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猫カフェ開店するニャ
第3話 接客開始だニャ
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──開店初日──
今日は日曜日、天気も、お店の開店を祝ってくれるかのような晴天です。
時間はもう朝の9時。もうすぐ開店の時間です。飾りつけを終えて、店の中で待機します。
猫サークルの方が二人、猫を連れて応援に来てくれました。
「きょ……きょうはよろしくお願いします」
恥ずかしそうにあいさつをしたのは、ちょっとおとなしい天然の中学生『恵比寿知愛』
飼っている猫は、焦げ茶色のマンチカンで名前は『ココア(メス)』
足は短いですが、小さくてとってもかわいい猫です。
ココアは、軽くあいさつをします。
『よろしくなのニャ』
『『『ハイなのニャ~』』』
うちの猫たちは、かわいいココアに目をハートにして群がります。今まで女日照り……もとい、メス日照りの彼らにとって、そのかわいさは少し刺激が強すぎるようです。なので、ちょっと釘を刺しておきます。
「もし、ココアちゃんに何かあったら……去勢……」
『『『そ……それだけばご勘弁を……!』』』
わたしのその一言で、うちの猫たちは震え上がり、おとなしくなりました。とっても素直な良い子たちです。
腰の曲がった優しそうなおばあさん『和島八重子』も応援にきてくれました。
「ほのちゃん。今日もかわいいねぇ」
「ありがとうございます、八重子さん。今日はよろしくお願いします」
「いえいえ、わたしはいるだけですよ。主役はウメだしねぇ」
『助っ人にきたぜぃ』
おばあさんが連れてきたねこは、タマと同じ真っ白な猫日本猫で、名前は『ウメ』
ちょっと自信過剰気味な性格です。
父は、なんだかそわそわしています。
無理もないことです。
自分の喫茶店が猫カフェになってしまったのですから、無理もありません。
それと……言い忘れていましたが、一応、この5匹以外の猫とも話をすることができます。ただし、飼い主がいる手前、あまり面倒なことを言うのも気が引けます。それに、特別ゲストですからね。
──さあ、開店です。
「いらっしゃいませ!」
お客様たちがご入場です。
開店で並んでくれていた5名ほどのお客様が、ゆっくりと店内に入ります。
「へえ~。こんなところに猫カフェができたんだ」
「ほら、にゃんこいるよ」
「ねえ、猫は触っていいの?」
「ええ、もちろんです」
お店の説明をして、店の奥のキャットスペースへ案内します。
そこでは、猫たちがふわふわの絨毯の上で寝そべっています。
『に……人間がいっぱいニャ』
『訓練を思い出せ! いつものとおりにしていればいいんだ』
タマとトラは少し緊張しています。
『高級猫缶食べたいニャ~』
『わたしはゲットしてみせますよぉ』
ボブとロズは、高級猫缶をゲットする気満々です。
『へい、おれのダンスで魅了してやるぜ!』
レンは、ラジオから流れる曲に合わせて不思議なダンスを踊っています。
「ママ~、この猫、変な踊りしてる~」
「へえ~おもしろいわね~」
レンは、かっこいいダンスだと思っているようですが、お客様から痛い視線を受けているのに気が付いていません。
ゲストのココアとウメは、気負っているわけでもなく、普通にしています。
ココアは、白い半袖に黒いジャージズボン姿の青年に猫じゃらしでくすぐられています。
とても気持ちよさそうです。
ウメは、OLさんの膝の上で、猫なで声を上げながらくつろいでいます。
これが自然な猫の姿でしょう。
「ママ~、この猫「ニャニャニャーン、ニャニャニャーン」って、変な鳴き方する~」
「へえ~おもしろいわね~」
『ネコカーン! ネコカーン!』
ボブは、いじられながら、猫缶を欲していました。お客様には、言葉がわからないとはいえ、ちょっと見苦しいです。
10時を過ぎると、お客さんがさらに集まってきました。
応援を呼んでおいて正解でした。お客様の相手は7匹でギリギリです。
父はちゃっかり3Dプリンタで、猫のストラップを作っていました。
勝手に売りさばいています。こういうところだけは抜け目がない父です。
しばらくして、カウンターにいる私のところへ知愛がきました。
なんだかそわそわしています。
「ほ、ほのかさん……ココア、見ませんでした?」
「さっきまで、遊んでもらってたはずなんだけど……」
カウンターを離れ、キャットスペースにいるタマにそれとなく聞いてみました。
「ねえ、タマ。ココア知らない?」
『そういえば、さっきまでいたのにいないのニャ』
「もし、見かけたら知らせてくれるかな?」
『わかったのニャ』
タマは5匹の中ではしっかりしているので、任せても大丈夫でしょう。
「ママ~、このおばさん猫と話してる~」
「へえ~おもしろいわね~」
親子で来店されているお客様に、会話している所を見られてしまいました。
──ええ、確かに猫と話しました。それに、わたしはまだおばさんじゃありませんし、おもしろくもないです!
