もし猫カフェのスタッフが猫と会話することができたら

マイきぃ

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猫カフェ開店するニャ

第7話 金色の首輪なのニャ

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 黒服の男は、わたしの首筋にスタンガンを近づけてきます。

「はっきりいって痛いです。死にそうになります。やめてほしいです」

 と、心のなかで叫んでいたつもりが声となって、男を罵倒していました。

「おまえ、立場わかってるのか?」
「知りません。勝手に決めないでください!」

 わたしは抵抗しました。
 前回は、不意を突かれましたが、今度はそうはいきません。
 スタンガンを持っている男の手首を両手でつかんで、攻撃を受けないように遠ざけます。

 ──時間さえ稼げれば……。

 ですが、そう簡単にはいきそうになかったようです。もう一人の男が倉庫に入ってきました。
 ジャージの男です。

「おい、なに逃してんだ。見張りもできねえのか!」
「す、すいません」

 ジャージの男はわたしを睨みつけます。そして、胸ぐらをつかみました。

「あまり調子に乗ってると、海に沈めるぞ!」

 悪党の決まり文句です。
 わたしは、その場で黙り込みました。

「さっき、着信音が聞こえたんで、中へ入ったら、この娘が外に出ていたんすよ」
「着信音? ああ、わりい。おれがそいつのスマホ置いといたんだ。で、そのスマホどこだ」
「それが……見当たらないんすよ」
「ば……馬鹿かおまえ! 位置ばれるだろ! おい、娘! スマホどこへやった!」

 ジャージの男は、胸ぐらをつかんだ腕を、激しく揺さぶります。

「捨てました」

 そう言うと、ジャージの男はわたしを突き飛ばしました。
 相当慌てているようです。

「急げ、警察がくるまえにここを逃げるぞ」
「は……はいっ!」
「お前もこい、娘!」

 わたしは、ジャージの男に髪の毛をつかまれ、引っ張られました。
 どうやら、時間稼ぎは失敗したようです。

 ですが、倉庫の外へ連れ去られたその時でした。
 複数のサイレンが聞こえてきました。
 パトカーのサイレンです。

「な……早すぎるだろ」
「どうやら、これまでのようですね」

 わたしは、彼らに少しだけすごんで見せました。
 どうやら、私の思惑通りにことが運んだようです。
 それにしても、最近の警察は行動が早いです。
 警備員並の迅速さです。

 6台のパトカーが倉庫に到着します。
 警官たちは倉庫を包囲し、二人を取り押さえました。

 これにて、一件落着です。



 その後、父に心配されて泣き付かれたり、警察に呼ばれたりと、いろいろ大変でしたが、事なきを得たわたしは、中断していた猫カフェを再開しました。

 実は、今回の件でわたしが考えたスマホのGPS作戦は、あまり意味がなかったようです。
 マンチカンが盗まれる事件は最近多発していました。それで、前から警察は彼らに目をつけていたそうです。
 下手に突入すると、ごまかされて終わってしまうので、警察はなかなか手を出せずにいたのですけど、わたしがさらわれたおかげで警察は逮捕のきっかけをつかんだようです。
(わたしはおとりだったのでしょうか……)

 知愛の通報後、警察は現場付近の監視カメラを即座に確認し、わたしを連れ込んだ車の走行ルートを調べ、場所を特定していたようです。
 だから、あれだけ早く倉庫に来ることができたということです。
(まあ、ないよりはましだと思いますが……)
 もちろん、捕まっていた猫たちは、すべて開放され、飼い主のも元へもどりました。

 今回のことを教訓にして、うちの猫スタッフにはGPSをつけることにしました。
 月の光のように輝く、おしゃれな金色の首輪と鈴のついたGPSです。
 うちの店の名前にぴったりです。

 さっそく猫たちに付けてみました。

『チリンチリンうるさいニャ』
『ちょっと、恥ずかしいな』
『猫缶のほうがまだましニャ~』
『これは、魔除けでしょうか』
『なんだかパンクな気分だぜ!』

「ちゃんと、つけてもらいますからね!」

 猫たちは、あまり嬉しそうじゃありませんでした。
 結局、猫におしゃれは、わからないのかもしれません。
 まさに、猫に小判です。

 ですが、これでこの猫たちの安全は確保しました。
 何かあっては大変です。

 早く、わたしの招き猫になってもらわないといけないですからね。
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