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「それなら、いい。最後まで抱きたい。もう一度俺につかまれ」
その言葉に頷いて、クレアは全てを委ねるように力を抜いた。
「動いていいか?」
頷くクレアを、ファリドが抱き寄せる。隙間なく肌を合わせ、二人はむさぼるように唇を交わし合った。
ファリドのぬくもりと共に、彼への愛おしさが堰を切ったようにクレアの胸にあふれ出してくる。かつての光あふれる日々の欠片が、キラキラと舞い降りてくるようだ。
ゆるゆると遠慮がちにクレアを貫いていた抽送が、だんだんと激しくなってくる。
「あ……あぁ……っ……」
身に余る大きさの肉杭に突き上げられる息苦しさに、クレアは声を殺して耐えた。
彼の剛直が行き来するたびに、結合部から生ぬるい雫があふれ出す。
激しい息の下、ファリドがクレアの名前を呼ぶ。
「クレア……」
彼は、花を摘むような優しい手つきでクレアの髪を撫で、柔らかな口調で続けた。
「俺は、お前が好きだ。昔から、お前のことしか好きじゃない」
その言葉に、クレアの心に、自然と答えが浮き上がる。
「……わたしも好き」
クレアの答えに満足したように、ファリドが彼女の小さな頭に何度も頬ずりをした。
たくましい身体に組み敷かれ、幾度も繰り返し貫かれながら、クレアは彼の汗ばんだ背を抱きしめた。
クレアの味わっていたはずの苦しさは、いつしか甘い快楽に塗り替えられようとしていた。
抽送が、耐えがたいほどの速さに変わっていく。不慣れな蜜路を満たす圧倒的な熱量に、クレアの身体が小刻みに震えはじめた。
快感を制御できない。このまま、押し流されてわけが分からなくなってしまう。クレアはそう直感した。
「あ、あ……っ、私……変、ごめんなさ……っ……」
言い終えると同時に、びくんとクレアの中が収縮する。
剛直をくわえ込む蜜口が強く締まり、痙攣が、さざ波のように身体中に広がった。
同時に、ファリドが力一杯クレアを抱きしめ、獣欲に焼かれて枯れた声で呟いた。
「済まない、俺ももう、駄目だ」
息も出来ないほどの強さでかき抱かれると同時に、クレアの一番奥に、ファリドの情欲の全てが注ぎ込まれた。
ファリドの汗が、肌を伝ってクレアの身体に落ちてくる。人形のように脱力したクレアを抱いたまま、ファリドが泣いているような声で言った。
「もう放さないからな。ずっと一人にして済まなかった」
重いまぶたを必死に開いたまま、クレアは残された力でファリドに笑いかける。明日の朝、この破れたドレスと、ボロボロの自分を誰かが見つけるのだろう……。
明日から、クレアの運命は新しく始まるのだ。
これからの人生を、ファリドに後悔させてはならない。何もかもを失うかもしれない人を、クレアだけは最後まで信じ、愛し、守り続けねばならないのだ。
その責任の重さと愛おしさに、クレアの目尻から、一筋の涙が伝い落ちた。
かくして『快楽に負けた』ファリド王子は、薄暗い過去を負った『被害者』を妻として伴い、南方領の領主として赴任することになった。
「ろくでもない理由で飛ばされてくるんだな。嫁さんも、ご両親が大きな事故を起こした人だなんて……」
「まあ、そうはいっても、噂だからね。実際にどんな人かはこの目で見てみないと」
彼ら夫妻を不満たらたらで迎えた南方領の人々は、王子とその妻の気品ある言動と、互いに向ける愛情に満ちたまなざしにまず驚かされたという。
赴任したその日から、ファリド王子は一度も言い訳を口にしなかった。
ファリド王子は、どれほどに陰口をたたかれても顔色一つ変えず、妻や領民を気遣い、手つかずの南方領の改革に献身し続けた。
『何とでも言ってくれ。俺たちの汚名くらい、俺たちでそそぐ』
それが彼の口癖だった。
初めはうろんな目でファリド王子を見ていた人々も、彼の働きぶりを見て、口をつぐむようになった。
……そして時が経ち、南方領は、国内最大の商業航路を支える都市として空前の発展を遂げた。
人々が、偉大なる領主とその慎ましい妻の陰口をたたくことなど、まるでなくなったという。