……とは、口が裂けても言えません。さりげなく笑ってごまかします。
「ここにいないとすれば……控室にいないかな」
ひとまず、知愛と二人で猫の控室をのぞきにいってみました。
控室には爪とぎ用の洗濯板と、空の餌用トレイがあるだけで、ココアの姿は見当たりません。
「トイレ……かな」
控室の奥の猫用トイレを調べます。
うちの猫用トイレは、贅沢にも専用水洗トイレです。
使い方は口頭で教えることができたので、しつけは楽でした。
「ココアちゃん、いる~?」
声をかけてみました。すると、知愛は「まさか、流された!?」と、びっくりしたように声を上げました。
「いや、それはさすがに……」
センサーで、猫がトイレの中にいるうちは、水が出ない仕組みになっています。それに、流されるほど大きな穴はありません。
知恵は心配そうにトイレの穴をのぞきます。
「流されたら……詰まるよね……」
知愛は、そう言ってしょんぼりします。
その通りです。なので、その可能性は消えました。
「一体どこへ……」
知愛は、目に涙を浮かべながらココアを探しています。
店の中はそんなに広くはありません。
隠れる場所は限られているので、すぐ見つかると思うのですが……このままだと、知愛が泣きだしてしまいそうです。
──早く何とかしないと……。
今日は日曜日、天気も、お店の開店を祝ってくれるかのような晴天です。
時間はもう朝の9時。もうすぐ開店の時間です。飾りつけを終えて、店の中で待機します。
猫サークルの方が二人、猫を連れて応援に来てくれました。
「きょ……きょうはよろしくお願いします」
恥ずかしそうにあいさつをしたのは、ちょっとおとなしい天然の中学生『恵比寿知愛』
飼っている猫は、焦げ茶色のマンチカンで名前は『ココア(メス)』
足は短いですが、小さくてとってもかわいい猫です。
ココアは、軽くあいさつをします。
『よろしくなのニャ』
『『『ハイなのニャ~』』』
うちの猫たちは、かわいいココアに目をハートにして群がります。今まで女日照り……もとい、メス日照りの彼らにとって、そのかわいさは少し刺激が強すぎるようです。なので、ちょっと釘を刺しておきます。
「もし、ココアちゃんに何かあったら……去勢……」
『『『そ……それだけばご勘弁を……!』』』
わたしのその一言で、うちの猫たちは震え上がり、おとなしくなりました。とっても素直な良い子たちです。
腰の曲がった優しそうなおばあさん『和島八重子』も応援にきてくれました。
「ほのちゃん。今日もかわいいねぇ」
「ありがとうございます、八重子さん。今日はよろしくお願いします」
「いえいえ、わたしはいるだけですよ。主役はウメだしねぇ」
『助っ人にきたぜぃ』
おばあさんが連れてきたねこは、タマと同じ真っ白な猫日本猫で、名前は『ウメ』
ちょっと自信過剰気味な性格です。
父は、なんだかそわそわしています。
無理もないことです。
自分の喫茶店が猫カフェになってしまったのですから、無理もありません。
それと……言い忘れていましたが、一応、この5匹以外の猫とも話をすることができます。ただし、飼い主がいる手前、あまり面倒なことを言うのも気が引けます。それに、特別ゲストですからね。
──さあ、開店です。
「いらっしゃいませ!」
お客様たちがご入場です。
開店で並んでくれていた5名ほどのお客様が、ゆっくりと店内に入ります。
「へえ~。こんなところに猫カフェができたんだ」
「ほら、にゃんこいるよ」
「ねえ、猫は触っていいの?」
「ええ、もちろんです」
お店の説明をして、店の奥のキャットスペースへ案内します。
そこでは、猫たちがふわふわの絨毯の上で寝そべっています。
『に……人間がいっぱいニャ』
『訓練を思い出せ! いつものとおりにしていればいいんだ』
