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終焉でアリマス! 〜また何処かで⁈

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 おかしい?


 ここしばらく愛おしい妻子姫乃と岳斗に会えていないのですが?
 
 何故かな、ねぇ斗真の兄貴?

 北へ東へ、西へ南へと、彼方此方のスーパーで【実演販売】をいる俺?

 最近ではドラッグストアの店頭で猫缶の実演販売までした。

 (現地の保護猫サン、ご協力ありがとうございました!)

 まぁ実働は1日8時間だけど、各地への移動時間とか、現地で一泊とかの拘束時間は含まれていないらしい?

 (地味にブラックだよな?)


 但し、遠方での【実販】はその場所でのホテルや旅館を手配されているので、空いた時間で家族に土産を購入したり、玩具コーナーでフックトイを漁ったり、その土地のモノに舌鼓を打ったりと小旅行気分で楽しくも有るのだけど?




 姫乃は今度こそは通常出産を経験したいと、【健康なカラダ作り】に励んでいる。

 …多分、岳斗にはそのうちに弟か妹が出来るだろう、いや両方かも知れない。

 俺も頑張るつもりだ。


 ちなみに育児や家事、学業等の各サポートをメイドロボ子たちが良くやってくれている様で、あまり心配しなくても良さそうなんだが、会えない時間が愛を育むらしく、スマホのカメラ通話で無くて、実物に会って、触れたいのだ!


 「京多さん、今度はこの衣装を着て、ご当地ヒーローと共演して下さいって!」

 「あいよ。」

 助手がせっつく?

 クラッシャー口を覆っている部分を外して俺が調理したモノを食するローカルヒーロー⁈

 最近では、ご当地ヒーロー以外にも、ご当地のゆるキャラやローカルアイドルともしたよ?

 の趣味だろうか、その土地の地域活性化の一環か、やたらと【タイアップ】的な事が増えてきた⁈



 「京多さん、次は薩摩隼人が喜びそうな、薩摩焼酎に合う感じにアレンジして下さい!」

 「無茶振りするな、この【ブリキ野郎】めがっ!」

 忙しくて、ついな助手に当たってしまう、いけないいけない!

 「いえ、外皮はシリコンですよ。

 内部骨格もチタンやタングステンなどを使用してますが?」

 …だって。

 特に気にしてないらしい?

 コイツはロボっ娘メイドの機で、俺の助手兼秘書兼執事兼用心棒として、灯火サンがで貸してくれた少年アンドロイド【ケンゴ】君だ!


 当初名前が無かったのだけど、何故か斗真兄さんと那由多兄貴が、

 「サイボーグでは無いけど、弟だったらケンゴが良いだろう!」

 と決めてしまったのだ。


 …俺ので変身とか武器を装備出来るらしい?

 (相棒のジャガー大型猫種はいない様だ)

 見た目は中高生の男子なんだが、俺にくっついて【実販】を手伝っている所為か、


 「キャ~、ケンゴくぅ~ん、こち向いてぇ~!」

 「ケンゴきゅ~ん、握手して~!」


 「きっと、あの男の人俺の事らしいと素敵な関係なのよ?」


 …なんかケンゴの奴、妙なお姉さん方に推し活され始めてきたよ?

 
 ご当地ヒーローには、その場所に関わるモノを全面に取り入れたコスチュームのヒーローが多い!

 その土地に産まれた【サムライ】をモチーフにデザインされたヒーローやその土地の特産物をモチーフしたを隠さないモノなどが殆どである。


 その辺も踏まえて、暗に相手をイジりながら料理を作ると受ける!

 「…あのぅ~、味にアクセントをつけたいんで、その肩の、分けてもらってもよろしいですか?」

 「ええぇ~⁇」

 など、奇抜なデザインにコチラもボケをかましてみたりするのだ。

 あと、そのヒーローに寄せた衣装を身に付けるのも、好評の様だ?


