俺、お兄ちゃんにナリます! 異世界妹が出来ましたよ⁈

猫寝 子猫

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ボクと姉と妹と。

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 新しい妹マイヤちゃんが我が家に来て、一週間が経った頃、


 「ほ、本当ですか?

 学校に行っても良いんですか?」


 「えぇ、メイヤと同じクラスだそうよ。

 なのでこれから【ランドセル】を買いに【駅前商店街】に行きましょうね。」


 日頃の買い物などは、近くの個人商店で間に合うけど、ランドセルともなるとそうもいかない。

 何気にメイデールお母さんも張り切っている様だ。

 マイヤちゃんはメイヤちゃんより少し歳は下なのだけど、おそらく精神的な年齢は彼女の方が上かも知れない。

 コチラの世界の常識も一年間【施設】で学習していたらしいので「信号機、赤は止まれ、アオは進め!」も理解している。

 産まれた時から両親が居たメイヤと、物心ついた時には家畜の如く扱われていたマイヤ、苦労した分その差は中々埋まることは無いのかも知れない。

 少なくとも【師匠】に育てられてからは、家族の暖かみは知ったと思う…


 「…なら、ワ…タシの…車で行こ…う!」


 …まだ…フランさ…んがいる?

 って自動車運転出来るの?

 実はこの数日、我が家に泊まっては工場にある研究室で、マイヤちゃんの義眼の作製に立ち会ってくれていたようだ。

 【富士見ケミカル】では、義手や義足の開発も手掛けているそうで、マイヤちゃんの為に【義眼】を特注で制作してくれたのだけど、ちょっと困った事が起きていた?


 「…あのコレは、師匠の形見なので…」

 と、言って、義眼を付けても、眼帯を外さないのだ。

 革製の眼帯は校則違反になるかな?

 そんな彼女に義母メイデールさんは、

 「大切なモノをずっと持っていたい気持ちは分かるわ、なら尚更無くしたら大変でしょ?」


 そう言って用意しておいた小さな木箱を彼女に渡した。

 鍵がかかる様になっている。

 「鍵は二つ有るから、一つはマイヤが首から下げていなさい。

 もう一つはが持っているから。

 木箱は【仏間の仏壇】にしまっておきましょう。

 ここなら、霊が護ってくださるから。」


 「…仏壇、亡くなった人を偲ぶ【家庭用祭壇】ですね、わかりました、そうします!」


 …なるほど、あながち間違って無いけど?


 「マイヤ、ランドセルの色はメイヤとおそろいでピンクにしよ!」

 「あ、あの姉さん、、紫が良いかも?」


 …マイヤは【ボクっ娘】だった。


 しかも、今は何故か俺の子供の頃のTシャツとジーンズを着て、まるで男の子の様だ!


 なんでも、動き易いからだとか?

 まぁそんなに気に入ってるなら止めないけどね。


 実際、男の子の格好だと、耳のギザギザも、目の傷痕もワイルドでカッコ良く見えてしまうから不思議だ?

 元々整った顔立ちの中性的な魅力のあるお子様だったし。

 「…皆んな、乗っ…た?

 …じゃあ、…れっつごぅ。」



 

 女性陣が全て出掛けた所で、俺と父さんは縁側で【リバーシ】に興じていた?

 父さんがやりたいと誘って来たのだ。


 「アッチの世界では、コイツが結構流行っていてな。

 随分と儲けさせてもらったんだ。」


 「賭けてたの?」


 「勝った方は多く取った石の分だけ、コインをいただく事が出来る。

 父さんが思いついたルールでな、このゲーム自体は少し前から広まっていったそうだ。」


 「父さんって、リバーシ強かったの?」


 「いや、ハッタリが功を奏しただけだ。」


 「どういう事?」


 「酒場でな、リバーシ最強を唱う奴がいて、【異世界】から来たリバーシの開祖を倒したとか言っていたんで、賭けを持ちかけたんだ。」


 「…ソレで勝ったんだろ?

 なんかイカサマでもしたの?」


 「そんなトコロかな、最強と言うからハンデをよこせと、お互い四隅四つを使わずにゲームをする事にしたんた。

 最初は余裕を見せていたが、普段と勝手が違うので、十数枚差を付けて父さんが勝ったんだ。」


 「すごいじゃないか?」

 「脳トレゲームで似た様なのが有ってな。

 向こうは四隅を取る重要性が分かって無かったまでの事さ。

 その後、元のルールに戻しても、相手は酷く動揺して楽勝だったさ。

 お陰でメイヤに蜜菓子を買ってやれたさ。」

 可愛いそうに、そのリバーシ王?

 そういえば昔、俺の携帯ゲーム機を借りてなんかやっていた事有ったっけ?


 「将棋とか麻雀は流行って無かったの?」

 「流行っていたが、父さんはルールを知らんからな、ハハハハ!」


 「…なぁ、この間の続き、聞かせてくれないかな?


 ま、マイヤの…を潰した奴の事を?」
 


 あの日、あまりの衝撃的な話しで俺の脳細胞がオーバーヒートして… では無く、メイデールさんが気分を悪くてして話しを中断したからだ。

 丁度、女性陣はいない。


 「…そうだな、この話は【施設】のスタッフがあの子の事を気遣いながら、少しづつ事情を聞いて、そこに父さんがアチラて知り得た知識を元に解明した事だ。」


 相変わらずまわりくどいのは、父さんも話す事に心の準備が必要なのだろう?

 「あの子が【師匠】と修行の旅であちこちの【ダンジョン】を巡っていた時に、【勇者】たちと遭遇したそうだ。

 彼等はマイヤを人質にして、【師匠】に投降する様に命じたそうだ。」

 「ちょっと待ってくれ、何で勇者たちはそんな事を?」


 「師匠には【懸賞金】が掛けられていたんだよ、しかも以前勇者たちが警護していた貴族を殺しているんだ、【師匠】は。」


 …【異世界】って奴は、そんなに殺伐としているのかよ!


 「【師匠】は直ぐに投降したそうだ、が懸賞金の支払いは【生死問わず】だったらしい。

 勇者たちは【師匠】を嬲り殺しにしようとした。

 反撃したら弟子マイヤの命は無いと言ったらしい。

 冗談では無い、本気だと言って勇者がマイヤの目に剣を突き刺したそうだ。」


 「なっ?

 な、なぁその勇者って、本当にコッチの世界から転移した人間なのかい?

 そっちの世界生まれの別の勇者じゃないのか?」


 この世界で産まれた人間が、そんな残酷な事が平気で出来るとは、とても思えない?


 「お前、勇者を何だと思っている?」

 父が悲しそうな顔で聞いて来た?

 「そりゃ、愛と正義と平和の為に戦うヒーローだろ?

 ソレが仕事なんじゃないのか?」

 俺は自信を持って、そう答えた。

 それは父に対して思っていた事でも有る
 

 「…仕事ってのは、まぁ間違いでは無いな。

 ただ、【勇者】と言うは無い。

 【勇者】と言うのは、【称号】だ。

 おいそれと名乗れるモノでは無い。」

 「【称号】って?」


 「その国の王が任命したり、大司教が神からの声を聞いてに「貴方は神より勇者に選ばれた。」と伝えたりするもので、自分で勝手になれるモノでは無いんだ。」


 「だから、王様が自分の国の誰かを…

 そうか、その為の【勇者召喚】なのか…、

 でも、大司教サマはこの世界の人間を…

 もしかして、その勇者は【異世界転生者】だったりする?」

 「カンが良いな、おそらくな。

 とにかく勝手に【勇者】を名乗れは【重罪】、下手すれば【死罪】だ。

 ニセ勇者なんて、割に合わない事は誰もしないさ。

 コレは父さんがアチラで様々な国々を見て来た事で知り得た事だ。

 自ら名乗れるモノなんて、剣士が【大剣豪】、魔法使いが【大魔導士】くらいなモンだな?

 実力がソレに見合うかは別だが、他者から【二つ名】を付けられしている人物は要注意だったな。」



 …つまり、【勇者】は限りなくコチラの世界から転移、又は転生した人物で有る可能性が高い?



 「…つまり、罪人の娘だから、暗殺者だから、里親になるのをやめたのか、その【里親候補】さんは?

 なんかしっくり来ないな?」


 「まぁ待て、まだ話しには続きがある。

 その【勇者パーティー】の一人が、マイヤを捕まえていた【勇者】の事を「リョーコ」と呼んでいたそうだ。」


 「勇者は女なのか⁈」

 ん、【リョーコ】?

 涼子、了子、日本人かな?


 「最初に里親を申し出てくれた人物は武道家でな、お前と同じく【異世界失踪認定】を受けた家族がいるそうだ。

 その方はマイヤの容姿も過去の事情も全て受け入れて、【本当の親】として育てていきたいと言ってくれていたんだ。

 武道家の自分なら、ソレが出来ると…」


 「でも、途中で辞退したんだろ?

 なんでさ?」


 「…最初にも言ったが、今まで話した事は、マイヤから時間をかけて、少しずつ話してもらった事だ。

 時には一週間は何も聞かず、気持ちを落ち着かせたりしていたそうだ。

 一度に話したら、あの子こころが壊れてしまうかもと、【施設】のスタッフは最善を尽くした…

 【勇者】の名前が分かったのはその一番最後だ。」

 マイヤは震えながら話してくれたそうだ、スタッフがもういいと言うのを、

 『この耳が千切れたのは、【勇者】が、が逃げない様にと耳を掴んでいたので、で引き千切ったんです!

