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しおりを挟むレイノルドが大きく目を見張る。どうやら、正解だったらしい。
「あ、あの、あの……陛下……」
「砂嵐が見えて、意味不明の言葉や、わしやお前に似た人間が出てくる」
レイノルドの白い喉がごくりと鳴った。
顔色は蒼白だ。目の色は……まだ、不気味な渦巻きのままだ。
どうしようかな、と考えつつ、オディールはレイノルドに尋ねた。
「お前は、自分の目の色が変わることを知っているか?」
「あ……!」
レイノルドが慌てたように顔を隠した。自覚はあるらしい。オディールはあえて余裕の笑みを浮かべ、膝立ちになってその手を外させた。
「わしには何も隠さずとも良い。大丈夫だ。わしは、お前が情けない童貞で、わしの中に入れた瞬間、泣きながら発射したことまで知っておるのだぞ。今更目の色など、どうでも良いわ」
冗談めかして言うと、レイノルドの蒼白だった顔がたちまち赤くなる。
「へ、へ、陛下、あのあの」
「確かに不気味だが、お前の魔力は強い。何らかの影響が出ているだけだろう。後ほど調べさせよう、だからそのように怯えずとも良い」
レイノルドの形の良い目に、涙がたまる。
――全く、また泣きおって。
オディールは淡い笑みを浮かべ、レイノルドの頭を抱きよせた。
「お前の家の人間が調べても、その記憶の意味は分からなかったのだな」
「……はい、何も……」
腕の中で、レイノルドが頷く。
魔導の名門が総力を挙げて調べ続けているのに、何の手がかりもない。つまりは、情報が一つもない、ということだ。
――禁呪を使い、わしを女にした以外の実害は、今のところないな。むしろこのままレイノルドが悩んで潰れる方が困る。
何故困るのだろう、と考え、オディールはため息をついた。
あり得ない話だが、オディールはこの『馬鹿で間抜けな魔導師』をちょっと気に入っているのだ。
だから、何とかしてやろうとしている。
――さすがはわし。温情溢れる王だな。
心の中で自分を茶化しながら、オディールは優しい声で言った。
「じゃあ、もう考えるのは止めだ。それはお前の頭痛の発作のようなものだと思え、命令だ」
オディールの言葉に、レイノルドがびくりと身体を揺らした。
――あの悪夢、不気味すぎる。何も知らないわしの頭が作り出した幻とは思えぬ。こぴー、いんすとーる、おりじなる、それから、りんくに、ますたーぴーす、りみっと……という単語もあったな。間違いなく何か意味がある言葉なのだろう。だが、レイノルドは繊細だ。深く考えさせたら、多分頭が壊れる……。
オディールはレイノルドを抱く腕を緩め、絹の薄衣の裾をそっとめくった。
「……そんな辛気くさい夢の話より、ここに香油を塗ってくれぬか? 脚をもっと綺麗に仕上げたいからな」
不意に現われた真っ白な肌に、レイノルドの秀麗な頬が真っ赤に染まった。
「あ……し……に……」
どうやら脚のことしか考えられなくなったようだ。
童貞を卒業したばかりの子犬ちゃんには、オディール姫の女体は刺激満点らしい。
「ほれ」
香油の瓶を手渡すと、レイノルドは震える手でそれを受け取ってくれた。真っ赤な耳を甘噛みすると、それなりに引き締まった身体がびくんと揺れる。
――可愛いヤツ。
オディールは笑い、脚の付け根ギリギリまで、絹の衣をたくし上げた。
「塗って、そのあと抱いてくれ。楽しもう、さあ」
細い指で髪を撫でると、レイノルドは素直に頷いた。
「ああああぁ……っ」
若い夫に組み敷かれながら、オディールは艶めかしい嬌声を上げる。
最近は「うおお」のような、オッサンめいた声は一切出なくなった。
――ふ、身も心も女になったんだな。
懸命に快楽をやり過ごそうと、オディールは違うことを頭に思い浮かべる。
「ああ、オディール様……オディール様……っ……」
華奢な脚を両肩に担ぎ上げ、レイノルドが秘裂に怒張を突き入れた。
杭が行き来するたびに、桃色の裂け目から濁った雫があふれ出す。
「……っ、は……大きい……じゃないか……いいぞ、レイノルド……」
褒め言葉を賜ると、レイノルドがなんとも色気のある笑みを浮かべる。
オディールは、男をくわえ込んだまま、柔らかな金の髪を撫でた。
「では、このようにしてはいかがですか」
刹那、強烈な快感に、ぞわりと肌が粟立った。
「んぅっ」
下生えで、尖った淫芽を強く擦られ、オディールは乳房を揺らしてのけぞる。
快感のあまり、目に涙がにじむ。
