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その後のその後のその後の話し〜エージェント「ハルカゼ」さんは妻帯者だった。

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 『現在、新たなパビリオン遊戯施設、5棟を建造中ですが、先程6棟に変更されました。』

 隙のない身のこなし、それでいて優しく力強いオーラを醸し出しているハルカゼさん。

 もし獰猛な獣がココに居て、目の前に悪の魔王が現れたら「死を恐怖」して、襲い掛かるかもしれないが、現れたのがこのヒトなら「死を覚悟」して、首を垂れるかもしれない!

 さて、あのデートの時はソレなりに入場者がいたが、今は「改装中」と言う事になっているが、特に変わり映えしてない?

 『ま、また来てくれたのかな?嬉しいよ!』

 半ば泣き顔で話す緑郎さん。

 『何故か、お客が来なくなってね?』

 もしかして、エゴサしたら立ち直れない様な事になってるかもな?

 『緑郎くん!少し静かに願います。』

 『は、ハイぃ!』

 ここの間は上下関係が出来ている様?
 
 『インターネットの書き込み欄で、「展示品は良いが、あのはぶっちゃっけありえない!」など酷評でした。』

 でしょうね。

 『なので、ナビゲート役に「オートドール」を起用する方向で改装を進めています。』

 『「オートドール」ですか、ソレは一体?』

 『五道さんは、北代家と交流が有るとお聞きしていますが、お会いになられた事は有りませんか?「ワラシ」と呼ばれている「介護用コミュニケーションアンドロイド」を?』

 あ、あの子「アンドロイド」だったのか?

 俺の反応を見てハルカゼさんが微笑んで、

 『お気付きでは無いなら、ココのナビ役を任せても、問題なさそうですね。』

 あの子も、あの博士が作ったのか?

 その内に「神か悪魔か」的なロボットを…いや、既に作っていたな。

 それじゃ、空中に漂う元素を任意に操る装置とか作って…ソレをアンドロイド少女に搭載したりしたら「実の妹」の様に愛でている舞華さんは立ち直れないかもしれない。


 『ガラス細工の「無機質」な魅力と「意志を持つ人形」のコラボ、どう思いますか?』


 『誰のアイディアですか?』

 『秘密です。』







 『次はココです。』

 「ラビリンス~木造迷宮」と有る、おそらくは?

 『…巨大迷路…ですか、今時?』

 『ハイ、但しと順路が変形してしまう作りになっています。』
 
 『え?それってどんな仕掛けで?』

 『人力です。』

 『え?』

 『中で三十分起きに、挑戦者に成り済ましたスタッフが「任意の壁」を動かして毎回違った「迷路を創る」のです。
 その組み合わせは予定では三千通りとか?』

 『ソレだとスタッフも出れないのでは?』

 『スマホの専用アプリでGPSを起動させると、出口までナビゲートします。「任意の壁」の位置もこのアプリで確認出来ます。』

 『アナログだか、ハイテクだか分かりませんね?』

 『こちらは施工が来週辺りに終了します。』


 『つまり壁を動かすのがバイトの仕事ですね?』

 『いえ、バイトの方はナビ用モバイルをお渡ししますので、迷路内でギブアップされたお客様を救助する「レスキュー隊」をお願いしたいのですか。』

 『まさか壁の動かし役は⁈』

 『ハイ、「オートドール」ですね。』



 やな予感がしてきた。






 『こちらは、「ファイタス・ザ・ライド」と題して、「災害救助万能ロボ マシンファイタス」に乗って操作し、「要救助者」を救出する「タイムトライアルレスキューゲーム」です。』

 会場敷地内で倒壊した家に見立てた丸太や段ボール箱を積み上げていたのは、見覚えのあるでした。

 『……オーイ、! 君、「マシンファイタス」なのかい?』

 まさかののロボだったり?

 知り合いにロボットがいる、シュールだな。

 『ん?おや、士君か? もちろん違うさ!オレはココの工事現場監督なのさ!』

 相変わらず、気さくで爽やか?好感の持てる青年のようなロボだな。

 まさか本物のロボットに乗れるとかじゃないよな?


 『多分マシンファイタスは、あの試作機プロトタイプの事だろうなぁ?』

 彼には有る様?

 『五道さんはこちらのとお知り合いなのですね。
 おお!でしたらマシンの操縦も出来る様でしたらなら、こちらでお客様にをレクチャーしていただきましょう!』

 『その前提が間違えていませんか⁈』

 この人ももしかしてな人なのかもしれない?

 『操縦と言っても、ロボットのに乗って命令して会話形式でゲームを進めるのですが?』


 『昭和のロボット物ですか!』

 まぁ、それなら難しい操作は必要無いが、逆にそれだと物足りないと感じるが居そうだが?



