俺、お兄ちゃんにナリます! 異世界妹が出来ましたよ⁈

猫寝 子猫

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回想〜巻き込まれたオッサン。

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 ソレは5年前の話しだそうだが、自分には十年は経過していた様な苦労話だ。

 仕事の帰り道、いつものコンビニで発泡酒を購入した俺は出口付近で屯っていた高校生らしきグループとぶつかりそうになった。


 「す、すいません! 

 大丈夫でしたか、オジサン?」

 どちらが悪いと言う事も無いのだが、一人の女の子が直ぐに謝ってきた。

 まぁ俺の外見が若干厳つい感じに見えるので、咄嗟に謝ったのかもしれないが?

 悪い子たちでは無い様だが、もう日も暮れ始めている。

 「ああ、大丈夫だよ。

 それより暗くなる前に早くお家に帰りなさ‥」

 ソレが言い終わらない内に突然、足元が明るくなって、




 気がつくと別の世界にいた。

 ソレは童話に出てくる様なお城の広間、先程の高校生らも居た。




 後で知ったのだが、【異世界召喚】と呼ばれる儀式だとかで、若い世代に人気の漫画やアニメに当たり前に出てくる【お約束】だそうだ?


 目の前に居た王様らしき男が、

 「よくぞ来てくれた、の若者よ…

 ん、五人いるぞよ?」




 どうやら俺はお呼びでは無かった様だ?



 「今我が国、【ヴィーナス王国】は魔族やソレに組みする小国から卑劣にも侵略を受けておる!

 今はまだ国境付近で我が国の勇敢な騎士団たちが優勢ながらも、小競り合いを繰り返している。

 が、我が国にもしもの事が有らば他の国も次々に侵略され、この世界は悪しき魔族らに支配されてしまうであろう!」


 召喚した人数の事は、特に気にせずに話しを続けた王様?

 つまり、この高校生たちに魔族らと戦えと言うのか?


 「既に国境近くの民は住む場所を追われ、駐留している騎士たちの中には連日の戦いに身も心も疲弊して倒れる者いる、
 いち早くこの状況を切り抜ける為に藁をも掴む思いで【勇者召喚の儀】を取り行ったのだ!


 どうか勇者たちよ、この国を救ってくれ!!」


 やや芝居掛かった口上に胡散臭いものを感じた俺。

 何故ならそこにいた王様や王妃様の服装や装飾品を見ても、贅を尽くした装いでしている国民を気遣っている様に見えなかったからだ。


 ソレに肝心の高校生たちは、

 「やったー、俺、勇者だってさ!」

 「ま、魔法とか使えたりするのかしら、爆裂魔法とか?」

 「まぁコレで、明日の補習はバックれられるな!」

 と、はしゃいでいると思えば、

 「どうしよう、家に帰らないと、お母さんが心配してるよ!」

 先程の女の子がもっとも当たり前の事を心配して…

 そ、そうだ!


 「すまないが王様、私は関係無い様だから、元の世界に戻してもらえないだろうか!

 私は早くに妻を亡くし、家には幼い息子が一人で私の帰りを待っているのだ!」


 「はぁ?

 何を言うか、そんなおいそれと転移の術が使えるものか!」


 徐に不機嫌な顔をする王様⁈

 ふん、早々に王様の化けの皮が…


 「えっ、そうなの?」


 「そんな酷くないですか⁈

 せめてこのおじさんは、返してあげないと!」

 この高校生グループのリーダーらしき男子が、途端に不安な顔を見せるも黙っていた。

 あの女の子だけは、俺の為に王様に詰め寄った!


 彼等を怒られるのはまずいと考えたのか、慌てて腹心らしき貴族の男が、

 「召喚の儀には、神官や魔導士たちが命を賭けて行う高位魔法なのだ!

 今すぐ続けて使うのは、彼等に死ねと言っているのと同じなのだ、王はそれを心配しておられるのだ!

 せめて、半年、いや一年は待って欲しい!」

 一応言い訳としては筋が通っているが、

 「そうなのですか…でも…」

 そう聞いて、強く言えなくなる女の子。

 今、この場で腹心の言葉の真偽は確かめられない。

 少なくとも、勇者として呼ばれた彼等が粗末に扱われる事は無いだろう?

