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第二十六話 守護する者

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 近づく影、それは、門番らしき2匹のホブゴブリンだった。

「もっと早く発見できなかったのか」
『瘴気が強く、レーダーが阻害されています。なので、索敵が不安定です。今のは動体検知による索敵です』
「それを先に言ってくれ!」
 思わず怒鳴ってしまったが、それで状況がよくなるわけではない。

 ホブゴブリンは、こちらに気づくと鬼のような形相で俺たちを睨みつけてきた。
「な、何者だ貴様らァ!」
「人間の臭いだァ!」
 二匹のホブゴブリンは、持っていた斧を振りかざす──が、それを振り下ろすよりも早くファーストの剣が的確に相手の喉元を割いた。ファーストの反応のほうが一枚上手だ。
「遅いっ! これが魔王の手下なら、魔王も大したことはないな」
 と、勝ち誇るファースト。

 思うほど相手は強くないのだろうか──ともあれ、今のファーストの力で通用するなら、突破も難しくはなさそうだ──と、余裕を見せた瞬間、嫌な感じのプレッシャーとともに、屋敷の陰から黒い鎧をきた三匹のゴブリンロードが現れた。
 確かに余裕はあるが、面倒なことには違いない。

「チッチッ……そこのかわいいお嬢ちゃん。あまり舐めないでもらいたいなァ……」
「誰だ!」
 ファーストも、その存在に気付く。

「たかが門番を倒したぐらいでいい気になるな」
「お前たちはこのゴブゴブ三人衆が相手する」

 行く手をふさぐゴブリンロード。片目に赤いオーラを放ちながらかっこいいポーズを決めていた。

「プッ……ゴブゴブって……アヒャヒャヒャヒャ……ダサッ」
 サードが笑い出した。確かに思わず吹き出しそうになる名前だ。

「な……我々を愚弄するか! たかが人間の分際で!」
 と、ゴブリンロードは声を上げる。
「たかが……人間か……そう思うならかかってこい!」
 と、ファースト。
「ここは私に任せてください。相手が3匹なら、こちらも速度を3倍で、3人分動けるはずです……いえ……私の速さならおつりが出ます。課金させてください」
「そこまで言うなら……任せたぞファースト!」
「必ずご期待に応えて見せます!」

 僕は、この場をファーストに任せてサードと共に先へ進んだ。さっきのゴブリンロードは場を任されているモンスターだろう。おそらく、この先にもゴブリンロードのような守護する者たちが待ち受けている筈だ。

 警戒を密にして奥へと進む。

 しばらくして、城郭都市中央の高台にある魔王の居城にたどり着いた。入り口の門は、頑丈そうな壁で覆われている。
 ここまで何もなかったのが不思議だ。だが、その理由はおそらく──この頑丈そうな壁のせいだろう。何か大きな力を加えなければ、動きそうにない。

「この壁じゃまっ!」
「サード?」

 サードは、腕を構えて力を集中する。
「時速200キロのパンチをくらえー!」

 勢いよくドラゴンナックルのパンチを繰り出すサード。だが、壁は埃一つ立たない。思ったより硬い壁のようだ。

「うそっ! 1トンの岩でも砕ける筈なのに……これ、壁じゃないのかな……」

 次の瞬間、壁が動き出す。

「やたっ! 倒れてく! あれ……でも……なんか変……」

 確かに、壁が抜け倒れそうなのだが、何かが違う。そのままずるずると壁が伸び、やがてそれは一か所に固まっていく。
 その塊は次第に人型と化し、ある一つの巨大なモンスターを形作った。

「これ、もしかして……ゴーレム!?」
『ゴーレム。レベル50です』

 サードの殴った壁は、城を守るゴーレムだったのだ。

 ──ウゴオオオオオオオオ!

「最悪だ……」
 こんなのとまともに戦っている暇はない。

「これは私が戦うわ! こんな強そうな相手が出てくるのを待ってたのよ! べ、別にあなたの為に戦うわけじゃないんだからねっ。そう、自分の為よ!」
「レベル50のゴーレムだぞ……!」

 どうやらサードは戦いたくて仕方がないようだ。だが、おかげで門ががら空きだ。サードが戦っている隙に居城へ侵入するのが得策かもしれない。
 レベル差はあるが、致命傷を食らわなければ時間稼ぎ程度にはなる。サードの人格のブレが気になるが──これはこれで好戦的な分、頼もしいので良しとしよう。

「じゃあ、サード。お願いするよ」

「しょうがないわね……マスターも死んじゃだめなんだからねっ!」
「はいはい。死なないように頑張りますよ」
 と、呆れ顔で言葉を返した僕は、すぐさまゴーレムの死角を突いて居城へと潜り込むことに成功した。
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