俺、お兄ちゃんにナリます！ 異世界妹が出来ましたよ⁈

俺と父と異世界と。

　話しはかなり前にもどる。

　父さんが【施設】で精密検査を受けている時の事だそうだ。



　「そ、ソレは本当ですか！

　本当にコチラに帰って来れるのですか⁈」


　【施設】の職員らが驚きの表情で問いただしている。

　ソレはそうだろう、現在各国の研究機関が血眼になって解明しようとしている事なのだから！


　「彼らに帰ってくる意思が有ればですが、今こうして自分がココに居るのが何よりの証拠です。」

　「た、確かに⁈」


　父は職員の方々に、ココに戻って来れた詳しい経緯を説明したそうだ。

　そして、自分が行った帰還方法を自分と同じく【異世界召喚】された四人にも伝えて欲しいと、パーティーの仲間に頼んである事も付け加えて。

　「【異世界】へは、コチラから行く事は出来ないのでしょうか？」


　「…それはわかりません、ですがアチラでもかなりの【魔力】を消費する様ですので、少なくともソレに代わる【エネルギー】が必要だと思いますね？」

　父から言える事はあまりにも漠然としたモノだったが、


　「…【エネルギー】ですか？


　そう言えば、【来訪者】の現れた箇所には、落雷や地震など前後に大小問わず、自然災害の報告がある様です！

　自然界の何か【エネルギー】が関係しているのでは⁈」

　【来訪者】自身はそんな事には全く気が付いていないが、過去に「雷の巫女」や「大地の救世主」など呼ばれている異世界人らしき【偉人】が居たとされている記実もあり、何か関係あるのではと調査が進められ始めたそうだ。



　「他にも何かお気付きの点は有りませんか？」


　「…そうですな、


　自分は巻き込まれた様ですが、自然な状況で転移なのでは無く、アチラの都合で転移させられた場合なのですが、如何やら特定の人間や場所を狙っている訳では無い様ですね？

　彼らが言うには、双方の世界を隔てる【壁】の様なモノに亀裂なり、薄くなっている箇所が有って、その場所が不定期に変わっているとか？

　なので、たまたま【異世界転移】し易い場所に居た人間や物がアチラに連れ去られているだけらしいのではと、思った事が有るのですが…


　ソレを言ったら、アチラの【神官】に

　『アレは全て【神のお導き】ですっ！』

　と、激怒された事が有ります。」


　「…あやしいですね？

　本当はランダムに転移させられているのかもしれませんね？」



　そんな話しの方がメインだった様で、父の【身体検査】は早々に終わっていたらしい。


　

　「…日野さん、実は貴方にしか頼めない事が有りまして…」


　そう言うと職員は一人の人物を父に紹介した。





　「…その人が元マイヤの里親候補さんさ。」

　「例の武道家サン？」

　「娘さんが転移させられて、後取りがいないそうだ。

　だから、マイヤには武道の素質が有るかも知れないと、最初はかなりご執心だったのだが、父さんが帰って来た事で考えを改めたそうだ。」

　「ソコがよくわからないんだけど？」


　「その人は、もう娘さんが帰って来ないと思っていたんだ、だから才能の有りそうなマイヤを引き取ろうと思ったんだ。


　しかし、娘と一緒に異世界に攫われた人間が無事に帰って来た、しかも同じ方法を使えば娘が帰って来るかも知れない。」


　「だから、後取り候補はもう要らない？」

　「そうじゃない、娘さんの帰る場所を無くしたくなくなったんだ。

　そもそも名目は、娘さんが行った事の罪滅ぼしだからな、帰って来ないからこそ、申し出た里親志願だ。」


　「…節操ないな。」

　しかし顔を合わせて、殺し合いが始まったら大変だしな？

　「マイヤを預かるかは、妻と相談して決めたいと答えたんだ。

　まぁ、養女にするのはやぶさかでは無かったからな。

　もっとも、その前にミイヤがやって来たんだ。」


　「俺も急に【異世界妹】が三人も出来て、落ち着かないよ。」



　「……四人かもしれないぞ？」


　「またまた、今度は歳上の女騎士かもよ？」

　例の転校生の事が頭をよぎった。

　「いや、弟か妹って事だよ？」

　「？」


　「メイデールな、【おめでた】なんだ、あと半年もすれば産まれるぞ。」



　「…へ、へぇ～？


　そういう大事な事はもっと早く言えよ！

　か、母さんは大丈夫なのか、安静にしていなくていいのか⁈」


　「ん、サクラさんには教えてあるから、心配要らんだろ？」


　俺はショッピングセンターから帰ってきたメイデール母さんに

　「おめでとう、母さん！」

　と言った。


　何の事か分からない妹達は、ポカ～ンとしていた。


　「あ、ありがとうね、アキト。」


　事情を知っているサクラさんだけがうるうるしていた。


　元々父さんと二人だけの家族が、こんな短い間に大家族になったもんだ⁈


　もしかして、まだ増えるのかなぁ？