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男二人で…

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 仕事が終わり、真っ直ぐ家路につく俺。


 自宅そばのコンビニで嫁用に缶チューハイなんて買って帰る。

 嫁を酔わせてナニする訳では無いが、このところ締め切りに追われて昨晩やっと原稿が終わったのだ。

 決してご褒美とは言い難いが、労は労ってあげたい。



 まぁ後は起きていれば良いのだけど?


 雑誌類のコーナーでコンビニでよく見かける「本当にあった〇〇な体験談」的コミック誌に目が行く。


 エロい話やマジヤバな恋愛トラブルなど読者から募集してコミカライズした月刊誌。


 確かフナさんが参加している心霊体験談の隔月誌もそろそろ発売しているはず?

 見つけてソレも購入した。


 「毎度ご贔屓に。」


 「おっと、フナさんか?」


 「見てたよ、あとそっちもありがとう。」


 同じ雑誌コーナーに、

 【ふしぎ探偵 ミーコ&ミルミル ミニ絵本】を見つけたので買ってみた。



 「ついでだよ、嫁の資料用に。」

 「何の資料かは聞かないでおくよ。」


 あえて言わなくても、薄い本用だってフナさんは分かっているだろうな?



 「えっと、ちょっとお邪魔してもイイかな?」


 フナさんもコンビニで何かつまむ物を買って来ると、の様にウチに寄っていく?


 「僕も原稿がようやく終わってね、軽く息抜きしたくてさ。」


 「カタギの会社員の俺はいつ息を抜けばいいのだ?」





 家に帰ると嫁がいない?

 もしやと思い、スマホを確認してみると、妹からメッセージが届いてる?

 やられた!


 嫁と妹で、カラオケに行っているらしい⁈


 「どう思いますかね、ちるるん先生?」


 「仲良きことは美しいかな?」


 ハァそうですか?




 こんな時の為に作り置きし、冷凍しておいた惣菜をチンする。

 「フナさんも食べる?」


 「では喜んで。」


 嫁の土産を彼に渡す。


 「…で、何かあった?」

 「昨日、早川さんに会ってさ、駅前のパン屋で。」



 そこで例の【お地蔵さん】の話しになったそうだ。


 「実はおばあちゃんにあんな遊びはしたらダメだ、って言われていたんだ。」

 「ん、罰当たりだからなぁ?」


 「…ソレもあるけど、それだけじゃ無いんだ。」



 …おっと、今日は俺が話しを振ったカタチになったか?


 「ケンちゃんさ、あの頃【行方不明事件】が起きていたの覚えてる?」


 「…そんなの有ったか?」


 「ちょっと噂になっていてさ。

 その遊びが流行っていた頃、僕らの小学校の男の子と女性の先生が、行方不明になっているんだ。」


 「…その女性の先生って、【図画工作】の先生だろ、

 ソレ、何年か前に真相分かったヤツじゃないか?」


 「…うん、そっちはソレ何だけどね。」




 …その昔、俺たちが通っていた小学校の女性教員が突然行方不明になった。

 しばらくの間は病欠として、生徒たちには詳しい事は伏せられていた。

 しかし知らぬ間に、在らぬ噂が広まり始めた。


 某国に誘拐されたのではないか?


 それだけ何もわからなかったらしい?


 当時、子供や若い人の失踪事件が大きく報道されていたのに…

 テレビ番組で広く情報を求めたり、高明な霊能力者や海外の超能力者、精神分析者などを招いて【公開捜査】などが頻繁に放送されていた時期があった。


 番組には子供でもデマと分かる情報から真実に近いと思えモノ、ソレを見て当時の俺はドキドキしていた様な気がする。

 自分が事件関係者になった錯覚に陥っていたのだ。


 実際に事件解決した件もあった様だが、その殆どが解決に至っていない様だ。



 そしてある時、失踪事件の真相が判明した。


 そのキッカケはあの【区画整理】だ。



 そもそも、多くの住民からの意見から考慮された事だ。


 区画整理の対象になっていた地域は古い家屋が多く、道も舗装されていない細い私道ばかりで、緊急車両が現場まで到着出来ない。

 結果、人命が危険に晒されるのだ、大半の住民は区画整理を受け入れて、新たな住宅が出来るまで仮の住まいで暮らしたり、新たな場所に移ったりしていたが、この区画整理に強く反対する住民もいたらしい。


 折り合いが付いた後、土地開発が進むに連れ、とんでもない事が起きてしまった。


 とある住宅跡地の地中から白骨死体が発見された。


 元々そこに住んでいたのは、小学校の関係者、俺たちが卒業した小学校だ。


 別に元々その家にすんでいた住民は開発に反対はしておらず、既に開発が始まる数年前に引っ越していた様で、区画整理をキッカケに引っ越したのでは無く、定年退職を期に土地の安い農村地でスローライフを送っていた。

 程なくして、その白骨が失踪していた女子教員だと判明した?


