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悪魔は負の感情に敏感です。
嫉妬や侮蔑といった負の感情に付け入り惑わし、人間の欲望を刺激するのです。
あきらかな王女の嫌悪に、悪魔の本能なのかアステリアはごくりと生唾を飲み込みました。
「減点ですね。」
『は?』
横からいきなり点数を付けられたアステリアは驚き、ビクッと肩を震わせました。
ハァと小さくため息をつくトリスタン。
「王女に対する態度もそうですが、何より私を庇う必要はありません。私に非があったのですから。」
『従者をハイエナ呼ばわりされたのよ?怒らない方がどうかしてるわ。でも…』
「でも?」
『なぜ初対面であんなに嫌われてしまったのかしら。』
王女は目が合った時から、悲しげで嫌悪の感情が見え隠れしていました。
兄の婚約者だから?
王子と王女は仲が良かったのでしょうか。
アステリアは王子に妹がいたという事も知らなかったので、王女について何も知りません。
「王女には近づかない方が賢明です。」
『なぜ?』
「王女は信託を受ける聖女だからです。」
『…………………へ?』
アステリアは時が止まったかのように身体全身の動きが止まります。
トリスタンは何事もなかったようにテーブルのセッティングを再開させていました。
『あ、あの…トリー?今のは聞き間違いかな?聖女?』
「はい、ソフィア王女は聖女でもあられます。」
『うそでしょ!?ってか言うの遅くないッ!?』
「言うタイミングを逃しましたので、今お伝えしています。」
淡々と手を動かし続けるトリスタンに対し、アステリアの口はアワアワと変形し、冷や汗が流れます。
考えても見れば普通の妹が魔法のかかった空間に簡単に入れるはずもありません。
無意識にしろ意識的にしろ、聖女であれば悪魔に嫌悪を抱いてもおかしくないのです。
その上、“悪魔”という理由で聖女に攻撃されても文句は言えませんが、これから妹になる聖女にアステリアが攻撃するわけにはいきません。
悠長にお茶を共にしている場合ではなかったのです。
『どうしよう!どうしたらいい!?もしかして、私が悪魔だと気づいてるのかな!?』
「さぁ?どうでしょうね。」
『なんで、そんなに悠長にしてるの!命の危機なのにッ、私の!』
「貴女様の命であって私のではありません。」
『私を見捨てるつもり!?』
「ハァ…見捨てられたら楽か。貴女様に何かあれば私の命もないも確かな事ですね。」
そうでしょ、そうでしょとアステリアは首を大きく立てに振りました。
「王女の事は一旦置いといて、貴女様はご自身がやらなければならない事を致しましょう。」
『へ?なんかこう…実戦に備えてた方がいいんじゃかいの?』
「これも実戦です。」
そう言うとトリスタンは力ずくでアステリアを用意した席に座らせたのです。
目の前には教科書で見たアフタヌーンのティーセットが並んでいました。
「口実がなければどんなに磨いだ刃先であっても向ける事は出来ません。王女にその口実を作らせなければいいのです。」
『トリスタン……、それって私に出来ること?』
「出来るかどうかではありません。ヤルのです。」
トリスタンは笑顔で立てた親指を下に向けました。
何をヤルのか、私が殺られるのか。
アステリアからは焦りも驚きも消え、残ったのは無の表情のみ。後ろの方でチーンっと小さく鐘がなったようにも聞こえます。
「まあ、貴女様1人では無理でしょう。」
『私が1人でも2人に増えても難しいのは難しいわ。』
「ご冗談を言える元気があって良かった。適任者をお呼びしていたんです。」
『適任者?』
「もうそろそろお時間です。」
トリスタンの言葉に合わせるようにキラキラと虹色に輝く魔法の扉がアステリアの前に現れました。
扉は自動で開き、まずは小さな足がちょこんと出てきたかと思えば、中からそれは可愛くて小さな女の子が出てきたのです。
嫉妬や侮蔑といった負の感情に付け入り惑わし、人間の欲望を刺激するのです。
あきらかな王女の嫌悪に、悪魔の本能なのかアステリアはごくりと生唾を飲み込みました。
「減点ですね。」
『は?』
横からいきなり点数を付けられたアステリアは驚き、ビクッと肩を震わせました。
ハァと小さくため息をつくトリスタン。
「王女に対する態度もそうですが、何より私を庇う必要はありません。私に非があったのですから。」
『従者をハイエナ呼ばわりされたのよ?怒らない方がどうかしてるわ。でも…』
「でも?」
『なぜ初対面であんなに嫌われてしまったのかしら。』
王女は目が合った時から、悲しげで嫌悪の感情が見え隠れしていました。
兄の婚約者だから?
