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白い妖精…婚約破棄?
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姫乃さんが入院して十日近く経つ。
学校でも毎日、
「三条、桜庭さんはまだ入院しているのか?」
「どこの病院、私お見舞いに行きたいのだけど?」
なんて質問ばかりだ。
「すまない、俺も詳しくは教えてもらえてないんだ。
多分、今後の為に充分に休息を取っているんだと思う。」
わかった様な、わからない様な、曖昧な答えに、
「そっか、ならお大事にと伝えてくれ。」
「退院したら、今度こそカラオケに行こうって、私たちが言ってたって伝えてね!」
俺の様子を見て、深入りせずにに引いてくれたクラスメイトたち。
このひと月の間で、姫乃さんはクラスに溶け込んでいたと思う。
今まで、学校に通った事がないとは思えない程、皆んなと上手くコミュニケーションが取れていた様だ。
「オイ、ケイタ!」
「ねぇ、サンジョッチ?」
同時にウザいのとウザかわいいのが来た⁈
「ひ、姫乃サンはまだ学校に来ないのか⁇
新しいギャグを考えたんだ!
コレを聞いたら元気に…」
「アマッチ、まだ入院中だから無理だよ、ねぇねえ私お見舞い行きたい!」
「…その五月蝿さで、また姫乃さんが具合が悪くなるかもだから、君たちは絶対ダメ!
…悪いけどゴメン。」
気持ちは嬉しいが、無理だな。
ふと、この二人を見ていて、つい呟いてしまった。
「なぁ…仲良いな、君たち。
そのまま付き合っちゃえば?」
「はぁ?」
「ぽっ♡、やだナニ言ってるの?」
天木と宇佐美は、クラスでもやや浮いている存在だ。
俺や委員長の花澤さん、最近だと姫乃さんがよく話しを聞いてやっている。
「天木、ウザみとコンビ組んだらお笑いで、天下取れるかもな?」
嘘である、適当に言っているだけだ。
「な、なんだよ、付き合うって、そういうことかよ、おどかすなよな?」
何故焦る?
「…ん?
私、アマッチならお付き合いしてもいいよ?
だって、アマッチ面白いし、優しいし、あとお金持ちだし。」
最後のは、いらなかったよ?
ん、お金持ち?
「アマッチってね、コンビニでお買い物すると、いつも募金箱に小銭入れてるの!
百円とか、五十円とか!」
そ、そうなんだ?
ソレで優しくてお金持ちなのか。
それにしても、よく見てるな?
って、そんなによく見るほど一緒にいるのかい?
「だってよ、あまっち?
付き合ってみたら?」
「な、な、な、ナニいってんだよ⁈」
「ナニナニ、何の話し!」
「あ、花澤さん、
この二人がお付き合いを始めるか否かの大切な話しデス。」
「本当⁈
そういえば、アンタたち最近よく一緒にいるよね?」
あ、やっぱりそうなんだ。
「うん、アマッチ優しいし、面白いモン。
アレ、ソレさっきも言ったよね?
あ、そうだ!
いいんちょも、よく蒼山君と話してるよね、仲良しサンだね?」
「バカ、な、なに言ってんの⁈」
アレかな、子猫の飼い方教えてみたいな話かな?
「何だよ、オマエらも怪しいのかよ!」
うむ、コレで暫くはクラスの好奇の目はアイツらが引き受けてくれるな?
「ただまー!」
返事が無い?
いるはずなのに?
母さんは病院に、姉はモデルのバイトに行っているが、光里は居るハズだ。
実は俺が姫乃さんと会えない事よりも、気に病んでる事がある。
光里の事だ。
あの日、姫乃さんが倒れて…ソレ以来、元気がない。
当たり前か。
母さんの話しだと姫乃さんが吐血し、倒れているのを最初に見つけたのは光里だそうだ。
相当なショックだったはずだ。
光里の様子を見に、部屋の前まで行くと、ヒメとオウジが扉の前でちょこんと座っていた?
健気で可愛い。
「ひかり~、いるのかぁ~?」
別に部屋の扉には鍵は無い、無いけどレディーの部屋を無断で開けてはいけないのだ。
「部屋の前でヒメとオウジが、ドアを開けてくれるの待ってるぞ~?」
「…ヒメとオウジだけ入っていいよ。」
…ハイ、ハイ。
「ほら、お許しが出たぞ。
入った入った。」
「ミャー!」
「…お兄ちゃんも、今回だけ良いよ。
…五分だけ。」
光里は末っ子だけど、甘えん坊とかでは無い。
学校でも友達は特別仲の良い子が数人いて、普通に仲がいい子とそうでもない子がいる平均的な小学五年生だ。
しっかり者で下級生の面倒見も良いらしい?
