上 下
22 / 58

龍族の聖人エメ、現る?

しおりを挟む

 「こんな状態になるまで、働かされていたのか⁈」


 「だって、アイツらが!

 …だから昨日、客の一人が食べると元気に成るって、あの食べ物ニクマンを見るにみかねて、差し入れでくれたんだよ。

 確かに疲れが吹っ飛んだし、同じ屋台で安いけどポーションに効き目が有るを売ってるって聞いて…

 だから、見張りがいなくなったから…だから!」

 途中、泣きながら話す娘の肩に手を置き、

 「君を責めてるのでは無いから、泣かないでくれ。

 その様子では、他にも居るのだろう?

 無理に働かされたり、ほったらかしにサれてる病人が?」

 「う、うん、稼ぎが悪いって、しばらくメシを抜かれて…助けられる?」


 「もちろんだ!」

 娼館の地下室には、もう客を取らせるには向かない程、酷い病人が数人放置、いやされていた。



 「な、何だ、お前は?」

 「うるさい、邪魔だ。

 退け、そこで寝てろ!」


 に見張りをやっていた男を物理的に沈黙させて、次々と病気の娼婦たちの治療を始めるエメ。

 エメが手をかざすだけで、壊死しかかっていた様な青白い肌に、赤みが刺してくる。

 「コレでよし、次は隣りか?」

 「え、わかるの?」

 「ああ、病魔の気配ならばな。」


 この人は神さまのお使いかも知れない?

 彼女、「ビアンカ」はそう思った。

 既に妹分の娘たち二人も助けてもらっている。

 ソレどころか、自分も諦めていた者たちまで、不思議なチカラで救ってくれている。


 遂には、別の娼館の病人や人まで治療を始めると言い出した⁈


 


 「…で、今日はその時に知り合った女の子と別の場所娼館に治療に行ったよ。

 でね、今エメってば、町の皆んなから「聖人さま」って呼ばれてるんだよ!」

 「…セイジンサマ?」

 「そ、すごいでしょ!」

 何故かドヤ顔のカンナ?

 エメの奴、ソレで良いのか?

 知らないぞ?




 
 「ビアンカ、次の場所に行く前に食事にしないかい?
 キミ疲れただろう?」

 「は、ハイ!

 あっ、い、いいえ!

 まだまだ平気です、エメ様!」

 ぐぅ~~…
 
「ち、違うんです、こ、コレは…その…は、恥ずかしい…。」

「ハハハ、無理は良くない、市でニクマンでも食べよう。

 ん、別の食べ物でも構わないか?」

 「い、いいえ、ニクマン最高デス!

 ニクマン以外無いデス!」



 あの日から、この人エメ様の側にいて、色々手伝わさせてもらっている。

 
 同じ娼館の子を助けてくれたにこの身体を差し出すだった…

 のに⁈

 「…うむ、「お礼はワタシ」とは、どういう言葉だ?
 我はまだ子供だから、よくわからないのだ。」   


 …子供って、歳でも無いのにが娼婦で有る事を気が付かないをしてくれてる違いない。

 なので、こうして助手として尽くしているのだけど、


 「ソレにしても、ジャンパニーというモノは相当なだな、病人や怪我人を働かさても理は少ないというのに。」


 時々、よくわからない事を言うのも、きっとその事を誤魔化してくれているのだろう。


 「…手を出してくれても、かまわないのに…?」


 「ん、ナニを出すって?

 あぁ、お金なら我が出すから、安心して食べていいぞ。

 町長からの代金、カンナからをもらったんだ。」


 「ち、違ぅってば!」

 つい、素にもどってしまうビアンカ。

 まるで、何も知らないウブだったあの頃の様に…



 「…って、こんな感じみたいだよ?」

 「うーむ、エメの奴はまだドラゴンの尺度で言うと子供らしいからな?

 見かけはオレと同じ歳くらいの人間の男に見える様に化けてるだけだからな。

 …でも、絶対分かってるぞ、お礼の意味?」

 「だよね、でもソコがエメらしいじゃない?

