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やっと一つ片付いた…でも、まだ終わらない?

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 普通のおじいちゃんと孫の来店ではないよな?

 でも、お客さんはお客さんだ。



 『よく来たね、若菜ちゃん…で、コチラのおじいちゃんは?』

 『えっとね、海蔵ウミゾウおじいちゃん、仲良しなんです!』


 …。


 ウミゾウねぇ?
 
 『若菜ちゃん、コレ貸してあげるよ。』

 俺は少女に、普段ちぃちゃんが使っているモノを渡した。

 『えっと、の猫じゃらし…デスか?』

 『そ、コレでの猫と遊んであげてくれるかな?』

 若菜ちゃん、お目目パチクリして不思議そうにしている?

 『あ、遊んであげて良いの?』

 少女以上にワクワクして、俺の指示を待っているロボッ娘メイドがいるので、

 『聖華、まかせた。』


 『はい!

 若菜お嬢様、お店の周りにいるちゃんたちは、野良ちゃんなのです。

 ですから、人間と遊ぶ事の楽しさや、優しい人間がいる事を覚えてもらう為、お嬢様にもお手伝い頂けないでしょうか?』

 まるで、ミュージカルの舞台でクルクル回り、歌いながらセリフを話す様なロボッ子聖華ちゃん!

 『若菜がですか?

 でも、ソレなら聖華お姉さんの方がよろしいのでは?』

 踊るメイドさんを憧れのアイドルを見る様な眼差しで見ている若菜ちゃん?

 『なるべくたくさんの方に遊んで貰えると、優しい人間がたくさんいるんだよって、覚えてくれますから。

 そうする事で、あの子たちが人間と一緒に暮らしてあげても良いかなって、思ってくださるのですよ。』

 『本当ですかっ!』


 『コッチのおじいちゃんは、オジサンとお話しがあるから、ソッチはメイドのお姉さんと猫たちの相手をしてくれないかな?』

 終わったら、ドーナツとタコ焼きにメロンミルクでも、若菜ちゃんが好きそうなモン作っておもてなしかな?



 『ハイ!
 若菜に任せてくださいな!』




 出来損ないのロボッ娘ではない、涙も出せちゃう猫好きメイドロボが護衛してれば大丈夫だろう。



 
 『お気遣い、感謝する。』

 『本当のじゃないのかい?』



 俺は意地悪く聞いてみる、ジィさんが若菜ちゃんを見る目は、二葉を見る妖怪ジジィとそっくりだったからだ。


 『あの子の父親はの子でな、
 その所為も有ってか、中々に反抗的で古いを嫌って、他の兄弟ライバルを蹴落として、
 終に海堂寺当主と成ってからは、自分に従わぬモノは次々と切り捨てていった…  

 表向きはな。』


 『物騒なので、身内への愚痴は他所で話してください、お客様。』

 
 『海堂寺の名は、形を顰めるが無くなった訳では無いのでな…』

 『おーい、話し聞いてよ、おじいちゃん?』

 『歳若いの奴らも、アレ蒼士に憑いて行ったものの、汚れ仕事に加担していたとか、であっさり切り捨てるしのぅ…。』


 コレだから、お年寄りは話しが長いと嫌われるのだ、
 俺だって、本当はスローライフを送りたいのだ。

 あんまりに出しゃ張ると舞華ムスメたちに嫌われそうで嫌だから!



 『今回、「山王院」が動いた訳では無く、お前サン死神個人が動いたとなれば、では、面目が立つ。


 カイドウがサンオウの軍門に下った訳では無い…とな。』


 『あっ、メンツの問題なんだ?』


 『…ソレはソレじゃ、

 そうそう、アレじゃ、

「昭和の刀剣登録目録」が有るらしいと聞いたんじゃが?』


 …普通にお買い物ですか?

 ちなみにその本、ウチのオヤジがもういらないからと、金に変えてくれと渡されたガラクタのウチの一つなんだけど…


 『買います?

 プレミア付きで五千…五百円で?』


 さすがに五千円は高いと思ったので、にマケたつもりが?