俺と姉さんが愛情たっぷりに可愛がって育てた自慢の妹だ。
逆に兄貴は一回り以上歳が離れている事もあり、娘に近い感覚で甘やかす事より厳しい父親みたいな事を言って、やや距離が有るかも知れない。
そこに新たな家族として現れた姫乃さんは、歳上の友達のような、年上なのに光里の事を頼りにして、
「ひかりサン」と呼んでくれる不思議なお姉さんが日に日に大好きになっていったのに…
あの日、自分は何も出来なかった。
苦しんで倒れている姫姉ちゃんを助けられなかった。
友樹の話しでは、いすずチャンがテキパキと皆んなに指示を出して、近くにいるハズのお父さんに連絡したりと大活躍だったらしい。
俺が聞いても、もう普通の平均的な小学生以上の対応だ。
もしかすると、いすずチャンはそういった状況に慣れているのかも知れない。
「なんだ、宿題でもしていたのか?」
「そんなの、直ぐに終わるもん、スマホ見てただけ。」
「何だ、ゲームか?」
「…姫姉ちゃんからの連絡待ってるの。
…でも、来ないの。」
「…病院はスマホ禁止なのかも?」
「お母さんは玲子おばさまと、スマホで連絡取ってるもん、病院から⁈」
バレバレだな、オイ?
「お兄ちゃん、婚約者でしょ?
姫姉ちゃんと連絡取れないの?」
「だよな?
だけど、何か訳が有って連絡出来ないんだよ。
多分、俺たちに心配かけたく無いから。」
「……でも、お姉ちゃんに会いたいの!」
光里が声を荒げたその時、
ゲホ、ゲホっ!
「ん、誰だ?」
「…お兄ちゃん、オウジが!」
ゲホォッ!
「オイ、オウジ、どうした⁇」
毛玉を吐いて…じゃない?
赤黒い、血の塊だ!
吐き出すとぐったりとして倒れてしまうオウジ⁈
「光里、留守番してろ!」
「お、お兄ちゃん!」
俺はオウジを抱えて掛かり付けの動物病院に向かう事にした!
「待って、私も行く!
大和、ヒメを見ててね!」
「な~お!」
オウジを毛布で包み、玄関の鍵を閉めて…
「アレ~ケイちゃんたち、お出かけ?」
玄関先に軽自動車に乗ったルナさんが?
「ルナさん⁈
あの、その車は?」
「事務所の、今日から暫く借りる事に…
何、ソレ、もしかしてオウジ?」
「ルナちゃん、車乗せて!
病院、動物病院までお願い!」
意外にすぐ状況を理解してくれたルナさん
「早くノリな!
飛ばすよ!」
…いや、あえて言うまい。
キャラが違うとか、安全運転をとか。
とにかく俺たちは動物病院に急いだ!
「あの、お義母様、光里サンや子猫たちは元気ですか?」
「元気…とは言えないね、
姫乃ちゃんに会いたがってるよ、
まだ、会う気にはなれないかい?」
会いたい、会いたくて会いたくて…
でも、今の自分を見せる勇気が無い…。
京多さんや光里サンに、なんて話しかければいいのか?
今の自分を拒絶されたら、
こわい、怖くて…
体力的には退院しても構わないとは言われている。
ただ、以前の自分に戻れるのか、あのお医者サマは断言してくれなかった。
ココからは私の回復力の問題だと言われた。
外見は誤魔化せるかも知れない。
でも、
だからスマホの電源を切っている。
不慣れな自分が、もし間違えて操作して、この事が皆んなに知られてしまったら?
もしかしたら、京多さんに婚約を解消されるかも知れない。
ならばいっそ、こちらから解消すれば…
「アレ、明日菜からメッセージ入ってる?
ルナからも?」
「お姉様から?」
「…オウジ…病院に、
緊急手術って…ナニだと?」
「手術って、オウジくんが⁈」
ルナさんはとても急いで、でも安全運転で教えた動物病院に連れて来てくれた。
病院には事前に連絡をしておいたので、すぐに対応してくれた。
前回、オウジの首筋に出来たオデキの切除手術をしてくれた病院だ。
「ココからは時間との勝負だよ!」
若先生がスタッフに檄を飛ばす。
この病院は近所で、
「子猫の女神サマから加護を受けた病院」
と言われている好評価な病院だ?
手術室の前の廊下で、オウジに念を送る!
頑張れオウジ! 負けるなオウジ!
