……)
もちろん、捕まっていた猫たちは、すべて開放され、飼い主のも元へもどりました。
今回のことを教訓にして、うちの猫スタッフにはGPSをつけることにしました。
月の光のように輝く、おしゃれな金色の首輪と鈴のついたGPSです。
うちの店の名前にぴったりです。
さっそく猫たちに付けてみました。
『チリンチリンうるさいニャ』
『ちょっと、恥ずかしいな』
『猫缶のほうがまだましニャ~』
『これは、魔除けでしょうか』
『なんだかパンクな気分だぜ!』
「ちゃんと、つけてもらいますからね!」
猫たちは、あまり嬉しそうじゃありませんでした。
結局、猫におしゃれは、わからないのかもしれません。
まさに、猫に小判です。
ですが、これでこの猫たちの安全は確保しました。
何かあっては大変です。
早く、わたしの招き猫になってもらわないといけないですからね。
「はっきりいって痛いです。死にそうになります。やめてほしいです」
と、心のなかで叫んでいたつもりが声となって、男を罵倒していました。
「おまえ、立場わかってるのか?」
「知りません。勝手に決めないでください!」
わたしは抵抗しました。
前回は、不意を突かれましたが、今度はそうはいきません。
スタンガンを持っている男の手首を両手でつかんで、攻撃を受けないように遠ざけます。
──時間さえ稼げれば……。
ですが、そう簡単にはいきそうになかったようです。もう一人の男が倉庫に入ってきました。
ジャージの男です。
「おい、なに逃してんだ。見張りもできねえのか!」
「す、すいません」
ジャージの男はわたしを睨みつけます。そして、胸ぐらをつかみました。
「あまり調子に乗ってると、海に沈めるぞ!」
悪党の決まり文句です。
わたしは、その場で黙り込みました。
「さっき、着信音が聞こえたんで、中へ入ったら、この娘が外に出ていたんすよ」
「着信音? ああ、わりい。おれがそいつのスマホ置いといたんだ。で、そのスマホどこだ」
「それが……見当たらないんすよ」
「ば……馬鹿かおまえ! 位置ばれるだろ! おい、娘! スマホどこへやった!」
ジャージの男は、胸ぐらをつかんだ腕を、激しく揺さぶります。
「捨てました」
そう言うと、ジャージの男はわたしを突き飛ばしました。
相当慌てているようです。
「急げ、警察がくるまえにここを逃げるぞ」
「は……はいっ!」
「お前もこい、娘!」
わたしは、ジャージの男に髪の毛をつかまれ、引っ張られました。
どうやら、時間稼ぎは失敗したようです。
ですが、倉庫の外へ連れ去られたその時でした。
複数のサイレンが聞こえてきました。
パトカーのサイレンです。
「な……早すぎるだろ」
「どうやら、これまでのようですね」
わたしは、彼らに少しだけすごんで見せました。
どうやら、私の思惑通りにことが運んだようです。
それにしても、最近の警察は行動が早いです。
警備員並の迅速さです。
6台のパトカーが倉庫に到着します。
警官たちは倉庫を包囲し、二人を取り押さえました。
これにて、一件落着です。
その後、父に心配されて泣き付かれたり、警察に呼ばれたりと、いろいろ大変でしたが、事なきを得たわたしは、中断していた猫カフェを再開しました。
実は、今回の件でわたしが考えたスマホのGPS作戦は、あまり意味がなかったようです。
マンチカンが盗まれる事件は最近多発していました。それで、前から警察は彼らに目をつけていたそうです。
下手に突入すると、ごまかされて終わってしまうので、警察はなかなか手を出せずにいたのですけど、わたしがさらわれたおかげで警察は逮捕のきっかけをつかんだようです。
(わたしはおとりだったのでしょうか……)
知愛の通報後、警察は現場付近の監視カメラを即座に確認し、わたしを連れ込んだ車の走行ルートを調べ、場所を特定していたようです。
だから、あれだけ早く倉庫に来ることができたということです。
(まあ、ないよりはましだと思いますが……)
もちろん、捕まっていた猫たちは、すべて開放され、飼い主のも元へもどりました。
今回のことを教訓にして、うちの猫スタッフにはGPSをつけることにしました。
月の光のように輝く、おしゃれな金色の首輪と鈴のついたGPSです。
うちの店の名前にぴったりです。
さっそく猫たちに付けてみました。
『チリンチリンうるさいニャ』
『ちょっと、恥ずかしいな』
『猫缶のほうがまだましニャ~』
『これは、魔除けでしょうか』
『なんだかパンクな気分だぜ!』
「ちゃんと、つけてもらいますからね!」
猫たちは、あまり嬉しそうじゃありませんでした。
結局、猫におしゃれは、わからないのかもしれません。
まさに、猫に小判です。
ですが、これでこの猫たちの安全は確保しました。
何かあっては大変です。
早く、わたしの招き猫になってもらわないといけないですからね。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
朝起きたら、ギルドが崩壊してたんですけど?――捨てられギルドの再建物語
六倍酢
ファンタジー
ある朝、ギルドが崩壊していた。
ギルド戦での敗北から3日、アドラーの所属するギルドは崩壊した。
ごたごたの中で団長に就任したアドラーは、ギルドの再建を団の守り神から頼まれる。
団長になったアドラーは自分の力に気付く。
彼のスキルの本質は『指揮下の者だけ能力を倍増させる』ものだった。
守り神の猫娘、居場所のない混血エルフ、引きこもりの魔女、生まれたての竜姫、加勢するかつての仲間。
変わり者ばかりが集まるギルドは、何時しか大陸最強の戦闘集団になる。
その手で、愛して。ー 空飛ぶイルカの恋物語 ー
ユーリ(佐伯瑠璃)
キャラ文芸
T-4ブルーインパルスとして生を受けた#725は専任整備士の青井翼に恋をした。彼の手の温もりが好き、その手が私に愛を教えてくれた。その手の温もりが私を人にした。
機械にだって心がある。引退を迎えて初めて知る青井への想い。
#725が引退した理由は作者の勝手な想像であり、退役後の扱いも全てフィクションです。
その後の二人で整備員を束ねている坂東三佐は、鏡野ゆう様の「今日も青空、イルカ日和」に出ておられます。お名前お借りしました。ご許可いただきありがとうございました。
※小説化になろうにも投稿しております。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

仲町通りのアトリエ書房 -水彩絵師と白うさぎ付き-
橘花やよい
キャラ文芸
スランプ中の絵描き・絵莉が引っ越してきたのは、喋る白うさぎのいる長野の書店「兎ノ書房」。
心を癒し、夢と向き合い、人と繋がる、じんわりする物語。
pixivで連載していた小説を改稿して更新しています。
「第7回ほっこり・じんわり大賞」大賞をいただきました。


夢の中でもう一人のオレに丸投げされたがそこは宇宙生物の撃退に刀が重宝されている平行世界だった
竹井ゴールド
キャラ文芸
オレこと柊(ひいらぎ)誠(まこと)は夢の中でもう一人のオレに泣き付かれて、余りの泣き言にうんざりして同意するとーー
平行世界のオレと入れ替わってしまった。
平行世界は宇宙より外敵宇宙生物、通称、コスモアネモニー(宇宙イソギンチャク)が跋扈する世界で、その対策として日本刀が重宝されており、剣道の実力、今(いま)総司のオレにとってはかなり楽しい世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる