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しゅうえん、またな? 京多編

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 「私、アナタのネコになりたかったんです!」


 「ネコですか?」


 あの日、ベランダで姫乃はそう言ったんだ。


 「ハイ、私ネコに憧れていたんです。

 いつも自由で、気まぐれで、自分に正直なネコさんに!」


 「な、なるほど、確かに猫ってそんな感じですけど?」

 この後、そんな感じな人物が一人乱入してくるのは、皆んな知っているな?

 「ソレにネコさんは一人て一度にたくさんの子猫をお産みなるので、【安産】の象徴なんですよ!


 あ、コレ京多さんに教わったんでしたね?

 私ったら、何を得意げに…⁈」


 相変わらずの天然振りに、俺は癒されている。


 この時、姫乃のお腹には俺との子(やっとヒトの形になった頃かな?)がいた!


 これからは俺が妻と子供を護り、やしなわなくては!


 「…だから、私、姫乃は京多さんの【ネコ】になりたかったんです。」


 「俺の【ネコ】ですか?」


 「あっ!

 も、もちろん比喩的な意味ですよ、本当に猫サンになりたい訳では!」

 「が猫になったら、どんな猫ですかね?

 好奇心旺盛なアメショーとか、落ち着きが有って上品なシャムやヒマラヤン、それこそヒメみたいなマンチカンですかね?」

 「脚の長い…ですか? クスッ。

 えっとですね、京多さんも父もネコの事になるとモノ凄く真剣ですよね?」

 「そ、そうなのかな?

 まぁ孝作サンの執念ほどでは無いですよ?」

 「いえ、甲乙付け難いです!」


 今時聞かない例え方するよな、姫乃さんは?

 「…だからでしょうか、私もネコになれば二人から…その…大切と言うか、真剣に向き合ってもらえるかもと思っていたんです。


 変ですか、私って?」


 「別に、猫好きの男に猫みたいな奥さん、相性最高な夫婦ですよ。」


 「…け、京多さ~ん、好き、大好きデス!」

 「うわ、あ、あぶない、ひ、姫乃~!」

 急に抱きつく姫乃、何故かいつもより重く感じるのはお腹に宿る命の重みだろうか?


 

 姫乃懐妊の情報は瞬く間に親類縁者や友人知人に広まった。

 休校し、我が家でマタニティライフの準備をしている彼女の元には連日の来客が…


 「つ、ついに孕んだか!」

 「マナちゃん、言い方~、こういう時はね、『ご懐妊おめでとう』だよ。

 ヒメちゃん、おめでとう~!

 ヒメちゃんならイイママになれるよ~、あとイイ奥さんにもね~!」

 「ん、オクサン?」

 「やだな~、だからヒメちゃんとケイちゃん、結婚したんだよ~?」


 「いつだっ⁈」

 「…その、妊娠が分かったその日に入籍したんです。」


 「…忙しないな、おい?」


 美海と黒須が、天木と昴を連れてやって来た。

 「おめでとう、姫乃さん。」

 「う、嘘だろ、本当に結婚したの、桜庭サン?」


 「、もう桜庭さんじゃないよ、ヒメちゃんは結婚したからサンだよ。」


 …トオル?

 【天木あまき トオル】、最終回でコイツのフルネームを言う事になるとはな。

 (言わないつもりでした(作家))

 美海と天木、多分コイツら付き合ってるな?


 なんたって、コイツのレギュラー番組のスポンサーによく【ラビット】の社名を見るし、子供向け文房具のCMにも天木が出演してるし?


 お前、抱え込まれてるの気づいてないのか?


 「昴さん、留学前なのにお忙しいのでは?

 わざわざお越しいただきありがとうございます!」

 「ん、いや、多分皆んながいるだろうと思ってね。

 日本を離れる前に会っておきたかったし。」


 昴は何か思うところが有るとかで、オーストラリアに留学するそうだ?

 何しに行くかは、詳しく教えてくれないが以前からやり取りをしていた日系人の友達がいるらしい?

 そこに世話になるとか?

 時々、斗真兄さんとも連絡取っているのでさらに怪しいのだが、デキる男とはそういうモンだと納得した。


 「姫乃お姉さん、お見舞いに来ました!」

 「姫姉ちゃん、朝どれ胡瓜食うか?」

 健太と瑛士は毎日顔を出している。

 まぁ瑛士はウチの庭でキュウリを今でも育てているし、毎日来るのは日課なんだが、

 「エイジ君、また服に土がついてるよ!

 もう~、何度も言ってるのに~!」

 「ワリー、ヒカリ!

 ついでにシャワー貸してくれ!」

 …コイツはウチの妹をなんだと思っているんだ⁈



 ある日エイジをとっ捕まえて吐かせた!


 「…えっと、好きだけど…」


 「…だけど、なんだ⁈」


 「…け、結婚したいと思ってる…けど?」

 「けど、なんだ⁈」


 「…お、俺がチャンピオンになったら…

 プロポーズする、その場で!」


 そういえばコイツ最近、何かの道場とかに通ったとか言っていたな?


 「…よし、良いだろう。」


 「えっ、ほ、本当か、あんちゃん?」


 「…但し、チャンピオンになれない時は…わかっているな!」

 「…ああ、ヒカリの事を諦めろって言うんだろ!」

 「馬鹿野郎!

 違う!

 ウチに婿入りして、一生俺の弟としてパシリにしてやるからそう思え!

 パシリが嫌ならチャンプになって、引退するまで無敗を貫け!」


 「な、なんだよ、チャンピオンのまだ先があるのかよ⁈」


 「どうする?

 なんなら、キュウリ農家にでも転職するか?」

 「ち、チクショー!

 やってやるぜ、見てろよ!」



 ふっ、馬鹿なヤツめ!

 コレで、光里とイチャイチャ出来まい!

 まぁ本当にチャンピオンになれたら、めっけもんだけどな?



 「…って、ハッパかけてやりましたよ!」


 「…あ、相変わらず酷いね、京多くんは?」



 カズ兄さんとは相変わらず、公園やコンビニのイートインでコーヒーと肉まんとか焼きそばパンを食べながら世間話しているよ。


 「でも、それだけ京多くんはエイジくんの事が可愛いんだよね?」

 「…ハイ?

 なんですか、ソレは?」


 「パシリにしたいくらい構いたいんでしょ?」

 「俺、そんなつもりはコレっぽちも有りませんよ⁈」

 「京多くんはツンデレかな?」

 「やめてくれ~!

 そう言うカズ兄さんはいつ姉さんと結婚するんですか?」

「…ん~ん?

 近いウチに昇進するかもしれないんだ。

 ソレで…かな?」


 「まぁ俺たちが先に結婚したんで、タイミングが難しいのは悪かったとは思いますが…」

 「ち、違うんだ、ソレはそれほど関係してないんだ。

 どちらかと言えば、僕たちにちょっとしたトラブルが有ってね…。」


 「何が有ったんです?」

 「ちょっと緊張して、【初めての夜】で上手く出来なくて…

 いや、二回目は上手くやれたと思うんだけど、か、彼女も初めてで、その…

 ソレから気まずくてさ、

 ハハハ…。」


 「ナニ言ってんですか、アナタは?

 妻子持ちの義弟の前で?」

 「面目無い。」

 「そんなしょうもない事で、姉さんを諦めるつもりですか?

 (まぁヤル事はヤッテたんだな、この草食系義兄も?)

 恥も面子もかなぐり捨てて、サッサと結婚しなさいよ!」

 「うん、分かったよ!

 ありがとう京多くん、僕迷いが晴れたよ!」


 boo boo!

 そこにカズ兄さんのスマホがブーイング…では無くて、着信のお知らせが?

 「…あ、明日菜さんからだ?」

 「…姉さん、ついに別れを切り出すんですかね?」


 「そんな縁起でもなきことを⁇」







 しばらくして二人は入籍したのだ!