 既に時効が成立しているとかで、その場所に住んでいた人物を罪に問えなかったらしい…

 何か金銭のトラブルが有ったらしいが、真実を語る前に病気で亡くなった…





 「…その時、子供の骨が見つかったとは聞いてないから、男の子は失踪なのかな?」

 付け加えた様にシレッと言うからちょっと、まるで真相を知ってるんじゃないかと思ってしまうから。

 「…ある意味【神隠し】だね、アレは?


 ソレでさ、もしかして地蔵巡りをした子供は【異世界】に迷い込んだんじゃないかって考えたんだ、当時のはさ?」


 更にさらっと怖いことを言うんだ、この人は? 


 「四国のお遍路さんは知っているよね?」

 「ん…何となく、

 もしかしてアレか、回る順番を逆に回ると…」


 俺は映画か何かで見た知識を答えた?



 「そうそう、そんな感じの手順に似ていたんじゃないかな、結果的にあの遊びは?」


 「いや、俺も一度だけどやった事あるけど、何も起こって無いぜ?」



 「その子が行った順番が、偶々だったんじゃないかな?」

 あまりにも荒唐無稽な見解に俺は呆れてきた、いや怖くなってきたのだ?


 何故なら今話している内容は、彼がの時に導き出した答えだから?

 本当にコイツは何処のあくまくんだよ?

 「でもアレは死者が蘇るって話しだろ?」

 「もしかして、ケンちゃんはあのお地蔵様が皆んな【水害の被害者】の供養塔だと思っているのかい?」

 「交通事故で亡くなった人の慰霊碑でも有るんじゃないか?」

 「おっと、ちゃんと理解していたね?

 そうそう、遺体が流されて見つからずあくまで目安に置いた【碑】に比べたら、その場所で命を落とし忘れず供養されてる【碑】の方が念が強いと思わないかい?

 最近だと交通事故や火事、少し昔だと空襲なんかじゃないかな?」


 よくそんなに頭が回るな?



 「…って、コレ全部子供の頃にが僕に言った事だよ?」


 「…えっ?  …マジで?」


 「ボク達、あの頃は痛い子だったね?」

 「…全然覚えてないけどな?」

 ソレからフナさんは、としての意見を述べた。


 「そもそも何であんな遊びが流行ったんだろうね?」

 「…そだな、でも誰かが始めた訳だろ?

 何か意味が有ったハズ…だと思う?」



 「…そうだね、

 ちょっと聴いてくれるかな、漫画のアイデアとして考えた事何だけど?」

 「何だよ、急に?」


 「ケンちゃんは何で犯人が遺体を床下に埋めたと思う?」


 「…は?

 ソレは遺体が見つかったら、自分の犯罪がバレるから、埋めて隠したんだろ?」

 「なら、何で床下なんだろ?

 別の場所の方が良くないかな?

 自分の暮らしている真下に死体が埋まってるんだよ、気味が悪いじゃないか?」


 「あの辺りは、昔住宅が密集していたし、道も狭いから大人一人運ぶのは、困難で近所の人に見られる可能性が有ったからだろ?」

 また俺を誘導しているな?

 「そう、ならね。


 でも、子供ならどうかな?

 それこそ、大きなカバンに隠せなくもないだろ?」


 …つまり、行方不明の男の子は既に…


 「子供の頃は、何でも幽霊やUFOに関係して考えていたけど、手品のタネと同じで、よく考えてみたら、左程難しい事ではないんだよ。


 さぁ、ココで問題だけど…」


 「妙な遊びを流行らせて、妙な噂を流す?

 そう言う事かな?」


 「どうだろうね?

 でも【公開捜査】の番組で情報を電話してくるのは、捜査の邪魔をしているって事だよね?」


 …なるほど?