 「あっ、この兜って、段ボールだったんですね⁈

 軽くて助かりましたよ⁈」


 …中の人などいないが、素材には遠慮なくボケ倒しておくのが、俺の必勝スタイルだ!

 まぁ、たまに滑るけどな。





 「お疲れ様でした、京多サン!

 明日は地元に戻れますよ!」

 やっとか!


 「…ケンゴ、さっきは酷い事を言って悪かったな!

 少し休んでくれ。」

 アイツはマシーン、血は通って無いがソノ身体には熱い友情が…

 「ボクはでは有りませんから、休まなくとも大丈夫ですよ。」

 フッ、強がりやがって…

 「…お小遣いをあげやう!

 コレでお姉さんたちにお土産でも買ってあげな…」

 「姉も人間では有りませんから、その様な気遣いは… 」

 ブチっ!

 「黙って言う事を聞くのだ!」

 ちょっと大きな声を出してしまった。


 すると、

 「キャ~、やっぱりそういう関係なんだわ~⁈」

 …えっと、違いますよ?



 とにかく、明日は東京に戻れるそうだ。

 現地のスタッフさんにもらったご当地ヒーローのソフビ人形(限定品)は岳斗のいい土産になる!


 「京多さん、一度ご自宅に寄って頂きまして、ソレから下見がてら【スーパーれおぱるど】の鶴亀店に挨拶に行きましょう。」


 …レオパルド?


 「聞かない名前のスーパーだな?

 新規のお客様か?」


 「ハイ、まだ歴史の浅い個人経営のスーパーの様ですが、京多サンを強くご指名だそうです。」


 「…ふ~ん、そなの?」

 実のところ、我が社で【実演販売】を担当しているのは俺以外にも数人いるが、


 まぁ俺ほど場を沸かしていないのだ。


 そもそも斗真兄さんが立ち上げた【販売促進チーム】なのだが、当の斗真兄さん曰く、「人気通販番組の真似止まりで、決して悪くは無いが飛び抜けていない」んだそうだ?

 まぁ、昭和の頃に街中で行われていた【名人芸】を目指す様に言われていたが、そんな観た事も無いモノを引き合いに出されてもみんな困るだろう?

 「京多を見ろ! 

 仕事だと思うから無駄に力んでしまうんだ!

 恥も恥ずかしさも無く、自分自身も楽しんでいる、だから観てる方も引き込まれるんだ!」



 …ぇ~、そんな事思ってやってませんよ?

 (ってか、コレ褒めてるのか?)

 はぁ~、斗真兄さんにはそう見えてるのか?

 全ては愛する妻と子供の為なんですがね?

 と、とにかく、そういう事らしい?




 【スーパーれおぱるど】の一室を借りて、明日の実演販売の構想を考える。

 俺の場合は前日の営業時間中に店内の様子などを見てから考える、あまり作り込まず直感の一発勝負だ。


 「…ん、コレなんかブカブカする衣装だな?

 で、隣のコレ、何のゆるキャラ?」


 「ハイ、このスーパーのオリジナルキャラクターで【れおぱる丼ちゃん】と言うそうです。

 なので、コレを着て隣りで調理して下さい。」


 当日、このどんぶりのオバケみたいなのと一緒に新商品の店頭販売をするそうだ。


 「…ん、じゃあこの新商品で丼物を作ってみますか?

 ケンゴ、紅生姜と胡麻油を調達しといてくれ。

 おっと、あと白米もな!」


 「もう何か思い付かれたのですか?

 さすが京多さんですね!」


 「…煽てなくていいからな。

 それにしてもゴアゴアするな、この服?

 動き辛いぞ?」

 
 「すいません、先方たってのお願いだそうです。

 何でも、ココの創始者が恰幅の良い方だった様で、その方に寄せたとか?」

 「…そなの?