 【師匠】に駆け寄ると、この眼帯を渡してくれました。

 眼球の代わりに【魔法石】が隠してあって、ソレを地面に叩きつけると…

 目が眩むくらい眩しくて…

 気がつくとこの世界に居ました。』

 「 …と、一気に話すあの子を、誰も止める事が出来なかったそうだ。」


 その時、俺はある一人の男性の顔を思い出していた。


 その人も我孫子道さんと同じく、俺を養子にしたいと言っていたらしい?

 家が道場だとか…

 「最後にあの子はこう言ったそうだ。

 『勇者リョーコ、絶対許さない!
 師匠やボクにした事と同じ目に合わせてやる!』

 とな、ソレを聞いたからだ。」


 「…その里親さん、【勇者リョーコ】の……  」



 「…娘のした非道な行いを詫びる為、最初は引き取るつもりだったんだ。」
 
 
 「…でも、やめた。

 なんで?」

 「…全ては父さんの所為だ。」



 

 「あっ!

 メイヤちゃんだ、ヤッホー!」

 「カコちゃん、リンちゃん、ヤッホー!」
 

 ショッピングセンターでクラスメイトにあったメイヤ。

 「メイヤちゃん、お買い物?」

 「うん、皆んなでマイヤのランドセルを買いに来たの。」


 「マイヤ…ちゃん?」


 「この子だよ!」

 友達にを紹介すると、

 「か、カッコいい!」

 「イケメンだ!」

 「姉さんのお友だちですか、はマイヤといいます。

 日頃、姉さんがお世話になり、ありがとうございます。

  この度、も同じクラスに通える事になりました。

 姉共々、よろしくお願いします。」


 「しかも、王子サマみたい!」

 「礼儀正しい、クラスのバカ男子とは比べものにならないよ!」


 「あら、メイヤちゃん お友だちですか?」


 「あう?」

 「」

 「あ、お母さん、サクラ姉ちゃん!

 うん、カコちゃんとリンちゃんだよ!」


 「こ、こんにちは!

 (わぁ~美人ママさんと噂の美人お手伝いさんだ!)」

 「わ、わたしたたち、メイヤちゃんのクラスメイトでしっ、…か、噛んじゃった…グスっ。」

 (猫耳チビちゃん、チョーカワイイ!)


 日野家女性陣勢揃いにびっくり緊張のお友だち達なのでした。


 この件がもう翌日クラスで話題になるのは当たり前の事でした。



 「二人は何しにココショッピングセンターに来たの?」

 「えっとね、今日二階の書店コーナーでね、漫画家さんのサイン会が有るんだよ‼︎」

 「漫画家サン?

 どんな漫画を描いてる人なの?」

 ちょっと興味が有るメイヤだったが、

 「あのね、『転生したのにスランプだった剣士!』って言う【異世界ファンタジー物】だよ!」

 とリンちゃんが、

 ソレを聞いてマイヤが苦言を口にした、

 「…剣士がスランプだなんて、情け無いですね?」

 「…そうだね、でもソコが面白いって、今度アニメになるかもなんだよ!」

 カコちゃんもやや同意したが、【アニメ化】するくらいだから面白いとした。

 【異世界】から来た義姉妹には、どの辺が面白いのかわからないけど?
 

 「二人とも、ランドセルはもう買ったから、お友だちとサイン会に行って見てはどうですか?」


 サクラさんが気を利かせて提案してくれた。

 「…私も…ついて…行こう。

 …その…漫画なら、知ってい…るし。」


 「メイヤちゃん…誰、この子?」

 「フランちゃんはから来たお友だちだよ、凄い頭が良いの!

 メイヤたちよりお姉さんなんだよ?」

 (へぇ、5、6年生かな?)


 「私たちは、屋上の「仲良し広場」で休んで居ますから、終わったら来て下さいね。」

 「うん!」

 「ハイ、わかりました。」

 「…おけ。」

 【異世界】からやって来た女の子たちが【異世界転生漫画】に興味を持つ?

 何のコント?




 「もう、こんなに並んでるよ!」

 「カコちゃん、走ると危ないの!」


 「大丈っぶぁああ!」


 「おっと、大丈夫ですか、カコさん?」

 躓いて転びそうになる姉の友達を、鮮やか軽やか爽やかに、抱き寄せて助ける、よく出来た妹。

 「えっ、あ、あの、ありがとう…ござい…ます。」 ぽっ!

 「良かった、カコさんにお怪我が無くて。」



 「メイヤちゃん、マイヤって、女の子だよね?

 弟って事、無いよね?」


 「うん、女の子だけど?」




 あ~ぁ、カコちゃん可哀想に?


 初恋が女の子とは?


 
 …友達の悲哀を嘆くリンちゃんと、


 「マイヤ…ちゃん、無自…覚な優しさは…罪なの!」

 あの子の行く末に一末の不安を感じ取ったフランだが、

 その反面、内心では面白いモノが観れたとご満悦なのだ。
 
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