 例えば本当は西の方にいるのに、

 「東の方でヒトを見た。」

 とか、

 「今、テレビに映っている写真の人が北の方に向かっていた。」


 と言うふうに、もしかすると犯人もしくは行方不明者本人が捜査を撹乱させる為に番組に していたのかも?

 中には大した悪気もなく、イタズラで【嘘の情報提供】をしていた人たちもいたんだろう?


 「…当時は皆んなが【善意の一市民】と言う前提で、情報提供を募っていたからね?

 わざわざ嘘をついてまで、電話してくるとは思ってない…

 って、訳でもないよね、ソレも含めて【情報番組】だったのかも?」




 俺たちは何でこんな話しで、こんなにいるんだろう?

 酔ってる訳でも無いのに?



 「…なんかよね?」


 フナさんが楽しそうに呟く。


 「…そうか?

 子供の頃、こんな話しで盛り上がってたかな?」 



 「…そうだよ、あの頃ボクと話が合ったのはだったハズなんだけどなぁ?」


 「…ソレ、本当にオレだった?」


 「よくおばあちゃんの店駄菓子屋で【もんじゃ】を食べながらね。」
 




 …その記憶、オレ全くないのだが?


 子供の頃…

 夏休みに放送される【心霊特集番組】や、何となく人の顔に見える【心霊写真集】はそれこその鉄板だった。


 俺は自分でラジオで、当時【推し】タレントの【深夜放送】を聴くのが好きで、やはり夏場に特集される【心霊体験特集】の回はカセットテープに録音して、覚えたその話しを休み時間に披露していた


 【井上●●子のト〇〇ラ●●シン〇〇ー●】が大好きだったのだ。

 「本当に覚えてない?」


 「うっすらとは覚えてるさ、でもなぁ…。」




 小学生最後の夏、父親が死んだ…。


 飲み屋で他人のケンカの仲裁をした父は、酔って訳がわからなくなっていたソイツに殴られて亡くなった…

 倒れた時にテーブルの角が後頭部を直撃した事が直接の死因だそうだ。
 

 ソレから、【人の死】を軽んじる様な事に、不快感を感じる様になったと思う。



 守護霊だか狐の霊だか、呼べる訳無いのに降霊術の真似事をしていた女子に腹が立ったのは、そんな理由も有ったと思う。


 俺の父親が死んだ事を知っているハズのクラスメイトが、そんな遊びをしている!

 この頃の俺は、次第に性格が暗くなっていった。


 中学でとあるに出会い、多少は気持ちも上向きになっていったけどな。



 だから、今だに酒は飲まない事にしている。


 父を殴った奴はたしか他にも何かやらかしていたとかで、余罪も含めてそれなりに長い刑期を課せられ、何年か前に出所したと聞いている、会って謝りたいとか抜かしたそうだが、母が亡くなった頃でもあったので、


 『絶対に来るな!』


 と、代理人に頼んである。



 オレが小学生の頃と性格が随分違うのはその所為だろうと、フナさんに説明した。



 「ボクとは真逆だね、ボクはおばあちゃんが亡くなって、【人の死】について考えたからは、更にオカルト関連の本なんかを読む様ななったよ。

 そしてある事に気がついたんだ。


 だからこそ今のボクが有ると思っているよ。

 【心霊体験談漫画家】のボクがね。」


 ある事ってなんだろう?

 「小さな女の子と大きなお友達に大人気の【ちるるん先生】だろ?」


 「そうそう、前のケンちゃんはそんなは言わなかったさ、もっと優しい性格でひょうきんモノだったよ?」


 「オレに優しく無い連中に優しさを振り撒く必要は無いだろう?」



 「…わかるよ、その辺はね。


 でもボクは優しいよね?」

 「ハイハイ、優しいですよ。」

 俺は皮肉っぽく答える。

 「でさ、ケンちゃんが出会った運命のアニメって何かな?」



 「…ん、日曜の朝にやってるやつかな?」


 「…嘘でしょ?

 本当は…」


 そこへ、


 「ただいま~、お兄ちゃんお土産あるよー!」


 「ただいま~、ダーリン愛してるっちゃ!」


 酔っ払いどもが帰ってきた。




 「積もる話しは、また今度にしようぜ。」


 「そうだね。」


 この日の俺たちの奇妙な検証話しは終わった。




 
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