ファイトだ、ガッツだオウジ‼︎
オウジを助けてくれるなら、女神でも邪神でもこの際関係無い!
「オウジ、頑張って!死なないで!」
光里、つい口に出ている?
ルナさんはルナさんで
「あ、つい一斉送信しちった。」
ナニを?
「明日菜チャンにだけ連絡するつもりが、咲ちゃんたちにも送っちったよ?」
「咲さんにもですか?」
そういえば最近ウチに来ないな?
「京多!」
「お袋、来てくれたんだ。」
社長職が忙しい玲子さんに代わり、姫乃さんの側に付いてくれている…小さいペンタブ持参で?
「どういう事さ?
咲や明日菜もよくわかって無いみたいだったし?」
ルナさんのメール、相当難解だったか?
「小腸にあったポリープが弾けたらしい、何か硬いモノが擦れたとかハッキリと原因はわからないけど…?」
「ソレで、オウジは大丈夫なのかい?」
「ギリギリ手術に耐えられるだろうって、正直まだ身体が小さいんだ。
小腸にポリープが有る事に気が付けば、投薬で治せたかもしれないのに…」
腸内にポリープがある事で、便が中に留まってしまいやすい、確かにオウジは便秘気味だった…
今までの子には、あまり無かった事だ。
だから、普段からオウジの食事には気をつけていたハズなのに!
「…姫…お姉ちゃん!」
「…姫乃ちゃん、アンタついて来たのかい⁈」
光里が姫乃さんに飛び付く、お袋がつれて来た訳では無いらしい。
走って来たのか、やや息をあげている?
姫乃さん、こんな季節にニット帽なんて被って、暑いだろし?
少し痩せたかも?
いや、そんな事はどうでもいい!
「皆さん、心配なのは分かりますが静かにして下さいね!
あと、手術は無事終わりましたよ。
オウジ君、頑張りました!」
「先生ありがとう!」
ルナさんが若先生に抱きついた!
「うわっ!
は、離して下さい!」
何とか、オウジは助かった様だ。
『…よ、良かった…。』
ん?
「お、お姉ちゃん?
声、どうしたの?
お酒飲んだ次の日のママみたいな声だよ?」
姫乃さんが光里を抱きしめたまま、ニット帽を掴み上げると、
「えっ、姫乃さん…その髪…」
あの綺麗な栗毛色の長髪は、老人の様な短い白髪に変わっていた。
学校でも毎日、
「三条、桜庭さんはまだ入院しているのか?」
「どこの病院、私お見舞いに行きたいのだけど?」
なんて質問ばかりだ。
「すまない、俺も詳しくは教えてもらえてないんだ。
多分、今後の為に充分に休息を取っているんだと思う。」
わかった様な、わからない様な、曖昧な答えに、
「そっか、ならお大事にと伝えてくれ。」
「退院したら、今度こそカラオケに行こうって、私たちが言ってたって伝えてね!」
俺の様子を見て、深入りせずにに引いてくれたクラスメイトたち。
このひと月の間で、姫乃さんはクラスに溶け込んでいたと思う。
今まで、学校に通った事がないとは思えない程、皆んなと上手くコミュニケーションが取れていた様だ。
「オイ、ケイタ!」
「ねぇ、サンジョッチ?」
同時にウザいのとウザかわいいのが来た⁈
「ひ、姫乃サンはまだ学校に来ないのか⁇
新しいギャグを考えたんだ!
コレを聞いたら元気に…」
「アマッチ、まだ入院中だから無理だよ、ねぇねえ私お見舞い行きたい!」
「…その五月蝿さで、また姫乃さんが具合が悪くなるかもだから、君たちは絶対ダメ!
…悪いけどゴメン。」
気持ちは嬉しいが、無理だな。
ふと、この二人を見ていて、つい呟いてしまった。
「なぁ…仲良いな、君たち。
そのまま付き合っちゃえば?」
「はぁ?」
「ぽっ♡、やだナニ言ってるの?」
天木と宇佐美は、クラスでもやや浮いている存在だ。
俺や委員長の花澤さん、最近だと姫乃さんがよく話しを聞いてやっている。
「天木、ウザみとコンビ組んだらお笑いで、天下取れるかもな?」
嘘である、適当に言っているだけだ。
「な、なんだよ、付き合うって、そういうことかよ、おどかすなよな?」
何故焦る?
「…ん?
私、アマッチならお付き合いしてもいいよ?
だって、アマッチ面白いし、優しいし、あとお金持ちだし。」
最後のは、いらなかったよ?
ん、お金持ち?
「アマッチってね、コンビニでお買い物すると、いつも募金箱に小銭入れてるの!
