スマートシステムで異世界革命

小川悟

文字の大きさ
上 下
209 / 224
第7章

第15話 正直に話そう

しおりを挟む
私は驚いた表情を見せるジョルジュ様やハロルド様達を見て、話を続ける。

「え~と、前はエルマイスター家と契約していましたが、今はそれも公的ギルドとエルマイスター間の契約になっているはずです。ポーションの納品ぐらいしか契約していなかったのですが、それも公的ギルドとエルマイスター家の契約になった筈ですが……」

ジョルジュ様がハロルド様に視線を向ける。視線を向けられたハロルド様はレベッカ夫人に視線を向けた。

「あら、確かにそうだったわ!」

レベッカ夫人が思い出したように話した。

「塩についてもそのはずですよ。塩を採取するのは実質的には公的ギルドが所有する魔道具で、魔道具の警備を含めてエルマイスター家が協力する。採取した塩は公的ギルド経由で販売はするが、エルマイスター家の意向に合わせて販売するとなっていたはずです。他にも色々と条件もありますが、王宮が塩の事について契約するなら、エルマイスター家とすることになりますよね?」

「「「……」」」

んっ、なんで誰もが沈黙するんだ?

「そ、そういえばそんなことになっていたと思い出したわ。お義父様もその事は報告してあったはずよ……」

レベッカ夫人がハロルド様に振っている。

「まてまて、レベッカはエルマイスター家の人間で、公的ギルドのトップではないか!」

「そ、そうよ、だからアタルさんが作った魔道具や商品は公的ギルドが借りたり買い取ったりして、エルマイスターに必要な場合は、エルマイスター家と公的ギルドの契約としてあるわ。その事はお義父様が契約するときに説明しているし、報告もきちんとしているはずよ!」

あのぉ、なんか責任を擦り付け合っているような気が……。

「私としても色々と要求されても面倒なので、公的ギルドを通して要望を聞いたり、必要な魔道具の作製もしたりしています。……もちろん、直接依頼されることもありますが、最終的には公的ギルドが窓口になって、詳細な契約内容や金額交渉、支払い方法も含めて調整は全て公的ギルドにお願いしているはずです……」

念のため補足した。

あのぉ、……険悪な雰囲気が流れているのですけどぉ。

「ハロルドに聞きたいのだが、先ほどの話し合いは必要だったのか?」

え~と、ジョルジュ様、青筋が……。

「で、殿下、無駄ではありません! アタルと直接交渉を儂もしてきました。それに塩採取の検証はアタルと直接交渉しないと無理ではありませんか!」

うん、必死の言い訳だね……。

「そ、そうです! 実際にはアタルと直接交渉した内容を、公的ギルドが後追いで契約をまとめているだけです!」

レベッカ夫人も焦ったようにジョルジュ様に話した。

「いやいや、その後追いを含めての契約や調整をしたいというのが、今回の王宮の依頼ですよ。だったら最初から王宮は公的ギルドと交渉すれば問題ないじゃありませんか!」

「「……」」

話を聞いた感じではジョルジュ様の話であっている思う……。

「ま、まあ、なんか色々あるみたいですけど、私も王宮に対する提案をまとめていました。もう少し後でも良いかと思ったのですが、王宮からの依頼に関わることなので見てもらいましょうか」

そう話すと、これまでにまとめていた提案書を、急いで転写して全員に配る。

ジョルジュ様はまだ納得いかないような表情をしていたが、提案書の数が多いのを見て慌てて読みだす。

ハロルド様達もホッとした表情を見せていたが、すぐに提案書を読み始めた。

公的ギルドがある程度広まりつつあるので、今後は国にも正式に認めてもらい、どのように国と連携していくのかを含めて、様々な状況に応じた提案を考えていた。

王宮の依頼にあった書類を送付する魔道具は、郵便ギルドの業務として提案してある。紙の種類や大きさによる料金や、送付方法や公的ギルドカードからの送付や、現時点でどこまでギルドカードを発行するのかなど、懸案事項も含めて色々な角度からメリットやデメリットも含めて提案書には書かれていた。

全員が黙々と読んでいる。私はやることがなくボーっと先程まで作っていたケモミミカチューシャの事を思い出していたのだった。

レベッカ夫人は肉食獣が似合うと思っていたが……。

サキュバスなら角かな……。

私は角カチューシャも作ろうと、色々とイメージを膨らませるのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


暫くするとハロルド様が最初に顔を上げた。たぶん、それほど細かな部分は読まずにすませたのだろう。

「アタル……、先にこれを出してくれれば問題なかったのじゃがのぉ」

え~と、そんなことを言われても……。

「そこまで性急に進めるのはどうかと思ったんですが……」

いつも急すぎると文句を言われていたのである。もう少し公的ギルドが落ち着いてからと思っていたのである。

「確かにそうじゃのぉ。これ以上急いで事を進めたら儂は書類に埋もれて死んでしまいそうじゃ……」

いやいや、訓練を止めれば大丈夫だよ!?

