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いらっしゃいませ!ようこそ『森の猫さま』へ。

俺の妹が店長してる猫カフェに義妹と幼馴染と俺がいる件

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 もういいよな。舞斗だ。



 『あ、あの舞斗、一緒に猫カフェに行って欲しい。』 もじもじ。
 校舎屋上にあるベンチで弁当食べてる俺を見つけた華月が話しかけて来た。

 『華月が行きたい猫カフェって「森猫」の事か?別にいいけど。』 

 最近の華月さんは超お嬢様だ。  
 元々、華道茶道も嗜んでいたし、仲良し従姉妹が選んだ服を汚さない、傷付けない様にお淑やかだ。これで椅子に座って、膝にペルシャ猫でも乗っていたら、もう誰だよ!って感じだ。  

 『実は先日から、お前に聞きたい事が有って、でもあの様な事になり、好機を逃していたので。』もじもじ 
  
 『あ、そう言えば、お前のウチ、子猫居るんだろ?名前何て言うんだ?』
 (それ、今聞くのダメなヤツ!)

 『そ、そうだ。賢そうなんで「コナン」にした。男の子だからな、ひなたが、考えたのだ。ハイカラで良いだろう?』今日日聞かないな、ハイカラ。
  
 『舞斗は子供の頃から家に猫が居て詳しいから、色々教えてもらおうと思い、学校でお前を見かけたら声をかけていたのに……。』あらら?ソレって
 『あー悪い、俺は又、勝負をさせられると思って…。』 
 『ソレはもういい、実は勝負して勝ったら教えろと言うつもりだったから。』何だ、ソレ。実に華月らしい。 

 『それじゃ、明後日の日曜日はどうだろうか?舞斗さえ良ければだが?』 もじもじもじ。

 『それなら、同じビルの一階にある喫茶店で待ち合わそうぜ?
11時でどうだ?』 待ってる間に久しぶりに叔母さんの特製オムライスを食べることにする。ツケもきくし。
(舞斗よ!そもそもアノ叔母夫婦はお前からカネは取らんぞ。) 

 『そうか!なら決まりだな。』  
 嬉しそうな笑顔の華月、なんか初めて見る表情にちょい感動!
 こんな顔もするのか。

 さて、ほどなく約束の日曜日。

 華月は、この日初めて「天使」を見た。「天使」とは地上にいたのだ! 
 

 『どしたー?華月。あれ二葉とは久しぶりか?ほれほれ華の妹の、ふ、た、ば、ちゃんだぞー。あれ?大丈夫か?』 

   二葉ちゃん?この少女が?
 華の妹は知っている、以前プールで会った事が有る、華や舞華の後をよちよち付いていた可愛いのが、あれ? 
 あれから何年経つのだ?

可愛い事には変わりないけども?

 変わり過ぎだろう!

 『華月さん?如何なされましたか?何処かお加減でも?』二葉ちゃんが自分を心配されている! 
 
 『だ、大丈夫、すまない。心配させて、久しぶりに二葉ちゃんに会えて驚いてしまって。』あ、いけない!驚いたとは二葉ちゃんに対し、失礼だ。 

 『あの、私、どこか変でしょうか?お兄様?』二葉ちゃん、君に変な所なんて無い!変なのは自分だ!
 
 『ん~?あ、アレだ。さっきのMIXパフェかも?太ったとか。』    
 そんなことは断じて無い!とか解るのか、舞斗は?  
 『もぅー!ばかばかばか、お兄様の馬鹿。』ポカポカポカ、ポカと舞斗を叩くリズムが「ばかばか」とシンクロしてる。なんて可愛い、自分もこんな妹が欲しい。 
  
 『良いなぁ、羨ましいよ。舞斗や華が、こんな愛らしい妹さんが側にいて。』ん?二人がキョトンとしている。本当に仲の良い兄妹に見えて羨ましい。 

 『何だ?華月、二葉のTaiは曲がって無いぞ。』
 『お兄様のエッチ!また胸の辺りを見てましたね!』

 『舞斗、最低だな。』
 何故か楽しい、この子がいるから?