――なかなかイかなくなったな。レイノルドめ、存外に絶倫なのでは? 童貞の成長は早いな……。
余裕ぶっては居るものの、イきそうなのはオディールの方だった。
硬く立ち上がった乳嘴が、たくましい胸に擦られて、身体中を疼かせる。
「あ、ッ、あぁ……硬い、いい、そこ、っ……あぁんっ……」
繰り返し突き上げられ、寝台がぎしぎしという音を立てる。激しい抽送に、持ち上げられた脚が頼りなく揺れた。
――マズい、これでは、こちらが先にイってしま……そんな馬鹿な……駄目だ! 誇りにかけて、こちらがイカせねば……。
オディールは甘い息を弾ませ、懸命に呑み込んだ怒張を締め上げる。
しかしそのせいで、膣内がどくどくと脈打ち始め、快感が耐えがたい炎に変わる。
「や、っ、だめだ、手加減を、っ……あぁんっ」
ますます呼吸が激しくなる。一方のレイノルドは、乱れて身をくねらせるオディールを見つめたまま、ひたすら『奉仕』を続けるだけだ。
「手加減など不要と申されたのは、陛下では?」
「だって……っ……っ、あ、ばかぁ……っ、ぐりぐりって……だめ……」
涙に濡れた顔に、長い髪が貼り付く。オディールは無我夢中で、貪るように身体を揺らす。
奥の佳い場所を押し上げられた快感に、オディールは思わずレイノルドの首筋に縋り付いた。
中がうねり、ますますレイノルドの雄に絡みついた。
「お好きだと伺いましたが?」
「ば、ばか、気を利かせて、んふっ……硬くて……だめ……あぁぁぁぁっ」
気を利かせたのか、レイノルドの抽送が早まった。
「ひぅ、っ、お前、それ、ちが……あぁんっ、だめ、だめぇ……ッ」
激しい責めに雌の襞が波打ち、どろりと大量の蜜があふれ出す。
屈曲させられた脚の間に、じゅぷじゅぷと音を立てて行き来する逞しい肉槍が、絶え間ない愉悦を生じさせる。
「あ、っ、あっあ……あぁぁぁっ」
組み敷かれたオディールの背が絶頂にのけぞる。淫らにレイノルドの肉杭を貪りながら、オディールの意識が真っ白にはじけ飛ぶ。
「ああ、陛下が達せられたのでしたら、私も、もう……っ」
鋼のように硬くなったレイノルドの怒張が、わななくオディールの蜜窟を満たした。
腹の中に熱い飛沫がどくどくとほとばしる。
――上手くなったではないか! こわっぱめが!
そう思ったが、口からは全然違う可愛らしい声が出てしまった。
「ん、あ……っ……熱い……」
震えるオディールの身体を抱きしめ、頬ずりをしながらレイノルドは言った。
「……ええ、忘れます、陛下のご命令通り、忘れますとも。あの悪夢は、ただの悪夢……」
息を荒げたまま、レイノルドが言う。
オディールは無言で頷き、汗に濡れたレイノルドの背中を撫でた。
汗の匂いも鼓動も、何もかもが愛おしい。
――ん? 愛おしい……だと?
繋がり合い、抱き合ったまま、オディールはカッと目を見開く。
抱いた女はだいたい好きになるオディロン王だったが、どうやらその性質までは変わっていなかったらしい。
素直に抱かれ、言うことを聞くレイノルドが愛おしいのだ。
たとえ、彼が怪しげな力を先祖から受けついでいて、何やら危険な爆弾を抱えていそうであっても。
――ふん。わしの愛は無限、ゆえにこの阿呆を愛することも、己に許す。
照れ隠しにそう思い、オディールは汗ばんだレイノルドの頬にキスをした。
同時に、なんとなく気になっていたことをレイノルドに尋ねた。
「わし、孕まんよな?」
身体を起こしたレイノルドがきょとんとして、すぐにいつもの柔らかな笑顔になる。
「いいえ」
「は?」
耳を疑って、オディールは聞き返した。
「陛下のお体は完全に女の子ですし、もう女性としての機能も定着したと思うので……妊娠します」
オディールの目が点になる。
「わしは、男の時は子種がなかったぞ」
「そのような不具合も完全に治って、健康そのものの女の子になる魔法なので」
オディールは呆然としたまま、レイノルドの美しい顔を見上げる。
「……ははは……そうか、それは、面白い」
どうやら自分も、頭の中は限界突破していたようだ。ふーん、としか浮かばない。
――そうか、なんか分からんが、いずれわしも親になるのか。……それは楽しそうだ。ずっと夢ではあったからな、父になるのがな! 何故母になるのかな?!
色々なことがありすぎる。
だが、悪くない。
そう思いながら、オディールは目を閉じた。
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