貴方の全てを愛してる

栢野すばる

文字の大きさ
上 下
6 / 18

6

しおりを挟む
 戒められていた両手首が解放される。ゲオルグの華奢で柔らかな身体は、リージェンスのたくましい腕に抱きすくめられた。

「愛してる、愛してるよ、班長……貴方が死んだら俺も死ぬからね……これからはずっとずっと、俺と一緒だよ、一緒、ずっと、離さない」

 同時に、深々とゲオルグを穿っていた肉茎が、一番奥で熱を勢い良く吐き出した。

「ひぃっ……や、あ……ああっ……」

 ビクビクと身体を痙攣させながら、ゲオルグは大量の精を吐き出して震えるリージェンスの器官を受け止める。

 ――いやだ、気持ちいいはずがない、気持ちいいなんて、おかしい……っ!

 目尻から一筋涙が伝う。

「っ……は……最高……」

 残酷な美しい男が、ぐったりとゲオルグの身体にのしかかりながら呟く。

 同じくらいの体格だったはずのリージェンスの身体が、今は持て余すほどに重く感じて、たまらなく苦しい。

 まるで岩に挟まれたみたいだった。

 ゲオルグは必死でリージェンスの身体から抜け出そうともがく。

「重い、のっかるな。どけ」

 あまりの息苦しさに耐えきれず、可憐な少女の声で、ゲオルグは命じた。

「……ごめんなさい」

 ずるりと音を立てて、果てたばかりのリージェンスが身体から抜け落ちる。

「んっ、ああっ……」

 その刺激にすらぴくりと反応してしまったなんて……認めたくない。

 力尽きたように横たわるリージェンスを押しのけて、ゲオルグは寝台に起き上がった。

 ゆさ、と大きな乳房が揺れる。たっぷりと形よく盛り上がる自分の胸を見つめて、ゲオルグは皮肉に笑った。

 ――へえ、最高のおっぱいじゃねえか。って、これ、俺のか……マジかよ……

 鍛え上げた強く軽やかなゲオルグの肉体は、もうどこにもない。

 そして、そのことに違和感も感じないことが恐ろしいはずなのに……全く何も感じない。

「……禁呪ってクソだな」

 ゲオルグは罵りの言葉とともに、自分の体を抱きしめた。

 盛り上がる乳房も、ふわふわの身体も、生まれたときから馴染んだ自分の身体だと思えた。

 ついさっきまで、自分は、男だったはずなのに。

「っ、はは、あはは、なあ、すげえな、リージェンス、おい、見ろよこの胸」

 ゲオルグは笑った。だが、すぐに、何が可笑しかったのだろうと笑い収める。

 驚きも恐怖も何も感じない。まるで恋人と性交したばかりの娘のような気分で、ゲオルグはボリボリと頭を掻いた。

 長い柔らかな黒髪が肩から滑り落ち、ゲオルグの乳房をくすぐる。

 ――俺は……人間の、雌になった。

 頭の中身を入れ替えられたかのように、ゲオルグはそのことを鮮やかに理解した。リージェンスの禁呪は、完成したのだ。
しおりを挟む
2020/2/20まで、毎日7:00と19:00にアップします。全話予約投稿済みです。よろしくお願いいたします。

あなたにおすすめの小説

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

筋書きどおりに婚約破棄したのですが、想定外の事態に巻き込まれています。

一花カナウ
恋愛
第二王子のヨハネスと婚約が決まったとき、私はこの世界が前世で愛読していた物語の世界であることに気づく。 そして、この婚約がのちに解消されることも思い出していた。 ヨハネスは優しくていい人であるが、私にはもったいない人物。 慕ってはいても恋には至らなかった。 やがて、婚約破棄のシーンが訪れる。 私はヨハネスと別れを告げて、新たな人生を歩みだす ――はずだったのに、ちょっと待って、ここはどこですかっ⁉︎ しかも、ベッドに鎖で繋がれているんですけどっ⁉︎ 困惑する私の前に現れたのは、意外な人物で…… えっと、あなたは助けにきたわけじゃなくて、犯人ってことですよね? ※ムーンライトノベルズで公開中の同名の作品に加筆修正(微調整?)したものをこちらで掲載しています。 ※pixivにも掲載。 8/29 15時台HOTランキング 5位、恋愛カテゴリー3位ありがとうございます( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)

処理中です...