56 / 76
子生意気な天使でしたヨ?
しおりを挟む
子供の頃から恵まれた環境で育てきたアマネ。
産まれた瞬間から【天上天下唯我独尊】なオレ様チャンだったのに、最初の挫折を味わったのは意外にも、なんとこの世界に訪れた時だったそうた?
元の世界では、ソレまでの生活こそが最高のモノ、自分こそが至高な存在と思ってきたから……?
翼人族の長の息子として生まれたアマネは自分たち以外の種族を下に見ていた。
特にひ弱なヒト族や空を飛べない獣人族を…
何故なら古くから翼人は【神の眷属】と呼ばれているからだ。
知性や知能、戦闘力は神に次ぐモノだと言われていたし、そう思っていたのだが…
強いてあげるなら、翼人と同じく【神の眷属】と呼ばれてる一部の龍人や人狼ぐらいが精々足元に及ぶかも知れないと認識だけしていたが、ソレでも自由に天空を舞う自分たちが絶対的に至高の存在だと思っていたのだ…
何故なら、アマネの周りにいた【お世話係】がそう言っていたから…。
まぁわかりやすく言ってしまうと、甘やかされて育った金持ちのボンボンの様な環境だったのだ。
加えて、アマネが幼少期から天使の様に可愛いかった所為もあるが?
だがアマネも馬鹿では無い、成長するにつれて、ソレは先人が積み上げてきた【過去の栄光】に寄りかかっている愚かな体質だと気付き始めた。
ソレでも自分は、自分だけは【特別】な存在だと自負していた。
この世界であの男に会うまでは…
アマネは子供の頃から難しい書物を一度読めば内容は全て理解し、剣術なども直ぐに指導係を上回る実力が身につく程の【天才児】だったからだ。
便宜上、人族ら一緒にゴブリンやオークの群れの討伐を行なった時も一番多く倒したのはアマネだった。
ちなみにこの【アマネ】と言う名は、以前異世界からやって来た女剣士から賜わった名だ。
先代族長が同じく【異世界】から召喚された【勇者】とパーティを組んでいた時のパーティメンバーだった女剣士が、名付け親になってくれたらしい?
女剣士も【勇者】と共に【異世界】から召喚された存在だったそうだ?
邪神の眷属だった魔王を倒し、元の世界に帰る【勇者】と【女剣士】が、共に戦った戦友が頼まれてそれぞれの子供たちに名付けたらしいが、そのパーティの中には龍人や人狼の戦士、ヒト族の王族もいたらしい?
「…お嬢さん、つかぬ事をお訊ねしますが?」
アマネは先程から給仕をしてくれている獣人の少女…マイヤに訊ねてみたい事があったのだが?
「はい、何か?」
「アナタは何か武術の様なモノを身につけているのでは?」
「…そのご質問にはお答え出来かねます、……乙女の秘密はヒミツのままが良いと、姉サマから教わってますので。」
「…成る程、ソレはそうかも知れませんね。
いや、失礼しましたお嬢さん、あまりにもアナタの動きに無駄が無いと言いますか、美しかったモノでつい…、無作法をお許し下さい。」
…馬鹿な事を聞いたかも知れない、あえて聞くまでも無かったのに、ついこの少女と会話を楽しみたかったのだが、
「…お気持ちは嬉しいですが、褒められる様な事でも、褒めてもらえる内容の教えでも有りません。
…お気になさらずに…。」
この年頃の少女とは思えない所作に何らかの【専門的】な教育は受けているだろうと思ったが、どうも悪いクセが出てしまったたアマネは申し訳無さそうに詫びた。
少女の方も左程気にしていない様だ。
「…先程美しい歌声を披露してくれたのは、【演目】だったそうだけど他にも何か披露して頂けるのですか?」
「はい、後ほどワタシと姉様とで、ご来席のお客様(お子様)にもお手伝いをお願いして【手品】をする予定です…まぁ【お遊戯会】みたいなモノと思って下さい。」
日野家の敷地はソレなりに広い、普段から暁人が妹たちや友人たちとで、バーベキューだの、お庭キャンプだのしてワイワイやっているのだが、今回の【ホームパーティー】は駐車スペースも使っての【お祭り】なのだ、ちょっと企画の段階ではもう少し小ぢんまりした内容だったが、暁人が
「このサクラさんのお見合い、大騒ぎして有耶無耶にするからな!
皆んな、頑張ってくれ⁈」
と、何をどう頑張るのか、よくわからない盛り上げ方をしている?