 『あの、華月さん、よろしいでしょか?』 Oz Oz
 『ああ、すまない。何だろうか?』
 『華月姉様とお呼びしたらダメですか?私、華月さんともっと仲良くなりたいので、出来たら是非!今日もお兄様にご無理を言い、ついて来てしまいました。』




 自分は子供の頃から男の子のつもりだった。
 道場を継ぐのは自分だと思っていたからだ。
 強いモノに憧れ、弱いモノを遠ざけていた。
 父が最強だと思っていた、いつも道場に来る大男を瞬殺する父を
 「弱くなったな。」と言って、瞬きの間に倒した父の兄、ひなたの父親。 
 アノ叔父が現れるまでは。

 もっと強くなりたいと願い、道場で大人に混じり精進していた頃、出会ったのが舞斗だった。
 だからアイツとはいつも切磋琢磨して高みを目指していた。
 いつからか、華が加わり、舞華も顔を出して、厳しい鍛練に楽しさが加わっていた。
その頃から何か自分に違和感を感じた。 
 歪なのだ、女なのに男の様に振る舞い、弱いのに強さを求める自分に。  
 華や舞華を見て、自分の不自然さに気づく。

 暫くして、父が自身を鍛え直すのに呼んだのが、舞斗の父上だった。 
 父が「師匠」と呼び、曾祖父に「死神」と言わしめた人物は、飄々として捉え所の無い「タダのオッサン」にしか見えない。 
 その人こそ今、アノ叔父の相棒をしている⁈
  自分の常識や世界観が壊れて、もっと広く物事を知らなければ、父とその人の修練をこっそりと覗きに行く事にした。 
 もっとも、バレて見つかって釘を刺された。お前にはまだ早いと。
 なので舞斗と修練を重ねた。 
 有る日、舞華がプールに誘ってきた。舞華達とは学校が違うので勝手がわからなかったが友達とプールに行くのは「泳ぎに」行くので無く、「あそびに」行く事なのだと知った。  
 
 自分は学校の授業で着ている水着だが、舞華や華はピンクやブルーの可愛らしい水着だった。 
 
 意外だったのが、舞斗が自分を見て、いつに無くソワソワしてる事。

 『なんだよ、その髪形、似合うじゃん。』って、自分を女の子として扱われた。
 思わず女の子の様なことを、
 『馬鹿、エッチ、見るな!』と言ってしまった。 何故だろう?
 
 あれから暫く、自分でもよくわからない感情にイライラしたり、ドキドキしたり、モアモアしたりする事が有った。 
 
 中学生になり、従兄妹の界と同じ学校に通い、ある日突然、それまで存在すら知らなかった従姉妹、ひなたが同居と成る。 
  
 『よ、よろしくね。華月ちゃん!私、こんな美人な従姉妹がいるなんて知らなかったから、とても嬉しいよ。』


 美人?私が?そんなことは無い! 

 ひなたの方が健気で可愛い、私には眩しいくらいだ。 
 母親を亡くし、我が家で引き取ると曾祖父から聞いて、アノ叔父の娘と聞いて警戒していたが、そんな事が馬鹿らしいくらいに、ひなたは優しくて、素直で、少し頑固な良い子だった。
 
 だから、私もひなたと「舞華と華」の様な関係になりたいと思う。
 いや、ひなたとなら絶対なれる。   


 そして、 
 今日、天使に会ってしまった!
 よく「お人形の様に」とか例えて可愛いさや美しさを表すが、
 愛らしさ、清らかさ、美しさ、そんな言葉じゃ表現し切れない、
 尊い。まさに天使だ!

 そんな女の子が私に、「姉様」と呼ばして欲しいと言っている!
     
 私に妹!


 『あの、ごめんなさい!
 突然こんな事、お願いして、お嫌ですよね。失礼しました。 
 あの、今日はお二人で猫ちゃんたちとお楽しみ下さい。』 ん? 
 しまった!あまりの事に固まっていた様だ! 

 『ま、待って、二葉ちゃん!』 
 立ち去ろうとする天使を引き止める為に、つい手を取った。 
 柔らかい、力を加えたらこわしてしまいそうで。
 『違うんだ。二葉ちゃんのお願いが嬉しくてチョットだけ驚いただけなんだ。決して嫌じゃない!』
 『本当ですか? 良かった。嫌だわ、私とした事が慌ててしまい恥ずかしいですわ。』 可愛い、反則で可愛い。
 『良かったわね、二葉ちゃん。ハイ、まぁくん、特製オムライス大盛り、お待たせしました。』
 『あざーす!』 
 『もう、お兄様ってば!言葉使いはきちんとして下さい!』

 『そうだぞ、舞斗!作って頂いたお店の方に失礼だ……ぞ。』
オムライスを運んで来たのは女神だった。

 (もぅいいよ!)

 それから舞斗はオムライス大盛りをおかわりして、二葉と華月はサンドイッチ一皿を二人で分け、ハーブティーを頼んだ。先程の女神の様な女性は舞華達の叔母と知り、しかも父や叔母(界の母、父の妹)の友人だと言う、何だろうか?北代の家とは縁が深いのか?
 
 『腹ごしらえも済んだし、そろそろ行くか?』舞斗が食べていたオムライス、本当に美味しそうなので別の日に普通サイズを食べに来よう。それこそ、ひなたや妹を誘って。

 エレベーターを使わずに、階段で三階に上がった。二葉の提案だ!
 『きっと楽しいですよ。お姉様。』
 二人以上姉がいる時は○○姉様と名前呼びで1人の時は「お姉様」と呼ばれる、そしてなんと! 
 『お姉様、私のことは「二葉」とお呼び下さい。その方が姉妹らしくて良いですわ!』
 
 自分は明日、天に召されるかも? 
 二階から三階までの階段スペースの壁には猫の写真や子供が描いた様なネコの絵が展示されていた。シールだろうか?床にはカフェまでネコの足あとが我々を道案内している。 いちいち可愛い。
 二葉は、私にコレを見せる為に階段の移動を提案したのか?
 なんて優しい気遣い。
 『さぁ、お姉様。こちらですわ!』私の手を取り、エスコートしてくれる二葉。舞斗いらないかも?

 ナンダ?入口のカウンターにメイドがいる? 猫カフェに来たはずでは? 
 『いらっしゃいませ。猫カフェ「森の猫さま」へ、ようこそ。

 『ハイ!いらっしゃいました。コレ、パスポートなのですわ!』
 二葉が可愛いが高価そうなポシェットから猫の顔の形をした可愛いパスケースを取り出して、猫耳メイドに提示した。
 『こんにちは、まみ姉様。舞姉様はいますか?』 
 『こんにちは、お嬢。店長は絶賛接客中っス。』
 よく見ると舞華達と学園内で一緒にいる事の多い下級生、ここでバイトしているのか?
 『舞斗先輩はデートですね!カップル限定コースがありますが、お得デスからコッチにしましょう!』デ、デート?‼︎
 『ん。じゃあそれでい…』
       『デートじゃないから、このクーポンを使ってくれたまえ!』急いでひなたから貰ったクーポン付きチラシを出した。
 
 『これはまだ半年くらい有効だし、カップルコースは今月末までのお試し企画なので、同じぐらいの金額でオプション三つプラスだから、お勧めですが?そんなに嫌ですか?舞斗先輩の事。』
 『いや、そうゆー事で無く、子供の前でそんな事、まだ恋人でも無いのに!』 あ!
  
 『まだ、デスか?ほほう。』 
 『華月姉様!私、もうそんなに子供じゃありませんからね!……キスだってしたこと…あるモン。ぽっ』今、二葉が舞斗をチラ見した。「モン」って、可愛い♡

 けど、 「キス」?

 『舞斗、私も一つ、「口伝」を拝領した、披露しようか?』 

 『やめなさい、お店にご迷惑だろ!ちゃんと説明するから!』 

 『お兄様、恥ずかしいデスわ!』

 『黙ってような、二葉。アダチ君も何か、汚いモノを見る目で見ない様に!』

 『冗談デスよ、先輩!テヘペロっス、』 
 『お兄様、ごめんなさいデスの!』 
 『すまん、舞斗。でも説明は求む。』 

 『やれやれ、で、オプションは何が有るのかね?』

 『猫と記念撮影、入店時間内にミニアルバムにしてプレゼント、当店の可愛いニャンコのキャラクターラバーストラップをプレゼント、猫のオヤツ引き換え券デス!  
 最後にくじ引きが有ります。
 空くじ無しっス。これは今月のみの全員サービスですが。』 
 何か凄くない? 
 『ニャンコのキャラクターデザインはパパ殿です。「みなと岬」って、姉が同人誌持ってますが、先輩ご存知っスか?』 

 『父ちゃんもだけど、君の姉様も凄くない?』どっちだ?規制前か、後か?

