猫カフェは探偵事務所ではありません。〜女子高生店長の奮闘記〜一応うかがいます。

猫寝 子猫

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バイトさん、いらっしゃる?〜面接は大変かも?

森猫のリリちゃん、一日店長日誌?副店長は二葉じゃないの?

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 みんな!おはようなの、リリなのだ。

 今日は舞ねぇちゃんが忙しいので「猫カフェ」のお手伝いをするのだ!

 っと、リリちゃんが張り切ってますの。
 姉様達はバイト面接や地域事業の親睦会など忙しいので「おウチのお手伝い」として、私「山王院 二葉」もリリちゃんと一緒に色々手伝う事にしました。
 

 なんですけど、
 『あの、貴方はどちら様ですか?』
 羽柴ビルに来ると私達を出迎えて下さるお兄さんがいましたの。

 『そうか?二葉ちゃんとは「このボディー」を見せるの初めてだよね。』
 
 『え?  まぁ‼︎ まさかその声は「ニャン-バロン」さんなのです?』

 『二葉、紹介するのだ!「ニャン-バロン avatar mode」なのだ!通称「たこ焼き王子」なのだ!』
 朝からリリちゃんのテンションが爆上がりなのはこの所為ですか?
 『驚きです!秘密めいたエナジーを感じるですの?…で、「たこ焼き王子」って、何ですの?』





 

 『ほれ、影丸!起きれ!』

 昨晩は依頼人に調査終了の報告がてら、一流料亭で会食。
 無論、会計は依頼人持ちでついつい勧められるまま飲んでしまい、少し寝過ごした様だ。

 周りを羽虫が飛んでる、羽根に日差しが反射してキラキラしているのがイラつく。

 依頼内容は娘さんの交際相手の素行調査、会社経営をしている依頼人は後々の事を考えると気が気では無いのだろう。
 娘の事は信頼しているが、もしかして騙されるとか心配してしまうのが「親心」なのだろう。

 自分も何れ、娘の交際相手に目鯨を立てる事になるのだろうか?

 幸い、交際相手は真面目な苦学生で父親を早くに亡くし、母一人妹二人の四人家族で、掛け持ちでバイトをしながらも大学の成績も落とさず、母親を助けて妹達の学費も稼いでいる。
 娘さんとは大学で知り合い、今まで苦労知らずに育ち、親から十分に小遣いを貰ってきた彼女には直向きに勉学に励み、家族の為に掛け持ちバイトをこなす彼が新鮮だった様だ。
 
 現在は妹さん達とも仲が良くて、家族ぐるみで親しくしている様。

 『娘は恋と同情を錯覚しているのでは?』
 
 『始まりはそうかも知れません、ですが現在は今までの自分を見直して不真面目な友人とは距離を置いている様です。健全な交際をなさってますよ、ややお嬢さんの方が積極的ですね。』
  
 言葉を選ぶのはつかれる。父親として先々の事を考えて、不安が尽きないのだろう。


 『こら!起きたのならシャンとせい!この放蕩オヤジが!』


 この事実は小説よりも奇なり、一応依頼人に話しておこう。

 『調査対象者の父親ですが、飲酒運転で信号無視のトラックから通学中の小学生を庇って亡くなったそうです。』

 『ほう、奇遇だな?私の恩人も居眠り運転で登校中の小学生の行列に飛び込んで来たトラックから轢かれそうになった子供を身を呈して守ってなくなったんだ。』

 『そうですか?亡くなった父親は〇〇大学卒業で登山部に所属していた大男で、子供好きだったそうで咄嗟の行動…』

 『登山…!一文字さん、その父親とは確かに〇〇大学の登山部に!』

 『はい、在学中に●○山で遭難した他の大学登山部の救助に参加して活躍した事が有るとあの家族と親しくしている方の証言が有ります。』

 その直後、その場で泣き崩れる依頼人。
 その後は場所を変えて、強引に小料理屋に誘われると泥酔した依頼人を御自宅にとどけたら翌日になっていた。


 『おい、早く食事の支度をしろ!でないとこの筆で額に「女ったらし」と書いてやる!』

 先程から口の悪い「同居人」が囀っている。

 『鈴、あまり暴言が過ぎると毟るぞ。』
 
 俺としては、もちろん冗談で「羽」を毟るつもりで言ったのだか、言われた当人は「服」を剥ぎ取ると捉えた様で両の腕で胸を隠し、身を縮めて

 『この鬼畜!妾を弄ぶ気だな?お前相手では妾の身が破裂するではないか!ひなた、助けてくれー!』


 『な?ひな?』小煩い羽虫が娘に助けを求め、飛んでいく。
 
 俺の視線の先にドアを開けて佇み、胸元に飛び込んできた○カちゃん人形程のサイズの「同居人」を抱き止めるとモノすんごい汚いモノを見ている様な目で父親を見ている思春期の娘がいた。
 油断した、最近は時々朝から俺や鈴の為に朝食を作りに来たりしていた。