タマとトラは少し緊張しています。
『高級猫缶食べたいニャ~』
『わたしはゲットしてみせますよぉ』
ボブとロズは、高級猫缶をゲットする気満々です。
『へい、おれのダンスで魅了してやるぜ!』
レンは、ラジオから流れる曲に合わせて不思議なダンスを踊っています。
「ママ~、この猫、変な踊りしてる~」
「へえ~おもしろいわね~」
レンは、かっこいいダンスだと思っているようですが、お客様から痛い視線を受けているのに気が付いていません。
ゲストのココアとウメは、気負っているわけでもなく、普通にしています。
ココアは、白い半袖に黒いジャージズボン姿の青年に猫じゃらしでくすぐられています。
とても気持ちよさそうです。
ウメは、OLさんの膝の上で、猫なで声を上げながらくつろいでいます。
これが自然な猫の姿でしょう。
「ママ~、この猫「ニャニャニャーン、ニャニャニャーン」って、変な鳴き方する~」
「へえ~おもしろいわね~」
『ネコカーン! ネコカーン!』
ボブは、いじられながら、猫缶を欲していました。お客様には、言葉がわからないとはいえ、ちょっと見苦しいです。
10時を過ぎると、お客さんがさらに集まってきました。
応援を呼んでおいて正解でした。お客様の相手は7匹でギリギリです。
父はちゃっかり3Dプリンタで、猫のストラップを作っていました。
勝手に売りさばいています。こういうところだけは抜け目がない父です。
しばらくして、カウンターにいる私のところへ知愛がきました。
なんだかそわそわしています。
「ほ、ほのかさん……ココア、見ませんでした?」
「さっきまで、遊んでもらってたはずなんだけど……」
カウンターを離れ、キャットスペースにいるタマにそれとなく聞いてみました。
「ねえ、タマ。ココア知らない?」
『そういえば、さっきまでいたのにいないのニャ』
「もし、見かけたら知らせてくれるかな?」
『わかったのニャ』
タマは5匹の中ではしっかりしているので、任せても大丈夫でしょう。
「ママ~、このおばさん猫と話してる~」
「へえ~おもしろいわね~」
親子で来店されているお客様に、会話している所を見られてしまいました。
──ええ、確かに猫と話しました。それに、わたしはまだおばさんじゃありませんし、おもしろくもないです!
……とは、口が裂けても言えません。さりげなく笑ってごまかします。
「ここにいないとすれば……控室にいないかな」
ひとまず、知愛と二人で猫の控室をのぞきにいってみました。
控室には爪とぎ用の洗濯板と、空の餌用トレイがあるだけで、ココアの姿は見当たりません。
「トイレ……かな」
控室の奥の猫用トイレを調べます。
うちの猫用トイレは、贅沢にも専用水洗トイレです。
使い方は口頭で教えることができたので、しつけは楽でした。
「ココアちゃん、いる~?」
声をかけてみました。すると、知愛は「まさか、流された!?」と、びっくりしたように声を上げました。
「いや、それはさすがに……」
センサーで、猫がトイレの中にいるうちは、水が出ない仕組みになっています。それに、流されるほど大きな穴はありません。
知恵は心配そうにトイレの穴をのぞきます。
「流されたら……詰まるよね……」
知愛は、そう言ってしょんぼりします。
その通りです。なので、その可能性は消えました。
「一体どこへ……」
知愛は、目に涙を浮かべながらココアを探しています。
店の中はそんなに広くはありません。
隠れる場所は限られているので、すぐ見つかると思うのですが……このままだと、知愛が泣きだしてしまいそうです。
──早く何とかしないと……。
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