その言葉に頷いて、クレアは全てを委ねるように力を抜いた。
「動いていいか?」
頷くクレアを、ファリドが抱き寄せる。隙間なく肌を合わせ、二人はむさぼるように唇を交わし合った。
ファリドのぬくもりと共に、彼への愛おしさが堰を切ったようにクレアの胸にあふれ出してくる。かつての光あふれる日々の欠片が、キラキラと舞い降りてくるようだ。
ゆるゆると遠慮がちにクレアを貫いていた抽送が、だんだんと激しくなってくる。
「あ……あぁ……っ……」
身に余る大きさの肉杭に突き上げられる息苦しさに、クレアは声を殺して耐えた。
彼の剛直が行き来するたびに、結合部から生ぬるい雫があふれ出す。
激しい息の下、ファリドがクレアの名前を呼ぶ。
「クレア……」
彼は、花を摘むような優しい手つきでクレアの髪を撫で、柔らかな口調で続けた。
「俺は、お前が好きだ。昔から、お前のことしか好きじゃない」
その言葉に、クレアの心に、自然と答えが浮き上がる。
「……わたしも好き」
クレアの答えに満足したように、ファリドが彼女の小さな頭に何度も頬ずりをした。
たくましい身体に組み敷かれ、幾度も繰り返し貫かれながら、クレアは彼の汗ばんだ背を抱きしめた。
クレアの味わっていたはずの苦しさは、いつしか甘い快楽に塗り替えられようとしていた。
抽送が、耐えがたいほどの速さに変わっていく。不慣れな蜜路を満たす圧倒的な熱量に、クレアの身体が小刻みに震えはじめた。
快感を制御できない。このまま、押し流されてわけが分からなくなってしまう。クレアはそう直感した。
「あ、あ……っ、私……変、ごめんなさ……っ……」
言い終えると同時に、びくんとクレアの中が収縮する。
剛直をくわえ込む蜜口が強く締まり、痙攣が、さざ波のように身体中に広がった。
同時に、ファリドが力一杯クレアを抱きしめ、獣欲に焼かれて枯れた声で呟いた。
「済まない、俺ももう、駄目だ」
息も出来ないほどの強さでかき抱かれると同時に、クレアの一番奥に、ファリドの情欲の全てが注ぎ込まれた。
ファリドの汗が、肌を伝ってクレアの身体に落ちてくる。人形のように脱力したクレアを抱いたまま、ファリドが泣いているような声で言った。
「もう放さないからな。ずっと一人にして済まなかった」
重いまぶたを必死に開いたまま、クレアは残された力でファリドに笑いかける。明日の朝、この破れたドレスと、ボロボロの自分を誰かが見つけるのだろう……。
明日から、クレアの運命は新しく始まるのだ。
これからの人生を、ファリドに後悔させてはならない。何もかもを失うかもしれない人を、クレアだけは最後まで信じ、愛し、守り続けねばならないのだ。
その責任の重さと愛おしさに、クレアの目尻から、一筋の涙が伝い落ちた。
かくして『快楽に負けた』ファリド王子は、薄暗い過去を負った『被害者』を妻として伴い、南方領の領主として赴任することになった。
「ろくでもない理由で飛ばされてくるんだな。嫁さんも、ご両親が大きな事故を起こした人だなんて……」
「まあ、そうはいっても、噂だからね。実際にどんな人かはこの目で見てみないと」
彼ら夫妻を不満たらたらで迎えた南方領の人々は、王子とその妻の気品ある言動と、互いに向ける愛情に満ちたまなざしにまず驚かされたという。
赴任したその日から、ファリド王子は一度も言い訳を口にしなかった。
ファリド王子は、どれほどに陰口をたたかれても顔色一つ変えず、妻や領民を気遣い、手つかずの南方領の改革に献身し続けた。
『何とでも言ってくれ。俺たちの汚名くらい、俺たちでそそぐ』
それが彼の口癖だった。
初めはうろんな目でファリド王子を見ていた人々も、彼の働きぶりを見て、口をつぐむようになった。
……そして時が経ち、南方領は、国内最大の商業航路を支える都市として空前の発展を遂げた。
人々が、偉大なる領主とその慎ましい妻の陰口をたたくことなど、まるでなくなったという。
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