 姉から結婚を迫ったらしい!

 さすが姉さんだ!





 大学卒業後、俺は斗真兄さんの誘いを受けて、兄さんが立ち上げる新会社の設立スタッフになった。

 一応、【サクラバフーズ】の社員扱いだ。

 「京多、お前には【実演販売】の才能スキルが有る!」


 斗真兄さんはガレージセールで俺が品物を売り捌いているのを見て、そう思ったそうだ?


 まあそう言うなら、ヤッテ見るか?


 とあるスーパーの店頭で小さなスペースを用意してもらい、サクラバフーズの新製品を使って簡単料理を作ってみた。

 今日の商品は減塩タイプの【ツナ缶】だ。

 「ハイハイ、こちらの商品はチョー強力に煮込まれてますから、骨まで柔らかく、お子さんやお年寄りでも簡単に噛みきれて、お魚の栄養を丸ごと食べられますよ!

 コレにちょいちょいと、粉チーズや黒胡椒なんか掛けて、クラッカーや雑切りバケットに乗せて食べてみてよ!

 あ、そこのお姉さん、試しにひとつ食べてみません!

 タダだから!」


 俺は前で見ていた初老のご婦人に勧めた。

 クラッカーやバケットも比較的柔らかいモノを選んでいる、あえて言わなかったが、少しオリーブオイルを振りかけてある。

 「あら、良いお味ね?

 でも、お兄さんみたいに上手に調理出来るかしら?」

 「大丈夫!

 今日は特別に私直伝の簡単レシピもおまけにつけちゃうから!

 今日のダンナの晩酌に出してみたら、夫婦円満間違い無し!

 なんたって、ウチの嫁で試したからね!」

 軽く笑いが起こる!


 …昔良くみた【実演販売】、こんな感じだったかな?


 「ねえ、この缶詰は何処で売っているの?」

 「そのレシピはココでないと貰えないのかしら?」


 よし!

 「ありがとうございます!

 ソコの入り口を入りまして、一番奥に缶詰で東京タワーかスカイツリーかってくらい積み上げた特設コーナーが有りますのでそちらでお求めください!

 あっと!
試食はココだけですので、先ずはお味見してくださいよ!

 中で、『あのイケメンのお兄さんが作ってたの、美味しいかったわ!』とか言ってくださると、私の今日のお給金にイロがつきますのでお願いしますよ!」

 さらに爆笑!

 こんな感じでヤッテいたら立ち待ち多くの見物人が!


 「…京多、その調子だ。

 今日用意した新商品はまもなく完売する…が、次の商品は…」


 「了解ッす!

 次の商品の準備に十分ください!」

 「助っ人を向かわせた、上手くやってくれ!」


 インカムから斗真兄さんのしじを受けて、次の作戦に移行する。



 助っ人に現れたのは、


 えっ!コトリさん?


 「ハーイ、ネタ切れデ~ス!

 なので次の食材はコチラになりま~す!」


 今度は新商品の【ほぐし鯖缶】だ!

 「もう、ココのは人使いが鬼なんだから!」

 またまたまた笑いが起こる!


 お気付きかと思うが、一応【サクラ】がいる、サクラバフーズだけに!

 ソレでも二、三人だ、人掛かりは十人から十四、五人に増えて、スマホで撮影し出したモノもいた。



 「えっとね、これは少量のマヨネーズに醤油とお好みでほんのちょいワサビなんて混ぜて、ほぐしずみの鯖を逢えてあげる!

 後はさっきの要領でクラッカーなんかに乗せて…


 あら、お姉さま、待ってたんですか?」


 先程、最初の【試食】を召し上がってくれたご婦人がスタンバイしていた。

 「あのね、ちゃんと中の人に美味しいって言って来たのよ。」


 この後、【鯖カレー缶】の実演販売で最後にして撤収した。

 地元のケーブルTVが取材させてくれと来たそうだ。


 狙い通りだそうだ。


 「なぁ斗真兄さん?」

 「なんだ?」

 「コレ、調理師免許とか必要かな?」


 「免許証なら有るぞ。」


 「いや、俺持ってないし?」


 「古鳥が持っている、お前も必要と思うなら取ればいい。」


 …うわぁ、ズルくない?