 
 しばらくして、その時が来たら元の場所に送り返すと腹心の男が言うのだが、アテにならない。


 自分の直感が正しければ、【送り返す方法】自体無いのかも知れない。


 ならば、


 「私もイイ歳をした大人だ、その時が来るまで、城で世話に成るのも心苦しいので城下で何か職を見つけて待つ事にするよ。」


 そう言うと、

 「うむ、感心な心掛けだ。


 ならば、当座の金は与えるので知らせを待っておれ!」





 城を出る際にあの女の子に、

 「あの王様たちを信用してはダメだ。」

 と小声で忠告した。


 「ソレは私も感じました、心配しないで。」

 彼女は他の友達が心配なので、城を離れられないと言い、見送ってくれた。


 俺は多いのか少ないのかわからない金額の入った小袋を腹心の男から渡された。


 「見事勇者が魔族を打ち滅ぼしたらみんな揃って、元の世界にお返しします。

 今からでも城で暮らしませんか、王には私からお願いしますので、」


 「いや、お城で暮らすなどでは無いから。」


 彼自体はイイひとかも知れないが、今一つ信用出来ない?

 「若者たちの事をよろしく。」



 城を後にしてから、城下町で色々見て回った。


 実は一つ考えが有った。


 おそらくココは、昔のファミコンゲームなどによく有った【なんとかクエスト】の様な世界なのだ?

 町で情報を集めたり、他の場所にも赴き、実際に悪い魔族と戦争をしているのか確かめる必要が有る。

 その中で或いは、元の世界に帰れる方法が見つかるかも知れない。
 


 ゴーン、ゴーン…


 遠くで鐘の音がした? 


 「寺…いや教会かな?」


 その聞こえた方向に行ってみる事にした。

 やはり教会だった。

 しかも、かなりボロい。


 すると、



 「アナタ、こちらに早く!」


 誰かが俺の腕を掴んで、教会のから俺を中に引きずって行こうとした?

 「何をしているのですか、

 早くしないと見つかってしまいますよ!」


 そう言い、引っ張っているのはどうやらこの教会の修道女シスターの様だ?


 仕方なく彼女に従い、中に入った。

 「多分、追っ手には見つかっていないと思いますよ、しばらくはココで隠れていて下さい。」


 「…すまないが事情がわからない、説明してくれなおだろうか?」

 そう言われてキョトンとした表情が可愛い、あの女の子とシスターが重なって見えた。

 「…あ、アレ?

 アナタ、この国の言葉をお話し出来るのですか⁈」

 「…まぁ一応は?」

 言われてみれば不思議だな?

 「アレ、もしかしてアナタ、他の国から無理矢理連れて来られたサンでは無いのですか?」

 「ふははは、なるほど!

 そんな風に思われていたのかい?」

 どうやら俺の事を奴隷商人の元から逃げ出した敗戦国の奴隷だと思ったらしい?

 遠方から連れて来られたばかりの奴隷は言葉は理解できても、ココまで達者に話せないらしい?

 「ご、ごめんなさい!

 見慣れない服だったから、勘違いしたの!」

 そういえば、街中でも珍しいモノを見る様な目で見られていた様な?


 俺はこのシスターが信頼出来ると直感し、これまでの事情を話した。


 「そんな酷い!

 アナタの事情を聞かずに、無理やり他所の世界から、連れて来たのに!


 …アナタの判断は正しかったと思います。」


 ソレから、シスターから色々とこの国の事を聞いた。

 どうやらこの【ヴィーナス王国】は昔から彼方此方の小国にケンカを売って戦争を嗾けているそうで、その繰り返しで国土を広げている【侵略国家】なんだそうだが、
 この数年はあまり成果を挙げられていない様だ⁈


 「恐らくは、前回この国で行われた「勇者召喚の儀」はそれほど昔ではなく、連戦連勝を続けていた数年前に行ったんだと思います。」

 「息子の事が心配なんだ、何とか元の世界に帰ることは出来ないだろうか?

 せめて、彼方の様子だけでも知りたいんだ。」


 普段から自分の身に何か有れば、俺の弟や妹を頼る様に息子には教えてある。

 近所の方々も助けてくれるだろうし、アイツ自身も慣れたモノでしっかりとしている。

 とは言えアイツはまだ小学生だ!

 あの広い家で息子一人で生活出来るとは、アイツなら無理では無いが長い間はどうだろうか?