王子と王女は仲が良かったのでしょうか。
アステリアは王子に妹がいたという事も知らなかったので、王女について何も知りません。
「王女には近づかない方が賢明です。」
『なぜ?』
「王女は信託を受ける聖女だからです。」
『…………………へ?』
アステリアは時が止まったかのように身体全身の動きが止まります。
トリスタンは何事もなかったようにテーブルのセッティングを再開させていました。
『あ、あの…トリー?今のは聞き間違いかな?聖女?』
「はい、ソフィア王女は聖女でもあられます。」
『うそでしょ!?ってか言うの遅くないッ!?』
「言うタイミングを逃しましたので、今お伝えしています。」
淡々と手を動かし続けるトリスタンに対し、アステリアの口はアワアワと変形し、冷や汗が流れます。
考えても見れば普通の妹が魔法のかかった空間に簡単に入れるはずもありません。
無意識にしろ意識的にしろ、聖女であれば悪魔に嫌悪を抱いてもおかしくないのです。
その上、“悪魔”という理由で聖女に攻撃されても文句は言えませんが、これから妹になる聖女にアステリアが攻撃するわけにはいきません。
悠長にお茶を共にしている場合ではなかったのです。
『どうしよう!どうしたらいい!?もしかして、私が悪魔だと気づいてるのかな!?』
「さぁ?どうでしょうね。」
『なんで、そんなに悠長にしてるの!命の危機なのにッ、私の!』
「貴女様の命であって私のではありません。」
『私を見捨てるつもり!?』
「ハァ…見捨てられたら楽か。貴女様に何かあれば私の命もないも確かな事ですね。」
そうでしょ、そうでしょとアステリアは首を大きく立てに振りました。
「王女の事は一旦置いといて、貴女様はご自身がやらなければならない事を致しましょう。」
『へ?なんかこう…実戦に備えてた方がいいんじゃかいの?』
「これも実戦です。」
そう言うとトリスタンは力ずくでアステリアを用意した席に座らせたのです。
目の前には教科書で見たアフタヌーンのティーセットが並んでいました。
「口実がなければどんなに磨いだ刃先であっても向ける事は出来ません。王女にその口実を作らせなければいいのです。」
『トリスタン……、それって私に出来ること?』
「出来るかどうかではありません。ヤルのです。」
トリスタンは笑顔で立てた親指を下に向けました。
何をヤルのか、私が殺られるのか。
アステリアからは焦りも驚きも消え、残ったのは無の表情のみ。後ろの方でチーンっと小さく鐘がなったようにも聞こえます。
「まあ、貴女様1人では無理でしょう。」
『私が1人でも2人に増えても難しいのは難しいわ。』
「ご冗談を言える元気があって良かった。適任者をお呼びしていたんです。」
『適任者?』
「もうそろそろお時間です。」
トリスタンの言葉に合わせるようにキラキラと虹色に輝く魔法の扉がアステリアの前に現れました。
扉は自動で開き、まずは小さな足がちょこんと出てきたかと思えば、中からそれは可愛くて小さな女の子が出てきたのです。
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