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はじまりはじまり
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わたしは、不思議な能力がある。
わたしに好意をもって近付いてきた男子の好意を吸い取ってしまう能力だ。
しかも、吸い取った力を自分の魅力に変換してしまうというとても厄介なものだ。
気持ちを吸い取られた男子は、どうして私のことを好きだったのかを忘れてしまい、それ以来、関係がなくなってしまう。だから、恋愛まで発展しない。
魅力が上がるだけ上がって男子を誘惑して、その好きな気持ちを奪う。
本当に理不尽な能力……。
そんな能力のせいで、今までは恋愛は男子の方からくるものだと思っていた。
もちろん、その頃は、男子になんて興味はなかったのだけど……。
でも、高二の春、わたしは一人の人を好きになった。
今度はわたしが人に思いを伝える番……。
でも、わたしは思った。
もし、思いを伝えてそれが成功しても、相手がわたしに好意を抱くまでになってしまったら……。
わたしは、その男子の好意を吸い取って、全てを台無しにしてしまうのではないか……。
ずっとそんな事ばかりを考えて、告白もできずに学校生活を過ごし、思いを遂げられぬまま、中学三年の卒業式を迎えた。
私は思った。
これは、私からの告白。
ダメだった場合の言い訳にしようとしてるのではないか。
このまま、なかったことにしてしまえばいいのではないか。
もう、この日を境に会えなくなる。
なら、いっそのこと……思いだけ伝えて……あとはどうなっても構わない。
────だから────
思いを伝えて、逃げようと思った。
勇気を出して、わたしはその人の前で告白する。
「ずっと、好きでした……ただ、好きでした……きっとこれからも……恋を教えてくれて、ありがとう……」
わたしは涙を流しながら、そのまま走り去ろうとした。
けれども、それは叶わなかった。
男子は、わたしの腕をつかみ、逃げようとするわたしを強く引っ張る。
「あ……あの……すごく、言いにくいんだけど……僕には、ある呪いがかけられているんだ……」
「呪い?」
「うん……女の人を、好きになれない呪いなんだ……信じてもらえないだろうけど……それでもいいなら……」
「え……ええええ!」
わたしは、それを聞いてびっくりした。わたしの他にも不思議な能力を持っていた人がいたことを。
しかも、その能力が、私のことを好きにならない能力だったことにも。
「あ、あの……それでもかまいません。わたしは好きなんです! 付き合ってください!」
「うん……それでもいいなら……ありがとう。じゃあ、メアド交換しよう、それと番号も」
わたしは、幸せでいっぱいでした。
もしかすると、運命の女神が不幸な体質のわたしのために、この人と引き合わせてくれたのかもしれません。
こうしてわたしは、始めて男子の人と付き合うことになったのでした。
めでたしめでたし。
わたしに好意をもって近付いてきた男子の好意を吸い取ってしまう能力だ。
しかも、吸い取った力を自分の魅力に変換してしまうというとても厄介なものだ。
気持ちを吸い取られた男子は、どうして私のことを好きだったのかを忘れてしまい、それ以来、関係がなくなってしまう。だから、恋愛まで発展しない。
魅力が上がるだけ上がって男子を誘惑して、その好きな気持ちを奪う。
本当に理不尽な能力……。
そんな能力のせいで、今までは恋愛は男子の方からくるものだと思っていた。
もちろん、その頃は、男子になんて興味はなかったのだけど……。
でも、高二の春、わたしは一人の人を好きになった。
今度はわたしが人に思いを伝える番……。
でも、わたしは思った。
もし、思いを伝えてそれが成功しても、相手がわたしに好意を抱くまでになってしまったら……。
わたしは、その男子の好意を吸い取って、全てを台無しにしてしまうのではないか……。
ずっとそんな事ばかりを考えて、告白もできずに学校生活を過ごし、思いを遂げられぬまま、中学三年の卒業式を迎えた。
私は思った。
これは、私からの告白。
ダメだった場合の言い訳にしようとしてるのではないか。
このまま、なかったことにしてしまえばいいのではないか。
もう、この日を境に会えなくなる。
なら、いっそのこと……思いだけ伝えて……あとはどうなっても構わない。
────だから────
思いを伝えて、逃げようと思った。
勇気を出して、わたしはその人の前で告白する。
「ずっと、好きでした……ただ、好きでした……きっとこれからも……恋を教えてくれて、ありがとう……」
わたしは涙を流しながら、そのまま走り去ろうとした。
けれども、それは叶わなかった。
男子は、わたしの腕をつかみ、逃げようとするわたしを強く引っ張る。
「あ……あの……すごく、言いにくいんだけど……僕には、ある呪いがかけられているんだ……」
「呪い?」
「うん……女の人を、好きになれない呪いなんだ……信じてもらえないだろうけど……それでもいいなら……」
「え……ええええ!」
わたしは、それを聞いてびっくりした。わたしの他にも不思議な能力を持っていた人がいたことを。
しかも、その能力が、私のことを好きにならない能力だったことにも。
「あ、あの……それでもかまいません。わたしは好きなんです! 付き合ってください!」
「うん……それでもいいなら……ありがとう。じゃあ、メアド交換しよう、それと番号も」
わたしは、幸せでいっぱいでした。
もしかすると、運命の女神が不幸な体質のわたしのために、この人と引き合わせてくれたのかもしれません。
こうしてわたしは、始めて男子の人と付き合うことになったのでした。
めでたしめでたし。
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