 『私、「夜壱」叔父様か「北代」の叔父様の子供になりたいなぁ。すずちゃんも一緒に行く?』


 『勘弁してくれ、ひな。』

 こんな時、「相棒」はどうやって娘をあしらって、いや宥めているのだろうか?


 身支度を整えて、食卓につく。

 娘に作ってもらった朝食を俺より先に食べてる摩訶不思議な生き物、いつの間に「ひなた」と仲良くなったのか?

 『うん、美味い!美味じゃ!ひなたの夫や子供は幸せじゃな!』
 
 『私、まだ結婚してないよ、すずちゃん。』

 『ひなた、そんな相手がいるのかい?』

 『お父さんには、教えません。「鬼畜」のお父さんには!』

 
 俺、一文字 影丸は探偵である。

 それなりに有能なので、仕事に困ることは今の所無い。

 四年前に別れた恋人で元秘書の「滝井 真名」が亡くなり、彼女の娘「滝井 ひなた」が俺の前に現れた。
 現在は俺の実家で弟夫婦と妹夫婦、俺の祖父と母たちと暮らしていて賑やかにやっている様だ。

 俺としては助かる、この部屋は些か思春期の女の子を置いておける環境では無い。

 なのに最近、この建物に取り憑いている「UMA」が、俺の部屋に
入り浸っている。

 コイツとは割と古い付き合いだ、何せ「鈴」と名付けたのはひなたの母、真名だから。
 ピーターパンの「ティンカーベル」の「ベル」から取って、「鈴」と名付けた。

 大家の蒼介に駆除を頼んだら、
 『影兄さん、生き物を慈しむ気持ちは無いんですか?』とか、
 オカルト担当の刑部に頼んだら、『これ、コロポックルかも、少彦名命か侏儒和偉人か?』肝心な時に使えんヤツだった。

 あえて頼まなかった「相棒」に話すと、
『諦めろ。これ、あのビルに括られている「御神体」だから。 
 前オーナーの頼みで俺が保護した幼体をビルの「柱」に憑依させた。家内安全、商売繁盛、無病息災、悪霊退散!』俺にはコイツが悪霊だよ。

 最近では、アイツの娘さん達が同じビルで猫カフェを始めた。
 更にひなたがそこでバイトを始めた。
 
 俺に子供⁉︎
 いや、正直に言って嬉しかった。彼女と俺の娘!

 同時に彼女の死を知って、悲しむ間もなく「娘」と「父親」の関係をスタートさせた。

 せめて赤ん坊の頃から共にいたらなど思う、いきなり中学生の娘が現れたら!

 アイツは何でちょくちょく子供やら猫やら引き取るんだ?
 何かと比較されるだろう!

 昔は比較されて優位なのは俺だったのに、(苦笑)

 『お父さん!約束、今日こそ守ってくれるよね?』

 『約束?一緒に真名の墓参りはまだ先だろ?』
 
 『もう、「森猫」に来て、私のバイト振り見てくれるんじゃないんですか?名探偵さん!』

 『そうだぞ!娘の働き振りを見て歓喜の涙を流すのが正しい父の姿ぞ!』やさぐれティンカーベルの知識はかなりな偏りだな?




 『ひな姉様、叔父様、こんにちは。お加減如何ですか。』

 『ひなた、こんちわ!ロン毛、元気か?お疲れか?』

 アイツの所のちっさい嬢ちゃんたちと…「誰?」


 『こんにちは。二葉ちゃん、リリちゃん。…えっと、どなた?』ひなたも知らないのか。


 『こんにちは!ニャン-バロンです!』



 「森猫」の入り口前でおそらく「北代家の新入り」を目撃した。

 誰かに似てる気がする。



 日曜日、開店前に何かと賑やかだ、直ぐに入り口の扉が開き、先に来ている社員スタッフが現れた。
 
 『おはよう、二人とも。店長から聞いてます。今日はお手伝い、よろしくね。』

 『ハイ!』なのだ!』

 『それと、「だれ? 」』
 アンタも知らないのか!


 『あらら、みんな早いわね。おや、珍しい。「授業参観」成らぬ「バイト参観」ですか?一文字所長。』見知った顔が有る。

 『やぁ、シオ君。君もここのスタッフなのかい?』

 アイツの親類の娘で 
 「堀部 栞子」(ホリベ シオリコ)

 以前、知らずに口説いてしまってから何かと警戒されている。

 『しおりんは、今日「森猫」当番なのか?』
  
 『急にね、「捨て猫」の保護が重なって、応援に来たのよ。午後にボランティアの方にお預けするから。』

 彼女はここの従業員ではなく、同じ階の「占い師」コーナーで「白猫占い」をしている占い師だ。副業で天然石アクセサリーの販売もしている?

 猫絡みのお仕事のよしみで偶に午前中だけ手伝ってくれているようだ。

 『成る程、そちらが「たこ焼き王子」ね。コチラに来て。大体の事情は七神さんから伺っているから。』

 

 


 『いらっしゃいませ、「森の猫さま」まもなく開店です。』

 驚いた、開店五分前に「常連客」が数人店頭で待っていた。
 
 そのほとんど、良くも悪くも知った顔だった。


 
 『ハイ!ゴンパパさん、おしぼりどうぞなの!』
 
 『おぅ、サンキューな。』

 子供用のスタッフユニホーム?で待っている客にサービスのおしぼりを配っているのは山梨産ロシアっ子のリリ助。

 「だ」を付けないのは「森猫仕様」らしい?

 『五道のオジサマ、先日は「差し入れ」ありがとうごさいましたの。みんなで美味しく頂きましたの。』
 
 こちらは「の」が決め手らしい。何とツインテールの二葉!レアらしい。

 『豆乳とさつまいもで作ったクッキーだそうだから猫や犬、人間も食べられるから良いと思ってね。』後から知ったんだが、その差し入れ、アイツからレシピを聞いて五道さん自ら調理したそうだ!

 う、嘘だ!金次第でどんな困難な手術も全て成功させる黒医者、

 「五道 鏡治」が、爽やかに親しげに笑った?⁉︎

 いやそれだけではなく、「ゴンパパ」って、「喧嘩屋権藤」じゃないか!

 『ハイ、ロン毛。おしぼりなの!』

 『ハハハ、たしかに「ロン毛」だ。どうした、一の字?迷子の子猫に逃げられたか?』何かイラっとする聞き覚有る声に視線を向けると、

 その中に高校生活三年間、同じクラスだった堅物がいて、つい唖然とする。

 『まさか、「警視」のお前がこんな場にいるなんて、全く平和な世の中だよな?風間!』


 しまった!俺とした事がひなたのいる場で、不味い事を言ってしまったか?

 『警視…って!』

 やはり、ひなたは常連客である風間の詳しい素性を知らない!

 『お巡りさん!やっぱり、とても偉い方だったんですね!カッコイイですっ!』

 『え?』

 『ハハハ、ひなたちゃん、そんな事は有るかもね! コホン、
 でもね、本当に偉いのは日夜、町のみなさんに気を配り、地道に公務を行なう交番のお巡りさんや所轄の刑事さんだよ。
 私はそんな仲間たちが潤滑に行動出来る様に厄介ゴトを引き受けてるだけさ。』


 『おぁー、ボスはカッコイイの!』

 「ロン毛」と「ボス」、随分と差を付けた呼び名だが、誰かが俺をそう呼んでいるのだろう、あの子の為に訂正しなければ。
 周りに悪目立ちに見えてしまう。


 『リリ君、「ロン毛」は止めてくれないか。人を容姿で呼ぶのは余り良く無いからね。あだ名で呼ぶならせめて「探偵さん」なんてどうかな?』

 『?ここはカフェだぞ、バーじゃないし。』

 『やれやれ。』

 『お待たせしました!ただいま開店しまーす!』


 
 明るく元気良く開店を告げたのは娘だった。特別に機嫌を取るつもりは無いが、嫌われるのも気持ちいいモノでは無い。 
 更に「警視殿」に差を付けられるのも釈然としない。


   

 既に常連たちは「いつもの場所」があるらしく、しかも「ボトルキープ」成らぬ「猫じゃらしキープ」をしている様で彼等専用の「おもちゃの猫じゃらし」をひなたが渡しに来た。

 『ハイ、お父さんはコレを使ってみて。』

 小さな子供が「魚釣りごっこ」をする様なおもちゃの釣り竿に既に糸の先におもちゃの魚が付いているモノを渡された。 

 
 なんとなく、揺らしてみる?


