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ゲオルグの身体が、リージェンスの異様な力を込めた腕にとらわれる。
「やめろ、何しやがる! バカ!」
「俺が、班長を……健康な女の子にしてあげる」
「はぁッ? てめえいいかげんにしろよ、ぶん殴るぞ!」
「離しませんよ。だって俺、もう、魔法使っちゃってるから」
耳元でリージェンスの声が甘くかすれた。
悪夢のように響くその美しい声に、ゲオルグの身体が震えだす。
嫌だ。病で死ぬのも嫌だが、この男に分けの分からない真似をされるのも嫌だ。ゲオルグは渾身の力で、リージェンスの分厚い身体をはねのけようと抗った。
だが、どんなに頑張ってもリージェンスの鋼のような腕は離れない。
病はこれほどまでに己の力を奪っていたのかと、ゲオルグは愕然となる。
だが、そうではないことに気づいた。
己の腕が、異様に細いことに……。
ゲオルグは、十四の歳から、己の腕だけで食って、殺して、生きてきた。
その唯一の武器であるはずのたくましい腕が……いや、体全体が、まるで別のもののように細く柔らかく変化しているのだ。
さっきまで着ていた服が、ぶかぶかになって身体に絡みついている。
「な、なん……」
リージェンスを押しのけている手は、見慣れた自分のごつい手のはず。だがその手は、白く小さく、桜色の爪を生やしている。
「何だこれはッ!」
女のような声が、ゲオルグの喉から漏れる。
「……暴れないで……もうすぐ『変換』が終わりますから。あはは……班長、すごくきれいな女の子になってきていますよ」
ゲオルグの身体を寝台に押し付けたまま、リージェンスがつぶやいた。
こんなに幸せそうで、甘くて、優しいリージェンスの声を、あろうことか抱き合って寝台の上で聞くことになろうとは。
あまりのおぞましさに、ゲオルグは声も枯れんばかりに絶叫した。
「ふざけんな! クソ! 俺に男色の気はねえんだよッ!」
「何いってるんですか、班長はもうすぐ女の子になれるのに」
リージェンスが身体を起こし、うっとりした笑顔でゲオルグを覗き込む。彼の忘れな草色の目に映っているのは……黒い長い髪をした、大きな目の少女だ。
「可愛い……女の子になった女の子ってこんなに可愛いんだ。俺の嫌いな化粧臭くて薄汚い獣なんかとぜんぜん違う。可愛いよ、可愛い……真っ白な野辺の花みたいだ」
リージェンスの大きな手が、ブカブカのゲオルグの服をあっさり剥ぎ取った。
引き締まった胸板のあるはずの場所が、ぷるんと揺れる。
「な……な……」
「ごめんなさい、班長。俺と寝てください。俺の精を注がないと、班長の身体は女性化に失敗して、一日で崩れてしまうんです」
リージェンスの言葉の意味がわからず、ゲオルグは首を振る。
――嘘、嘘だ、俺、いつ女になったんだ? 身体が崩れる……精を……注ぐ……?
「でも、俺と寝れば、班長は身も心も本物の女の子になれる。だから、心配しないで」
ゲオルグは首を振り、リージェンスの頭を押しのけようとした。
金の髪に細い指が絡むさまが、まるで見知らぬ男女の情事のようにゲオルグの目に映る。
「やめ……」
細くなった手首をあっさり抑え込まれ、膝で閉じようとした両足を割られて、ゲオルグは小さく首を振る。
これまで、どんな魔蟲を前にしてもこんな恐怖を感じたことはなかった。
「離せ……馬鹿野郎……っ」
ゲオルグの声が震える。
しかし、リージェンスは、止まらなかった。
「やめろ、何しやがる! バカ!」
「俺が、班長を……健康な女の子にしてあげる」
「はぁッ? てめえいいかげんにしろよ、ぶん殴るぞ!」
「離しませんよ。だって俺、もう、魔法使っちゃってるから」
耳元でリージェンスの声が甘くかすれた。
悪夢のように響くその美しい声に、ゲオルグの身体が震えだす。
嫌だ。病で死ぬのも嫌だが、この男に分けの分からない真似をされるのも嫌だ。ゲオルグは渾身の力で、リージェンスの分厚い身体をはねのけようと抗った。
だが、どんなに頑張ってもリージェンスの鋼のような腕は離れない。
病はこれほどまでに己の力を奪っていたのかと、ゲオルグは愕然となる。
だが、そうではないことに気づいた。
己の腕が、異様に細いことに……。
ゲオルグは、十四の歳から、己の腕だけで食って、殺して、生きてきた。
その唯一の武器であるはずのたくましい腕が……いや、体全体が、まるで別のもののように細く柔らかく変化しているのだ。
さっきまで着ていた服が、ぶかぶかになって身体に絡みついている。
「な、なん……」
リージェンスを押しのけている手は、見慣れた自分のごつい手のはず。だがその手は、白く小さく、桜色の爪を生やしている。
「何だこれはッ!」
女のような声が、ゲオルグの喉から漏れる。
「……暴れないで……もうすぐ『変換』が終わりますから。あはは……班長、すごくきれいな女の子になってきていますよ」
ゲオルグの身体を寝台に押し付けたまま、リージェンスがつぶやいた。
こんなに幸せそうで、甘くて、優しいリージェンスの声を、あろうことか抱き合って寝台の上で聞くことになろうとは。
あまりのおぞましさに、ゲオルグは声も枯れんばかりに絶叫した。
「ふざけんな! クソ! 俺に男色の気はねえんだよッ!」
「何いってるんですか、班長はもうすぐ女の子になれるのに」
リージェンスが身体を起こし、うっとりした笑顔でゲオルグを覗き込む。彼の忘れな草色の目に映っているのは……黒い長い髪をした、大きな目の少女だ。
「可愛い……女の子になった女の子ってこんなに可愛いんだ。俺の嫌いな化粧臭くて薄汚い獣なんかとぜんぜん違う。可愛いよ、可愛い……真っ白な野辺の花みたいだ」
リージェンスの大きな手が、ブカブカのゲオルグの服をあっさり剥ぎ取った。
引き締まった胸板のあるはずの場所が、ぷるんと揺れる。
「な……な……」
「ごめんなさい、班長。俺と寝てください。俺の精を注がないと、班長の身体は女性化に失敗して、一日で崩れてしまうんです」
リージェンスの言葉の意味がわからず、ゲオルグは首を振る。
――嘘、嘘だ、俺、いつ女になったんだ? 身体が崩れる……精を……注ぐ……?
「でも、俺と寝れば、班長は身も心も本物の女の子になれる。だから、心配しないで」
ゲオルグは首を振り、リージェンスの頭を押しのけようとした。
金の髪に細い指が絡むさまが、まるで見知らぬ男女の情事のようにゲオルグの目に映る。
「やめ……」
細くなった手首をあっさり抑え込まれ、膝で閉じようとした両足を割られて、ゲオルグは小さく首を振る。
これまで、どんな魔蟲を前にしてもこんな恐怖を感じたことはなかった。
「離せ……馬鹿野郎……っ」
ゲオルグの声が震える。
しかし、リージェンスは、止まらなかった。
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