貴方の全てを愛してる

栢野すばる

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 戒められていた両手首が解放される。ゲオルグの華奢で柔らかな身体は、リージェンスのたくましい腕に抱きすくめられた。

「愛してる、愛してるよ、班長……貴方が死んだら俺も死ぬからね……これからはずっとずっと、俺と一緒だよ、一緒、ずっと、離さない」

 同時に、深々とゲオルグを穿っていた肉茎が、一番奥で熱を勢い良く吐き出した。

「ひぃっ……や、あ……ああっ……」

 ビクビクと身体を痙攣させながら、ゲオルグは大量の精を吐き出して震えるリージェンスの器官を受け止める。

 ――いやだ、気持ちいいはずがない、気持ちいいなんて、おかしい……っ!

 目尻から一筋涙が伝う。

「っ……は……最高……」

 残酷な美しい男が、ぐったりとゲオルグの身体にのしかかりながら呟く。

 同じくらいの体格だったはずのリージェンスの身体が、今は持て余すほどに重く感じて、たまらなく苦しい。

 まるで岩に挟まれたみたいだった。

 ゲオルグは必死でリージェンスの身体から抜け出そうともがく。

「重い、のっかるな。どけ」

 あまりの息苦しさに耐えきれず、可憐な少女の声で、ゲオルグは命じた。

「……ごめんなさい」

 ずるりと音を立てて、果てたばかりのリージェンスが身体から抜け落ちる。

「んっ、ああっ……」

 その刺激にすらぴくりと反応してしまったなんて……認めたくない。

 力尽きたように横たわるリージェンスを押しのけて、ゲオルグは寝台に起き上がった。

 ゆさ、と大きな乳房が揺れる。たっぷりと形よく盛り上がる自分の胸を見つめて、ゲオルグは皮肉に笑った。

 ――へえ、最高のおっぱいじゃねえか。って、これ、俺のか……マジかよ……

 鍛え上げた強く軽やかなゲオルグの肉体は、もうどこにもない。

 そして、そのことに違和感も感じないことが恐ろしいはずなのに……全く何も感じない。

「……禁呪ってクソだな」

 ゲオルグは罵りの言葉とともに、自分の体を抱きしめた。

 盛り上がる乳房も、ふわふわの身体も、生まれたときから馴染んだ自分の身体だと思えた。

 ついさっきまで、自分は、男だったはずなのに。

「っ、はは、あはは、なあ、すげえな、リージェンス、おい、見ろよこの胸」

 ゲオルグは笑った。だが、すぐに、何が可笑しかったのだろうと笑い収める。

 驚きも恐怖も何も感じない。まるで恋人と性交したばかりの娘のような気分で、ゲオルグはボリボリと頭を掻いた。

 長い柔らかな黒髪が肩から滑り落ち、ゲオルグの乳房をくすぐる。

 ――俺は……人間の、雌になった。

 頭の中身を入れ替えられたかのように、ゲオルグはそのことを鮮やかに理解した。リージェンスの禁呪は、完成したのだ。
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2020/2/20まで、毎日7:00と19:00にアップします。全話予約投稿済みです。よろしくお願いいたします。

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