実のところ、【組織】の方々には日頃から大変お世話になっている、おそらくこれからも…
出来れば【組織内】では、我が家の事でトラブルを起こしたく無いと苦肉の策として収穫祭を【ホームパーティー】と称して、今回の要人たちを招待したのだけど…
「…やぁアマネくん、楽しんでおられるかな?」
「……ひ、日野室長⁈
ハ、ハイ!もちろんです!」
「…やはり、お義父さんのお知り合いの方なのですね。」
「うむ、彼は今回サクラ君に【お見合い】を申し込んだ内の一人、【来訪者専用ハローワーク】でのお父さんの同僚のアマネ副室長さ。
アマネ君、紹介しよう、
娘の舞野だ。」
……。
「……娘…さん?
日野室長…のお嬢…さんですかッ?」
それは只者ではないはずたよ⁇
「コレは知らない事とはいえ、大変失礼な事を!
ワタクシ、翼人族の【アマネ】と言います、お父様には日頃から大変お世話に…」
…まさか、この少女がこの自分を挫折のズンドコに叩き落とした男の養女だったなんて⁈
いや、多少の予測はしていたのだが、日野室長はどれだけ【来訪者】を養女として受け入れているのだ?
若いエルフを後妻に迎えて、早々に身重にしたらしく職場の女性たちが色々と良い意味での噂話しをしているのが嫌でも耳に入るのだ?
その度に思い知らされる、自分が狭い世界で飛び跳ねていた事かと…。
「……ネ様、……マネ様⁇」
「アマネくん、どうした?」
「はっ、いえ、ちょっと、この焼き菓子の美味さに心奪われておりました…ハハ…。」
つい、苦しい言い訳をしてしまった…のが、意外な事が起こってしまう?
「…ソレはワタシが焼いたモノ…なんです。」
幼い【クールビューティー】が年相応の愛らしい表情を見せてくれた…⁈
「いやぁアマネくん、中々舌が肥えているねぇ?
このクッキーはな、この子が試行錯誤して作った【稲子クッキー】なんだ。
原型がわからなくなるまで石臼で粉末にして、小麦粉やスリゴマなどの配合が絶妙だと、サクラさんも褒めていたぐらいなんだ。
しかも栄養豊富でカラダにも良いそうだよ!」
…親バカなんだな、娘が作った物を社交辞令で褒めたとは思っていない訳でもないだろうに、本気で喜んでおられる様だ⁈
……イナゴ…175だろうか?
まぁ本当に美味いのだから問題ないだろう…
後で服部くんに聞いてみようか?
「…あ、あの優秀な部下にも食べさせてあげたいので、もし差し支えなされは、少しこのクッキーを分けて頂けませんか?」
「ハイ、喜んでッ‼︎」
…そう言うとまるで天使の様な笑顔で舞野さんは答えてくれた。
…天使の様な…か…?
確かにソレはあの子にこそ相応しい形容詞だと思ってしまった。
お土産用に包んでくると彼女が家の中に入っていく、当然その場に取り残された自分と日野室長⁈
「…アマネくん?」
「ハイ、日野室長!」
「そう硬くならずとも…
まさかと思うが、サクラさんとの【見合い】の前に他の娘にも手を出そうと言う訳ではないだろうな?」
「…室長、いくらワタシでも、あの様に可憐で幼い少女に如何わしい事をすると、本気で思われるのですか?」
「…いや、念の為だよ、念の為。」
「…お嬢さんを心配されるお気持ちはわかりますが、いくらなんでも…。」
「すまんすまん、そう怒らんでくれよ。
娘たちを心配する親心から……」
「確かに、あと数年もすればとても素晴らしい【レディー】になるのは間違いないでしょうが、今はまだ子供らしい事をさせてあげさせるのがよろしいかと?
でないと、ワタシの様な小生意気な天使になってしまうかも知れませんよ?」
「…どう言う意味かね?」
「お嬢さん、特殊な訓練をされてますね、そして右眼は義眼では?」
「流石だな、この世界に来る前のあの子は【暗殺者】として義父に育てられていたそうだよ。
だからこそ、ウチの子供たちと分け隔てなく普通に育てているつもりなんだかなぁ…中々難しいのさ。」
…この世界に来たばかりの頃、前の世界とあまりにもかけ離れている事に、ウンザリしていた?
先ずは【魔法】に関する学問が全く無かった事だ……。
ソレもそのハズ、この世界では【魔法】を使う為の【魔素】が著しく少ないのだ、ソレでよくこの世界の者は生活出来るなと思ってしまったが、この世界には【魔法】よりも簡単で、誰でも同じ様に使える【科学】が存在していたのだ⁈
ソレならばと、剣に覚えがあると言う日野室長と【訓練】と言うカタチで模擬戦をしてみれば、もう話しにならないならない⁈
強すぎる、おそらくは伝承の勇者並みの強さだ!
故郷から持ち込めた唯一の宝剣に対して棒切れで挑む室長に、ものの数分で叩きのめされたのだ!
聞けばワタシたちの世界とは別の【異世界】でしばらくの間、冒険者をされていたらしく、グリフィンやドラゴンと素手で戯れあった事もあるとか、魔神とアームレスリングをしたとか、様々な逸話があるらしい⁈
どこまで本当がわからないが、その後も度々模擬戦を申し込み、リベンジを試みたが、今だに一勝も出来ないのだ⁈
室長もまた言い方を変えれば【来訪者】とも呼ばれる存在なのだが、異世界に転移し再び【元の世界】に帰れた人物の話しなんて殆ど聞いたことが無いし、その当人に出会ったなんて初めてで知れば知るほど、自分が本当は狭い【世界】で甘やかされ育ち、愚かで【無知】であったと思い知らされるばかりだった……。
「…流石アマネ君だ、その深い見識にはいつも驚かされるよ。
まぁソレはソレとして、まさかと思うが…
舞野の事が、何か気になるのかな?
随分とよく見ている様だが?」
…しばらくなんて事もない会話をしていたのだが、突然日野室長がお嬢さんの事について質問されたのだが…
…もしや、何か疑われているのか?
「…あ、あの室長?」
何故か肌がチリチリする、何か身の危険を感じる所為か鳥肌が立ってきた?
「…アマネ君、舞野はまだ若い、そういう対象としては早ずぎると思うのだよ…、いくらサクラ君との【旗色】が悪そうだからと、舞野に乗り換えるとか……」
日野室長、顔は笑っているが【圧】が凄い⁈
「室長、心配し過ぎて可笑しな事を仰っていますよ⁇」
「…ははは、いやスマンスマン。
考え過ぎたかな?」
どうやら室長は娘の事には怒りの沸点は低いようだ?
トカゲとノラ犬をからかうつもりで、この【お見合い】に横槍を入れたのは間違いだったかも知れない?
「お待たせしました!」
小さな包みを持ってマイヤさんが戻ってきた、その瞬間空気が和らいだ?
助かった…直感的にそう思えた。
その時見えたマイヤ嬢の表情は決してクールビューティーなどではなく、正に【天使の微笑み】であった…
産まれた瞬間から【天上天下唯我独尊】なオレ様チャンだったのに、最初の挫折を味わったのは意外にも、なんとこの世界に訪れた時だったそうた?
元の世界では、ソレまでの生活こそが最高のモノ、自分こそが至高な存在と思ってきたから……?
翼人族の長の息子として生まれたアマネは自分たち以外の種族を下に見ていた。
特にひ弱なヒト族や空を飛べない獣人族を…
何故なら古くから翼人は【神の眷属】と呼ばれているからだ。
知性や知能、戦闘力は神に次ぐモノだと言われていたし、そう思っていたのだが…
強いてあげるなら、翼人と同じく【神の眷属】と呼ばれてる一部の龍人や人狼ぐらいが精々足元に及ぶかも知れないと認識だけしていたが、ソレでも自由に天空を舞う自分たちが絶対的に至高の存在だと思っていたのだ…
何故なら、アマネの周りにいた【お世話係】がそう言っていたから…。
まぁわかりやすく言ってしまうと、甘やかされて育った金持ちのボンボンの様な環境だったのだ。
加えて、アマネが幼少期から天使の様に可愛いかった所為もあるが?
だがアマネも馬鹿では無い、成長するにつれて、ソレは先人が積み上げてきた【過去の栄光】に寄りかかっている愚かな体質だと気付き始めた。
ソレでも自分は、自分だけは【特別】な存在だと自負していた。
この世界であの男に会うまでは…
アマネは子供の頃から難しい書物を一度読めば内容は全て理解し、剣術なども直ぐに指導係を上回る実力が身につく程の【天才児】だったからだ。
便宜上、人族ら一緒にゴブリンやオークの群れの討伐を行なった時も一番多く倒したのはアマネだった。
ちなみにこの【アマネ】と言う名は、以前異世界からやって来た女剣士から賜わった名だ。
先代族長が同じく【異世界】から召喚された【勇者】とパーティを組んでいた時のパーティメンバーだった女剣士が、名付け親になってくれたらしい?
女剣士も【勇者】と共に【異世界】から召喚された存在だったそうだ?
邪神の眷属だった魔王を倒し、元の世界に帰る【勇者】と【女剣士】が、共に戦った戦友が頼まれてそれぞれの子供たちに名付けたらしいが、そのパーティの中には龍人や人狼の戦士、ヒト族の王族もいたらしい?
「…お嬢さん、つかぬ事をお訊ねしますが?」
アマネは先程から給仕をしてくれている獣人の少女…マイヤに訊ねてみたい事があったのだが?
「はい、何か?」
「アナタは何か武術の様なモノを身につけているのでは?」
「…そのご質問にはお答え出来かねます、……乙女の秘密はヒミツのままが良いと、姉サマから教わってますので。」
「…成る程、ソレはそうかも知れませんね。
いや、失礼しましたお嬢さん、あまりにもアナタの動きに無駄が無いと言いますか、美しかったモノでつい…、無作法をお許し下さい。」
…馬鹿な事を聞いたかも知れない、あえて聞くまでも無かったのに、ついこの少女と会話を楽しみたかったのだが、
「…お気持ちは嬉しいですが、褒められる様な事でも、褒めてもらえる内容の教えでも有りません。
…お気になさらずに…。」
この年頃の少女とは思えない所作に何らかの【専門的】な教育は受けているだろうと思ったが、どうも悪いクセが出てしまったたアマネは申し訳無さそうに詫びた。
少女の方も左程気にしていない様だ。
「…先程美しい歌声を披露してくれたのは、【演目】だったそうだけど他にも何か披露して頂けるのですか?」
「はい、後ほどワタシと姉様とで、ご来席のお客様(お子様)にもお手伝いをお願いして【手品】をする予定です…まぁ【お遊戯会】みたいなモノと思って下さい。」
日野家の敷地はソレなりに広い、普段から暁人が妹たちや友人たちとで、バーベキューだの、お庭キャンプだのしてワイワイやっているのだが、今回の【ホームパーティー】は駐車スペースも使っての【お祭り】なのだ、ちょっと企画の段階ではもう少し小ぢんまりした内容だったが、暁人が
「このサクラさんのお見合い、大騒ぎして有耶無耶にするからな!
皆んな、頑張ってくれ⁈」
と、何をどう頑張るのか、よくわからない盛り上げ方をしている?
実のところ、【組織】の方々には日頃から大変お世話になっている、おそらくこれからも…
出来れば【組織内】では、我が家の事でトラブルを起こしたく無いと苦肉の策として収穫祭を【ホームパーティー】と称して、今回の要人たちを招待したのだけど…
「…やぁアマネくん、楽しんでおられるかな?」
「……ひ、日野室長⁈
ハ、ハイ!もちろんです!」
「…やはり、お義父さんのお知り合いの方なのですね。」
「うむ、彼は今回サクラ君に【お見合い】を申し込んだ内の一人、【来訪者専用ハローワーク】でのお父さんの同僚のアマネ副室長さ。
アマネ君、紹介しよう、
娘の舞野だ。」
……。
「……娘…さん?
日野室長…のお嬢…さんですかッ?」
それは只者ではないはずたよ⁇
「コレは知らない事とはいえ、大変失礼な事を!
ワタクシ、翼人族の【アマネ】と言います、お父様には日頃から大変お世話に…」
…まさか、この少女がこの自分を挫折のズンドコに叩き落とした男の養女だったなんて⁈
いや、多少の予測はしていたのだが、日野室長はどれだけ【来訪者】を養女として受け入れているのだ?
若いエルフを後妻に迎えて、早々に身重にしたらしく職場の女性たちが色々と良い意味での噂話しをしているのが嫌でも耳に入るのだ?
その度に思い知らされる、自分が狭い世界で飛び跳ねていた事かと…。
「……ネ様、……マネ様⁇」
「アマネくん、どうした?」
「はっ、いえ、ちょっと、この焼き菓子の美味さに心奪われておりました…ハハ…。」
つい、苦しい言い訳をしてしまった…のが、意外な事が起こってしまう?
「…ソレはワタシが焼いたモノ…なんです。」
幼い【クールビューティー】が年相応の愛らしい表情を見せてくれた…⁈
「いやぁアマネくん、中々舌が肥えているねぇ?
このクッキーはな、この子が試行錯誤して作った【稲子クッキー】なんだ。
原型がわからなくなるまで石臼で粉末にして、小麦粉やスリゴマなどの配合が絶妙だと、サクラさんも褒めていたぐらいなんだ。
しかも栄養豊富でカラダにも良いそうだよ!」
…親バカなんだな、娘が作った物を社交辞令で褒めたとは思っていない訳でもないだろうに、本気で喜んでおられる様だ⁈
……イナゴ…175だろうか?
まぁ本当に美味いのだから問題ないだろう…
後で服部くんに聞いてみようか?