 まぁ確かに下準備でコトリさんが調理を手伝ってくらたのは確かだけどさ?

 後で【衛生管理者】資格は取らされたよ。

 ちなみにコトリさんは両方持っていて、この場は俺の上司って肩書きらしい?

 なんか上手く【脱法】してないか、コレ?



 そんなある日、ついに来た!




 「そろそろ、お腹の赤ちゃんが外に出たいみたいなの。

 明日、手術するわね。」



 先生方とも相談の結果、姫乃は【帝王切開】で出産することになった。

 「私、手術慣れしてますから、大丈夫ですよ!」



 某食通漫画の主人公の気持ちがよく分かったぜ!


 どんな名医だろうと、自分の女房と子供が無事に手術に耐えられるか、心配で心配で俺は不安に押しつぶされそうだった!


 そういえば、某釣りバ●漫画では臨月の奥さんに主人公が「ネコを見習え、あらよっと4、5匹産むんだぞ!」なんて言っていたけど、やっぱり人間と猫は違うぞ!



 
 結末、無事に産まれた!

 男の子だった!


 「…姫乃、おめでとう!

 今日から【ママ】だぜ。」

 「…なら京多さんは【パパ】デスね…。」


 

 息子を抱いて我が家に戻った俺と姫乃。

 「おかえりー、姫姉ちゃん!」


 「ニャーニャー‼︎」

 光里との猫軍団がお出迎えだ!


 ん、八匹?


 ヒメとオウジ一家とお預かり猫二匹?

 大親分の大和ヤマトがいない?


 まぁ大親分だし、貫禄ある落ち着いたおじいちゃん猫だからな?


 実際、正確な年齢がわからないのがヤマトなんだ。

 アイツを保護した時、生後三ヶ月くらいの子猫だと思ったら、獣医師に見てもらったところ、

 「…この子、かなりの栄養失調ですね?

 歯の具合からすると一歳は超えてますが、栄養不良で成長が遅れています。

 今までよく生き抜いてこれたね、君は。」


 今では貫禄ある大猫だが、そんな辛い中、生きてきたヤマトの様に強い子に育って欲しいと二人で話していたが…


 「あのね、ヤマトってば元気が無いの、姫姉ちゃんに逢えなくて寂しかったのかな?」



 「そうなのですね、

 大和サン、私の赤ちゃんデスよ。

 会って頂けますか?」


 大和はいつもの場所にいた、お気に入りのクッションの上で眠っているが、

 「ふあぁ~にゃん?」

 ヤマトは寝ぼけて返事するも、赤ん坊に気がつくと姫乃に近づいて、赤ん坊の顔を覗きこんだ。


 「ほら、ヤマトですよー。

 ホラ、初めましてって。」


 ヤマトは舌先をチョロっと出して、赤ん坊のオデコをひと舐めした。

 すると満足したのか、またクッションに戻って寝てしまった。



 翌日、姫乃がヤマトに


 「ヤマトさん、赤ちゃんの名前、ヤマトさんの真似させてもらいました。

 【岳斗】くんデス!

 どうですか、カッコイイですよね!」

 「…ニャ?」



 そんなやり取りをした翌朝、大和は…




 姫乃は泣いていた。

 光里もだ。

 光里にとっても大和は特別な猫だった。



 エイジは光里を慰めようと必死だったが、苦戦していた。


 近々なんかデビュー戦があるらしい?

 ソレに勝つから見に来てくれとか言っていたな?


 ふん、まぁ頑張ってくれよ。




 悲しんでばかりはいられない。


 産後の体力回復の為に、そして次の為に姫乃は頑張ることにした様だ。


 そんな時だ、灯火サンがモノを連れてきたのは?


 どうやら、この話は突然メイドロボが参戦する様だ!


 まぁ【外伝】だしな。
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