それに書類は役所システムを使っているから紙は必要ない。書類に埋もれることはないだろう。

まあ、そういう話では無いのだろうが。

「これは素晴らしいですよ。王宮にはこれを見せれば問題ありません! アタル殿、こんなのがあるなら早く出してくださいよ!」

そんなことを言われてもぉーーー!

「まだ、その提案書は中途半端な状態です。提案内容を充実させるために、王家用や貴族用のギルドカードの検証をジョルジュ様にお願いしていました。その感想や問題点についても返事を頂いておりませんよ。一時的な魔道具の運用では問題があるから、組織や国としても運用できるのか確認するために検証をお願いしたのです」

ジョルジュ様が露骨に動揺している。渡された臨時のギルドカードに浮かれて、本来の検証を頼まれたことを忘れていた感じがする。

「……すまない」

ジョルジュ様が謝ってきた。そして提案書は王宮にも送るというので暫定版として了承する。

私も申し訳ない気持ちになる。大半の提案は地球の知識の産物である。もちろんこの世界の事情も考慮しているが、やはり地球の文明の方が進んでいるのは間違いない。

彼らにとっては初めての知識や考えも多く、提案内容を実現するには彼らの知らないような魔道具も多い。そうなると私から提案をして、この世界や国にあった方策を彼らが選択するしかないのだろう。

これからは提案書や提案書を作る前の考えも書類にする必要があるかもと思った。しかし、そこまでしていては体が持たない。

今後の進め方はもう少し検討が必要だと考えるのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


その日の夜はラナの番であった。夫婦の部屋のソファに座ってラナに話す。

「私はやはり獣人のケモミミやシッポに執着があると思う……」

私は正直な気持ちをラナに話した。

「そんなのは私もクレアも知っていました。だから問題が起きないように獣人の嫁が居た方が良いと考えたのです」

ラナは優しく微笑みながら話してくれた。私はその笑顔が嬉しかったが、また一段と過激なナイトウェア姿で言われると……。

必死に欲望を抑えながら話を続ける。

「ラナやクレアがそう思ってくれることは嬉しいが、嫁を増やすことに私は抵抗があるんだ……」

ラナは嬉しそうに頷いてくれた。

「旦那様がそう考えてくれるのは、私達を大切に思ってくれているからだと分かります。ですが私達も旦那様を大切に思い、旦那様の望むことを叶えることが幸せなのです」

この世界は男の楽園なのでは思ってしまいそうになる。

「ありがとう。でも、嫁については時間を掛けてじっくり考えたいんだ。ラナやクレアに子供が生まれれば、考え方や獣人好きも収まるかも……」

子供の話をしたことで、ラナも恥ずかしそうに俯いた。

くっ、今すぐ襲い掛かりたい!

その衝動を抑えてラナに頼む。

「それまで、自分の気持ちを抑えるためにお願いがあるんだ……」

そう話すとケモミミカチューシャを出した。

「可愛い……」

うん、引かれてはいないようだ。

ラナは思わず可愛いと言って、目を輝かしている。

「こ、これを付けて試してみたいのだけど、ど、どうかな?」

おうふ、意外にラナは乗り気の表情をしている。

頬が赤くなり、目を輝かしているラナを見てそう思った。

ラナは猫耳を二つ手に取ると、一つを自分の頭に着けた。

くっ、悪くないじゃないかぁーーー!

しかし、ラナは予想外の提案をしてきた。

「旦那様も着けるにゃん!」

ラナはそう言うと私の頭にネコミミカチューシャを付けてキスしてきた。いつもと違い舐めるようなキスしてきた。

それからケモミミ新魔エッチの暴走が始まるのであった。
しおりを挟む

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 

★☆ 書籍化したこちらもヨロシク! ☆★

★☆★☆★☆ 『転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。』 ☆★☆★☆★

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 



ツギクルバナー
感想 154

あなたにおすすめの小説

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

処理中です...