 『なんだ、思っていたより

 もらっていくぞ、ほれ、五千五百円。』


 よし、オヤジには五千円渡そうと思う。


 コレからもヨロシクとジィさんが帰り際に言い残すと、又仲良く若菜ちゃんとお帰りになった。


 『…あのメイドも売ってくれんか?』

 『介護が必要なら、別のを貸してやるけど?

 アレは駄目だ、もうムスメみたいなもんだから。』


 帰り際に妙な事を言っていたが、若菜ちゃんの護衛にでもと、考えたか?

 ソレから数分…

 『うーむ、静かだ?』
 
 …なんか足りない?



 …最近、灯火に遭って無いな?








 『お、おはようございます、菊乃ママ、綾乃お姉さん!』

 『ハイ、おはようございます、灯火ちゃん。』


 『…えっと、おはよう…灯火だよね?』




 北代家の朝の食卓?

 久美ママの実母、「竹下 菊乃」サンが、朝食の仕度を終えて、2階の仕事場から徹夜明けで降りて来た小説家の「北代 綾乃」サンが寝惚け眼で台所に顔を出すと、ポニテのの少女がが付いてる赤ちゃんを抱いて朝の挨拶をしてくれた?


 アレ私、今度の作品って「異世界モノ」だっけ?


 『灯火、お姉さんだけど、なんで?』


 灯火ちゃんがカラダの大きさを、赤い飴や青い飴を使う事なく変えられる事情を、何となく知ってる綾乃さん。

 今、何故、そのサイズなのか知りたい?



 『この大きさなら、アリアちゃんのお世話がし易いと思って?

 変ですか?』


 変?

 変なのは君の言葉使いだな?

 いつもの「邪魔する奴は皆殺しだぁ!」的口調は何処に?


 『いや、いつもの様子と違うんでね?』


 『菊乃ママが乱暴な言葉使いはアリアちゃんのに悪いからって、何か変ですか?』



 兄に聞いた事が有る!

 十六夜家って、実は結構厳しいお家で由緒ある武道の家柄だから女子は合気道など武道はもちろん、礼儀作法もはかなり厳しいと!



 灯火ちゃんの上のお姉さんはソレなりのおウチに、お嫁に行ったりしてるとか?



 成る程、外見に引っ張られてるのかな?


 『ぐるぐるにゃー!』

 『ミャー。』


 『おや、珍しいね?

 虎丸くんとじゃないの?』


 普段なら、虎丸にはメイがくっついているのに?

 アメショのお嬢様、ミコがガキ大将の虎丸と一緒とは?




 『さぁみんな、朝ごはんにしましょう。』


 菊乃さんに早く食卓に着くように言われて、眠い目を擦りながら席に付く綾乃さん。



 う~ん、後でお兄ちゃん北代氏に報告した方が良いかな?
 




 『ハイ、わかりました、お父さん!

 お疲れ様でした、お礼に「とりヨシ」の「ササミ揚げ」を買って帰りますから!』


 義父の好物をお土産に購入する事を約束する華。


 スマホの待受は北代家全員の写真の最新バージョン!

 真ん中には少し前に遊びに来ていた琥珀姫、何故かマット松戸も映り込んでいる?


 『相変わらず仲がお良ろしいのですね、会長は?』


 『あら、界君は違うの?』

 スマホでの通話を終え、コチラを不思議そうに見ている副会長に聞き返す。

 学園祭に向けての雑務が増えて、うんざりしているかと思えば、先程から楽しそうにしていたのは、義父からの連絡を待っていたからか?


 『父とはあまり話さないのですが、最近父親同士がの事で右往左往しているのを見るのは好きです。』


 『な、何それ?

 あのオジ様たちが?

 見に行っていいかしら?』

 華月のお父さん「一文字 夜市」オジ様と、界君のお父さん「千道 九十九」オジ様、

 何か微笑ましいわ。


 『…理由は如何あれ、さんがいらしたら喜ぶと思いますよ。』


 子供の頃、よく稽古を付けてくれた九十九ツクモオジ様は「獣呀拳」の達人なんだけど、
華の目線では猫耳が生えている様な可愛いオジ様だ。


 もの凄く強いけど!