「…あ、あの優秀な部下にも食べさせてあげたいので、もし差し支えなされは、少しこのクッキーを分けて頂けませんか?」
「ハイ、喜んでッ‼︎」
…そう言うとまるで天使の様な笑顔で舞野さんは答えてくれた。
…天使の様な…か…?
確かにソレはあの子にこそ相応しい形容詞だと思ってしまった。
お土産用に包んでくると彼女が家の中に入っていく、当然その場に取り残された自分と日野室長⁈
「…アマネくん?」
「ハイ、日野室長!」
「そう硬くならずとも…
まさかと思うが、サクラさんとの【見合い】の前に他の娘にも手を出そうと言う訳ではないだろうな?」
「…室長、いくらワタシでも、あの様に可憐で幼い少女に如何わしい事をすると、本気で思われるのですか?」
「…いや、念の為だよ、念の為。」
「…お嬢さんを心配されるお気持ちはわかりますが、いくらなんでも…。」
「すまんすまん、そう怒らんでくれよ。
娘たちを心配する親心から……」
「確かに、あと数年もすればとても素晴らしい【レディー】になるのは間違いないでしょうが、今はまだ子供らしい事をさせてあげさせるのがよろしいかと?
でないと、ワタシの様な小生意気な天使になってしまうかも知れませんよ?」
「…どう言う意味かね?」
「お嬢さん、特殊な訓練をされてますね、そして右眼は義眼では?」
「流石だな、この世界に来る前のあの子は【暗殺者】として義父に育てられていたそうだよ。
だからこそ、ウチの子供たちと分け隔てなく普通に育てているつもりなんだかなぁ…中々難しいのさ。」
…この世界に来たばかりの頃、前の世界とあまりにもかけ離れている事に、ウンザリしていた?
先ずは【魔法】に関する学問が全く無かった事だ……。
ソレもそのハズ、この世界では【魔法】を使う為の【魔素】が著しく少ないのだ、ソレでよくこの世界の者は生活出来るなと思ってしまったが、この世界には【魔法】よりも簡単で、誰でも同じ様に使える【科学】が存在していたのだ⁈
ソレならばと、剣に覚えがあると言う日野室長と【訓練】と言うカタチで模擬戦をしてみれば、もう話しにならないならない⁈
強すぎる、おそらくは伝承の勇者並みの強さだ!
故郷から持ち込めた唯一の宝剣に対して棒切れで挑む室長に、ものの数分で叩きのめされたのだ!
聞けばワタシたちの世界とは別の【異世界】でしばらくの間、冒険者をされていたらしく、グリフィンやドラゴンと素手で戯れあった事もあるとか、魔神とアームレスリングをしたとか、様々な逸話があるらしい⁈
どこまで本当がわからないが、その後も度々模擬戦を申し込み、リベンジを試みたが、今だに一勝も出来ないのだ⁈
室長もまた言い方を変えれば【来訪者】とも呼ばれる存在なのだが、異世界に転移し再び【元の世界】に帰れた人物の話しなんて殆ど聞いたことが無いし、その当人に出会ったなんて初めてで知れば知るほど、自分が本当は狭い【世界】で甘やかされ育ち、愚かで【無知】であったと思い知らされるばかりだった……。
「…流石アマネ君だ、その深い見識にはいつも驚かされるよ。
まぁソレはソレとして、まさかと思うが…
舞野の事が、何か気になるのかな?
随分とよく見ている様だが?」
…しばらくなんて事もない会話をしていたのだが、突然日野室長がお嬢さんの事について質問されたのだが…
…もしや、何か疑われているのか?
「…あ、あの室長?」
何故か肌がチリチリする、何か身の危険を感じる所為か鳥肌が立ってきた?
「…アマネ君、舞野はまだ若い、そういう対象としては早ずぎると思うのだよ…、いくらサクラ君との【旗色】が悪そうだからと、舞野に乗り換えるとか……」
日野室長、顔は笑っているが【圧】が凄い⁈
「室長、心配し過ぎて可笑しな事を仰っていますよ⁇」
「…ははは、いやスマンスマン。
考え過ぎたかな?」
どうやら室長は娘の事には怒りの沸点は低いようだ?
トカゲとノラ犬をからかうつもりで、この【お見合い】に横槍を入れたのは間違いだったかも知れない?
「お待たせしました!」
小さな包みを持ってマイヤさんが戻ってきた、その瞬間空気が和らいだ?
助かった…直感的にそう思えた。
その時見えたマイヤ嬢の表情は決してクールビューティーなどではなく、正に【天使の微笑み】であった…
10
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。


転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる