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猫ソムリエの憂鬱〜お帰り、松下くん! そして、いらっしゃい、猫神さま⁉︎
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それは突然だけど、必然の如くやって来た。
(いや、忘れてた訳で無いよ。)
『ふむ、久方ぶりに訪れたが、街並みは煌びやかになっても、ひと気が疎じゃの!
まだ、妾の「山」の方が「活気」が有るぞ?
なんせ、可愛い「新入り」も大勢来たしのう。』
『ココ様、どうしますか?
先に食事にしますか?
それともココ様が「ご所望の洋装」を買いに行きますか?』
『そう急かすな、マツよ。
う~む、「かすがや」と言う菓子屋が有るはずじゃ、そこで「手土産」を都合してから「北代の館」に行こうぞ。
知っておるか?「かすがや」だぞ。』
年齢は舞華たちと同じくらいか?
瞳は猫の様にコロコロと表情を変えるも愛らしく、仕草は上品な様で機敏。
実際の年齢は織田信長が桶狭間で今川を倒した頃には「猫神」化していたらしいが…?
狗神さまは平安時代で源氏の大将に力を貸したとか言ってたけど?
とにかく、オレの帰郷に付き合って「ココ様」も「都会見物」したいと言うけど、「鶴亀町」は下町だよな?どちらかと言えば。
『「春日屋」ならコッチです、でも「土産」なら山中で取ってきた山菜やキノコ等が有りますけど?』
触れて無かったが、「マッド松戸」こと松下くんは子供二人くらい入りそうな「大きな葛籠」を背負っている。
中身は松下くんの私物がほんのちょっと、ほとんどが「山の幸」だけど、その重さは百キロ近い⁉︎
『戯け者!そんな「田舎者」丸出しの土産では恥ずかしいであろう?「はいから」な手土産一つ無いとは馬鹿にされるぞ、彼奴に!』
その「お気持ち」は分からなくも無いが、相手の地元の物で「手土産」になるのかな?
『お待ちしておりました、お久しぶりですね。御姫様。』
そんな二人のやり取りをそっと静かに見ていたいが、そろそろ頃合いと見て近づいてきた「迎えの者」、
『おぉ、久美ではないか!』
舞斗たちの母にて、町内の「元ゴロツキ」達から「魔女」とか「鬼子母神」とか言われている鶴亀町の伝説の一人、
旧姓「竹下 久美」
『松下くんも「御守り」ご苦労様ね。お二人をお迎えに参上しましたよ。』
『き、恐縮でス!』
『うむ、大義で有る。だか、ちと待て、「かすがや」で手土産を…』
『「春日屋」さんの和菓子なら既にご用意して有りますから、ご心配無く。』
『そ、そうか?
うむ、相変わらず用意が良いな? …なら!「狛田屋」だ! そこの「駄菓子」とやらを所望するぞ!』
『「狛田商店さん」デスね!
分かりました、行きましょう! えっと、松下くんは大丈夫?その「大荷物」は?』
一応心配で聞いておくが、
『はぁ?大丈夫ですよ?このくらい。』
どうやら、「肉体改造」は成功した様。
あと、ココ様に気に入られたのなら、「性格」も前向きに変わった様ね。
でも皆んな、この「松下くん」が、アノ「マッド松戸」って気がつくかしら?
仮の名前「とうきび」、貰われた先で新しい名前を貰って、幸せになる事を願って「猫カフェ」の仕事に励む。
実は先日、ある「アニマルシェルター」から、
『こちらで保護している動物を数匹引き取る事は出来ないか?』と打診された。
実は多頭飼い飼育崩壊した老人宅から二十数匹保護したのだけど、
思っていた以上に状態が良く無かったらしく「治療や介護」等でスタッフが多忙と成りつつ、他の動物たちの世話が充分に出来なくなったそうで、
現在シェルターで保護している中で、比較的に人間を怖がらず、共に生活出来そうな子だけ、受け入れてもらえないか、
いずれは「譲渡」される事を視野に入れてお願いしたいと言ってきた。
華ちゃんがその「アニマルシェルター」を調べた所、「限界が近いかも?資金的にも、人材的にもね。」
だそうなので、可能な限り受け入れる事にした。
ただ、そのアニマルシェルターって遠方なんだよね?
彼方もウチのホームページを見て、ダメ元で連絡してくれたみたい?
おそらくは他にも声を掛けて、「ウチは駄目だけど「森猫」なら受け入れてくれるかも?」なんて言われたかも?
ソレで今日はこの後、動物たちをお迎えする予定なのね!
シェルターの場所が他県でそこそこ「長距離輸送」なのでコチラで「大型輸送車」を用意し、(ヘル–ダッシャーじゃないよ!)
動物たちに快適で安全な移動方法を選んでお迎えに行く事になった。
すでに朝も早いウチに「大型車両」の運転が出来る鈴木さんと譲渡会担当者や獣医師さん、
ソレに出来るだけ現地の情報も持ち帰って欲しいので、灯火ちゃんにも同行をお願いした、うん、完璧。
事前に聞いた話しだと、どうやらそこでも「譲渡会」やら「里親募集」を行っているけれども、あまり良い結果は見られないらしい。(地域的問題?)