百円とか、五十円とか!」
そ、そうなんだ?
ソレで優しくてお金持ちなのか。
それにしても、よく見てるな?
って、そんなによく見るほど一緒にいるのかい?
「だってよ、あまっち?
付き合ってみたら?」
「な、な、な、ナニいってんだよ⁈」
「ナニナニ、何の話し!」
「あ、花澤さん、
この二人がお付き合いを始めるか否かの大切な話しデス。」
「本当⁈
そういえば、アンタたち最近よく一緒にいるよね?」
あ、やっぱりそうなんだ。
「うん、アマッチ優しいし、面白いモン。
アレ、ソレさっきも言ったよね?
あ、そうだ!
いいんちょも、よく蒼山君と話してるよね、仲良しサンだね?」
「バカ、な、なに言ってんの⁈」
アレかな、子猫の飼い方教えてみたいな話かな?
「何だよ、オマエらも怪しいのかよ!」
うむ、コレで暫くはクラスの好奇の目はアイツらが引き受けてくれるな?
「ただまー!」
返事が無い?
いるはずなのに?
母さんは病院に、姉はモデルのバイトに行っているが、光里は居るハズだ。
実は俺が姫乃さんと会えない事よりも、気に病んでる事がある。
光里の事だ。
あの日、姫乃さんが倒れて…ソレ以来、元気がない。
当たり前か。
母さんの話しだと姫乃さんが吐血し、倒れているのを最初に見つけたのは光里だそうだ。
相当なショックだったはずだ。
光里の様子を見に、部屋の前まで行くと、ヒメとオウジが扉の前でちょこんと座っていた?
健気で可愛い。
「ひかり~、いるのかぁ~?」
別に部屋の扉には鍵は無い、無いけどレディーの部屋を無断で開けてはいけないのだ。
「部屋の前でヒメとオウジが、ドアを開けてくれるの待ってるぞ~?」
「…ヒメとオウジだけ入っていいよ。」
…ハイ、ハイ。
「ほら、お許しが出たぞ。
入った入った。」
「ミャー!」
「…お兄ちゃんも、今回だけ良いよ。
…五分だけ。」
光里は末っ子だけど、甘えん坊とかでは無い。
学校でも友達は特別仲の良い子が数人いて、普通に仲がいい子とそうでもない子がいる平均的な小学五年生だ。
しっかり者で下級生の面倒見も良いらしい?
俺と姉さんが愛情たっぷりに可愛がって育てた自慢の妹だ。
逆に兄貴は一回り以上歳が離れている事もあり、娘に近い感覚で甘やかす事より厳しい父親みたいな事を言って、やや距離が有るかも知れない。
そこに新たな家族として現れた姫乃さんは、歳上の友達のような、年上なのに光里の事を頼りにして、
「ひかりサン」と呼んでくれる不思議なお姉さんが日に日に大好きになっていったのに…
あの日、自分は何も出来なかった。
苦しんで倒れている姫姉ちゃんを助けられなかった。
友樹の話しでは、いすずチャンがテキパキと皆んなに指示を出して、近くにいるハズのお父さんに連絡したりと大活躍だったらしい。
俺が聞いても、もう普通の平均的な小学生以上の対応だ。
もしかすると、いすずチャンはそういった状況に慣れているのかも知れない。
「なんだ、宿題でもしていたのか?」
「そんなの、直ぐに終わるもん、スマホ見てただけ。」
「何だ、ゲームか?」
「…姫姉ちゃんからの連絡待ってるの。
…でも、来ないの。」
「…病院はスマホ禁止なのかも?」
「お母さんは玲子おばさまと、スマホで連絡取ってるもん、病院から⁈」
バレバレだな、オイ?
「お兄ちゃん、婚約者でしょ?
姫姉ちゃんと連絡取れないの?」
「だよな?
だけど、何か訳が有って連絡出来ないんだよ。
多分、俺たちに心配かけたく無いから。」
「……でも、お姉ちゃんに会いたいの!」
光里が声を荒げたその時、
ゲホ、ゲホっ!
「ん、誰だ?」
「…お兄ちゃん、オウジが!」
ゲホォッ!
「オイ、オウジ、どうした⁇」
毛玉を吐いて…じゃない?
赤黒い、血の塊だ!
吐き出すとぐったりとして倒れてしまうオウジ⁈
「光里、留守番してろ!」
「お、お兄ちゃん!」
俺はオウジを抱えて掛かり付けの動物病院に向かう事にした!
「待って、私も行く!
