15 / 28
第十五話 お買いもの
しおりを挟む
辺りが暗くなり始めた。パッド売りの少女はもう帰ってしまっただろうか。
半ば諦めムードで走る足を緩め、ため息をつく。
「もう帰ってしまったか……」
と、半ば、あきらめムードでうろうろしていると、花壇の反対側にあるベンチで籠を大事に抱えている少女を見つけた。パッド売りの少女だ。
「いた!」
「な……何?」
少女はこちらに気づき、返事をする。
嫌な顔をしている。あまり、こちらにいい印象はないみたいだ。
「あの……パッドありますか」
「君、変態?」
「いや、僕が使うんじゃなくて……こっち」
変態扱いされてはたまらんと、セカンドに話をふる。セカンドはこの為だけに連れてきたようなものだ。
「ご主人様が満足するには、胸が大きくないとダメのようです。なので、バストアップパッドを所望します」
いや、満足する為のものではないのだが──。
「Dカップは売れちゃったから、CかEになるけど……」
「ご主人様は、きっと大きいサイズが好きなので、大きめのものをください」
勝手に大きいサイズ好きにされてしまった。冷静に僕の性格を判断した結果なのだろうか──。
「じゃあ、Eだね。いくつだい?」
少女はセカンドに尋ねる。すると、セカンドは僕に目を向けた。まあ、お金を持っているのは僕なので、一応こっちで答える。
「えと……じゃあ、二個セット……」
「衛生的に数が足りないかと……」
セカンドの目線が痛い。まあ、確かに予備は必要だ。
「十個セットでお願いします」
「じゃあ、金貨1枚いただくよ!」
「結構高いんだな……」
持ってきていた袋から金貨を取り出し、少女に気前よく渡す。
「毎度ありっ! さて、今日は店じまいだ。兄ちゃん、いい夢見ろよ!」
そういって少女は、満足な表情で路地の暗闇へと消えていった。
ともかく、買うものは買った。
「よかったな。これで貧乳とはおさらばだ」
「そうですね……というか、マスター。それならどうしてAカップに設定されたのですか? 最初から大きく設定してくれれば問題なかった筈なのですが」
「いや、A以上の大きさの設定がなかったんだ」
「ふむ……おかしいですね。バグか何かでしょうか……」
「スマホが言うには不明な力の干渉のせいと言ってたけど……まあ、僕は貧乳でも別に構わないし……なるべくなら、大きい方がいいけどね」
──と、よそ見を歩いていたせいで、誰かにぶつかった。
「ああ、ごめんなさい……大丈夫ですか」
「いたたたた……」
ぶつかった相手は、体の大きな主婦だった。
「あ、これ……落としましたよ。貧乳だと大変ですよね……」
さっきぶつかったせいで主婦の胸から落ちたパッドを拾いあげる。
「……! ひ……ひひひひひ……貧乳ですって!」
見上げると、主婦は、落としたほうの胸を押さえながら激怒していた。余計なこと──言ったかな──。
「いやあああ! この人、乳を侮辱したわよー! 誰か来てー!」
「へっ?」
──始めは、ぶん殴られるだけで済むと思った。
気が付くと、わさわさと、僕たちのいる所に人が集まってくる。
「なんだと! どこのどいつだ!」
「衛兵さん! こっちです!」
「お前か! 乳を侮辱したのは?」
気がつくと、僕たちは衛兵に囲まれていた。
「え……貧乳って侮辱……確かにそういう……だめなの?」
「ひ、貧乳だと! お前、よくそんな言葉を考え付いたな! 乳を侮辱するつもり満々だな! お前を野放しにするわけにはいかん。連行する」
「えええええっ!」
──元の世界の言葉は、時として災いを生むようだ。
「乳がこんなにも崇拝されているのか!?」
「黙れ! 王妃が直々に出した乳権保護法を知らないとは言わせないぞ!」
「乳権保護法!?」
────そんなもの──知らない!
セカンドが僕を救出しようと試みていたが、僕はその実行を手振りで中止させた。
「セカンド。頼みがある。宿に置いてあるスマホを持ってきてくれ。マップに僕の位置が表示される筈だ。もし、何かあったら軍資金を使ってくれ。なるべく金貨は消費したくないけど……」
「なるべく努力しますが、もしもの場合、最低限、使わせていただきます」
セカンドは、すぐに反転して宿へ向かった。これでひとまず安心だ。今回、スマホに複製指示を出して放置していたのが裏目に出た。やはり異世界、何が起こるかわからない。出かけるときは、忘れずにスマホを持ち歩かなければならない気分だ。
ともかく、セカンドの頼りになる言葉を聞けてよかった。
その後僕は、衛兵に囲まれ、引っ張られるように連れていかれ、馬車に乗せられた。
これから、どこへ連れていかれるのかもわからない。ただ、不安に胃を痛めるばかりだった。
半ば諦めムードで走る足を緩め、ため息をつく。
「もう帰ってしまったか……」
と、半ば、あきらめムードでうろうろしていると、花壇の反対側にあるベンチで籠を大事に抱えている少女を見つけた。パッド売りの少女だ。
「いた!」
「な……何?」
少女はこちらに気づき、返事をする。
嫌な顔をしている。あまり、こちらにいい印象はないみたいだ。
「あの……パッドありますか」
「君、変態?」
「いや、僕が使うんじゃなくて……こっち」
変態扱いされてはたまらんと、セカンドに話をふる。セカンドはこの為だけに連れてきたようなものだ。
「ご主人様が満足するには、胸が大きくないとダメのようです。なので、バストアップパッドを所望します」
いや、満足する為のものではないのだが──。
「Dカップは売れちゃったから、CかEになるけど……」
「ご主人様は、きっと大きいサイズが好きなので、大きめのものをください」
勝手に大きいサイズ好きにされてしまった。冷静に僕の性格を判断した結果なのだろうか──。
「じゃあ、Eだね。いくつだい?」
少女はセカンドに尋ねる。すると、セカンドは僕に目を向けた。まあ、お金を持っているのは僕なので、一応こっちで答える。
「えと……じゃあ、二個セット……」
「衛生的に数が足りないかと……」
セカンドの目線が痛い。まあ、確かに予備は必要だ。
「十個セットでお願いします」
「じゃあ、金貨1枚いただくよ!」
「結構高いんだな……」
持ってきていた袋から金貨を取り出し、少女に気前よく渡す。
「毎度ありっ! さて、今日は店じまいだ。兄ちゃん、いい夢見ろよ!」
そういって少女は、満足な表情で路地の暗闇へと消えていった。
ともかく、買うものは買った。
「よかったな。これで貧乳とはおさらばだ」
「そうですね……というか、マスター。それならどうしてAカップに設定されたのですか? 最初から大きく設定してくれれば問題なかった筈なのですが」
「いや、A以上の大きさの設定がなかったんだ」
「ふむ……おかしいですね。バグか何かでしょうか……」
「スマホが言うには不明な力の干渉のせいと言ってたけど……まあ、僕は貧乳でも別に構わないし……なるべくなら、大きい方がいいけどね」
──と、よそ見を歩いていたせいで、誰かにぶつかった。
「ああ、ごめんなさい……大丈夫ですか」
「いたたたた……」
ぶつかった相手は、体の大きな主婦だった。
「あ、これ……落としましたよ。貧乳だと大変ですよね……」
さっきぶつかったせいで主婦の胸から落ちたパッドを拾いあげる。
「……! ひ……ひひひひひ……貧乳ですって!」
見上げると、主婦は、落としたほうの胸を押さえながら激怒していた。余計なこと──言ったかな──。
「いやあああ! この人、乳を侮辱したわよー! 誰か来てー!」
「へっ?」
──始めは、ぶん殴られるだけで済むと思った。
気が付くと、わさわさと、僕たちのいる所に人が集まってくる。
「なんだと! どこのどいつだ!」
「衛兵さん! こっちです!」
「お前か! 乳を侮辱したのは?」
気がつくと、僕たちは衛兵に囲まれていた。
「え……貧乳って侮辱……確かにそういう……だめなの?」
「ひ、貧乳だと! お前、よくそんな言葉を考え付いたな! 乳を侮辱するつもり満々だな! お前を野放しにするわけにはいかん。連行する」
「えええええっ!」
──元の世界の言葉は、時として災いを生むようだ。
「乳がこんなにも崇拝されているのか!?」
「黙れ! 王妃が直々に出した乳権保護法を知らないとは言わせないぞ!」
「乳権保護法!?」
────そんなもの──知らない!
セカンドが僕を救出しようと試みていたが、僕はその実行を手振りで中止させた。
「セカンド。頼みがある。宿に置いてあるスマホを持ってきてくれ。マップに僕の位置が表示される筈だ。もし、何かあったら軍資金を使ってくれ。なるべく金貨は消費したくないけど……」
「なるべく努力しますが、もしもの場合、最低限、使わせていただきます」
セカンドは、すぐに反転して宿へ向かった。これでひとまず安心だ。今回、スマホに複製指示を出して放置していたのが裏目に出た。やはり異世界、何が起こるかわからない。出かけるときは、忘れずにスマホを持ち歩かなければならない気分だ。
ともかく、セカンドの頼りになる言葉を聞けてよかった。
その後僕は、衛兵に囲まれ、引っ張られるように連れていかれ、馬車に乗せられた。
これから、どこへ連れていかれるのかもわからない。ただ、不安に胃を痛めるばかりだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる