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第7章
第16話 神殿と職員
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あれから私は平穏な日常を送っていた。
何を作るにもスライム溶液は必要なので、備蓄を増やすために2日に1回は採取に行った。もちろん同時に河原で石材を集め、木材も調達していたが、日帰りで採取できる場所は無くなってきた。十分な量を確保しているが、色々と作り始めるとすぐに足りなくなりそうだ。
エルマイスター領の公的ギルドは順調に稼働しており、町の住人は完全に公的ギルドを受け入れ馴染んでいた。
神殿も一般に開放されると、神殿にお祈りをするのが習慣になる人さえ出てきた。そして何人かが、神の加護を授かったという噂まで流れている。
5日に1回で始めたグラスニカとエルマイスター間の駅馬車は、利用者が殺到して2日に1回運行できるように調整を進めているようだ。
最近は新しい建物や魔道具を作ることもなく、叱られることは無くなったが、人の驚く顔が見れなくて寂しくも感じる。
調子に乗って色々やり過ぎた気もするが、町の人の笑顔を見ると間違いではなかったと実感する。
今も神殿に向かって歩いているが町の人達は、笑顔で声を掛けてくる。
「アタル様は町の人達にも人気があるんですね」
一緒に神殿に向かっているイーナさんが声を掛けてくる。
「イーナさんのほうが、私より人気があると思うよ」
声を掛けてくる人の半分以上はイーナさんに声を掛けている。それ以外の大半が我々一向に声を掛けている。私に声を掛けてくるのは少しだけである。
イーナさんは恥ずかしそうにしたが、またイーナさんが町の人に声を掛けられ、笑顔で答えている。
神殿で神様について説明するイーナさんは、いまや大人気である。丁寧で優しい雰囲気で説明する彼女を目当てに通う者も多くいる。今も一緒に行動する私を睨みつけている連中がいる。
神殿アイドルとか、ご当地アイドルとかプロデュースするかな……。
まあ、そんなことをする気はないが、この世界は年越しのイベントというか神恩の礼宴という年越しのイベントのような習わしがある。
この世界では、1ヶ月は全て30日で、12ヶ月あるので360日ある。それとは別に神恩の礼宴という5日間があり、その期間は仕事を休み、家族や仲間と過ごすのが習わしとなっていたらしい。
最近ではそれほど何かをするわけでも、神様に感謝する訳でもないが、年越しのお祭りのような期間になっているようだ。
今年のエルマイスターは景気が良くなり、盛り上がるだろうと聞いていた。しかし、話を聞くと大したことをするわけでなかったので、屋台やイベント会場を作れば盛り上がるのにと呟いたら、レベッカ夫人がその気になってしまった。
神殿にイベント会場を作り、ご当地アイドルではないが、孤児院の子供たちが歌や踊りを披露することになってしまった。そして、地球の歌や踊りを教えると気に入り、気合が入っているようだ。
まだ、神恩の礼宴まで1月半あるのに、レベッカ夫人を中心に準備を進め始めている。
イーナさんが声を掛けてきた住民と話しているのを見ると、話しながらピクピクと動くウサシッポに視線が行く。
いいなぁ~、触るとフワフワしているけど、中にはピクピクする小さな尻尾本体があるんだよなぁ~。
私は以前に触った孤児院の子供の尻尾を思い出していた。
ハッ、ダメだ! これではまた変態の扱いをされてしまう!
ケモミミ新魔エッチにより、表面的には悪魔《ケモナー》を抑え込むことには成功した。最近では子供たちの頭を撫でないように我慢はできている。ラナやクレアも最近では孤児院に行っても、自然な感じで私の腕に抱きついてくることは無くなったのだ。
首を左右に振り、妄想を振り払う。そしてクレアと目が合うと、ジト目で睨んでいるのに気が付いた。
残念なことにケモミミ愛は抑えられたが、ケモシッポ愛は膨らんでいた。ケモシッポは元々ハードルが高い。ケモミミは頭を撫でるついでに触ることができるが、ケモシッポはお尻を触るのと同じだ。
まだケモシッポ新魔エッチは実現していない。疑似的にナイトウエアにケモシッポを取り付けても、その後は、ゲフン……中途半端なのである。
それでも何とか抑え込んでいるが、先ほどのように油断すると視線が自然にケモシッポに向かい、妄想が……。
「アタル様、すみません。あの人は神殿によく来られる人で、神様の事を質問されていたので答えていました」
イーナさんは本当に申し訳なさそうに謝ってくる。
謝るべきは私だぁーーー!
心の中でイーナさんに土下座しながら、引きつった笑顔を見せるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
神殿に到着するとたくさんの住民が来ているのが分かる。そして、神殿に訪れた人たちを案内する、制服を着た福祉ギルドの職員と見習いがいた。
見習い用の制服を着た少女の1人が、私に気付いて走り寄ってくる。
「アタル様、今日はどのような用事で来られたのですか!?」
「ミルファ、走ったら神殿に来られた人にご迷惑ですよ」
私に声を掛けてきた少女に、イーナさんが優しく注意した。
「あっ、イーナ様、ごめんなさい」
ミルファと呼ばれた少女は、恥ずかしそうにイーナさんに謝罪した。
ミルファはグラスニカの孤児院にいた少女だ。自分を身売りしたお金で、病気になった子を助けようとした少女である。彼女には私との約束は気にすることはないと話したが、頑なにエルマイスターまでついてきたのである。
先日までは成人していなかったので、孤児院に一時的に入ってシア達の薬草採取を手伝っていた。すぐに14歳になったので、ちょうど福祉ギルドが神殿職員の募集をしていて、彼女はそこで働くことになったのだ。
「ミルファ元気そうで良かったよ。今日は寮に不具合がないか確認に寄っただけだよ」
ミルファがエルマイスターに来て、まだ1ヶ月も過ぎていない。それでも満足に食事ができるようになったからか、少しふっくらと女の子らしい体型になっていた。
「ええぇ、アタル様が領を見に来るのぉ! 先に言ってくれないと恥ずかしいよぉ」
何が恥ずかしいのか私にはわからないが、普通の少女らしい反応を見て嬉しくなる。
「だから普段から部屋を片付けるように、職員さんに言われていたでしょ?」
イーナさんがお姉さんのような雰囲気で話すのも新鮮な感じがする。
「は~い、ペロッ」
少女らしい表情や仕草が、思ったより制服に合っている。
萌《はじめ》(権能の神)『ふふん、私の推薦した制服だから当然だ!』
叡一《えいいち》(叡智の神)『ミルミルは私の推しメンだ。絶対に手を出すなよ!』
アタル『出すかぁーーー!』
商《しょう》(商売の神)『研究生《みならい》と思えないクオリティだね』
うん、相手にするのは止めよう……。
まさか神様の一部に、そんな文化交流をしている連中がいるとは……。
地球で見たことのある清楚系アイドルグループの衣装に何となく似ている気がするぅ。
商売の神様から、神様グッズの販売や握手会を開くように神託があった時は、即座に却下した。
権能の神様や叡智の神様からは、孤児院の子供だけでなく、彼女たちにも歌や踊りをさせるように神託が送られてきて頭が痛くなった。
権能の神様や叡智の神様と神界で会ったときは、落ち着きと威厳を感じていたのだが……。
「今日は話を聞きにきただけだから、気にしなくても大丈夫だよ」
「え~、アタル様に部屋を見てもらいたかったのにぃ~」
え~い、どっちなんだぁーーー!
彼女たちと話すと、自分がおじさんだなと感じて悲しくなるぅ。
「アタル様が旅立つ前に問題が無いか話を聞きに来ただけよ」
イーナさんが説明してくれた。
「えっ、アタル様はどこかに行っちゃうの!?」
「予定では20日間ぐらい仕事に出かける予定だよ。多少伸びても神恩の礼宴には戻ってきて、一緒に皆と過ごすからね」
あらから王宮からどうしても塩採取の検証をして欲しいと連絡があり、ジョルジュ様に頼み込まれてしまったのだ。
ちょうどハロルド様やジョルジュ様も王都に行くので、途中まで一緒に行くことになったのである。
「早く帰ってきてください……」
ミルファは俺に抱きついてそう話した。エルマイスターに来てまだ日も浅いから不安なんだろうと思った。
「ああ、早く帰るようにするから、しっかり神恩の礼宴の準備もしてくれよ」
「はい……」
妹に懐かれているような気恥しい気持ちを感じていたのだが、背中に殺気も感じていた。
殺気を感じたほうを見ると、冒険者風の男たち数人が俺を睨んでいる。
クレアを見るとそれほど警戒していなかった。帰りがけに理由を聞くと、彼らはミルファのファンだと分かるのであった。
何を作るにもスライム溶液は必要なので、備蓄を増やすために2日に1回は採取に行った。もちろん同時に河原で石材を集め、木材も調達していたが、日帰りで採取できる場所は無くなってきた。十分な量を確保しているが、色々と作り始めるとすぐに足りなくなりそうだ。
エルマイスター領の公的ギルドは順調に稼働しており、町の住人は完全に公的ギルドを受け入れ馴染んでいた。
神殿も一般に開放されると、神殿にお祈りをするのが習慣になる人さえ出てきた。そして何人かが、神の加護を授かったという噂まで流れている。
5日に1回で始めたグラスニカとエルマイスター間の駅馬車は、利用者が殺到して2日に1回運行できるように調整を進めているようだ。
最近は新しい建物や魔道具を作ることもなく、叱られることは無くなったが、人の驚く顔が見れなくて寂しくも感じる。
調子に乗って色々やり過ぎた気もするが、町の人の笑顔を見ると間違いではなかったと実感する。
今も神殿に向かって歩いているが町の人達は、笑顔で声を掛けてくる。
「アタル様は町の人達にも人気があるんですね」
一緒に神殿に向かっているイーナさんが声を掛けてくる。
「イーナさんのほうが、私より人気があると思うよ」
声を掛けてくる人の半分以上はイーナさんに声を掛けている。それ以外の大半が我々一向に声を掛けている。私に声を掛けてくるのは少しだけである。
イーナさんは恥ずかしそうにしたが、またイーナさんが町の人に声を掛けられ、笑顔で答えている。
神殿で神様について説明するイーナさんは、いまや大人気である。丁寧で優しい雰囲気で説明する彼女を目当てに通う者も多くいる。今も一緒に行動する私を睨みつけている連中がいる。
神殿アイドルとか、ご当地アイドルとかプロデュースするかな……。
まあ、そんなことをする気はないが、この世界は年越しのイベントというか神恩の礼宴という年越しのイベントのような習わしがある。
この世界では、1ヶ月は全て30日で、12ヶ月あるので360日ある。それとは別に神恩の礼宴という5日間があり、その期間は仕事を休み、家族や仲間と過ごすのが習わしとなっていたらしい。
最近ではそれほど何かをするわけでも、神様に感謝する訳でもないが、年越しのお祭りのような期間になっているようだ。
今年のエルマイスターは景気が良くなり、盛り上がるだろうと聞いていた。しかし、話を聞くと大したことをするわけでなかったので、屋台やイベント会場を作れば盛り上がるのにと呟いたら、レベッカ夫人がその気になってしまった。
神殿にイベント会場を作り、ご当地アイドルではないが、孤児院の子供たちが歌や踊りを披露することになってしまった。そして、地球の歌や踊りを教えると気に入り、気合が入っているようだ。
まだ、神恩の礼宴まで1月半あるのに、レベッカ夫人を中心に準備を進め始めている。
イーナさんが声を掛けてきた住民と話しているのを見ると、話しながらピクピクと動くウサシッポに視線が行く。
いいなぁ~、触るとフワフワしているけど、中にはピクピクする小さな尻尾本体があるんだよなぁ~。
私は以前に触った孤児院の子供の尻尾を思い出していた。
ハッ、ダメだ! これではまた変態の扱いをされてしまう!
ケモミミ新魔エッチにより、表面的には悪魔《ケモナー》を抑え込むことには成功した。最近では子供たちの頭を撫でないように我慢はできている。ラナやクレアも最近では孤児院に行っても、自然な感じで私の腕に抱きついてくることは無くなったのだ。
首を左右に振り、妄想を振り払う。そしてクレアと目が合うと、ジト目で睨んでいるのに気が付いた。
残念なことにケモミミ愛は抑えられたが、ケモシッポ愛は膨らんでいた。ケモシッポは元々ハードルが高い。ケモミミは頭を撫でるついでに触ることができるが、ケモシッポはお尻を触るのと同じだ。
まだケモシッポ新魔エッチは実現していない。疑似的にナイトウエアにケモシッポを取り付けても、その後は、ゲフン……中途半端なのである。
それでも何とか抑え込んでいるが、先ほどのように油断すると視線が自然にケモシッポに向かい、妄想が……。
「アタル様、すみません。あの人は神殿によく来られる人で、神様の事を質問されていたので答えていました」
イーナさんは本当に申し訳なさそうに謝ってくる。
謝るべきは私だぁーーー!