大和、ヒメを見ててね!」
「な~お!」
オウジを毛布で包み、玄関の鍵を閉めて…
「アレ~ケイちゃんたち、お出かけ?」
玄関先に軽自動車に乗ったルナさんが?
「ルナさん⁈
あの、その車は?」
「事務所の、今日から暫く借りる事に…
何、ソレ、もしかしてオウジ?」
「ルナちゃん、車乗せて!
病院、動物病院までお願い!」
意外にすぐ状況を理解してくれたルナさん
「早くノリな!
飛ばすよ!」
…いや、あえて言うまい。
キャラが違うとか、安全運転をとか。
とにかく俺たちは動物病院に急いだ!
「あの、お義母様、光里サンや子猫たちは元気ですか?」
「元気…とは言えないね、
姫乃ちゃんに会いたがってるよ、
まだ、会う気にはなれないかい?」
会いたい、会いたくて会いたくて…
でも、今の自分を見せる勇気が無い…。
京多さんや光里サンに、なんて話しかければいいのか?
今の自分を拒絶されたら、
こわい、怖くて…
体力的には退院しても構わないとは言われている。
ただ、以前の自分に戻れるのか、あのお医者サマは断言してくれなかった。
ココからは私の回復力の問題だと言われた。
外見は誤魔化せるかも知れない。
でも、
だからスマホの電源を切っている。
不慣れな自分が、もし間違えて操作して、この事が皆んなに知られてしまったら?
もしかしたら、京多さんに婚約を解消されるかも知れない。
ならばいっそ、こちらから解消すれば…
「アレ、明日菜からメッセージ入ってる?
ルナからも?」
「お姉様から?」
「…オウジ…病院に、
緊急手術って…ナニだと?」
「手術って、オウジくんが⁈」
ルナさんはとても急いで、でも安全運転で教えた動物病院に連れて来てくれた。
病院には事前に連絡をしておいたので、すぐに対応してくれた。
前回、オウジの首筋に出来たオデキの切除手術をしてくれた病院だ。
「ココからは時間との勝負だよ!」
若先生がスタッフに檄を飛ばす。
この病院は近所で、
「子猫の女神サマから加護を受けた病院」
と言われている好評価な病院だ?
手術室の前の廊下で、オウジに念を送る!
頑張れオウジ! 負けるなオウジ!
ファイトだ、ガッツだオウジ‼︎
オウジを助けてくれるなら、女神でも邪神でもこの際関係無い!
「オウジ、頑張って!死なないで!」
光里、つい口に出ている?
ルナさんはルナさんで
「あ、つい一斉送信しちった。」
ナニを?
「明日菜チャンにだけ連絡するつもりが、咲ちゃんたちにも送っちったよ?」
「咲さんにもですか?」
そういえば最近ウチに来ないな?
「京多!」
「お袋、来てくれたんだ。」
社長職が忙しい玲子さんに代わり、姫乃さんの側に付いてくれている…小さいペンタブ持参で?
「どういう事さ?
咲や明日菜もよくわかって無いみたいだったし?」
ルナさんのメール、相当難解だったか?
「小腸にあったポリープが弾けたらしい、何か硬いモノが擦れたとかハッキリと原因はわからないけど…?」
「ソレで、オウジは大丈夫なのかい?」
「ギリギリ手術に耐えられるだろうって、正直まだ身体が小さいんだ。
小腸にポリープが有る事に気が付けば、投薬で治せたかもしれないのに…」
腸内にポリープがある事で、便が中に留まってしまいやすい、確かにオウジは便秘気味だった…
今までの子には、あまり無かった事だ。
だから、普段からオウジの食事には気をつけていたハズなのに!
「…姫…お姉ちゃん!」
「…姫乃ちゃん、アンタついて来たのかい⁈」
光里が姫乃さんに飛び付く、お袋がつれて来た訳では無いらしい。
走って来たのか、やや息をあげている?
姫乃さん、こんな季節にニット帽なんて被って、暑いだろし?
少し痩せたかも?
いや、そんな事はどうでもいい!
「皆さん、心配なのは分かりますが静かにして下さいね!
あと、手術は無事終わりましたよ。
オウジ君、頑張りました!」
「先生ありがとう!」
ルナさんが若先生に抱きついた!
「うわっ!
は、離して下さい!」
何とか、オウジは助かった様だ。
『…よ、良かった…。』
ん?
「お、お姉ちゃん?
声、どうしたの?
お酒飲んだ次の日のママみたいな声だよ?」
姫乃さんが光里を抱きしめたまま、ニット帽を掴み上げると、
「えっ、姫乃さん…その髪…」
あの綺麗な栗毛色の長髪は、老人の様な短い白髪に変わっていた。
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