 お得だからと華月を渋々納得させるも、
 『ニャンコちゃんのストラップ欲しいデス!』の二葉のお願いでほいほい意見を変えた華月姉様。 
 『姉として妹のお願いは、叶えてみせる。』チョロい姉だ。

 二葉は年間パスポート、舞斗と華月はカップル限定コースで入店。ストラップはカップル二人にひとつ包ランダムにもらえる。
 黒いビニールの小袋を2つとも二葉にあげた。
  
 『開けてみ。誰か出るかな?』
 『ハイ、あっ!福ちゃん♡、もう一つは、あら?お兄様、私この子、知りませんわ。』 
 『さすがにこれだけいると分からない猫もいるさ。』

 『そうじゃないっス、一文字先輩。お嬢はウチの店の猫たち、24匹みんな知ってるっス。そのストラップはシークレットレア!三つの内の一つデス!』
 福ちゃんストラップは目が開いている、この猫は閉じている?白地に耳と尻尾が茶、尻尾が鍵尻尾だ。白地?シロ?閉じた目?
 『アダチ君、もしかして目が閉じた猫ってこの猫だけか?』
 『多分?自分もシークレットは初めて見るっス。先輩はこのニャンコ、ご存知で有りますか?』

 『俺もさすがに本物は見た事ない。おそらく「シロ母さん」だと思う。北代家に最初に居着いた猫らしい。お婆ちゃんが生きてる時に聞いた。』
 『私、産まれる前の話しですか?』
 『オヤジ様が今の二葉ぐらいの歳の話だから、今夜そのストラップ見せて聞いたらいいさ?』 
  『ハイ、楽しみです。』
 
 猫のおやつを受け取りやっと入室、畳み六畳の和室スペースが、空いていたのでここに陣取る。座布団に座り、舞斗は胡座で二葉は足を伸ばしている。
 『ピー。』二葉を見つけたメイがこちらに走って来た。
 『メイ、お膝に来る?』
 『ピッピャー!』猫とコミュニケーションを取る美少女、チート能力だろうか?
 『にゃあ~。』MIXの推定3歳の男の子「とりとん」もやって来た。舞斗の胡座にすっぽりハマり、背中を撫でられご満悦!

 さすが二人は猫の「プロ」、玩具やオヤツを使わないのに猫が寄って来る。
 家で「コナン」はひなたと母と「犬の桜花」には甘えている。
 私は頭を撫でたいと思って近づいても、走って逃げてしまう。 

 何か「コツ」の様なものが有るなら教えて欲しい、そう思い誘ってみたが最初から差を見せられた。 
 とりあえず座布団に正座してみる、何故か二人がコチラを見て、   
 『足、崩した方がいいかもだぞ。』舞斗が可笑しな事を言う。
 『正座は慣れている、そう簡単に痺れたりしないさ。』道場の板の間で2~3時間正座した事が有る。問題ない! しかし、
 『二葉みたいに脚を伸ばして座ると猫が上に乗り易い。正座だと人によっては乗りづらいから、途中で足を崩したり、組み替えたりしたら猫が逃げちまう。』そこまで考えていたのか! 
 『でも、二葉なら可愛いけど私がやると行儀が悪く見えないか?』
 『私、お行儀悪かったですか?お姉様。』などと言っていると、もう一匹仔猫が近づいて来た。
 『あら、コムギちゃんですわ。どうぞ、こちらにいらっしゃいな。』二葉が優しく手を出して、その子の頭を撫でる。
 『ニャン!』その鳴き声が何かの合図かの様に、二葉の周りに猫達が集まりだし、まるで白雪姫に集まる七人の小人の様、猫もアイ○ーに見えなくも無い。 
 『あの~、一緒に写真イイですか?』小さいお子さんを連れたお父さんらしき人からお願いされた。 
 二葉は喜んでそのお子さんたちと猫を抱いて写真を撮って、 
 『ニャンコのおねーちゃん、ありがとござます。』とお礼を言われて花丸笑顔!
 『可愛いデスね!小さいお子さまは。私「ニャンコのお姉ちゃん」にジョブチェンジです。』
 前職はなんだ?白雪姫か?シンデレラでは無いのは明白! 
 オプションで貰った猫のオヤツは猫用クッキーだった。もう直ぐ「猫達のお食事タイム」なので、コレはウチの子のお土産にする!
 