早朝、元気よく出かけた灯火ちゃん、
『途中で、道の駅やサービスエリアで名物食いまくってやる!』
と、言っていた彼女だったのに、行きは良かったらしいけど、「森猫」に戻って来た灯火ちゃん曰く、
『山がな、あんだけどさ、大っきくも無いけど。
「湧水」とか有名で山菜も豊富らしいんだ、けどな?
「遠方」から車で捨てに来る奴もいるらしくてさ。
しかも役場では、子供が襲われるかもって、増えすぎた野犬や野良猫は捕まえて「殺処分」なんだと。
…それとさ、情報集めで町中で聞いたんだけどさ、
犬を捨てに来た飼い主らしき家族が車内で「煉炭自殺」してたらしく、
犬がその車の周りを悲しそうにくるくる回ってたとか…
犬はさ、道連れにしなかったとか、幼い子供は知り合いに預けたとか、何とも言えない事件も有ったらしい。』
と、生気のない目で話し出した⁉︎
あの「鋼の心臓」の持ち主がここまで凹んでしまう惨状って⁉︎
見た目は子供だけど、中身は喧嘩上等なお姉さんの「十六夜 灯火」もかなり弱って帰って来た。
ただ弱っているだけで無い、何かに対して怒ってる、そんな風に見える。
とにかく、こんな灯火ちゃんは初めて見たので、思わずハグった。
『えっと、元気出してよ、灯火ちゃん!』
『ん。』
いつもはウザがるのに黙って抱きしめられている。
動物たちはひとまず、「羽柴ビル」の「森猫予備スペース」に一時的お休みさせる事にし、今の状態を確認!
引き取った犬は小型犬が五匹、大型犬一匹、猫十匹は皆元気だけど、他のお迎えに行ってくれた皆んなも灯火ちゃん同様で「気持ち」が沈みがちだった。
『オイ舞華!「森猫」って、恵まれた環境で「猫カフェ」やれてんだゾ!
そこんとこ、よ~く肝に銘じておけよ!』
灯火ちゃんらしからぬお言葉に泣きそうになった。
そうだよね。
色んな意味で恵まれてるよね。
でも、その数時間後、とんでもない来客がやって来られるのだ⁉︎
『さて、御姫様、ご挨拶はこんなところですかね?』
鶴亀町の顔見知りの挨拶回りは案内役の久美のお陰でスムーズにおわり、「葛籠」の中身もようやく三分の一は配られたが、どうやら残りのほとんどは「北代家」の為の物らしい?
『のう久美よ、聞いたところでは、其方の娘が「猫の茶屋」を営んでるそうだな?
そこに行きたいのだが?』
『ええ、構いませんけど?
その前に御姫様、「洋装」に興味あるって聞きましたが、先にそちらはいかがですか?』
『おおう!よいな!良いな!
流石は久美!妾の事がよく分かっておるな!』
神様といえど女の子?
服に興味あるって鉄板かな。
『私が懇意にしているお店が、「茶屋」の側に有るので、
そこの店主に御姫様に見合うものを献上させますから、色々「試し着」しませう。』
懇意にしていて、「森猫」の近くの店とは?
まぁアソコだよね。
動物たちの受け入れが済み、一休みしてスピカでコーヒーをちびちび飲んでる灯火。
まるでコーヒーが苦くて飲めない幼女の様?
そこに、
『お久しぶりですね、灯火さん!』
と声をかける者がいた?
『ん?どちら様で?』
『嫌だな~? オレですよ、松下です。又の名を「マッド松戸」っスよ!』
『松戸?松下?アレ、髪切った?』
中々、記憶の中の「松下くん」とは一致しない?
もはや別人かも?
『はぁ、まぁ、伸ばし放題だったので、下山する際に鬱陶しいので切りましたが?そんなに可笑しいですか?』
声も「ハリ」が有って聞き取り易い。
以前は滑舌が悪くて、語尾が「モゴモゴ」した発音。
口の中で篭りがちな、聞き取り辛い話し方だったし、俯いて喋るから更に聞き取り辛かったのが、
今は顔を上げ、正面から向き合って話しかけて来た。
産まれ変わったのかと思う程、別人だ。 なんせ「オーラ」すら違うくらいだし?
いや、見えないよ!そんな気がするだけ。
少なくとも「陰気」な感じは無くなった、「活力」が満ちてる感じかな?
そんな事は本人には教えない!何か悔しいから?
『何だ、元気そうで面白く無いな? てっきり山の生活や猫神たちに振り回されて、精魂尽きてボロボロになっていると思っていたのに。』
嫌味が言えるくらいには回復したが、弱ってるところを見られて少し恥ずかしい彼女に、
『あ、相席良いですか?
すいませ~ん、この「アイムの日替りランチ」お願いしまーす!』と灯火のいるテーブルの対面席に座る。
『いや~、確かに色々と大変でしたけどね。
アレでココ様って面倒見がいいから「隠し湯」の場所とか、
滋養にいい「苦い野草」を美味しく食べる方法とか教えてくれたりと、ぎりぎりヤッてこれただけですよ?』
『ふ~ん?惚気か?』
久しぶりに会ったら、山中での「苦行」に労いの言葉をと思っていたが…
『…で、「秘境サバイバル生活」は終わりにするのか?』
『はぁ~、ソレなんですが?』
『ん? 何だ、山ん中で「新ネタ」でも思いついたか?』
『いえ、実は「あの場所」の正式な管理人にならないかって、あの山の持ち主さんに言われたんです。
月二十万で諸経費は別に申告すれば全額出すからと。
あ!
ソレとあくまで見せれる範囲で「秘境サバイバル生活」をTVやネットで毎週公開しないかって、下白岩さんが提案していただきまして、それは「撮れ高」で支払うからって?
何でも、地域の視聴者以外に他県の視聴者が増えたらしいですよ?』
知ってる、放送そのものは見ていないが、「キャンパー芸人」が推してる山系●ーチューバーで話題になってると小町から聞いたし。
『スゲーじゃん、これで会津若松のおっかさんに仕送り出来るな?』
『いや、オレ足立区産まれですから?何ですか、会津って?』
『ボヤやんの故郷だ、知らない?』
すると、
『ハイ、お待たせしました♡
「アイムの日替りランチ」です! 旗は「特別サービス」デス!』
とスピカの小さな看板娘が「お子様ランチ」を運んで来た?
『え?「お子様ランチ」だよね、コレ?』
コレ間違ってないって顔で愛夢とお子様ランチを交互にみる松下と
『いいんだよ、コレで!
しかも「旗付き」はレアだぞ!
やったな、松下! ウヒヒヒッ!』
意地悪そうにわらう灯火。
『だから、量は「大人サイズ」ですよ?昇太郎お兄ちゃん。』
『え?何で名前を⁉︎』
『だって愛夢、「秘境サバイバル生活」ユーチュー○で見てるモン♪』
ここのマスターはアウトドアが趣味なんで、ビルの屋上で「お家キャンプ」とか、それこそ以前は松下くんが拉致された山中で山菜摘みに勤しんでいた頃も有る。
実は松下くんが最初に寝泊まりしていた「山小屋」は北代パパや蒼介、順也たちが建てたのだ。
『ハイ!サイン下さい!「愛夢さんへ」って、お願いします!』
『なるほど、「アイム」ってお嬢さんの名前なんだ。良い名前だね、するとコレはお嬢さんが作ってくれたのかな? んっと、ハイ書けた。コレでいい?』
『わぁ~♪ありがとう! ううん、料理したのはパパなの。
愛夢はね、メニューを考えただけなの。』
店内に「癒し」の波動が広がる、「萌え萌えキュン」しなくても美味しくなったよ!
『…ん?お前、そういえば誰かと一緒に下山したのか?』
確か松下一人では結界の外に出れないハズだが?
『ハイ、ココ様とタツマキさんと下山しました。タツマキさんは途中で
「諸用を済ませてくる。」って、別れました。
ココ様はお知り合いとこの上の「猫カフェ」に行ってますよ。』
『…そっか。』
知らなかった事にしよう!
あの子型タイフーンと一緒では身が持たんからな?
『う~ん、美味~い!久しぶりに食べた「都会の味」だ!』
平和な奴め?
『あ、そうだ。 なぁ松下、お前がいた「ボロアパート」な、燃えちまったぞ。』
『へ~… えっ⁉︎』
『いらっしゃいませ、猫カフェ「森の猫さま」へ、ようこそ! …って、お母さん? どしたの?』
おや?何やら可愛い女の子を連れて来た?
さてはナンパしたな?
『ん?ちょっと「太客」連れてきたよ。舞華は会うの十年振りかな?』
眼帯とか付けてたら「立派な厨二病」的な方の黒ゴスロリな服、
瞳はパッチリ、八重歯が見え隠れしているさくらんぼみたいな唇!
ちょっと人間離れした可愛らしさ、美しさを感じる?
(アララ、コレ、人間じゃないかも?)
『なんだ舞華、暫く見ぬ間に大きくなりおって、「可愛い童」の舞華が抱きしめたかったのだが?』
『今は可愛くないと?』
ちょっと意地悪く聞いてみると、
『そ、そんな事はないぞ?ほ、ほら、妾と並んで見るとまるで姉妹の様な?』
うん、気を使わせたかな?
『ハイハイ!細い話しは後アト! 入り口で詰まってないて中に入りますよ、御姫様!』
御姫様って、お母さんが呼んでいるって事はアッチの側の人なんだろうなぁ~?やっぱり。
ん?人じゃないのか?
『う、うむ。 そうだ、舞華や、払いはコレで頼む。
先程から「マツ」に払わせていたので、手持ちはコレしかないのじゃ。』
『もう~!誘ったのは私だから私が払いますから、御姫様は心配無しデスよ!』
なんてやり取りしている母たち。
なんだかな?楽しそう。
ん?「御姫様」が手に持っているの、「小判」かな?
時代によって、金の含有量が違うらしいから換金率が…?
って、そんな問題じゃないな⁉︎
『はぁ~、俺の私物は無事だったんだ!よ、良かった~⁉︎』
『ああ、お前の部屋とは反対側が火元でな、丁度半分くらい延焼した所で鎮火したんだ。
アパートは一度更地にして立て直すから、無事だったお前の「私物」はコチラで保管させてもらったのだ。
隣りの住人なんて火はまわって無いモノの、半分程は消化の際の放水で水浸しになった荷物を目の前にして、遠い目をしていたからな?
