37 / 80
黒焦げの竜
しおりを挟む
学校から帰って来たアーシェンは神殿に呼ばれた。黒焦げになった父竜と、レイドの切り傷を見て何が起こったのか説明を受けた。
「お父様が?レイド様を殺そうとした?」
にわかには信じられない。
竜人の父も番の母と相思相愛だから最初は反対しても、きっと認めてくれると信じていたのだ。
「ええ。頭にきて、雷を落としちゃったわ」
正真正銘、本物の雷だ。
竜人は強いので雷に打たれた位では死なないが、鱗が焦げたり、剥がれたりしている。
元々黒竜なので焦げた部分がはっきりしないが、痛そうに丸まっている。
セーカは雷の衝撃で竜になってしまい、そのまま怒ったノアに神殿に封印された。
竜人も獣人と同じく、鬼気迫った状況に陥ると竜化獣化することがわかった。
「イシス国内では殺生は禁止。毒も浄化されちゃうから、バレないようにレイド殿下を結界の外に連れ出したのよ」
毒は浄化されたが、切り傷が完全に治っていない。
セーカが自分の硬い鱗で作った暗殺用の特別ナイフだった。
「お守りを持っててくれてよかったわ。あれは危険を予知して知らせてくれるペンダントなの」
服の下に身に付けるのはセーカに見えないようにするためだった。何かしでかしそうだったが、まさか娘の愛する男性を消そうとするとは思いもよらなかった。
レイドもまさか、アーシェンの父に殺されかけるとは、考えもしなかった。
アーシェンはかなり動揺していたが、頭を深く下げて謝罪した。
「レイド様、謝って済むことではありませんが、父が大変なことをしてしまいました。申し訳ございませんでした」
「アーシェンは何も悪くない。きっと私の評判が悪過ぎて心配で嫁がせたくなかったんだ。考えたんだ。もし自分が父親だったら、私のような男に娘をやりたくないと、自分でもそう思う」
はっ!
わかっているなら、二度とアーシェンに近づくな!
国へ帰れ野獣皇太子!
黒焦げの竜は、ガサガサの声で絞り出すように悪態をついた。雷で喉もやられたらしい。
僕だって、ノアが18才になるまで我慢したんだ。
待っている間、狂わないように必死で仕事をして、ごまかしていたんだ。
イシスに来たらいじめ抜いてやろうと思ったのに、何でアーシェンが狼の国に行くんだ!
それも15才で結婚なんて異常だ!
それも大嫌いな狼なんかと。好色能筋狼なんかと。
攻撃をいちいち避けやがって、田舎狼なら鈍臭く、さっさと殺られればいいものを。狼のくせに、狼のくせに。
半分は狼獣人への悪口である。
狼に個人的な恨みでもあるのだろうか。
娘の結婚にゴネて、大きな口を開けて子供のようなことを叫ぶ竜の姿は、先ほどレイドに襲いかかった怜悧冷徹な殺し屋と到底、同一人物とは思えない。
アーシェンは丸まって拗ねてしまった父竜の元に行き、しばらく父と2人で話しがしたいと言った。
「お父様が?レイド様を殺そうとした?」
にわかには信じられない。
竜人の父も番の母と相思相愛だから最初は反対しても、きっと認めてくれると信じていたのだ。
「ええ。頭にきて、雷を落としちゃったわ」
正真正銘、本物の雷だ。
竜人は強いので雷に打たれた位では死なないが、鱗が焦げたり、剥がれたりしている。
元々黒竜なので焦げた部分がはっきりしないが、痛そうに丸まっている。
セーカは雷の衝撃で竜になってしまい、そのまま怒ったノアに神殿に封印された。
竜人も獣人と同じく、鬼気迫った状況に陥ると竜化獣化することがわかった。
「イシス国内では殺生は禁止。毒も浄化されちゃうから、バレないようにレイド殿下を結界の外に連れ出したのよ」
毒は浄化されたが、切り傷が完全に治っていない。
セーカが自分の硬い鱗で作った暗殺用の特別ナイフだった。
「お守りを持っててくれてよかったわ。あれは危険を予知して知らせてくれるペンダントなの」
服の下に身に付けるのはセーカに見えないようにするためだった。何かしでかしそうだったが、まさか娘の愛する男性を消そうとするとは思いもよらなかった。
レイドもまさか、アーシェンの父に殺されかけるとは、考えもしなかった。
アーシェンはかなり動揺していたが、頭を深く下げて謝罪した。
「レイド様、謝って済むことではありませんが、父が大変なことをしてしまいました。申し訳ございませんでした」
「アーシェンは何も悪くない。きっと私の評判が悪過ぎて心配で嫁がせたくなかったんだ。考えたんだ。もし自分が父親だったら、私のような男に娘をやりたくないと、自分でもそう思う」
はっ!
わかっているなら、二度とアーシェンに近づくな!
国へ帰れ野獣皇太子!
黒焦げの竜は、ガサガサの声で絞り出すように悪態をついた。雷で喉もやられたらしい。
僕だって、ノアが18才になるまで我慢したんだ。
待っている間、狂わないように必死で仕事をして、ごまかしていたんだ。
イシスに来たらいじめ抜いてやろうと思ったのに、何でアーシェンが狼の国に行くんだ!
それも15才で結婚なんて異常だ!
それも大嫌いな狼なんかと。好色能筋狼なんかと。
攻撃をいちいち避けやがって、田舎狼なら鈍臭く、さっさと殺られればいいものを。狼のくせに、狼のくせに。
半分は狼獣人への悪口である。
狼に個人的な恨みでもあるのだろうか。
娘の結婚にゴネて、大きな口を開けて子供のようなことを叫ぶ竜の姿は、先ほどレイドに襲いかかった怜悧冷徹な殺し屋と到底、同一人物とは思えない。
アーシェンは丸まって拗ねてしまった父竜の元に行き、しばらく父と2人で話しがしたいと言った。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説


崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

私と番の出会い方~愛しい2人の旦那様~
柚希
ファンタジー
世界名:グランドリズ
ハーレティア王国の王都、レティアの小さな薬屋の娘ミリアーナと番の2人との出会い。
本編は一応完結です。
後日談を執筆中。
本編より長くなりそう…。
※グランドリズの世界観は別にアップしてます。
世界観等知りたい方はそちらへ。
ただ、まだまだ設定少ないです。
読まなくても大丈夫だと思います。
初投稿、素人です。
ふんわり設定。
優しい目でお読みください。
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです

【完結】これでよろしいかしら?
ここ
恋愛
ルイーザはただの平民だった。
大人になったら、幼馴染のライトと結婚し、畑を耕し、子どもを育てる。
そんな未来が当たり前だった。
しかし、ルイーザは普通ではなかった。
あまりの魅力に貴族の養女となり、
領主の花嫁になることに。
しかし、そこで止まらないのが、
ルイーザの運命なのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる