チートスマホで異世界攻略

マイきぃ

文字の大きさ
上 下
16 / 28

第十六話 王妃と謁見

しおりを挟む
 馬車は町を出た。日が落ちてしばらく進むと、近くの砦へと入場した。
 門をくぐり終えると、馬車が止まった。

「ほら、出ろ」

 衛兵の声がしたので、馬車を降りる。すると衛兵たちは、僕に鉄球付きの足かせを付け、牢へと放り込む。
 乱暴な扱いだ──って、あたりまえか──僕は今、罪人扱いなのだから──。

 牢は鉄格子に石の壁で作られていた。
 気になったのは天井にはめてあるクリスタルだ。おそらく、魔力を吸収するドレインクリスタルと言われているものだろう。どうやらこの砦は、かなり厳重な場所のようだ。

 衛兵の一人が、こちらに話しかけてくる。
「おい、お前! 名前は何だ!」
「ぼ、僕ですか? 僕は、ライトといいますけど……」
「では、ライト! お前には明日、王妃と謁見してもらう。拒否はできない。くれぐれも失礼のないようにな」
「ええ……王妃……どうして!?」

 ──予想外の展開だ。

「よかったな。もしかしたら、罪を軽減できるかもしれんぞ」
「ほ、本当に!? でも、どうして王妃が僕に謁見を……」
「お前に知る権利はない!」

 ここでお約束のセリフが出た。展開の雲行きが怪しい。王妃の謁見理由の心当たりは──おそらく、僕が勇者だからだろう。
 ──だが、いったい何のために!?

 これは、この強引な話の流れに乗って、事の成り行きを見極めなくてはならなそうだ。

***

 しばらく大人しくしていると、上の方から声が聞こえてきた。
「マスター。スマホをお持ちしました」
「セカンドか! ありがとう、その小窓から投げてくれ」

 セカンドの投げたスマホをキャッチする。
 ようやくスマホを手にすることができた。

「マスター。申し訳ありません。ここへ来るのにスキルを使用したので、銅貨120枚程使わせていただきました」
「ああ、それは構わない。それと……ちょっと用事ができた。しばらくこのまま様子を見る。仲間ストレージ内で待機してくれ」
「はい、マスター」

 セカンドは体を粒子化させ、きらびやかな電子エフェクトとともに、スマホの中へ入りこんだ。

***

 ──次の日──ぼくは、城へ呼ばれ、王妃と謁見した。
 見た目はメデューサのような威圧感のある女王。その目で睨まれただけで石化してしまいそうだ。
 王妃は玉座から立ち上がると、神聖な雰囲気の声で話始めた。

「あなた……この世界の女性たちの胸を、どう思いますか?」

 いきなり胸の話だ。ここは、無難に──

「どうって……小さくて、とてもかわいいです」

 王妃に貧乳だなんて言ったら、即座に死刑になりかねない。
 だが、そんな気遣いを察してか、王妃は柔らかい声で、訪ねてきた。

「いいえ、本当の事を言ってみてください」
「ええ! いいんですか! でも……それ言ったら打ち首とかないですよね……」
「私が保証します」
「そうですか……わかりました」

 大きく息を吸い──

「皆、貧乳です! サー!」

 と、例えば軍人が上官の命令でそれを言わされている──そんな状況をイメージし、僕は勢いで言い切った。

「……改めて聞くと、カチンとくる言葉ですね……」
「え……」

「まあ、いいでしょう」

 気が付くと、僕はその一言にホッと溜息をもらしていた。どうやら、ピンチは脱出したらしい。

 王妃の話は続く。

「かれこれ15年ほど前、世の女性には豊満な胸がありました。ですが大きな雷がなった日を境に胸がしぼみ始めたのです」
「15年前!?」

 その雷はおそらく、僕の生まれた時だ。まさか、僕がそれに関係しているのだろうか。

「その頃から、魔王が活発に動き始めました」
「魔王!?」
「偵察の方から聞いた話だと、魔王はとてつもなく豊満な胸を持っています。それを聞いて私は確信しました。魔王は、私たちの胸の力を吸い取っています」
「胸の力!?」
「そうです。この希望にあふれる胸! 夢あふれる胸! 生命を育む為の胸! この素晴らしい力を奪い、人間を疲弊させようとしているのです!」
「な……!?」

 ──魔王。それが不明な干渉の力の正体だったのか!

「さあ、選びなさい! ここで罪人として一生を終えるか、それとも、魔王と戦い、勝利を手にするか!」

 やっぱり、罪人のままのようだ。これだと、選択肢は一択しかない。それに、この異世界での最終目標でもあることだ。

 僕は、その問いの答えを出す。

「人々の夢と希望の詰まったおっぱいを、こんなふうにしてしまった魔王を、僕は許しません! 必ず倒してみせます!」
「よくぞ言った! それでこそ勇者よ! そなたに、我が希望を託したぞ」

 その託した希望は僕にとっては重すぎる──だが、これで、何が何でも魔王を倒さなければならなくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

処理中です...