 なんかホッとするわ。」





 なんかのんびりとした感じだけど、肝心な事はまだ解決していないのだ。

 「おお、タケルさん、目が覚めたのですね!」


 町長さんが嬉しそうに部屋に入ってきた。

 「すいません、どうやら大変な寝坊をしていた様で?」


 俺は町長さんと今回の事やから聞いた事など、情報の擦り合わせをした。

 俺が寝ている間に町長さんやエメが行っていた事を確認したかったから。


 「何ですって!

 あの教会の悲劇にそんなが!」

 「ハイ、エメの奴聖人さまから聞いたので、間違いないかと。」

 「そうですか、聖人サマはの声をお聞きになれるのですね?

 そのお陰で、捕まっていた人が見つけられたと。」

 言うまでも無く、地下から救出した人たちも、エメの力で命を取り留めて回復に向かってる。

 ただ、まだ詳しい話しを聞ける状態ではないので、実際にジャンパニーの居所などの情報は聞けていない、またこの人たちの中にはマーヤちゃんのご両親はいなかった様だ。

 最悪もしかすると、すでにされているか、されているかも?

 必要なモノを手に入れたら、サッサと出発する予定が、随分長い滞在になりそうだ?

 さて、問題はココの領主様に事の次第が伝わっているかだ?


 万が一を考えて、エメに子爵のジィちゃんとその縁繋がりの公爵様に手紙を届けてもらった。


 ココに来る前に立ち寄った町までは、オリオン子爵領だったので多少強引な手も打てた。

 だけど、この町は「ドリンガー領」なんだそうで、けっこう面倒な事になり…


 アレ、町長さん、たしかサマって言ってたような?
 


 まっ、いっか?

 俺の勘違いだ、きっと。





 それから数日は平和な日が続いていたんだけど、突然にこの町の領主、ドリンガー伯爵が私兵団二十人程引き連れてやって来たのだ!

 ジャンパニーと一緒に。





 「いらっしゃいませー、美味しいニクマンだよー!」

 今日も子供たちが、ニクマンの屋台で元気に明るく商売をしている。

 「よく効くポーションいらんかねー!」

 調理は子供たちがすっかり覚えたので、タケルはメイメイが作ったポーションを売っていた。

 町長さんに町に滞在して欲しいと頼まれた。

 そろそろが来る頃だからと?


 返事かぁ、

 おじいちゃん子爵サマに出した手紙お願いは、キャロルちゃん同様に後見人になって欲しい子供たちがいる事、チカラになって欲しいと書いた。

 事情を知れば必ずチカラになってくれる!

 おじいちゃんならエメとも顔見知りだし、たしかとも仲良しだって聞いてる。

 町長さんの立場も考えて、上手くやってくれると信じているけど?

 ココの領主サマってどんな人?




 「おおーい、大変だぁー!

 領主サマがを引き連れて攻めてきたぞー⁈」

 随分と大袈裟に騒いでいるなぁ、本当なの?



 
 
 それから小一時間、領主ドリンガー伯爵は私兵の騎馬隊を従えて、この町の中央区、市が開かれている場所に近い大広場に陣取っていた。

 町をぐるりと守る防壁の門番も、領主のお貴族サマには逆らえず、門を開けて、一団を入れてしまったのだ。



 馬上から一人の私兵が何やら書状を読み上げる。

 「只今この時より、この町の町長はコレまでのにより、商人ジャンパニーとし、前町長は負傷した事により、町長の業務を続ける事、困難で有ると考慮し、その任を解き心静かに療養を進める事成り!

 これは領主ドリンガー伯爵サマの御達しである!」


 はぁ~ん?


 何言ってんだ?

 


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

TSしちゃった!

恋愛
朝起きたら突然銀髪美少女になってしまった高校生、宇佐美一輝。 性転換に悩みながら苦しみどういう選択をしていくのか。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

アースルーリンドの騎士 幼い頃

あーす。
ファンタジー
ファントレイユの幼い頃のお話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...