お前、憑いてるぞ。』
『はあ?そうなんですかね?で、今日オレどこで寝れば?』
ココは羽柴ビルの地下一階、古本屋の隣りの「空き店舗」。
ココに一時的に松下君の部屋にあった布団から鍋やら家具等保管している、まるで「引越し業者」が専用の「段ボール箱」に入れて運んだ様に?
『箱詰めするとこんなモンなんですね?思った以上に少ないな。』
部屋の私物が全て入っていると言う段ボール箱は六箱?
そんなモンか?
『冷蔵庫の中身は棄てたぞ、腐ってたからな。
あと、「エッチな本やDVD」も棄て、いや売った。ほれ、明細と金だ。』
『え?』
と言う灯火から渡された封筒には一万とんで五十円入っている。
『さすがにアノ量は引くぞ。ココは年頃の娘たちが多いから、今後のお前の為にも売り払った。
それと服は一度娘たちが洗濯してから仕舞い直した。
アイロンがけとかしていたからな、後で礼を言っておけよ。』
『え、えっと、どちらのお嬢さんデスか?』
『ん?ああ、隣りの「古本屋」でバイトしてる娘や前にお前を「捕縛」した私の妹らだ。
そうそう、さっき食事していた喫茶店の娘も協力してくれたぞ。なんせココの洗濯機を借りたからな!』
『さっきの女の子ですか⁉︎
しし下着とかもデスか?』
『そうなんじゃないか?』
相手が解るとめちゃくちゃ恥ずかしい⁉︎
『恥ずかしいのは、私だぞ?
兎に角、大量のエ○DVDを中古買い取り店に持って行ったんだからな! …お前、趣味が偏って「コスプレモノ」や「擬似炉り」とか…』
『うわーー!わぁー!違いますっ!アレは引っ越しする芸人仲間からもらったモンです!オレの趣味とは違いまふっ!』
『苦しい言い訳だな? でも、あのセレクトだと「私」なんて「どストライク」なんじゃないか?フフン! あっと、お前のじゃないのか? じゃあ、私なんて眼中無いな。』
『そ、そんな事はありません! 灯火さん、実は次にお会いした時に言おうと思っていた事が有りまして!』
『…? そうか?奇遇だな、私も有るぞ、お前に言う事が。』
『えっ! そ、それって⁉︎』
そこに、
『あ、いたいた!灯火姐さん、大変だ!
あの犬、妊娠してるぜ!』
何かイイ雰囲気な所に舞斗が慌てた様子で駆け込んできた!
『そうなのか?私は気づかなかったし、アッチでも、そんな事言わなかったぞ⁉︎ 』
『いま、愛葉先生が診察してくれてるけど、間違い無いらしいぜ?
で、今容態がよろしく無いらしい?
同行した新米の獣医が華に絞られてるってオロオロし出して、「山王院系列」から呼んだ獣医だしな。』
『華に怒られるとか、今はそんな事後回しだろ?
分かった、今いく。松下、お前を来い。』
『ハイ!』
急に切迫した状況にお互いの「言いたい事」は聞けなかった。
但し、この時は猫カフェに「猫神」が来店している「偶然」は正に「必然」だったのではとしか思えなかった。
『こちら「ウェルカムティー」でございます。』
母と「太客」の前に「森猫」自慢のハーブティーを置くと、
『あの、以前お会いしたのは私が幼い頃と聞いたのですが、お客様は今「お幾つ」なんですか?』
失礼と思いながらも、聞かずにはいられない舞華。
『忘れたのう? ぐびぐび、おぉ!何だ、この茶は!何か「スゥ~」ってするのう!「ハッカ」じゃな!』
『ええと、ミントを少し加えて有りますから。 ソレと「豆乳クッキー」も有りますから、お召し上がりくださいね。』
う~ん、私、物覚えは良い方なのに、この美少女の事が思い出せない?
あと、不思議と「趣旨」が動かない?
なんだろう、割と「好み」の容姿なのに?
アレだな、本能的に「ヤバい相手」と認識しているのかもしれない?
「ケモっ子たち」と会った時に感じた「萌え萌えキュン」な感じは全く無い。
『さて舞華よ、お主の「値踏み」が終わるのを待って居られない様だ。』
『はひ?何か失礼が有りましたか?お気を悪くされたならゴメンなさい!』
『そうでは無い、この近くで消えかかっている「命二つ」を感じたのだ。妾の助けが有るやも?心当たりは無いかのう?』
『二つ?消えそうな?』
サッパリである。しかし、
『にゃにゃ‼︎』
『ん?虎丸、どうしたの?』
『ほう、其方が案内してくれるとな。』
いつの間に、私の側に来ていた虎ちゃん⁉︎
この子、「おはよう」から「おやすみ」まで私の暮らしを見守ってるんじゃないってくらい、ここぞって時に現れるんだよね?
じつは「バイリンキャット」だって告白されても驚かないよ?