ト、 ト、トトトトドン!

 『釣れた、猫が?』

 おもちゃの魚を咥えて、満足そうなキジトラ。子猫にしては大きいが大人の猫よりやや小さい。

 『その子は推定一歳未満の男の子です。』
 頼んでもいないのに、その猫の説明を始めた見慣れない子、
 
 この時の子が舞華付きのメイド、パトリシアだと後で知る。

 『推定?』なんとなく予想が出来るが敢えて聞く。

 『その近くの公園で保護された子なんです。それまで栄養状態が不十分でしたので成長が遅い様です。』

 そうなのか?子猫なのは分かるが、たしかに何となく「雑種」と言う感じだが。
 
 『北代の家の猫とかに比べて、模様と言うか毛色の柄が不均一だな、そうゆう物なのかい?』


 『北代店長のおウチの猫ちゃんは、「ある意味」稀なんです。MIXなのに「血統書付き」並の状態の子が多いんです。いくら血統が良くても「家族」としてか、「商品や装飾品」として育てるかで変わってくると、なのでこの子も大事に育てたら中々の男前になりますよ。』


 質問しておいてさっぱり意味がわからない?

 まぁ猫が可愛いと言うことなのだろう。


 ひとまず、この猫を構って娘の仕事振りをチラ見する。
 あまり、小動物を愛でるのは経験が無いのだ。
 実家に「マレンマ・シープドッグ」と「グレート・ピレニーズ」のMIX犬がいた。もう高齢で他界したが懐いていたのは祖父と道場に来るちびっ子たちで、俺とは散歩の一つもした事が無かった。
 今、思い出した!あの犬を祖父に譲渡したのはアイツだ!
 元の飼い主が亡くなったから、道場の番犬にどうかと、勧めに来ていた!
 
 「世界名作劇場」に登場しそうな大型犬だったが、大人しく優しい真っ白な犬で、時に「威風堂々」な体躯で不埒モノを子供達から遠ざけていた。

 そんな事を思い出した。

 『お父さん、意外に猫の扱い上手いのね!びっくりした。』

 ⁉︎、いつの間にか、目の前にひなたがいて、ソファに腰掛けている俺の膝の上には先程釣り上げた猫が気持ち良さげにうたた寝をしている。

 『偶々だよ。猫に触れたのさえ数十年ぶりさ。』

 『迷子の猫探しは探偵さんのお仕事じゃないの?』確かに割と依頼がくるが。

 『ウチの事務所は分業制で、動物担当はアイツだから。』

 そう言いながら、猫の背中や頭を撫でている。不思議と落ち着く、コレが「アニマルセラピー」と言うヤツか?

 『あのね、お母さんも猫好きだったよ。飼えなかったけど、公園の野良ちゃんに懐かれてた。』

 『そうか。』

 なんとなく、今朝の痛々しい出来事は許してもらえそうだ。

 『ひなた、一つ聞いていいかな?』

 『良いよ、何々?』

 『こんな強面な常連客がいたら、普通のお客様は寄り付かないんじゃないか?』っと言いながら隣りを見る。

 警視の風間は柔道や空手の有段者、喧嘩屋権藤は言うまでもなく、ウチのジジィや黒医師五道にクセ強弁護士の三条さん。あと一人は山王院の元執事長の鳶加藤に見えるが?


 『二葉お嬢ちゃま!今日の御髪は愛らしい、「ついんてぇる」ですな!また一つ、冥土の土産が出来ましたワイ。』

 『あら、爺や。良いでしょ?ひな姉さまにやって頂いたのですわ。』ハイ、正解!


 
 『ん~?言いたい事は分かるけど、そうでも無いのがココの良い所だと思うよ。だって「ファン」がいるのよ、お巡りさんは最近の常連さんだけどゴンパパさんたちは「森猫の五賢人」って呼ばれてるから。クスクス。』

 後で店のホームページを見るも「今日の五賢人」なるコーナーも有り、有る女子高生から帰宅中にホスト風のしつこいナンパ男から助けてくれたとお礼の書き込みが有り、容姿や言動から「権藤氏」や「ウチのジジイ」に間違いない。
 また、ペットやご近所のトラブルに三条先生が法律家の視線で答えていたりしている。

 う、うらやましい。そのスジでは怖いモノ無しの御歴々が孫か娘の世話焼き感覚で年甲斐もなく猫好きサイトに参加している。

 「最強のコネだな。」アイツの画策でこうなったなら釘を刺さないといけないが、多分違うのだろう。

 『どうした?険しい顔して。折角、ひなちゃんのバイト振りを見に来たんだろ?カゲちゃん。』

 『三条先生も人が悪い!こんなアクの強い常連客のお仲間とは?この面子以外にもいるんでしょ?「ハメを外したい」オジサンが!』

 『はは、バレたか!』

 『半分冗談だったんですけど?本当にいるんですね?』

 『ここでは皆んな「不可侵」でと決めているんだ。』

 それって暗に認めてますよね?