 今までも夜勤の仕事も有り、二、三日な事なら大丈夫だろうが、いつ帰れる分からないのだ⁈


 「今すぐこの国を出る事をお勧めします。

 他の国の【冒険者ギルド】で情報を集めるのが良いかと思いますから。」


 この世界には【魔法】が存在するそうだ。

 また、【ダンジョン】には【魔法のアイテム】などが有るそうで、もしかしたら元の世界に帰れる手立てが見つかるかもしれないと教えてくれた。


 「確かに大昔、【魔】を祓った勇者が生まれ故郷に帰って行ったと記録が有るそうです。

 この国の勇者では有りませんが。」


 シスターは何処からかコチラの衣服を用意してくれた。

 「この教会を出て左に真っ直ぐ行って下さい。

 乗り合い馬車の待合所がありますから、【コロモ村】行きの馬車に乗って下さい、その村の教会に私の姉がいますので力になってくれると思いますから。」



 ソレからコロモ村でシスターのお姉さんに会い、別の国に向かう冒険者たちを紹介された。

 その繰り返しで何とか【ヴィーナス王国】から脱出する事が出来た。

 最後に同行したのがアイツらだった訳だが…


 「元気でやっているかな、あのは?」


 「あの方々の事ですね?」


 メイデールがお茶を淹れながら訊ねる、日本茶の淹れ方も慣れてきた様だ。


 「何と言っても、別れたのがダンジョンの中だったしなぁ?」


 「元気ですわ、きっと。

 もしかしたら、今ごろアナタの事を思い出してコチラへ会いに来るかもデスわ?」


 あのダンジョンの最下層に【望んだ場所に転移出来る魔法陣】が有るとの伝説を信じ、攻略を試みたが、転移出来るのが小さな陣の中に入れるだけらしく、俺と妻、そして小さな娘でギリギリだった…

 「アレほどアナタに懐いていたライガさんが、アッサリと身を引いた時は驚きましたけど、とても感謝しています。」


 「…雷牙かぁ、アイツはメイヤと仲良しだからだろう、だから…」


 そう、コチラの世界で言うならほど大きい巨大なを一緒に転移出来るとは思えなく、最初はコチラの世界についてくると言っていたのに、大きさ的に無理だと知るとあっさり見送る側になった雷牙…

 旅の中で、偶然拾った仔犬が、まさか伝説の賢狼の子とほ思わず、別れる時は随分と大きく育ったモノだと、自分の息子と重ねて切なくなった…


 あの魔法陣も一度使うと、そのによっては、相当な魔力が貯まるまで、しばらくは使えないそうだ。

 何と言っても【異世界転移】したのだ、次に使える様になるのは一年が十年か、ソレとも…?


 いや、案外すぐに会える様な気もする。


 そういえば、旅をしている途中で【ヴィーナス王国】で、【聖女】が降臨したと噂を耳にした。


 その容姿から、おそらくあの優しい少女ではないかと思っている。


 あの時、助けてくれたシスターも、俺を逃した後にお姉さんから出国を勧められて、生まれた村で孤児院を併設した小さな教会で、また誰かを助けている様だ。


 俺も旅の中で、冒険者たちと共に魔物と戦ったり、クエストをこなして報酬を得ていた。

 その時、今の妻に出会えたのだ。

 全く人生とはわからないモノだ。



 「あい、とうたん!」

 「ん、どうしたかなミイヤ?」

 末娘が俺の膝の上に飛び込んで来た、何か捕まえて来た様だ?


 「ほう、野苺か?

 くれるのかな?」

 「あい!」


 どうやら、この子も優しい子に育ちそうだ。

 …ただ、あくまでこの子は【預かり子】だ、本当の親御さんが現れたら、暖かく送り出すつもりだ。

 双方がソレを望むなら…

 この子が最初に身につけていたモノから、奴隷として扱われていた可能性がある。

 今は多少心を許してくれているようだが、ここに来たばかりの頃に息子を見ると威嚇していたのは、あのくらいの年恰好の男に虐待されていたのでは無いかと思える?

 既に親はいないか、親が売ったか?

 彼方てそういう現場を幾度となく目撃してしまった。

 
 なら、この世界に逃げ延びる事が出来たのだ、自分の手元から巣立つその日まで、慈しんで育てるだけだ。


 「あ、ミイヤちゃんココにいた!」


 「メイヤ、しぃ~。」


 「ぁ、しぃ~だね?」


 いつのまにか、子猫は膝の上で寝てしまった様だ。

 

 
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