19 / 28
第十九話 魔属領へ
しおりを挟む
次の日の朝、部屋のテーブルの上の複製スマホが20個に増えているのを確認する。
「これだけあれば……なんとかなるか……」
その後も一時間ごとに作り続けるよう、スマホに指令をだす。新しくできたものは、空間ストレージに収納されるように設定した。
こればっかりは無くて困るものではないし、数はあったほうがいい──相手は魔王なのだから──。
宿を出て、魔王の住む地域へ向かう。
この地域には、セライヌ川という大きな川が、大陸を南北に二分している。北側が人間、その他友好種族の多い地域。南側が魔王軍、その他敵対種族の多い地域だ。
川を挟んでいるおかげで、警戒はしやすいが、さすがに全てを警戒することは無理だろう。前回のように魔王軍が攻めてきたり、ゴブリンが鉱山に巣を作ったりと、川を越えてくる魔物もいる──いったいどこから侵入してくるんだか──とにかく北側地域も安全ではないということだ。
セライヌ川にたどり着く。渡れる場所は一か所。小さな砦から伸びるアレクサン橋。欄干には綺麗な魔法陣の彫刻が施されている。だが、それはただの飾りではなく、橋を魔物から守る結界の役目も兼ねている。低級の魔物がこの橋に近づけば、おそらく一瞬で焼き尽くされることだろう。
最前線の砦の守衛に、軽く挨拶をする。
「ご苦労様です。橋、渡っても大丈夫?」
「冒険者の方ですね。お気をつけて」
守衛の見送りを受け、橋を渡る。渡り終えれば、魔属領だ。ここからは仲間のメイドを召喚して警戒を強化する。
ファーストは、パッドの位置を整え、気を引き締めている様子。
「ライト様、これから魔王討伐ですね」
「た、戦ってあげてもいいんだからねっ」
と、サードが呟く。なぜ設定にはないツンデレキャラをしているのかはわからないが、調子はいつも通りで安心した。
まず一人ずつ、複製スマホを持ってもらう。これは通信用だ。そして、セカンドに工作用スマホを10個ほど携帯してもらった。
「爆破のときは、連絡してくれ。離れている座標のものから爆発させるようにスマホに支持を出す」
「ちょっと待ってください」
「どうした?」
セカンドが、スマホをいじり始める。
「大体わかりました。こちらで起爆可能です」
「できるのか! そんなこと!?」
「管理者権限にアクセスしてパスワード入力を3回失敗すると、爆発する仕組みのようです。それと、初期設定は0000でしたので、変更することをお勧めします」
「ん……そうか……わかった」
セカンドの言う通りにパスワードを設定し直す。もちろん、自分の誕生日だ。
その間に、セカンドは設定の作業をしていた。
「何をしてるんだ?」
「すべてのスマホはあと1度パスを間違えると爆発モードに入るよう設定しました」
「用意周到だな……ははは……」
「当然の準備です」
頭脳タイプを一人入れておいて正解だった。それにしても、ここまで頭がいいとは──本当に大助かりだ。
スマホの赤外線サーモグラフィーを起動し、森林地帯に入る。今回は、動体検知も常時起動する(もちろん非課金)。
スマホの情報によると、この森には植物系モンスターも存在しているようだ。それらは熱を発しない為、赤外線サーモグラフィーで発見することができない。そこで動体検知が必要になってくる。
動体検知──仲間以外の不自然な動きをするものに反応し、場所を知らせてくれる。この際、使えるものは何でも使っておいたほうがいいだろう。
早速動体検知が敵を捕らえた。スマホの警戒ランプが光る。
「おい、スマホ。敵は何だ?」
『敵、識別完了しました。人食いフラワーレベル10です。前方に5体ほど確認しました』
「キャッ!」
僕の前方を歩くファーストが突然足を滑らせたように転んだ。
「どうした、ファースト!」
「なにこれ……ひゃっ!」
「何かいる~!」
続いて、セカンドとファーストも転ぶ。
「な、なにが起こってるんだ!?」
『これより先、人食いフラワーの攻撃範囲内です』
「それを先に言ってくれ!」
よく見ると、人食いフラワーは地面に蔓を伸ばしていた。その蔓は三人を捕まえ、体に侵食し、メイドたちを締め上げていく。そして、ズルズルと本体のほうに引き寄せ始める。おそらく、捕食するつもりだろう。
「は、放せ! そんなところを……締め上げるな」
「ああ、縛られていきます」
「この花、なんかエロいいーっ!」
蔓の浸食は、あまりにもいやらしかった。その展開を見てあっけにとられた僕は、ただ、その場に立ち尽くすだけだった。
「これだけあれば……なんとかなるか……」
その後も一時間ごとに作り続けるよう、スマホに指令をだす。新しくできたものは、空間ストレージに収納されるように設定した。