 『毎週曜日を決めてな、まぁ流石に「警察のお偉いさん」と「ヤクザの大親分」の相席はマズイかなと?』


 『それ、自分の知っている「大親分」さんですか?敢えて言いませんけど!』何曜日に来るのか後で聞こうと思う、俺も会いたくないし。

 『ハハハ、そんなところだ。』

 





 『お父さん、楽しそうだね?』

 『嫌味か?ひなた。そうゆー所は「お母さん」そっくりだよ。』

 『そりゃ~親子ですから。「お父さん」ともね!ごめんなさい、でもお父さんに見て欲しかったから、私が働いている所。』

 『ん、大丈夫。心配して無いから、安心してバイト頑張れ!あと、ナンパとかチャラい男が近づいて来たら言いなさい、闇に裁いて仕末するから。』

 『多分、字が間違ってるけど意味は分かるよ!怖いからやめて。常連のオジサマ達も女子スタッフに大体同じ事いっているから!』

 俺のは三割くらい冗談だが、あのオジサマ連中は本気の本物で本当にやってそうだよな?





 キャー!キャー‼︎

 なんだ?別のフロアから正に「黄色い歓声」が広がる?

 『お客様!お静かに‼︎猫たちがびっくりしますから!』

 『待たせたのだ!「たこ焼き王子」改めて「黒猫執事」のデビューなのだ!正に「爆誕」なのだ⁉︎』


 そこにいたのは深い真黒の執事服に身を包み、黒の片目眼鏡、憂いを隠した美少年執事がリリに伴われて現れた‼︎

 『リリちゃん、恥ずかしいよ!何かみんなと違って僕だけ黒い服だよ?』

 『コレでいいのだ!コレがいいノダ!ショウユうことだ!』急に煎餅が食べたくなったぞ?

 『あの少年か?ん?翔太に似てないか、あの子?』そう言いながら、ひなたに同意を求める。

 『う、うん。親戚の男の子だって聞いてるよ。』

 ただバイトの制服を着せずに
どちらかと言うと動きにくそうなコスプレチックな執事服かと思いきや、布地自体は高級品で仕立てもおそらく玄人の職人だろう。
 良い仕事をしている、あれに近いモノをよく「山王院」で見る?

 『誰のプロデュースだ?』
 『二葉ちゃんじゃないよ、リリちゃんでも。多分栞子さんかな?』

 アイツの血縁者なのか、奇妙な縁で知り合った女性。
 彼女もまたチートな「クセ強人材」なのか?

 『ミャー、ミャー!』綾していた子猫が泣き出した?何だ?
 
 

 『やぁ!猫ちゃん、元気だった?僕、君に会いに来たよ。』

 満開笑顔で黒猫少年執事が近づいて来た。

 『ミャミャミャーン!』俺の元から元気良く飛び出して少年の所に駆け出した、母親を求めて走るマルコの様に。


 この数日、アバターの身体を手に入れた「ニャン-バロン」は捨て猫や野良猫が産み捨てたと思われる子猫を保護していた。その預かり先はココしか無い。
 「森猫」主催の猫の譲渡会をやって好評だったとか。
 地域とも上手くやれてる様で、特に心配する事も無さそうだ。
 いずれアノ子猫も新しい居場所と家族が出来るのだろう。


 
 
 俺も人並みに娘が心配らしい、

 学校の様子も母校で教壇に立つ旧友から聞いている。楽しくやれてそうだ。一文字家の従姉妹たちや北代の子供達とも仲が良いらしい。

 バイトも思っていた状況とはやや違うが一先ず大丈夫そうだ。

 
 なので、
 今日はテキトーな所でお茶を濁して退席しよう。

 ハードボイルドな探偵には甘ったるいとかじゃ無い、
 何か嫌な予感が!

 この場に長居してはマズい!

 『お父さん、どうしたの?この後お父さんに紹介したい人がいるんだけど。』
 
 

 
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