 最近、よく思い出し笑いをしているけど、何を思い出しているのだろうか、会長は?


 
 空調完備の生徒会室で、涼しげに業務を片付けていく生徒会長。

 その昔、小学生の頃にカイの家でもある道場にと来ては、平気で大人達に勝負を挑んでいた。

 あのお転婆で跳ねっ返りの女ジャイアンが、こんなに立派になってしまうとは、

 感極だな。

 『…あの、界君、そんなに優しく見つめないで。

 まるで、お父さんに怒られた後に、お祖父様やお祖母様に慰めてもらった時みたいで、懺悔したくなるから!』

 
 『…何かしたんで…すね!』

 でなければ、そんな可愛らしい事言わないだろう?



 『…フフ、最近この辺りで悪戯の過ぎる悪い子を、今手の空いている山王院のメイドお姉さん達にお仕置きしてもらっているのね、
 その悪戯のレベル内容によっては、お仕置きもかも知らないけど…

 あ、皆んな舞斗たちにはナイショね!』


 夜市叔父から、ソレとなく聞いてはいる。

 ウチの家一文字も、その昔は山王院の家臣だったそうで、特殊な部隊らしいモノが有るとは知っていたが、

 「メイドのお姉さんたち」

 ってまるでマンガかアニメの様、今は「ラノベ」と言うのか、本当に有るんだ…

 『か、界君?

 今度はもの凄く呆れた顔してるわよ?』


 『もしかして、岬さんや如月サンまで、そんな怪しい部隊に所属しているのですか⁈』

 何気に気になっている下級生九院 如月の心配をしたが?

 『如月ちゃん違うわ!』

 『岬サン、そうなんですね!』

 『…よくわからないけど、最年少トップランカーで、未だその記録を破られてないそうよ。

 見た目の年齢や体格を変幻自在に変えられる灯火は別格らしいけど?』

 ハイ、確かに何のことかわかりませんね!

 『…灯火サンの体の仕組みはどうなっているのかは、考えない事にしました。

 もちろん、灯火サンも怪しいメイドさんなんですね?』

 ウチの門下の猛者たちと仲が良い幼女の灯火さん?

 強いと言う話しはよく聞くけど、稽古は別にしてはまだ見たことがないのだ。



 『…、ウチに怪しいメイドさんが、集まっただけよ。

 他所は知らないけど?』




 実際にはどうなのかしら、

 アンドロイドのメイドさんがいるくらいだから、
 宇宙人や
 未来人や
 超能力少女のメイドさんがいたら雇ってみたいわ?

 正直、華も全て把握はしてないのだ。

 『今まで会長がおっしゃった中で、一番説得力が有りませんね。』





 北代家の側には、ここしばらく無人の家屋があったのだが。


 元々住んでいた方は、数年前に伴侶を亡くしてから、周りとの近所付き合いが煩わしいのか、あまり外出しなくなった。

 ただ、には優しかった様だ。


 庭には、北代家の猫たちが遊びに行ったりしていた様で、煮干しとかあげていた様だけど?

 だ、もんだから、

 『ジィちゃん居るかぁ、遊びに来たぞ!』

 『コラ、リリちゃん!

 お行儀が悪いデスわよ!』


 猫繋がりで、二人の少女とは仲良くやっていたそうだ。

 二人の少女の活躍で、別居していた息子さん夫婦と同居が決まり、北代家の猫同様にお宅に遊びに来ていた野良猫を連れて、

 『このの面倒は孫たちとみるよ。』

 そう言って引越しされた。


 それ以降は売却したのか、「売り屋」の看板が掲げられていたのだけど?




 『初めまして、わたくし、この度に越してきました「水原」と言います!』

 どっかで見た事有るな?

