貴方の全てを愛してる

栢野すばる

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 今までなかったはずの柔らかな裂け目に、リージェンスの熱く昂ぶった肉の杭が押し込まれる。ゲオルグの目から、ぼろぼろと涙が溢れ出した。

 ――女って……ヤられるとき、こんなに痛えんだな……

 一生知るはずもなかった感覚に、ゲオルグは血が出るほど唇を噛む。

 声を出したくない。リージェンスを喜ばせたくない。なのに……

「あ……あ……あぁ……っ……」

 ゲオルグは我慢しきれず、かすかな声を漏らしてしまう。

 これは、性交の時の女性の生理的な反応に違いない。そうでなければおかしい。ただ無理やり身体を割られるだけの行為に、男の自分が反応するはずない。

 焼けるような痛みと同時に感じる、この気が狂いそうな疼きは何なのだ。決して認めたくないけれど、熱いうねりが腹の奥からじわじわと沸き起こる。

 少しずつリージェンスの身体を受けいれながら、ゲオルグは半ば放心しつつ考えた。

 今までは自分がこうやって、女を泣かせる側だった。いい女を抱くのが、魔蟲を命がけで狩ったあとの最高の悦楽だったのに……

「……やあ……っ!」

 不意に挿入の速度がまし、じゅぷりと音を立ててゲオルグの処女肉がさらに荒々しくこじ開けられた。

 大きく開いた足が受け止めた衝撃に震える。

 いつの間にかリージェンスの身体が。付け根近くまでねじ込まれていた。

 何をしてもこの男から逃げられない。彼が果てて満ち足りるまで、自分はひたすら犯されるだけなのだ。

 魔蟲に食われているかのような錯覚を覚え、ゲオルグはうわ言のように繰り返した。

「あ、嘘……だ……嫌だ……」

 繋がった部分をヒクヒクと蠕動させながら、ゲオルグは激しくその忌まわしい行為を拒絶する。

「そんな……奥まで……無理……っ……もう抜けよぉ……ッ!」

「無理じゃないですよ……まだ、もっと奥まで……」

 ゲオルグにのしかかったリージェンスが、秀麗なひたいに汗をにじませて容赦なく身体を進める。

 肉体をこじ開けられる痛みと違和感と、それから味わったことのない熱さに、ゲオルグは全身に力を込めて首を振った。

「嫌だ……もう、挿れない……で……」

 その瞬間、ずずっと音を立て、より深くリージェンスの肉杭が身体に突き立てられた。

 硬い体毛がゲオルグの足の間に触れる。

 痛いのか、熱いのか、もうわけがわからない。リージェンスと対等の力を持っていたはずのゲオルグは完全に押さえつけられ、貫かれ、さらには……

「やだぁぁっ!」

 女のような悲鳴が、ゲオルグの口から溢れ出す。

「嫌だよね、だって俺に犯されてるんだから……あんなにカッコよくて強かった班長が……俺みたいな……人間のクズに」

 無理やり開かれた蜜道を、ゆるゆると熱い塊が前後する。

 その度に、腹を内側からくすぐられるような異様な感覚が走って、粘膜を割かれた痛みを凌駕してゆく。

「班長のなか、すごく温かくて柔らかい。天国って、ここにあったんだ」

 リージェンスの心を置き忘れたような笑顔が、ゲオルグの絶望を同しようもないところまで深めた。

 ――だめだ、こいつには、何を言っても通じねえ……

「やだ、はなせ……やだ……あぁ……」

 ぐちゅぐちゅと粘膜質の音がする。痺れるような熱が体の芯から湧き上がる。

 何故こんな行為に反応するのだろう。自分は女ではないのに。いや……本当に女ではないのだろうか? 自分はこうやって、快楽と引き換えに思うがままに雄を使役する、生まれながらの雌なのではないか。

 ゲオルグは、爪を立てて手のひらを握り込む。

 唯一信頼できるはずの己の思考すらも歪み始めたような気がする。

 これが術者の人生すべてを贄として要求するという、恐るべき『禁呪』の力だというのか。

 ――俺は、気持ちよく、なんか、ない……ッ!

 しかし何度そう言い聞かせても、身体はほてり、甘い疼きが隠しようもなく身体を侵食してゆく。ふたりの結合部からぬるい蜜のようなものが幾筋も垂れ落ちた。

 嫌なのに、気持ち悪いのに、ゲオルグの身体が獰猛なくらいに、リージェンスの雄を締め上げる。

「ねえ、班長、魔法使ったから……疲れた。もう我慢できない。魔法完成させますね」

 リージェンスが甘えるような声で囁きかけた。

「……っ……あ……」

 ゆるゆると剛直に突き上げられながら、ゲオルグは首を振った。

「い、いやだ、身体が崩れて死んでもいい。俺は、女には……」

「大丈夫、骨の髄まで女の子になれるから。貴方はもう……俺だけの女の子だよ……」
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