 まぁ良いけど。」

 まるで着ぐるみの下に着るの様だが、依頼人さんの要望を断るのも失礼だしな。

 一度家に戻ってからコチラに来るつもりだったけど、家までの道すがら途中に有ると分かり、俺を名指しで指名した店長サンに挨拶も兼ねて寄ってみたのだ。

 この時間、姫乃は大学だし、岳斗は俺の実家だろうしね。

 「…よう、どうかな、上手くやれそうかな?」
 

 俺がアレコレと演出を妄想していると、ここの店長が顔を出した。

 「…ん、まぁ任せろ!」


 何とビックリ!

 高校時代のクラスメイトだったさ!


 元々この店も、元は大きな酒屋で、ソレがコンビニにして、さらにスーパーマーケットとしてしたらしい?

 彼苦労したんだなぁ?

 なので、明日はこの店の開店一周年記念の大セールらしい?

 ソレで呼ばれたのか?


 「…なぁ、三条は桜庭サンとに結婚したんだよな?」

 「したぞ、結婚。

 式はまだだが、が分かったその日に入籍したんだ。」


 「…そうか、

 、本当に婚約してたんだな、羨ましい…。」


 「そっちは?

 誰かと付き合ってなかったか?」


 「結婚はしたが、あの時付き合っていた子とじゃないさ。」

 …何か寂しそうだな?

 結婚なら、それだけで良いじゃないか?

 世の中には二次元に嫁をこさえてる人たちがたくさん居るんだぞ⁈

 三次元のお嫁さんがいるだけで幸せに思わないと!



 その後は旧友と軽く打ち合わせと昔話しをして、今度こそ家路についた。


 「ただいま、姫乃!岳斗‼︎」

 「おかえりなさい、アナタ京多サン!」

 「あう~!」

 愛しい妻子が出迎えてくれた。


 そして3歩下がって、

 「おかえりなさいませ、マスター旦那様。」 

 「おう、留守中サンキューな、マリアちゃん。」

 メイド服に身を包んだアンドロイドさんもお出迎えしてくれた。

 …エッチなのはいけませんよとか言ってくれたら、買取りしたいくらいメイドさんだな?

 「マスター、半径1キロ内に敵性反応は有りません。」


 「そ、そうか?

 あ、ありがとう、セーラ君。」


 何処から来て何処へ向かっているの?

 セーラの謎の行動は、俺の夢なのかな?

 彼女は一般家庭に貸し出されて良いのかな?

 「ハーイ、せ~あ!」


 「ハイおぼっちゃま、【高い高い】ですね、かしこまりました。」


 …岳斗はセーラの事がお気に入りらしい?

 良い遊び相手の様…


 「ソレでは参りますよ、おぼっちゃま!」

 「あい!」


 バビューン!


 「…えっ?」


 「あら、今日もセーラさんに遊んでもらって、岳斗大喜びしてますよ!」


 岳斗を抱っこしたまま、ベランダからエアジェットノズルで空を飛んでるセーラ⁇


 俺の知っている【高い高い】では無かった…


 岳斗が喜んでいる?


 セーラも買取りだろうか?


 「…まさか最近この辺りで出没してる【フライングヒューマノイド】って、姉さんの事でしょうか?

 京多サン、コレはどうしたら…

 一応【認識阻害フィールド】と言う装備も有り…。」

 この状況、ケンゴも知らなかった様だ?

 「…いいか、ケンゴ、

 俺たちは何も見ていない、いないんだ。


 そうそう、みんなにお土産が有るんだ、あちらの方にもらったモノだけどね!

 姫乃には草木染めのハンカチとか、岳斗にはご当地ヒーローの人形とか、云々…」


 …岳斗も喜んでいる…、コレでいいのだ!


 「セーラ姉さん、京多サンご主人様が現実逃避を始めたので、直ぐに戻ってきてください!」



 「うむ、わかた、ケンゴ。」

 「くすす、ご姉弟きょうだい仲がよろしくて羨ましいデスわ。」

 そんなモンか、コレ?





 翌日は【スーパーれおぱるど】のセールの日、久しぶりの地元での仕事になる!

 「…す、凄い賑わいだよ、三条!

 開店前からお客が集まっている⁈」

 旧友が嬉しいやら怖いやらで、腰を抜かしそうになっておる?