 『コナン君、きっと喜んでくれますわ。お姉様!』……昔、こんな言葉を聞いた、「可愛いは正義!」うむ、世界の真理だな。  
 
 『お客様、コレは彼方のお客様からデス。メイドの土産に着けてあげて下サイ!』メイド後輩が指す「彼方」には柔らかソファに座った高齢者グループがいる。
 
 『あら、お爺ちゃまたちデスわ。こんにちは、お加減いかがですか?』うむ、私も姉として礼をすると死…ナンダ、コレは?
 『お兄様、お姉様、見て下さい!似合いますか?』
 二葉に猫ミミが生えた!では無い。猫ミミカチューシャを装着したのだ。これをプレゼントした●に損ない、じゃない高齢者とは誰だ!二葉の様な美幼女に良い趣味だが絶対下心が有るだろう! 
 『やぁ、ご機嫌よう。二葉嬢ちゃん、なんだ今日は舞斗坊も一緒か?其方の綺麗なお嬢さんは?紹介してくれないかな?』 
 そこに「鬼をも喰らう羅刹」はいなかった。
 『ジィさん、紹介も何もジィさんの曾孫だろ?』ココにスカウターが有れば、華月姉様の戦闘力が、急激に上昇するのを確認できた筈だ。 
 『オ、ジ、イ、サマ?偶然デスネ。この様な場所でお会いするとは?』さぁ、どうでる?ジィさん。 

 『華月ちゃん、ありがとうな。今日はウチの娘たちが世話になってる様だね。それにしても久しぶりに顔を見せて貰ったけど、すっかり大人に成られて、ウチの舞華はまだまだ子供かな?』……?あれ? 
 『北…代の、  おじ様?』   

 『んん?華月じゃったか?最近、目が遠くなったのう!』そうゆう事にしておく。 

 『お父様、お爺ちゃまにコレを頂きましたの!似合いますか?』 
 『ハハハ、二葉、そこは「似合いますかニャン?」と聞いた方が破壊力が増すぞ。』
 何だか俺のオヤジ、恥ずかしいくらい俺のオヤジだ。同じ事思ってたよ!って舞斗は思っていたそうだ。

 恥ずかしいのは私も同じだが、二葉が可愛いから荒ぶる気持ちを抑えよう。
 
 『良いね、良いね。ケンちゃんと御隠居は可愛い娘さんがいて、ウチも頑張ってもう1人女の子作っとくんだったよ。』言葉は下衆ッぽいがサバサバした印象な初老の男性は誰?
 
 『お久しぶりですニャン、三条のおじ様。この前お会いしたのは、山王院の御屋敷ですニャン。』ココで恥ずかしがら無いのが二葉お嬢様なのさ!ウチのオヤジ御満悦!
 ん?三条……駅前のデカいビルに駅側から良く見える場所に「三条法律事務所」って有るよな? 
 『ハイ、おじ様はそこの一番偉い人ですニャン。』二葉の「猫ミミモード」は続く。
 ネコじゃらし型の玩具で猫と遊ぶオジサンたち、シュールだ。 
 後で聞いた、このオジサマ達はかなりの「太客」らしい、あと二人、お医者さんと格闘家さんがいるそうだ。

 強面なのに猫が怖がらず、甘え近づいているそうだ!
 理不尽な気持ちになる。
 更に後で聞いた事だが、家では私やひなたがいない時は「コナン」は曾祖父の膝の上に居る事が増えたそうだ。
 理不尽だ。
  