こればっかりは無くて困るものではないし、数はあったほうがいい──相手は魔王なのだから──。
宿を出て、魔王の住む地域へ向かう。
この地域には、セライヌ川という大きな川が、大陸を南北に二分している。北側が人間、その他友好種族の多い地域。南側が魔王軍、その他敵対種族の多い地域だ。
川を挟んでいるおかげで、警戒はしやすいが、さすがに全てを警戒することは無理だろう。前回のように魔王軍が攻めてきたり、ゴブリンが鉱山に巣を作ったりと、川を越えてくる魔物もいる──いったいどこから侵入してくるんだか──とにかく北側地域も安全ではないということだ。
セライヌ川にたどり着く。渡れる場所は一か所。小さな砦から伸びるアレクサン橋。欄干には綺麗な魔法陣の彫刻が施されている。だが、それはただの飾りではなく、橋を魔物から守る結界の役目も兼ねている。低級の魔物がこの橋に近づけば、おそらく一瞬で焼き尽くされることだろう。
最前線の砦の守衛に、軽く挨拶をする。
「ご苦労様です。橋、渡っても大丈夫?」
「冒険者の方ですね。お気をつけて」
守衛の見送りを受け、橋を渡る。渡り終えれば、魔属領だ。ここからは仲間のメイドを召喚して警戒を強化する。
ファーストは、パッドの位置を整え、気を引き締めている様子。
「ライト様、これから魔王討伐ですね」
「た、戦ってあげてもいいんだからねっ」
と、サードが呟く。なぜ設定にはないツンデレキャラをしているのかはわからないが、調子はいつも通りで安心した。
まず一人ずつ、複製スマホを持ってもらう。これは通信用だ。そして、セカンドに工作用スマホを10個ほど携帯してもらった。
「爆破のときは、連絡してくれ。離れている座標のものから爆発させるようにスマホに支持を出す」
「ちょっと待ってください」
「どうした?」
セカンドが、スマホをいじり始める。
「大体わかりました。こちらで起爆可能です」
「できるのか! そんなこと!?」
「管理者権限にアクセスしてパスワード入力を3回失敗すると、爆発する仕組みのようです。それと、初期設定は0000でしたので、変更することをお勧めします」
「ん……そうか……わかった」
セカンドの言う通りにパスワードを設定し直す。もちろん、自分の誕生日だ。
その間に、セカンドは設定の作業をしていた。
「何をしてるんだ?」
「すべてのスマホはあと1度パスを間違えると爆発モードに入るよう設定しました」
「用意周到だな……ははは……」
「当然の準備です」
頭脳タイプを一人入れておいて正解だった。それにしても、ここまで頭がいいとは──本当に大助かりだ。
スマホの赤外線サーモグラフィーを起動し、森林地帯に入る。今回は、動体検知も常時起動する(もちろん非課金)。
スマホの情報によると、この森には植物系モンスターも存在しているようだ。それらは熱を発しない為、赤外線サーモグラフィーで発見することができない。そこで動体検知が必要になってくる。
動体検知──仲間以外の不自然な動きをするものに反応し、場所を知らせてくれる。この際、使えるものは何でも使っておいたほうがいいだろう。
早速動体検知が敵を捕らえた。スマホの警戒ランプが光る。
「おい、スマホ。敵は何だ?」
『敵、識別完了しました。人食いフラワーレベル10です。前方に5体ほど確認しました』
「キャッ!」
僕の前方を歩くファーストが突然足を滑らせたように転んだ。
「どうした、ファースト!」
「なにこれ……ひゃっ!」
「何かいる~!」
続いて、セカンドとファーストも転ぶ。
「な、なにが起こってるんだ!?」
『これより先、人食いフラワーの攻撃範囲内です』
「それを先に言ってくれ!」
よく見ると、人食いフラワーは地面に蔓を伸ばしていた。その蔓は三人を捕まえ、体に侵食し、メイドたちを締め上げていく。そして、ズルズルと本体のほうに引き寄せ始める。おそらく、捕食するつもりだろう。
「は、放せ! そんなところを……締め上げるな」
「ああ、縛られていきます」
「この花、なんかエロいいーっ!」
蔓の浸食は、あまりにもいやらしかった。その展開を見てあっけにとられた僕は、ただ、その場に立ち尽くすだけだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
種族【半神】な俺は異世界でも普通に暮らしたい
穂高稲穂
ファンタジー
旧題:異世界転移して持っていたスマホがチートアイテムだった
スマホでラノベを読みながら呟いた何気ない一言が西園寺玲真の人生を一変させた。
そこは夢にまで見た世界。
持っているのはスマホだけ。
そして俺は……デミゴッド!?
スマホを中心に俺は異世界を生きていく。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる