運命の番

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出会いはどこで

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ウルシュ国王はアーシェンとアレン、学者達の部屋に結界を張り、案内があるまでは部屋から出ないように注意した。
軍事国家グラーツ帝国はマデリーンの治世になって安定をしたが、3年前までは暗殺や毒殺が絶えなかった国なので保護結界は必須である。
外国には知られていないが、結界内では毒も浄化してしまうので毒殺も起こり得ない。

皆には夕食時のことや明日以降の予定を説明をしたが、アーシェンだけは心ここにあらずといった状態でぼんやりしており、アレンが心配そうに見ていた。


ウルシュは会見で皇太子の姿を見て、堂々たる美丈夫だと思った。18才だと聞いていたが30才位の貫禄と落ち着きがある。
獣人だからなのだろうか、中性的な男性の多いイシスにはない、逞しい男性美を持っている。評判通りだと、乱暴者の次期暴君だが、そのような感じはしなかった。

その彼のアーシェンへの驚きの行動を見て、あの2人はどこかで会っているはずだと確信した。

皇太子は子竜の誘拐事件の時に三国の森まで来ていたようなのでそこで出会った可能性はありそうだと思ったが、アーシェンが結界の外に出ることはないだろうし、皇太子も結界内には入ることはまずもってして不可能なはずだ。
ならばどこで。

彼は入室してからずっと、情欲たぎる目つきでアーシェンを見つめていた。
わざわざ一番後ろまで行き、跪き手に口づけをした。誇り高い狼獣人が人々が見ている中、少女のために膝を折った。
イシスでは全く見ない光景なので、ウルシュ国王も詳しくないが、あれは俗に言う求婚の格好ではないか?

どこで出会ったのか、アレンなら知っていそうだが、あの仲のいい双子の間には紳士協定があるので、答えてくれないだろう。

手紙を貰った時に、まさかとは思ったけど。皇太子の伴侶に結婚を不要としているイシスの王女を望むなんて無駄なことはしないだろうと思っていたが。
妹のノア女王も竜人セーカからの猛アプローチの末、流されるように結婚してしまったのを思い出す。

「歴史は繰り返す。のかな」

皇太子は間違いなく、アーシェンに恋をしている。

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