 「なんでだろ?」

 「おそらくですが、姉機マリアが光里サンに今日の仔細を連絡したからだと推測します。」

 「えっ光里に?

 ソレがどうしてこうなった…

 いや、わかった、全て分かった…。」


 最近光里は読モとかしている、自分のSNSで何かしたに違いない?

 「光里のお兄ちゃんが実演販売するから来てね!」


 とかだろうな?

 だとすると、買物客では無いかも知れない?

 ソレはちょっと不味い⁈

 「ケンゴ、斗真兄さんに連絡して外の人たちの誘導とか、誰か人員助っ人をよこす様に手配してくれ!」

 「…社長斗真兄サンなら既にいらして、行列整理をされてましたが?」

 …相変わらず現場が好きなんだな、あの人

 ソレでも心配なので、ちょっと外の様子を見てくる。


 オヤオヤ、何か知った顔も居るな?

 アレは委員長の花澤サンかな?

 隣にいる男性は恋人or旦那さんとか?

 あっちに見えるのは高校の時にクラスメイトだった奴っぽい?

 他にもなんか見知った顔がチラホラ?

 こりゃ光里にも広めてる奴が居るな?


 …美海とかだろうか?

 こう言う時に昴が居ると確認しやすいのだけどなぁ?


 アイツ今頃、何処にいるんだよ?

 何か【バックパッカー】みたいな事してるらしいとは、大学の先輩からチラッと聞いたのだけど?


 そうそう、先輩と言えば、あの二人も結婚したらしい。

 フタバちゃんのお姉さんで、のハナ先輩の実家のゴタゴタが解決するまで結婚出来ないとか言っていたが、解決したのだろうか?



 「…そうそう、お姉様なんデスが、遂に待てなくなってしまい、お兄様に泣きついたそうなのデスよ。

 『今すぐ結婚してくれないと死んじゃうからー!』って。


 可愛らしいデスよね?」


 「…え、

 二葉ちゃんだよね?

 何で居るの?」



 物陰から外の様子を見に来た俺の背後に、あの【美少女】がいた!

 いやあの頃より成長してもう【美女】とお呼びした方が良いかも?

 お胸も多少ご成長された様?


 「…三条先輩、今とっても失礼な事を考えていましたわよね?」


 「そ、そんな事は有りません事よ!」

 「まぁイイですわ、久しぶりにお会い出来ましたから。

 お元気そうでなり寄りです。」


 「えっと、二葉ちゃんは何でここに?」


 「光里ちゃんのSNSを見たからに決まってましてよ?

 『光里のお兄ちゃんのオンステージ、見てね!』

 っと、有りましたので、ご挨拶も兼ねてでしょうか?」

 「そ、ソレはどうもありがとう?」

 「このままでは人が集まり過ぎて危険ですわよ?」


 「ああ、なんで普段開店は11時なんだけど、今日は10時に早める事にしたんだそうだよ。」


 店的には嬉しい誤算だろうな?
 

 「それがよろしいと思いますわ。

 さて、ワタクシも三条先輩のオンステージを楽しみにして来たモノですから!」


 「き、君が?

 俺の【実演販売】をかい?」

 イイとこのお嬢様が俺のインチキ露天商のマルパクリ芸に何をそんなに期待してるのかね?

 「ちなみに先輩は【バナナの叩き売り】とかは、なさいませんの?」


 「…ソレ古すぎだよ。」



 この時、俺は気付かなかった、この子二葉ちゃんがいると言う事が既にだと言う事に!
 



 まぁ記念セールと前もって公表しているのだから、このくらい混み出すのは有りだろう、まさか全員が本当に俺のパフォーマンス見たさに集まった訳でも無いだろう。

 そういえば、姫乃が光里たちを誘って見にくるとか言っていたな。


 考えたら地元での【実販】は、初めてだな?


 何かそう考えたら、緊張してきたぞ⁈




 「…三条、ちょっとイイかな?」


 「うおっと⁈

 な、なんだ急に、どうした⁈

 脅かすなよ!」
 
 俺は突然背後を取られて驚いて大声をあげてしまった。

 「そんなに驚いたか?

 すまん、悪かったな。」


 店長が何やら申し訳なさそうに話しかけて来た、何かあったのか?



 「…実は今日の【れおぱる丼チャン】なんだが…」

 今日の【実演販売】では俺と一緒にの【れおぱる丼ちゃん】がお客様に試食品を配る事になっているのだけど、

 「今日、バイトの子が体調不良で急に来れなくなったんだ!」


 「…まぁそういう事もあるよね、なら誰か代役で…」


 「ソレが今日の記念セールの為に全員が各持ち場の用接客マニュアルしか対応で来なく…

 つまり代役が立てられないんだ!」

 「…臨機応変って言葉があるだろ?

 何とかならないの?」


 「…ウチの店は、お役所の方針で海外からの研修生も雇っているんだけど、残念ながら教えた事以外やマニュアルにない事は出来ないんだ。

 【言葉の壁紙】って奴だよ?」

 …ソレな、うんうん、俺も経験あるよ?

 良くも悪くも、教えた事しかやらないパターンね。

 「…ん、分かった、何とかするわ!

 ケンゴ頼む、【れおぱる丼ちゃん】に変身してくれ!」


 「分かりました!

 えっと、先ずは【マーベラ〇】からチェンジですね!」

 「…やれるモンならやって見せてね⁈

 って、例の着ぐるみに入るだけで良いからな!」


 「…えっと三条、その子ケンゴ君だと身長とか足らない様だが、大丈夫なのか?」


 「大丈夫だから、お前は店長らしくドッシリと構えて見てろよ!」





 今回の【実演販売】で紹介する商品は新製品の【クリームチーズ】だそうで、パンやクラッカーにつけて食べても良し、シチューなどの料理に加えても良しと活用しやすい。

 今日は小分けされた【試供品】を無料配布する予定で、凝った調理はしないで、クラッカーにチョンっと乗せてお味見してもらう流れにするつもりだ。

 店全体が【売れ売れ感】で展開しているのだ、長い足止めはしない演出だ。


 「京多サン、準備出来ましたよ!」

 【れおぱる丼ちゃん】にし、準備万端なケンゴ。


 「よっしゃ、いくぞ相棒!」


 駐車場の一角に簡単に作った直売コーナーの横に仰々しく現れる俺たち。


 「チャッラ~んっ!

 どうも皆さん、お待たせいたしました~!

 ワタクシ、産まれはそこの駅前の産婦人科で…って、アレいつも間にか病院が学習塾になってますね?」

 笑ってくれたのはソレを知ってる年配の方々、やや受けだ、最初はこんなモンだ。

 「ホラ、始まるみたいよ!」

 …おや、親父とばあちゃんが来てるよ?

 アンタ達、自分の店はどうしたの?

 そっか、兄貴たちに店番させてるのか……って、タカ姉さんが愛ちゃんを連れて隣にいるぞ?

 愛ちゃん、しばらく見ないウチに大きくなったね!

 その隣に岳斗を抱っこした…セーラ?

 姫乃は?


 来るって言ってたけどなぁ?

 「さて本日皆さんにお味見していただきたいのはこちらの新商品【北海道高原クリームチーズ】デスっ!

 このご近所なも有りますよね、北海道産チーズの専門店が!

 あそこの本店とあの有名なサクラバフーズが共同で開発したとっても美味しいチーズなんです!」


 俺は喋りながら視線は足を止めてこちらを見ている主婦の方、特にお子さん連れに向けていた。


 「先ずはちょいとお味見を見て下さいよ!」

 隣にいる【相棒】に目配せすると、事前に用意しておいた大きな【トレイ】を持って俺の前に来る。

 その上に俺は次々と小さな紙皿を乗せていく。

 紙皿にはクラッカーを乗せてある、その上に新商品のチーズをの前でスプーン大さじいっぱいに乗せていく!

 「さぁ【れおぱる丼ちゃん】、皆さんにお配りして!」

 基本着ぐるみは喋らないが、コミカルな動きでみんなの注目を集めてくれる心強い相棒だ。


 中身は変幻自在の少年アンドロイド…

 ん、ちょっとぎこちないな?


 でも、お子様が取りやすい様に身を屈める心遣いをしているし?



 今回は他にも同じく駐車場の別スペースで買い物金額に応じて福引が引ける抽選会も行っているので、試食を食べた方やお集まりの方々に【試供品】を配って、一旦休憩する、その後に別の【実販人】が別の品物を紹介する手筈になっていた。

 こちらは別会社の【ところてん】で、試食品の配布らしい?

 ウチの会社以外にも依頼したのかと思ったら、先方から是非に試供品配布をさせて欲しいとお願いされたそうだ。

 あまり聞いたことのない社名だったな?


 おそらく便乗して顧客店舗を増やしたいのだろう?

 まぁ色々賑やかになって、お互い相乗効果で品物が売れればソレで良しだが?


 お昼を回って、俺たちが二度目の出番が訪れた時にソレは起こった!


 今回も俺が盛り付けた試食品をれおぱる丼ちゃんがみんなに配るのだが、最初の午前中の時より明らかに何か違う?

 集まっている人が多い?


 店的にはイイかもだが、駐車場にこんなに集まっても、店内で商品を購入してもらわないとあまり意味がない?


 大体試食品が無くなったところで、を加えた別の食べ方を紹介して、本製品とトッピングになる食材も買いたくなる様に【購入意欲】を刺激する戦法に切り替える事にした…


 の予定だった?


 突然、れおぱる丼ちゃんがお客様の人混みに揉みくちゃにされ始めた⁈

 うわ、コレはまずいぞ!


 「ケンゴ、じゃない、

 おーい、れおぱる丼ちゃ~ん、カムバァ~ク!」

 すると、

 「は~い、ご心配なく!」


 「は?」


 アレ、何故か目の前にケンゴが居る?

 まるでマジシャンの様なコスプレしとるし?

 おいおい、お前は【れおぱる丼ちゃん】の中の人だろ?

 じゃあ、今中にいるのは誰だよ?


 「じゃあ行きますよ、

 スリー、ツー、ワン…  ゼロ!


 …さぁ、鳩が出ますよ⁈」


 「うわっ⁈」

 ケンゴが俺の例のブカブカの衣装を掴んで引っ張る?

 ビリビリに破けるかと思いきや?


 アレ、コレって?



 そしてそのままケンゴは【れおぱる丼ちゃん】の側まで行くと、俺の時と同じ様に着ぐるみを引っ張って…


 ケンゴには変身能力があると言ったが、自分だけではなく、任意の対象にもその力は有効らしい?

 えっと【空中元素固定…】だっけ?


 そっか、この安心感は隣にいるのが君だったからか、




 どんぶりと戦車をミキサーに入れてぐちゃぐちゃに混ぜた様なデザインの着ぐるみの中から姫乃が現れた!

 そう、真っ白のウェディングドレスを纏った美しい花嫁の…



 俺は白のタキシードだった⁈


 「オイオイ、何のつもりだ!」


 「まだまだ行くよ、皆さんよろしく!」


 「よっしゃー!いくぞー!」

 「オーー!」


 何かどっかで見た顔ぶれが、ド〇フのコントのセットの様にをセッティングしていく?


 コレは教会の祭壇?



 「よう、汝の隣人を愛しているか?」 

 「…ス、昴か、お前?」

 いつの間にか祭壇には神父の格好をした親友のが居た?

 「…ん、が光里ちゃんに相談されたらしくてな、オーストラリアで密猟者とドンパチしていた俺をに連れ戻したのさ。


 この時の為にな!


 ソレよりよく見ろ、お前のサンをな!」


 お集まりの方々に祝福されて花嫁姿の姫乃がこちらに近づいてくる!

 その手を取り、エスコートしているのは…


 まぁそうなるよな。

 「…私、斗真お兄様がエスコートしてくださると聞いていたのですが…」

 「当たり前だ、を一緒に歩くのはの務めだからな、こればかりは譲れない!」




 「…ん、ん、 一応、向こうでもで神父みたいな事もしたんだ。


 じゃあ、『三条 京多、お前は姫乃サンの事を一生愛し続ける事を誓え。』、分かったら、「はい」と言え。」


 「オイ、そんなんだったか?

 まぁいいけど、

 『はい、誓います!』

 って、決まってるだろ?」


 「余計な事は言わんで良い、

 ソレでは、

 『桜庭 姫乃、貴女は健やかなる時も、病める時も、暇な時も、忙しい時はソレなりに、

 ふう~、この三条 京多を愛してやる事を、ほんの少しでも心の片隅にでも置いといて貰えれば結構ですから。』…こんな感じかな?」
 

 「…はい、ワタシも京多サンの事を一生愛して生きていきます!」


 わぁー!

 パチパチ~!

 姫乃の誓いの言葉がいいおわると、一斉に歓声と拍手が湧き起こった!

 あと、昴は後で殴る、グーでだ!


 よく見ると、高校時代の同級生やら、芸能部の後輩やら、保護猫活動のボランティアの方々や大学の先輩たち?

 おや、あの温泉宿の中居サンやバイト君までいるぞ?



 「…ったく、やられたな?」

 「えぇ、とっても素敵なお友達の皆さんデスね!」


 確かにそのウチに、【結婚式】をするつもりではいたさ⁈

 ソレ用に指輪も用意していたしな…って、なんでソレがココに有るのさ!


 でも、こんなイタズラめいた演出での式も悪くない⁈


 このサプライズ、何処から仕組まれていたんだ?


 指輪の交換をして、誓いのキスを交わすと、再び歓喜の歓声と怒号が巻き起こる⁈

 姫乃の目から涙が一筋溢れ、

 「京多サン、ワタシ今、幸せデス…。」

 「ええ、俺もデス。」

 
 ソレにしても、本当にお祭り騒ぎが好きな連中だな、俺たちの周りにいる人たちは?


 「さて、コレよりブーケトスをお願いしま~す!」

 ケンゴが司会進行よろしく場を仕切り出している?

 コイツ、いつから知ってたんだよ?

 レンタル期間終了しても、こき使ってやる!

 買取り決定だ⁈



 「行きますよ、そぉれ!」


 姫乃が天高くブーケを投げ、引力に導かれてある場所に向かって落ちて来た⁈


 

 「あ、ワタシ取っちゃった?」

 「あ~い?」

 岳斗が楽しそうに笑っていた?

 
 あ~ぁ、光里辺りが受け取ってくれれば、ソレなりに落とし所だったのになぁ?




 「何で姉さんが取っちゃっうんだよ?」

 「…そうですよ、姉さん。」



 ケンゴは呆れて、セーラは茫然としていた…



 俺はメイドアンドロイドの花嫁の父に成る日が来るのか?



 「まぁ、次の花嫁はマリアちゃんなのかしら?」



 俺のお嫁さんはボケボケさんの様だ?

 でも俺の隣りには、そんな呑気でネコみたいな姫乃が居てくれるだけで幸せだし、今は元気いっぱいの岳斗も居る、ロボ子たちも。

 姫乃のキャンパスライフが終われば、また新しい生活が始まる⁈

 多分コレからも、俺たちの周りではこんなイタズラめいたの繰り返しなんだろうな?



 「京多サン、早く着替えてくださいよ、まだ【実演販売】がもう一回残っているんですからね!」



 「…マジかよ?」


 前言撤回、余韻ぐらい感じさせてくれませんかね⁈


 「アナタ京多サン、頑張って下さいね!」


 「うん。」

 優しく微笑んでくれる妻に俺はソレしか答えられなかった。

 トホホ。



 end
 
 
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