 『もしかして、これまでのアイディアが「火祭さん」だった訳ですか?』

 『ん~ん、少しだけお話ししますと、「アイディア」は別の方です。
 そして火祭女史を含めて私たちが「アトラクション」として「カタチ」にしたといった所でしょうか?』

 少しだけ困った顔をしてハルカゼさんが話してくれた。

 『既存の施設を「リメイク」しただけのモノから新規に作ったモノなど、様々ですがお越しに成られたお客様に喜んで頂きたく私達は努めております。
 その中でいち早くしたのが「ガラス工芸展」でした。
 あの施設は今後、小規模ながら「美術館」「アートギャラリー」として運営する方向でしたが…。』


 迷走してますね。


 『事前にバイト等で「モニター」を募って見て体験してもらい、改善を繰り返しては?
 様々な意見を取り入れるなり、改善するなりして良いモノを目指されては?』


 『ハイ、それが五道さんなのですよ。』

 や、やられた⁈


 『コレ、の差し金ですか?「山王院会長」や「舞斗」ですか?
ま、まさか「舞華さん」ですか?』

 『いいえ、私が伺っている方々とは別の方の様ですね。』


 『わ、分かりました、後で十六夜さんに問いただします。』

 『多分ご無理だと思われます。なぜなら彼女も貴方同様にココに誘われたお一人ですから。』


 ハルカゼさんは嬉しそうに笑ってそう言った。

 オレの嫌な予感は当たる。

 『つ、次行きましょうか、ハルカゼさん。』

 いいさ、そっちがその気なら乗ってやるまでだ。

 『思考が舞斗に似てきたかな?』

 『何かおっしゃっいましたか?
 さぁ次の施設は「私の娘」が監修しているのですよ。』

 『ご結婚されているのですね。』

 『親バカでしてね、妻に叱られましたか、心配で目の届く場所に置いていたら、こんな事になりまして。』


 

 

 『お父さんに依頼したいって、何か困った事があるの、アユちゃん?』


  しばらくお仕事芸能活動をセーブするらしいアユちゃん。

 学校では、

 「鮎川さん、きっと大変な目に遭って辛いと思うの!せめて学園では普通に接しましょうね!」

 と言う気遣い沈黙のルールが学園で浸透しているのは華ちゃん生徒会の威光や私やお兄ちゃん舞斗の呼びかけの賜物だね?

 
 『実はヒトを探して欲しいんです。こんな時だから、絶対信用出来る「探偵さん」にお願いしたいんです。』

 『お父さん、探偵じゃないよ。お友達の手伝い程度に、片手間に、自由にやってる事だから。』

 『もしかして、お父さんに依頼してはですか?』


 『今、お父さんに依頼すると助手の女の子が二人追加されるの。』


 『追加料金ならお支払いしますよ。
割とお金持ちなんです、今の私。』

 『「子供がお金の心配なんてするな!」って言うヒトだから、その心配は無いよ。

 ただ、大丈夫かな?お父さんが色々とが有るよ、きっと?』


 『副作用ですか?』

 『怖い職業のおじさんが、急に優しくなったりとか?イキがってるお兄さん達が礼儀正しくなったりとか?町の空気感がピリピリしちゃうとか?』


 『望むところです、そのくらいの事は今回の事で慣れました。』


 『分かった、分かりましたよ!
 その代わりにコチラの指示には必ず従ってね。場合によっては危険が伴うケースが有るから。』

 とここまで言えばビビって引くと思いきや?

 『今更後には引けないです。だから行きましょうか、先輩!』

 



 
 『わーい!ココにもネコちゃんがいっぱいいるね、お姉ちゃん!』

 ネコを見て再びはしゃぐ妹。

 『いらっしゃい、小さなお客さん。ネコ達がお眠だから静かにな。』

 お店の中には床や本棚の上、本と本の間など、そこら辺にネコがいる。

 そして聞いていた通り、そこには1人の女性が店番していた。

 『(小さな声で)ごめんなさい、お姉ちゃんとネコさん。』


 『コラ、上のお店でも注意したでしょ?嬉しくても騒がないの。』



 カフェの帰りに地下の古本屋に寄る様に指示された。

 そこにいるからと。



 エレベーターを使わず、階段で行くのが「通」だと言われた。

 確かに階段の壁には楽しい気持ちになる「子供が描いたネコの絵」が展示されて、階段には一段一段「猫の足跡」シールが貼られている。

 地下の駐車場には車の駐車に邪魔にならない様に猫たちが寛いでいた。

 私たちが来ても逃げ無い、逃げる素振りも無い。

 お店古本屋の中も同様にネコ達が寛いでいた。

 まるで不思議な国、ネコの国に迷い込んだ気分になる。

 差し詰め妹は「アリス」かな?