 『娘の若菜デス!』

 うん、知ってるよ。


 家には療養中の旦那さんと奥さんのがいるそうだ。

 …北代家のパパさんが、奥さんのお父さんの名前がだど知るのは、若菜ちゃんがリリたちに連れられて、ウチに遊びに来た時だったりする…。








 『最近、灯火のヤツ見かけないけど、もう七神んちに嫁に行ったのか?』


 朝の食卓で、愛妻に聞いてみると、


 『あら、居るわよ?

 灯火ちゃんなら、母さん菊乃サンと綾乃ちゃんの所でご飯食べてるハズよ。』

 『あっちの食費が危うくないか?』


 『うーむ、ソレがね?』


 庭から回って、離れの様子を隠れて覗く北代夫妻?


 俺の知らない光景がそこにあった⁈


 幼女ならぬ、少女の灯火がいた。


 なんか新鮮!

 灯火には間違いのだけど、粗暴さがまるでない?


 『ね、本当でしょ?』

 一緒に覗いている嫁が同意を求める。


 『なんか、今やってるの青い子みたいだな?』

 『…まぁ、あの子も中学生だし、そのが分かっちゃう私も私だけど…

 ソレ、なんか分かる。』 


 『あと、猫耳の赤ちゃん居ないか?』

 『えっ? どこ?

 あ、綾乃ちゃんが抱いてる子?』


 …まだ、厄介事が残ってる様だ。



 早く舞華に活躍の場を用意しないといけないのに、

 またお父さん、しまうではないか⁈

 
 綾乃、呼出決定。




 日を改めて、古本屋の方に妹を呼び出す、昼飯おごるからと言って。



 『…って、大体こんな感じなんだよ、お兄さま?』

 『…ソレ、俺が知ってる灯火じゃないな⁈』




 多分、その新たな猫耳っ子が原因らしいが、灯火が?
 精神攻撃耐性レベル五ぐらいの鋼鉄天使が?

 そう易々とキャラ変しちまうくらい何をされたのか?


 『…で、お前は大丈夫なん?』

 『サッパリ大丈夫、いつも通りですけど、何か?』

 ルルの件では、琥珀姫にお願いして聖域に保護してもらったが、なんかあのは違う気がする。

 中華とフレンチぐらい違うよな?

 

 『お兄ちゃん!

 いつの間にか、専属のメイドちゃんがいるんだけど?

 んじゃ、その辺詳しく聞きたいから新名のところで、オム蕎麦飯オゴっておくれ。』


 聖華が綾乃に挨拶をする、
 何故にウチに来てもらわないのって、騒ぎ出す!

 うるさいよ?


 上の喫茶店スピカに昼食を食べに行くと、


 『やぁ、ご近所さん。』


 ウミゾウ爺さんが海鮮カレー炒飯を食べていた。


 「じいさん、暇なのか?」


 隣りの席が空いていたのて、いつものオムライスを注文してから、隣りに座り

 「追加で、俺も海鮮カレー炒飯、半盛りで!」

 何気に対抗心?


 「若いな、小僧。」

 「うせー、もうすぐ五十だ、胃がもたれるだよ?

 なぁ爺さん、もう鶴亀町民なんだからに貢献してくれないか?」

 「…ん、 まぁ構わんが何をすればいい?」

 「野放しにしている海堂寺の野猿を躾けてくれよ。
 
 ウチのメイドさん達が躾けてると、ブラック企業並みに時間外労働をさせて仕舞う事に成るんでな?」

 「つまり、何をすればいいのだ?」

 「海堂の妖怪小僧共を再雇用してくれ、ちゃんと首輪を付けてな。

 悪さをしなければ、貴重な人材だ、ご町内の平和を陰から守るヒーローみたいな?」

 「成る程、忍者隊ゲッコウみたいなモノだな、よし、イイだろう、話しは通しておく。」

 やっぱり、海堂寺は無くなった訳ではないんだな。

 「頼むよ、ソレで女の子にイタズラしない様に釘刺しといて。」


 あの手の連中は目的やる事さえ明確に与えておけば、他の事に目も向けないもんだ。


 コレで全て解決では無いが、もうバカな事はしなくなるかも?

 メイドの仕事がいくらか楽になるはずだ。



 かな?
 

 
 
 
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