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っざけんなよ!

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 ソレは十年くらい前の事、お堅くてキツイ仕事に疲れ、脱サラした橋本さんのご主人。

 北海道で酪農家である親類の方が、高齢を理由に離農すると聞いて、コレは天啓と飛び付いたそうだ。



 思わぬトコロで前職の経験と知識が活かされ、当初は本当に順調だった牧場経営。

 しかし皆さんご存知の数年後、後を息子サンたちに継いでもらう段階で、あのトラブルに見舞われた⁈


 そう、世界を恐怖のズンドコに陥れた未知の脅威は、ハシモト牧場を突然の経営悪化に陥れたのだ⁈


 ご主人が力をいれた「乳搾り体験」や「手作りバター体験」、「楽しい乗馬体験」など観光客有っての収益は、ほぼゼロに等しい状態に…


 数年後、人類が病原体に打ち勝ち、日本経済もやや上向きに向かっていった時には、牧場が生き残る為、苦渋の決断として牧場の規模を縮小した事で、再び様々な人気の体験コーナーを復活させる事が困難になっていた?

 牧場を維持する為に餌代のかかる馬や牛、家畜の大半を売却したからだ。

 以前と同じ数の馬などを用意しなければ、体験コーナーを復活させても収益は見込めない…

 外出を控えていた人たちが、今までの鬱憤を晴らす様に、観光地に戻って来たと言うのに!


 しかし、ココで思わぬ所から融資の話しが持ち上がった。


 末娘の友人「花園 優里」の家が、チーズなど乳製品を製造販売する【花園チーズ工房】を経営していた。

 以前から北海道だけでなく、本土でも支店を増やしている。

 東京にも店舗を持っているらしく、テレビや雑誌にも取り上げられている人気店らしい。

 そんな「花園チーズ工房」の社長から、

 「橋本牧場さんの牛乳は大変美味しい!

 どうでしょう、ウチの「チーズ工房」に卸してもらえませんか!」


 …お互い、生き残りを賭けた提案だった。

 先方も仕入れ先の牧場がこの状況の所為で次々と離農してしまい、品質の良い生乳の入手が困難な状況で、美味しい乳製品が作れない危機的状況に苦しんでいたそうだ。

 先方はウチの生乳を付加価値をつけて購入してくれる!

 花園チーズ工房との専属契約が交わされた!

 東京支店で得た利益を融資してもらい、牛や馬を買い戻した!



 「ソレでね、お互いWin-Winな関係になった事で、更に強い結び付きを持とうと行き着いたらしく、「婚姻」を提案したらしいのよ?」


 何故かここまでの事を調査済みの玲子さん?

 何処かの探偵さんと専属契約でもしたのかな?

 「…まぁ、今玲子が話した通りなんだが、一応タカちゃんの親友の子と橋本さんの次男がお見合いをしたらしい。

 嫌なら断っても良かったそうなんだけだかな?

 アチラのお嬢さんがどうも次男くんの事を、以前から好きだったみたいでな…


 なのに、婚約が決まって数日後にコイツ、失踪しちまいやがってよ?」

 可愛い愛ちゃんを泣かした事で、自分で次男をシメたかった母さん。


 「何してんだよ、この人は?」


 三条家 家訓!


 女の子に泣かされる事があっても、女の子を泣かしたらアカンよ!

 守らなかったら、ぶっ飛ばすからね♡

 「京多、次男くんが目を覚ましたら、失踪の真相聞いときな。」


 母さんの命令は絶対だ!

 「い、イエッサー!」 

 「うしっ!も協力するよ!」

 一人称が前に戻ったルナさん?

 やな予感しかしない。





 「…ん、アレ、ここは?

 えっ、アレ、動けない?」

 次男坊を床に固定した椅子に縛りつけ、逃げられない様にした。

 ログハウスの一番奥の部屋、換気用の小さい小窓しかない薄暗い場所で彼は目を覚ました。


 「やっと起きたか、豚ヤローがっ⁈」

 「へっ?

 え、あの、LUNAさんですか?」

 ビシッ!

 「勝手に囀るな、この〇〇〇〇ヤロー!」

 形状からして乗馬用の「鞭」たと思う。

 上はナチス風の黒の軍服モドキ、下は横にスリットの入ったタイトな黒いミニスカート⁈

 小さな軍帽を横ちょに被り、右目に十字架をあしらった眼帯を付けている?

 参考資料はなんなんだよ?

 そんなエロゲキャラクターでも居るのか?

 有りモノを寄せ集め、ちょっとだけ淫靡な女将校の出来上がりだ⁈

 「コチラが質問した以外での発言は許さん!」

 「な、何を言って…」

 ビシッ!

 「グワッ⁈」

 「馬鹿なのか?

 許さんと言ったハズだぞ!」


 「ヒィ~!!」

 ルナ女王様の爆誕であった?
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