『何をしている舞華!妾に付いて参れ!』
『ははぁー!』
『いってらっしゃぁ~い!』
『何しておる、久美、お前も来るのじゃ!』
(いや、忘れてた訳で無いよ。)
『ふむ、久方ぶりに訪れたが、街並みは煌びやかになっても、ひと気が疎じゃの!
まだ、妾の「山」の方が「活気」が有るぞ?
なんせ、可愛い「新入り」も大勢来たしのう。』
『ココ様、どうしますか?
先に食事にしますか?
それともココ様が「ご所望の洋装」を買いに行きますか?』
『そう急かすな、マツよ。
う~む、「かすがや」と言う菓子屋が有るはずじゃ、そこで「手土産」を都合してから「北代の館」に行こうぞ。
知っておるか?「かすがや」だぞ。』
年齢は舞華たちと同じくらいか?
瞳は猫の様にコロコロと表情を変えるも愛らしく、仕草は上品な様で機敏。
実際の年齢は織田信長が桶狭間で今川を倒した頃には「猫神」化していたらしいが…?
狗神さまは平安時代で源氏の大将に力を貸したとか言ってたけど?
とにかく、オレの帰郷に付き合って「ココ様」も「都会見物」したいと言うけど、「鶴亀町」は下町だよな?どちらかと言えば。
『「春日屋」ならコッチです、でも「土産」なら山中で取ってきた山菜やキノコ等が有りますけど?』
触れて無かったが、「マッド松戸」こと松下くんは子供二人くらい入りそうな「大きな葛籠」を背負っている。
中身は松下くんの私物がほんのちょっと、ほとんどが「山の幸」だけど、その重さは百キロ近い⁉︎
『戯け者!そんな「田舎者」丸出しの土産では恥ずかしいであろう?「はいから」な手土産一つ無いとは馬鹿にされるぞ、彼奴に!』
その「お気持ち」は分からなくも無いが、相手の地元の物で「手土産」になるのかな?
『お待ちしておりました、お久しぶりですね。御姫様。』
そんな二人のやり取りをそっと静かに見ていたいが、そろそろ頃合いと見て近づいてきた「迎えの者」、
『おぉ、久美ではないか!』
舞斗たちの母にて、町内の「元ゴロツキ」達から「魔女」とか「鬼子母神」とか言われている鶴亀町の伝説の一人、
旧姓「竹下 久美」
『松下くんも「御守り」ご苦労様ね。お二人をお迎えに参上しましたよ。』
『き、恐縮でス!』
『うむ、大義で有る。だか、ちと待て、「かすがや」で手土産を…』
『「春日屋」さんの和菓子なら既にご用意して有りますから、ご心配無く。』
『そ、そうか?
うむ、相変わらず用意が良いな? …なら!「狛田屋」だ! そこの「駄菓子」とやらを所望するぞ!』
『「狛田商店さん」デスね!
分かりました、行きましょう! えっと、松下くんは大丈夫?その「大荷物」は?』
一応心配で聞いておくが、
『はぁ?大丈夫ですよ?このくらい。』
どうやら、「肉体改造」は成功した様。
あと、ココ様に気に入られたのなら、「性格」も前向きに変わった様ね。
でも皆んな、この「松下くん」が、アノ「マッド松戸」って気がつくかしら?
仮の名前「とうきび」、貰われた先で新しい名前を貰って、幸せになる事を願って「猫カフェ」の仕事に励む。
実は先日、ある「アニマルシェルター」から、
『こちらで保護している動物を数匹引き取る事は出来ないか?』と打診された。
実は多頭飼い飼育崩壊した老人宅から二十数匹保護したのだけど、
思っていた以上に状態が良く無かったらしく「治療や介護」等でスタッフが多忙と成りつつ、他の動物たちの世話が充分に出来なくなったそうで、
現在シェルターで保護している中で、比較的に人間を怖がらず、共に生活出来そうな子だけ、受け入れてもらえないか、
いずれは「譲渡」される事を視野に入れてお願いしたいと言ってきた。
華ちゃんがその「アニマルシェルター」を調べた所、「限界が近いかも?資金的にも、人材的にもね。」
だそうなので、可能な限り受け入れる事にした。
ただ、そのアニマルシェルターって遠方なんだよね?
彼方もウチのホームページを見て、ダメ元で連絡してくれたみたい?
おそらくは他にも声を掛けて、「ウチは駄目だけど「森猫」なら受け入れてくれるかも?」なんて言われたかも?
ソレで今日はこの後、動物たちをお迎えする予定なのね!
シェルターの場所が他県でそこそこ「長距離輸送」なのでコチラで「大型輸送車」を用意し、(ヘル–ダッシャーじゃないよ!)
動物たちに快適で安全な移動方法を選んでお迎えに行く事になった。
すでに朝も早いウチに「大型車両」の運転が出来る鈴木さんと譲渡会担当者や獣医師さん、
ソレに出来るだけ現地の情報も持ち帰って欲しいので、灯火ちゃんにも同行をお願いした、うん、完璧。
事前に聞いた話しだと、どうやらそこでも「譲渡会」やら「里親募集」を行っているけれども、あまり良い結果は見られないらしい。(地域的問題?)
早朝、元気よく出かけた灯火ちゃん、
『途中で、道の駅やサービスエリアで名物食いまくってやる!』
と、言っていた彼女だったのに、行きは良かったらしいけど、「森猫」に戻って来た灯火ちゃん曰く、
『山がな、あんだけどさ、大っきくも無いけど。
「湧水」とか有名で山菜も豊富らしいんだ、けどな?
「遠方」から車で捨てに来る奴もいるらしくてさ。
しかも役場では、子供が襲われるかもって、増えすぎた野犬や野良猫は捕まえて「殺処分」なんだと。
…それとさ、情報集めで町中で聞いたんだけどさ、
犬を捨てに来た飼い主らしき家族が車内で「煉炭自殺」してたらしく、
犬がその車の周りを悲しそうにくるくる回ってたとか…
犬はさ、道連れにしなかったとか、幼い子供は知り合いに預けたとか、何とも言えない事件も有ったらしい。』
と、生気のない目で話し出した⁉︎
あの「鋼の心臓」の持ち主がここまで凹んでしまう惨状って⁉︎
見た目は子供だけど、中身は喧嘩上等なお姉さんの「十六夜 灯火」もかなり弱って帰って来た。
ただ弱っているだけで無い、何かに対して怒ってる、そんな風に見える。
とにかく、こんな灯火ちゃんは初めて見たので、思わずハグった。
『えっと、元気出してよ、灯火ちゃん!』
『ん。』
いつもはウザがるのに黙って抱きしめられている。
動物たちはひとまず、「羽柴ビル」の「森猫予備スペース」に一時的お休みさせる事にし、今の状態を確認!
引き取った犬は小型犬が五匹、大型犬一匹、猫十匹は皆元気だけど、他のお迎えに行ってくれた皆んなも灯火ちゃん同様で「気持ち」が沈みがちだった。
『オイ舞華!「森猫」って、恵まれた環境で「猫カフェ」やれてんだゾ!
そこんとこ、よ~く肝に銘じておけよ!』
灯火ちゃんらしからぬお言葉に泣きそうになった。
そうだよね。
色んな意味で恵まれてるよね。
でも、その数時間後、とんでもない来客がやって来られるのだ⁉︎
『さて、御姫様、ご挨拶はこんなところですかね?』
鶴亀町の顔見知りの挨拶回りは案内役の久美のお陰でスムーズにおわり、「葛籠」の中身もようやく三分の一は配られたが、どうやら残りのほとんどは「北代家」の為の物らしい?
『のう久美よ、聞いたところでは、其方の娘が「猫の茶屋」を営んでるそうだな?
そこに行きたいのだが?』
『ええ、構いませんけど?
その前に御姫様、「洋装」に興味あるって聞きましたが、先にそちらはいかがですか?』
『おおう!よいな!良いな!
流石は久美!妾の事がよく分かっておるな!』
神様といえど女の子?
服に興味あるって鉄板かな。
『私が懇意にしているお店が、「茶屋」の側に有るので、
そこの店主に御姫様に見合うものを献上させますから、色々「試し着」しませう。』
懇意にしていて、「森猫」の近くの店とは?
まぁアソコだよね。
動物たちの受け入れが済み、一休みしてスピカでコーヒーをちびちび飲んでる灯火。
まるでコーヒーが苦くて飲めない幼女の様?
そこに、
『お久しぶりですね、灯火さん!』
と声をかける者がいた?
『ん?どちら様で?』
『嫌だな~? オレですよ、松下です。又の名を「マッド松戸」っスよ!』
『松戸?松下?アレ、髪切った?』
中々、記憶の中の「松下くん」とは一致しない?
もはや別人かも?
『はぁ、まぁ、伸ばし放題だったので、下山する際に鬱陶しいので切りましたが?そんなに可笑しいですか?』
声も「ハリ」が有って聞き取り易い。
以前は滑舌が悪くて、語尾が「モゴモゴ」した発音。
口の中で篭りがちな、聞き取り辛い話し方だったし、俯いて喋るから更に聞き取り辛かったのが、
今は顔を上げ、正面から向き合って話しかけて来た。
産まれ変わったのかと思う程、別人だ。 なんせ「オーラ」すら違うくらいだし?
いや、見えないよ!そんな気がするだけ。
少なくとも「陰気」な感じは無くなった、「活力」が満ちてる感じかな?
そんな事は本人には教えない!何か悔しいから?
『何だ、元気そうで面白く無いな? てっきり山の生活や猫神たちに振り回されて、精魂尽きてボロボロになっていると思っていたのに。』
嫌味が言えるくらいには回復したが、弱ってるところを見られて少し恥ずかしい彼女に、
『あ、相席良いですか?
すいませ~ん、この「アイムの日替りランチ」お願いしまーす!』と灯火のいるテーブルの対面席に座る。
『いや~、確かに色々と大変でしたけどね。
アレでココ様って面倒見がいいから「隠し湯」の場所とか、
滋養にいい「苦い野草」を美味しく食べる方法とか教えてくれたりと、ぎりぎりヤッてこれただけですよ?』
『ふ~ん?惚気か?』
久しぶりに会ったら、山中での「苦行」に労いの言葉をと思っていたが…
『…で、「秘境サバイバル生活」は終わりにするのか?』
『はぁ~、ソレなんですが?』
『ん? 何だ、山ん中で「新ネタ」でも思いついたか?』
『いえ、実は「あの場所」の正式な管理人にならないかって、あの山の持ち主さんに言われたんです。
月二十万で諸経費は別に申告すれば全額出すからと。
あ!
ソレとあくまで見せれる範囲で「秘境サバイバル生活」をTVやネットで毎週公開しないかって、下白岩さんが提案していただきまして、それは「撮れ高」で支払うからって?
何でも、地域の視聴者以外に他県の視聴者が増えたらしいですよ?』
知ってる、放送そのものは見ていないが、「キャンパー芸人」が推してる山系●ーチューバーで話題になってると小町から聞いたし。
『スゲーじゃん、これで会津若松のおっかさんに仕送り出来るな?』
『いや、オレ足立区産まれですから?何ですか、会津って?』
『ボヤやんの故郷だ、知らない?』
すると、
『ハイ、お待たせしました♡
「アイムの日替りランチ」です! 旗は「特別サービス」デス!』
とスピカの小さな看板娘が「お子様ランチ」を運んで来た?
『え?「お子様ランチ」だよね、コレ?』
コレ間違ってないって顔で愛夢とお子様ランチを交互にみる松下と
『いいんだよ、コレで!
しかも「旗付き」はレアだぞ!
やったな、松下! ウヒヒヒッ!』
意地悪そうにわらう灯火。
『だから、量は「大人サイズ」ですよ?昇太郎お兄ちゃん。』
『え?何で名前を⁉︎』
『だって愛夢、「秘境サバイバル生活」ユーチュー○で見てるモン♪』
ここのマスターはアウトドアが趣味なんで、ビルの屋上で「お家キャンプ」とか、それこそ以前は松下くんが拉致された山中で山菜摘みに勤しんでいた頃も有る。
実は松下くんが最初に寝泊まりしていた「山小屋」は北代パパや蒼介、順也たちが建てたのだ。
『ハイ!サイン下さい!「愛夢さんへ」って、お願いします!』
『なるほど、「アイム」ってお嬢さんの名前なんだ。良い名前だね、するとコレはお嬢さんが作ってくれたのかな? んっと、ハイ書けた。コレでいい?』
『わぁ~♪ありがとう! ううん、料理したのはパパなの。
愛夢はね、メニューを考えただけなの。』
店内に「癒し」の波動が広がる、「萌え萌えキュン」しなくても美味しくなったよ!
『…ん?お前、そういえば誰かと一緒に下山したのか?』
確か松下一人では結界の外に出れないハズだが?
『ハイ、ココ様とタツマキさんと下山しました。タツマキさんは途中で
「諸用を済ませてくる。」って、別れました。
ココ様はお知り合いとこの上の「猫カフェ」に行ってますよ。』
『…そっか。』
知らなかった事にしよう!
あの子型タイフーンと一緒では身が持たんからな?
『う~ん、美味~い!久しぶりに食べた「都会の味」だ!』
平和な奴め?
『あ、そうだ。 なぁ松下、お前がいた「ボロアパート」な、燃えちまったぞ。』
『へ~… えっ⁉︎』
『いらっしゃいませ、猫カフェ「森の猫さま」へ、ようこそ! …って、お母さん? どしたの?』
おや?何やら可愛い女の子を連れて来た?
さてはナンパしたな?
『ん?ちょっと「太客」連れてきたよ。舞華は会うの十年振りかな?』
眼帯とか付けてたら「立派な厨二病」的な方の黒ゴスロリな服、
瞳はパッチリ、八重歯が見え隠れしているさくらんぼみたいな唇!
ちょっと人間離れした可愛らしさ、美しさを感じる?
(アララ、コレ、人間じゃないかも?)
『なんだ舞華、暫く見ぬ間に大きくなりおって、「可愛い童」の舞華が抱きしめたかったのだが?』
『今は可愛くないと?』
ちょっと意地悪く聞いてみると、
『そ、そんな事はないぞ?ほ、ほら、妾と並んで見るとまるで姉妹の様な?』
うん、気を使わせたかな?
『ハイハイ!細い話しは後アト! 入り口で詰まってないて中に入りますよ、御姫様!』
御姫様って、お母さんが呼んでいるって事はアッチの側の人なんだろうなぁ~?やっぱり。
ん?人じゃないのか?
『う、うむ。 そうだ、舞華や、払いはコレで頼む。
先程から「マツ」に払わせていたので、手持ちはコレしかないのじゃ。』
『もう~!誘ったのは私だから私が払いますから、御姫様は心配無しデスよ!』
なんてやり取りしている母たち。
なんだかな?楽しそう。
ん?「御姫様」が手に持っているの、「小判」かな?
時代によって、金の含有量が違うらしいから換金率が…?
って、そんな問題じゃないな⁉︎
『はぁ~、俺の私物は無事だったんだ!よ、良かった~⁉︎』
『ああ、お前の部屋とは反対側が火元でな、丁度半分くらい延焼した所で鎮火したんだ。
アパートは一度更地にして立て直すから、無事だったお前の「私物」はコチラで保管させてもらったのだ。
隣りの住人なんて火はまわって無いモノの、半分程は消化の際の放水で水浸しになった荷物を目の前にして、遠い目をしていたからな?
お前、憑いてるぞ。』
『はあ?そうなんですかね?で、今日オレどこで寝れば?』
ココは羽柴ビルの地下一階、古本屋の隣りの「空き店舗」。
ココに一時的に松下君の部屋にあった布団から鍋やら家具等保管している、まるで「引越し業者」が専用の「段ボール箱」に入れて運んだ様に?
『箱詰めするとこんなモンなんですね?思った以上に少ないな。』
部屋の私物が全て入っていると言う段ボール箱は六箱?
そんなモンか?
『冷蔵庫の中身は棄てたぞ、腐ってたからな。
あと、「エッチな本やDVD」も棄て、いや売った。ほれ、明細と金だ。』
『え?』
と言う灯火から渡された封筒には一万とんで五十円入っている。
『さすがにアノ量は引くぞ。ココは年頃の娘たちが多いから、今後のお前の為にも売り払った。
それと服は一度娘たちが洗濯してから仕舞い直した。
アイロンがけとかしていたからな、後で礼を言っておけよ。』
『え、えっと、どちらのお嬢さんデスか?』
『ん?ああ、隣りの「古本屋」でバイトしてる娘や前にお前を「捕縛」した私の妹らだ。
そうそう、さっき食事していた喫茶店の娘も協力してくれたぞ。なんせココの洗濯機を借りたからな!』
『さっきの女の子ですか⁉︎
しし下着とかもデスか?』
『そうなんじゃないか?』
相手が解るとめちゃくちゃ恥ずかしい⁉︎
『恥ずかしいのは、私だぞ?
兎に角、大量のエ○DVDを中古買い取り店に持って行ったんだからな! …お前、趣味が偏って「コスプレモノ」や「擬似炉り」とか…』
『うわーー!わぁー!違いますっ!アレは引っ越しする芸人仲間からもらったモンです!オレの趣味とは違いまふっ!』
『苦しい言い訳だな? でも、あのセレクトだと「私」なんて「どストライク」なんじゃないか?フフン! あっと、お前のじゃないのか? じゃあ、私なんて眼中無いな。』
『そ、そんな事はありません! 灯火さん、実は次にお会いした時に言おうと思っていた事が有りまして!』
『…? そうか?奇遇だな、私も有るぞ、お前に言う事が。』
『えっ! そ、それって⁉︎』
そこに、
『あ、いたいた!灯火姐さん、大変だ!
あの犬、妊娠してるぜ!』
何かイイ雰囲気な所に舞斗が慌てた様子で駆け込んできた!
『そうなのか?私は気づかなかったし、アッチでも、そんな事言わなかったぞ⁉︎ 』
『いま、愛葉先生が診察してくれてるけど、間違い無いらしいぜ?
で、今容態がよろしく無いらしい?
同行した新米の獣医が華に絞られてるってオロオロし出して、「山王院系列」から呼んだ獣医だしな。』
『華に怒られるとか、今はそんな事後回しだろ?
分かった、今いく。松下、お前を来い。』
『ハイ!』
急に切迫した状況にお互いの「言いたい事」は聞けなかった。
但し、この時は猫カフェに「猫神」が来店している「偶然」は正に「必然」だったのではとしか思えなかった。
『こちら「ウェルカムティー」でございます。』
母と「太客」の前に「森猫」自慢のハーブティーを置くと、
『あの、以前お会いしたのは私が幼い頃と聞いたのですが、お客様は今「お幾つ」なんですか?』
失礼と思いながらも、聞かずにはいられない舞華。
『忘れたのう? ぐびぐび、おぉ!何だ、この茶は!何か「スゥ~」ってするのう!「ハッカ」じゃな!』
『ええと、ミントを少し加えて有りますから。 ソレと「豆乳クッキー」も有りますから、お召し上がりくださいね。』
う~ん、私、物覚えは良い方なのに、この美少女の事が思い出せない?
あと、不思議と「趣旨」が動かない?
なんだろう、割と「好み」の容姿なのに?
アレだな、本能的に「ヤバい相手」と認識しているのかもしれない?
「ケモっ子たち」と会った時に感じた「萌え萌えキュン」な感じは全く無い。
『さて舞華よ、お主の「値踏み」が終わるのを待って居られない様だ。』
『はひ?何か失礼が有りましたか?お気を悪くされたならゴメンなさい!』
『そうでは無い、この近くで消えかかっている「命二つ」を感じたのだ。妾の助けが有るやも?心当たりは無いかのう?』
『二つ?消えそうな?』
サッパリである。しかし、
『にゃにゃ‼︎』
『ん?虎丸、どうしたの?』
『ほう、其方が案内してくれるとな。』
いつの間に、私の側に来ていた虎ちゃん⁉︎
この子、「おはよう」から「おやすみ」まで私の暮らしを見守ってるんじゃないってくらい、ここぞって時に現れるんだよね?
じつは「バイリンキャット」だって告白されても驚かないよ?
『何をしている舞華!妾に付いて参れ!』
『ははぁー!』
『いってらっしゃぁ~い!』
『何しておる、久美、お前も来るのじゃ!』
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