 『華月ちゃん、君の所のジィさんは俺が君くらいの頃から猫とか犬とか幼女とか好きだよ。』北代のオジサマが教えてくれた。
 『犬の散歩の途中で知り合った小さい女の子が「おウチが取られちゃう」って泣いてたから、訳聞いて、
 俺や影丸たちが地上げ屋の頭が、ヤクザ崩れだとか調べさせられて一緒に掃除した事が有るニャン。』少しだけお爺様が好きになったかも?
 『町のダニやノミはさっさと潰さないと痒くて我慢出来んからのぅ。』と言いながら、膝の上の猫のノミ探しをしている、ノミ居ませんからね!ウチの猫たちは!

 『お爺ちゃま方、一緒に御写真、よろしいデスかニャン?』
 すっかりお爺様キラーにおなりになられた猫ミミモードなお嬢様は、真っ黒子猫を抱っこしてお願いする。誰も断る筈も無い。 
 『おや、「影丸」じゃな。こちらにおいで。』二葉から子猫を
受け取り、またえらく愛でている。お気に入りなのか? 
 何故か、華月がまたえらく不思議そうな目で曾祖父を見ていた。
 『影丸ってひなたの父上の名前では?も、もしかして?』 
 『ハイニャン、アノ子猫の名付け親はお爺ちゃまですのニャン。』 
 『そうニャンですか。』つられた、本人自覚無し。とにかく皆んなで記念撮影、コレもアルバムに加わるのか?
 
 場所をジジ様たちがいるフカフカソファのスペースに移動して、華月に猫の付き合い方をレクチャーした。
  
 その時、神の悪戯か?悪魔の罠か?ちょっとした可愛いハプニングが起こってしまう。  

 『あ、かげまる君。ダメですニャン、おイタはおしりペンですニャン。』
  
 じ様の膝にいた影丸が一度、絨毯を敷いた床に降りて、皆んなを品定めする様に見比べると、トコトコ二葉の前に歩いて来た。 
 仕草は可愛いが、やっぱり女の子がいいとかオス猫なのね。
 二葉の足にすりすり擦り寄る。今日の二葉は膝小僧が隠れるくらいのスカート。素肌に子猫のすりすりはお互い気持ちいい。 
 この女の子のお膝に乗ってお昼寝すると幸せなのはミコ姉やメイ姉に聞いていた。
 じ様は可愛がってくれるが硬い!なので膝の上に上がろうとジャンプした………のだが、目測を誤り、影丸の頭は二葉のスカートの中に入ってしまった!
 何が起こっているか分からない影丸はとにかく進む事を選択した。ココで誉めるべきは影丸は爪を立てなかった事だ。 
 
『やん!ダメニャン!かげまる君、皆んなに見えちゃうニャン!』この状態でも猫ミミモード、エラい!のかな?  

 二葉もスカートの上から影丸の頭を軽く押さえて侵攻を阻むのだけど、太ももにふわふわ毛並みの子猫の感触がくすぐったいのと、影丸を窒息させないようにあまりチカラ加減が難しい。
 影丸もスカートの中だから、暗いけど素肌の膝に触れて、柔らかい感じが心地よい。猫の習性上、前に進む以外に道はない!影丸自身は外に出たいのだ。あといい匂いがする。小さい冒険家は見事にプレシャスを見つけられるか?
 
 『こら!不埒者め!』華月が影丸の尻尾を掴んで引っ張った! 
 『お姉様、ダメですニャン!乱暴にしては!』驚いた影丸、思わず爪が出てしまう!しかもなんと爪が「パンツ」に引っ掛かってしまった!影丸ファインプレー? 

 『お姉様!ダメですニャ!脱げちゃいます!ニャン!』 

 『この不埒ネコめ!離さないか!』 
    ポカ! 

 叩かれたのは華月の後ろ頭。
 
 『貴女が離しなさい、影丸の尻尾、取れたらどうするの?華月ちゃん。』
 『ひ、ひなた?』 
 『お客様、猫への乱暴な行動は、二次災害に繋がります。私に任せて下さい。』 
 ひなたは膝掛け用のブランケットで二葉の膝回りを上手く隠し、
 『二葉ちゃん、ごめんね。ちょっと失礼します。』 
 『大丈夫デスニャ!私、ひな姉様を信じてますから。ニャン。』 
 『二葉、姉多いな。妹を作りなさい。猫じゃない、人間の。』
 『男性のお客様は向こうを見ていて下さい。舞斗君も!』
 ひなたは影丸を宥めながら、スカートに手を入れて、影丸の前足を確認した。 
 
 『やっぱり、爪が引っ掛かっているわ。今外すから、ハイおわり。』振り返って、
 『華月ちゃん、チカラ任せに引っ張ると余計に食い込むから、パンツだけじゃなく、二葉ちゃんの肌にも。』
 確かに、華月が影丸の尻尾さえ掴んで引っ張る事が無ければ、二葉のパンツが見えたか、見えないかくらいのハプニングで済んだはず。 

 『華月、ウチではこんなの、日常茶飯事な光景だぞ。大体、二葉は水色縞々か猫さん柄だ。』
 スパーンッ!っと舞斗の後ろ頭にスリッパの一撃が入る!
 『後半は言っちゃダメな奴だろ!アホ息子。』
 『お兄様!やっぱり見てましたのね!』猫ミミモード解除。 

 『やれやれ、お前のせいで、大騒ぎだ。』何故か影丸、今は華月の膝の上で寝息を立て寝ている。 
 寝ているのに尻尾はピクピク動いている、そんなモノなのかな? 
 思わず尻尾に指を絡ませて、
 『可愛い尻尾だな。引っ張って悪かったな、痛かったか?』頭を撫でてやると、
 『ミャ~ン。』寝言か?可愛い鳴き声を聴かせくれた。
 後でアルバムを見たら、この時に撮影した写真が最後のページに有り、とても自分とは思えない自然な光景だった。


 そろそろ時間らしい、お楽しみのくじ引きを三人で引く。 

 舞斗、ニャンコストラップ。
 二葉、ポストカード。
 華月、     影丸。 



 『えっ⁈』  
 『影丸の里親権利が当たりました!辞退してくじ引きをやり直す事も出来ますが?』くじ引き担当のひなたがニッコリ笑って問いかける。


 何か作意的なモノを感じるが、此処は敢えて踊らされてやるか! 
 真っ白のコナンに、真っ黒な影丸、案外いい友達に成るかも知れない。

 『影丸は私が育ててみせる!』



 ひなたも一緒に譲渡の手続きを済ませ、晴れて影丸は一文字家の猫となった。猫大好き犬の桜花もきっと大喜びだ。 
 
 『ひなた、本当にこれで良かったのか?改めて考えるとくじ引きで生き物を景品にすることなんて命に対する冒涜なのでは?』 
 
 『あわわ、大丈夫だから!アレ、イカサマだから。店長指示の。』えっ?八百長か! 

 『でもね、華月ちゃんなら、かげまる君を立派に育てられるって、私信じてるモン。』あっ!私の従姉妹も可愛い!これをリア充と言うのか?

 『お姉様、良かったですわね!今日からかげまる君のママに成られるのですのね。ステキですわ!』 
    えっ、まま? 
 私がかげまるの母になるのか!
 『せ、責任重大だな。』
 
 『元々、ウチの猫カフェは保護した猫たちの里親を探す為と猫たちに人間に慣れてもらう為の猫用リハビリ施設みたいな所だから。』

 『それなら私もその尊い志しに賛同し、社会貢献しよ…』
 『そんな難しく考えるな!』
 
 舞斗がニカって笑っているのが腹立たしいが、聞いてやる。

 『命が尊いのは人も猫も同じなんて綺麗事はこの際どうでもいい!お前がかげニャンを気に入ったかだろ?それでいいのだ!』舞斗は基本、馬鹿だ。馬鹿だから直感でモノを言う。良いも悪いも。

 『そうか?そうだな!』
 影丸の目を見て話しかける。
 『今日からよろしくな、影丸。』子猫を抱き上げて……見ようとして両の腕を差し出すと、影丸がその上を駆け上がって私の方に突進してきた。 
 『ん!』影丸と私の顔が衝突!  
 
 私は影丸に、





 唇を奪われた。
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