 『あ、あの、ココに北代さんがいらっしゃると聞いて「探偵のお仕事」を依頼しに来ました。』

 『ココはだけど?
 探偵事務所ならビルの1番上だよ。』

 『娘さんの舞華先輩からご紹介されました。』

 『ソレも却下です。毎回そんな事を言われていたら師匠の身が持ちません。』

 あ、あれ?

 聞いていたのと違わない?





 『本当にお願いします!この子の、「梨奈」の母親を探してください!』


 『この子のお母さん?貴女のお母さんでなくて?』

 この子とは血がつながって無いのと、自分の母は無事である事も告げた。

 『確かめたいんです!
 その人にそんな事をしたのか?
 自分が産んだ子供をどんな理由で…いえ、今はイイです。
 どうしても取り次いで貰えませんか?』

 『もらえますよ。』

 『え?誰?』

 ん? あ!この人、見覚えのある⁈

 『ようこそ、「森猫探偵団」の滝井 ひなた団長です!』


 アレ?









 『よう、士!見学は順調かよ?』

 『はぁ、疲れました。すいません、たこ焼きランチセット下さい。』

 『あいよ!』


 お昼休憩と言う事で約束通りにたこ焼きを食べに来た士、気分は「エリ八」だ?
 
 『寝ぼけてかいた外泊許可書が実は入隊契約書だったなんて、こんな気分かな、知らないけど?』


 『何か有りましたか、五道さん?

 ハイ、ランチセットお待たせしました!』

 『いえ、別…にって、おや、君は確か椎名くん?』

 『ハイ!』

 『何だ、士?風子と顔見知りか?』

 『同じ学園ですから。』

 同じ学園の一年生、「椎名 風子」さん。彼女もココでバイトをしている様だ。

 考えてみれば、今回「マリンランド」は広くバイトを募っている様だし「山代学園」の生徒がバイトに応募していても不思議では無いのかも、

 いや、あの件で今「マリンランド」は注目されている⁈ 

 ウチの学園に限らず、多くの学生がバイトに応募してくるだろう。

 
 もしかして、コレも何か企みの一つなのか?

 『何難しい顔していやがるんだ?
冷めないウチに食っちまえよ!』

 『十六夜さんは何故ココに居るのですか?本当の仕事は「山王院さんの護衛」ですよね。』

 『なんでい?薮からボンバーかよ?

 ん~?今、お嬢の護衛は私以外に8人程いるんだ。
 もっとも悠佳里や蘭華を除けば私1人で10人分だけどな。』

 
 10人分の算出方法は分からないが、格下ながら未だ数人護衛がいるので彼女が抜けても問題無いと言う事なのか?

 いや、山王院さんと十六夜さんの間には侍従関係とは別の繋がりが有る、そう思えるのは今まで彼女達を見ていて感じた事だけど。

 考え過ぎか?

 ん?そういえば!

 『十六夜さん、ご婚約おめでとうございます。』

 『な、何だよ、急に? いや、その、…へへ、ありがとうな。』

 『えっ⁈ 十六夜さん、婚約されているんですか!す、素敵です!』


  椎名くんが話しに食い付いた!

 『結婚したら、「山王院のメイド」は退職されるのですか?』

 『そうしなさいって、お嬢が言っているらしいな。私の実家がその件で先方の家と協議中なんだ。
 私が嫁に行くか、あっちが婿に来るか、それとも…おっと話過ぎたな。親子でお嬢の護衛も良いよな、じゃそろそろ戻るわ、風子はもちっと休憩してな。』


 『は、はい、ありがとうございます、十六夜さん!』
 

 山王院財閥があんな「ファイナルウェポン」を使う人材を手放すとは思えない。
 
 だけど華さんならあえて、彼女の幸せの為に護衛の仕事を解雇しそうだけど?

 そろそろ休憩も終わりだな。


 『さて、どうしたものか?』


 誰かに相談しよう、舞華さんとか?











 『依頼はお受けします、  ですが、どんな結末になっても後悔しない様、お心を強く持つまで下さい。』


 そのな言葉が返って決意を決めさせた。


 『分かりました、よろしくお願いします。』

 店の外でネコと遊んでる妹に話しを聴こえない様に小声で話す。

 母親の事、実は心配している梨奈。

 これからの為にもハッキリさせたい、逃げずに自分の娘と向き合って欲しい!

 

 でも、それは私の「エゴ」だったかも知れない。

 真相は知らない方があの子が傷つくことは無かったのに…


 『…な~んて心配してませんか、鮎川さん?』

 『勝手に想像して私の気持ちをナレーションしないで下さい!』

 『ごめんね、でも「妹ちゃんのママ」の事はコチラでもは把握しているの。行きがかり上ね。』


 『えっ⁈そうなんですか?』

 拍子抜けした私に畳み掛ける様に話す

 『ちゃんと説明するから座って話さないかな、「アユちゃん」?』
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