心の中でイーナさんに土下座しながら、引きつった笑顔を見せるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
神殿に到着するとたくさんの住民が来ているのが分かる。そして、神殿に訪れた人たちを案内する、制服を着た福祉ギルドの職員と見習いがいた。
見習い用の制服を着た少女の1人が、私に気付いて走り寄ってくる。
「アタル様、今日はどのような用事で来られたのですか!?」
「ミルファ、走ったら神殿に来られた人にご迷惑ですよ」
私に声を掛けてきた少女に、イーナさんが優しく注意した。
「あっ、イーナ様、ごめんなさい」
ミルファと呼ばれた少女は、恥ずかしそうにイーナさんに謝罪した。
ミルファはグラスニカの孤児院にいた少女だ。自分を身売りしたお金で、病気になった子を助けようとした少女である。彼女には私との約束は気にすることはないと話したが、頑なにエルマイスターまでついてきたのである。
先日までは成人していなかったので、孤児院に一時的に入ってシア達の薬草採取を手伝っていた。すぐに14歳になったので、ちょうど福祉ギルドが神殿職員の募集をしていて、彼女はそこで働くことになったのだ。
「ミルファ元気そうで良かったよ。今日は寮に不具合がないか確認に寄っただけだよ」
ミルファがエルマイスターに来て、まだ1ヶ月も過ぎていない。それでも満足に食事ができるようになったからか、少しふっくらと女の子らしい体型になっていた。
「ええぇ、アタル様が領を見に来るのぉ! 先に言ってくれないと恥ずかしいよぉ」
何が恥ずかしいのか私にはわからないが、普通の少女らしい反応を見て嬉しくなる。
「だから普段から部屋を片付けるように、職員さんに言われていたでしょ?」
イーナさんがお姉さんのような雰囲気で話すのも新鮮な感じがする。
「は~い、ペロッ」
少女らしい表情や仕草が、思ったより制服に合っている。
萌《はじめ》(権能の神)『ふふん、私の推薦した制服だから当然だ!』
叡一《えいいち》(叡智の神)『ミルミルは私の推しメンだ。絶対に手を出すなよ!』
アタル『出すかぁーーー!』
商《しょう》(商売の神)『研究生《みならい》と思えないクオリティだね』
うん、相手にするのは止めよう……。
まさか神様の一部に、そんな文化交流をしている連中がいるとは……。
地球で見たことのある清楚系アイドルグループの衣装に何となく似ている気がするぅ。
商売の神様から、神様グッズの販売や握手会を開くように神託があった時は、即座に却下した。
権能の神様や叡智の神様からは、孤児院の子供だけでなく、彼女たちにも歌や踊りをさせるように神託が送られてきて頭が痛くなった。
権能の神様や叡智の神様と神界で会ったときは、落ち着きと威厳を感じていたのだが……。
「今日は話を聞きにきただけだから、気にしなくても大丈夫だよ」
「え~、アタル様に部屋を見てもらいたかったのにぃ~」
え~い、どっちなんだぁーーー!
彼女たちと話すと、自分がおじさんだなと感じて悲しくなるぅ。
「アタル様が旅立つ前に問題が無いか話を聞きに来ただけよ」
イーナさんが説明してくれた。
「えっ、アタル様はどこかに行っちゃうの!?」
「予定では20日間ぐらい仕事に出かける予定だよ。多少伸びても神恩の礼宴には戻ってきて、一緒に皆と過ごすからね」
あらから王宮からどうしても塩採取の検証をして欲しいと連絡があり、ジョルジュ様に頼み込まれてしまったのだ。
ちょうどハロルド様やジョルジュ様も王都に行くので、途中まで一緒に行くことになったのである。
「早く帰ってきてください……」
ミルファは俺に抱きついてそう話した。エルマイスターに来てまだ日も浅いから不安なんだろうと思った。
「ああ、早く帰るようにするから、しっかり神恩の礼宴の準備もしてくれよ」
「はい……」
妹に懐かれているような気恥しい気持ちを感じていたのだが、背中に殺気も感じていた。
殺気を感じたほうを見ると、冒険者風の男たち数人が俺を睨んでいる。
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