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第7章
第1話 帰ってきたぁ!
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帰りは客車型テク魔車が1台増えていた。冒険者を生業とする獣人家族と、孤児院にいた成人前の人族の子が、何人もエルマイスターへの移住を希望したからだ。
グラスニカの領都では景気が良くなったけど、これまで差別されてきた獣人が、商売から肉体労働まで普通に仕事を始めたのだ。
それまでの人族としての優遇措置が無くなったことで、なんとか景気が良くなったから現状維持できているが、新たに孤児院出身の子供を雇う余裕は人族の店はなかったようだ。
それに孤児院の少女のひとりは、俺に雇うと言われたことを忘れておらず、絶対についてくると言い張ったのだ。だから少女はシアたちに預けるつもりだ。
それと一緒にグラスニカに行った公的ギルド職員は、グラスニカ領かそれ以外の領地に向かった。
公的ギルド職員用のテク魔車を、王子夫妻専用のテク魔車として移動してきたのである。
そしてまた懐かしい休息所に到着した。
テク魔車から降りると草原でテーブルを出して休憩の準備をする。
王子夫妻もテク魔車から降りてきた。
「本当に2日でも余裕でエルマイスターの領都まで行けるのだな。それこそ休憩しないで領都に向かえば良いのではないか?」
「確かにその通りですがのぉ。ここはアタルと初めて会った場所で、そこのミュウもアタルと知り合った場所でもあるからのぉ」
ジョルジュ様の問いかけに、ハロルド様も懐かしそうに周りを見ながら答えている。
「ふふふっ、でもここは素敵な場所ですわ。テク魔車内も快適ですけど、こんな場所にテーブルを出してお茶を飲めるなんて、なんて贅沢なんでしょう!」
メリンダ様もこの場所が気に入ったのか、楽しそうに周りを見回している。
「ここだいすき~!」
メリンダ様に抱かれてキティが話した。キティは移動中ずっと王子夫妻のテク魔車に乗っていた。メリンダ様がキティを気に入り、ジョルジュ様もそんな二人を嬉しそうに見つめている。
ラナがお茶に必要な物を収納から出して、お付きの人達が給仕を始める。
客車型テク魔車から獣人家族や孤児たちも出てきたが、冒険者の獣人は近くの角ウサギを狩に行き、孤児たちは薬草を集めていた。
お茶を飲み始めると、ジョルジュ様がテク魔車を見ながら呟いた。
「テク魔車は速いだけでなく、中は快適で揺れも少ない。寝室や兵士の控室まである。これで旅をしたら、普通の馬車では旅ができなくなるな……」
「飲み物や食事も移動中でも普通に食べられるなんて信じられないわ! それに移動中に景色を楽しもうと思ったことはないけど、テク魔車なら景色を楽しむこともできるのよ」
メリンダ様も嬉しそうに話す。
「それだけではございません。比較的魔物の多いエルマイスター領内で、これほど魔物の影響がなく安心して移動できるのは驚きでしかありません。
今回は残念ですが、エルマイスター騎士団に護衛を任せている状況です。しかし、サバル殿にウマーレムとの連携や、魔物や人の位置まで把握できるのは、護衛として素晴らしいとしか言いようがありません!」
王子夫妻の護衛兵士で、近衛騎士の隊長でもあるグラハドール様は少し興奮気味に話していた。彼は伯爵家の次男で男爵の爵位を持つ貴族でもある。
「メリンダの為にもテク魔車は欲しいなぁ」
ジョルジュはハロルド様と私を交互に見ながら呟いた。
テク魔車は数の問題がある。当面は公的ギルドの運輸用に確保したいのだ。
貴族や王族にテク魔車の提供を始めると、素材がすぐに足りなくなりそうだ。そして一番の問題はウマーレムのコアが足りないということだ。
王都でハロルド様の息子に調達してもらっている。エルマイスター家が用意した馬ゴーレムの核《コア》は、2個提供したらウマーレム1頭を5年間無償で貸与することにした。
そして残りの核《コア》は公的ギルドで利用することにしたのだ。
王家からも大量に依頼は来たが、今はスライム溶液が足りないので作業が進んでいなかった。
「いくら私でも手が回りません。それに王家は貸与では嫌だと言っているので、後回しですかね」
ほとんど利用価値のなかった馬ゴーレムの核《コア》だけで、費用なしに5年間ウマーレムを借りるのが嫌だと王家には言われている。王家は金を払っても買い取りたいと言っているのだ。
しかし、公的ギルドの発展のためにもウマーレムは必要だ。それに燃料になる魔砂の需給バランスの検証も必要なのだ。簡単に折れるつもりはない。
「わ、分かった。私からも貸与の件も含めて話しておこう」
王子は未練がましくそう言ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
移動を始めてエルマイスターの領都が近づくと、ドキドキし始める。
屋敷のみんなは元気にしているか、子供たちは無事に薬草採取を続けているのか気になる。
実は定期的にレベッカ夫人や執事のエマから連絡は入っていたのだが、やはり何かあったんじゃないかと心配になってきたのだ。
前方に領都プレイルの外壁が見えてくると、余計に気が焦ってくる。
そして門が見える位置まで来ると、門の周辺にはシアやカティ、そしてフォミやシャルの姿も見える。そして私のケモミミ天国も待ち構えている。
横を見るとミュウも涙目になっている。ミュウは姉のシャルとずっと一緒に過ごしてきたのだ。たぶん私よりも嬉しいに決まっている。
領主一行と王子一行が一緒だから、門番は敬礼して通してくれるようだ。
我慢できなくなった私とミュウは、一緒にテク魔車から飛び降りると子供たちに走り寄る。
「ただいまぁ!」
私は手前で立ち止まると、そう言った。
「「「お帰りなさ~い!」」」
まるで練習したように声を揃えて答えてくれた。
そしてシアとカティ、フォミが抱きついてくる。シャルにはミュウが抱きついて、泣き始めていた。やはり寂しかったのかもしれない。
シア「ばかぁ、帰ってくるのが遅いよぉ~」
フォミ「どうせ向こうで浮気してたんでしょ!」
う、嬉しいけど、浮気と言われてグラスニカのケモミミ天国が浮かんでいた。
う、浮気なんかじゃないからぁ~!
「おねえちゃ~ん! ニャンデ!?」
キティも王子夫妻のテク魔車から飛び降りてきたようだ。カティはすぐに私から離れて抱きついてきたキティを抱きしめるのではなく、頬を左右に引っ張っている。
「あんただけ一緒に行ってズルい!」
うん、見なかったことにしよう。
王子夫妻のテク魔車を見ると、キティを追いかけようとテク魔車からメリンダ様も飛び降りようとしたのか、王子が抱きしめている。すぐに我々の横でテク魔車が止まると、メリンダ様が驚いた表情で近付いてきて、キティ達に話しかけてた。
メリンダ「驚かさないで。馬車から飛び降りたら危ないのよ」
キティ「ぎょめんにゃしゃい」(ごめんなさい)
メリンダ「あなたがキティちゃんのお姉さんのカティさん?」
カティ「は、はい。この人だれ!?」
カティは突然綺麗な女性に声を掛けられて焦っている。
キティ「みょりんじゃおにゃーちゃん!」(メリンダお姉ちゃん!)
カティ「にょりんだお兄ちゃん?」
アタル「頬から手を離さないと何を言っているか分からないよ」
カティ「あっ!」
収拾がつかなくなってるぅ!
「私は第2王子のジョルジュ、彼女は妻のメリンダだよ」
「え~、おじさんが王子さまぁ?」
「なら、こっちはお姫さまだぁ!」
「やっぱりお姫さまはきれいだぁ」
「でも、このおじさん強そうだよ?」
シア「ダメよ! おじさんとじゃなくお兄さんと言わないと!」
フォミ「アタルお兄ちゃんだったら、晩御飯食べさせてくれなくなるよ!」
ちょいちょい、何か私が無理やりお兄さんと呼ばせてるみたいじゃん!?
「別におじさんでも良いけど、アタル殿がお兄さんなら、私もお兄さんと呼んで欲しいなぁ」
「殿下! そのような場所で馬車から降りたら、警護の兵士が困るのじゃ!」
ハロルド様がテク魔車から身を乗り出して大声で話した。
「でんか?」
シア「でんかお兄さん!」
「「「でんかおにいさん!」」」
うん、子供は本当に恐ろしい!
「わ、わかった。メリンダ、取り敢えず馬車に戻ろう」
「は、はい!」
メリンダさんは寂しそうにキティ達に手を振り馬車に戻った。
ハロルド様と王子夫妻のテク魔車は先に町の中に入っていく。
私はまるで自分の生まれ故郷に戻ってきた気持ちになりながら、子供たちと一緒に歩いて屋敷に戻るのだった。
グラスニカの領都では景気が良くなったけど、これまで差別されてきた獣人が、商売から肉体労働まで普通に仕事を始めたのだ。
それまでの人族としての優遇措置が無くなったことで、なんとか景気が良くなったから現状維持できているが、新たに孤児院出身の子供を雇う余裕は人族の店はなかったようだ。
それに孤児院の少女のひとりは、俺に雇うと言われたことを忘れておらず、絶対についてくると言い張ったのだ。だから少女はシアたちに預けるつもりだ。
それと一緒にグラスニカに行った公的ギルド職員は、グラスニカ領かそれ以外の領地に向かった。
公的ギルド職員用のテク魔車を、王子夫妻専用のテク魔車として移動してきたのである。
そしてまた懐かしい休息所に到着した。
テク魔車から降りると草原でテーブルを出して休憩の準備をする。
王子夫妻もテク魔車から降りてきた。
「本当に2日でも余裕でエルマイスターの領都まで行けるのだな。それこそ休憩しないで領都に向かえば良いのではないか?」
「確かにその通りですがのぉ。ここはアタルと初めて会った場所で、そこのミュウもアタルと知り合った場所でもあるからのぉ」
ジョルジュ様の問いかけに、ハロルド様も懐かしそうに周りを見ながら答えている。
「ふふふっ、でもここは素敵な場所ですわ。テク魔車内も快適ですけど、こんな場所にテーブルを出してお茶を飲めるなんて、なんて贅沢なんでしょう!」
メリンダ様もこの場所が気に入ったのか、楽しそうに周りを見回している。
「ここだいすき~!」
メリンダ様に抱かれてキティが話した。キティは移動中ずっと王子夫妻のテク魔車に乗っていた。メリンダ様がキティを気に入り、ジョルジュ様もそんな二人を嬉しそうに見つめている。
ラナがお茶に必要な物を収納から出して、お付きの人達が給仕を始める。
客車型テク魔車から獣人家族や孤児たちも出てきたが、冒険者の獣人は近くの角ウサギを狩に行き、孤児たちは薬草を集めていた。
お茶を飲み始めると、ジョルジュ様がテク魔車を見ながら呟いた。
「テク魔車は速いだけでなく、中は快適で揺れも少ない。寝室や兵士の控室まである。これで旅をしたら、普通の馬車では旅ができなくなるな……」
「飲み物や食事も移動中でも普通に食べられるなんて信じられないわ! それに移動中に景色を楽しもうと思ったことはないけど、テク魔車なら景色を楽しむこともできるのよ」
メリンダ様も嬉しそうに話す。
「それだけではございません。比較的魔物の多いエルマイスター領内で、これほど魔物の影響がなく安心して移動できるのは驚きでしかありません。
今回は残念ですが、エルマイスター騎士団に護衛を任せている状況です。しかし、サバル殿にウマーレムとの連携や、魔物や人の位置まで把握できるのは、護衛として素晴らしいとしか言いようがありません!」
王子夫妻の護衛兵士で、近衛騎士の隊長でもあるグラハドール様は少し興奮気味に話していた。彼は伯爵家の次男で男爵の爵位を持つ貴族でもある。
「メリンダの為にもテク魔車は欲しいなぁ」
ジョルジュはハロルド様と私を交互に見ながら呟いた。
テク魔車は数の問題がある。当面は公的ギルドの運輸用に確保したいのだ。
貴族や王族にテク魔車の提供を始めると、素材がすぐに足りなくなりそうだ。そして一番の問題はウマーレムのコアが足りないということだ。
王都でハロルド様の息子に調達してもらっている。エルマイスター家が用意した馬ゴーレムの核《コア》は、2個提供したらウマーレム1頭を5年間無償で貸与することにした。
そして残りの核《コア》は公的ギルドで利用することにしたのだ。
王家からも大量に依頼は来たが、今はスライム溶液が足りないので作業が進んでいなかった。
「いくら私でも手が回りません。それに王家は貸与では嫌だと言っているので、後回しですかね」
ほとんど利用価値のなかった馬ゴーレムの核《コア》だけで、費用なしに5年間ウマーレムを借りるのが嫌だと王家には言われている。王家は金を払っても買い取りたいと言っているのだ。
しかし、公的ギルドの発展のためにもウマーレムは必要だ。それに燃料になる魔砂の需給バランスの検証も必要なのだ。簡単に折れるつもりはない。
「わ、分かった。私からも貸与の件も含めて話しておこう」
王子は未練がましくそう言ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
移動を始めてエルマイスターの領都が近づくと、ドキドキし始める。
屋敷のみんなは元気にしているか、子供たちは無事に薬草採取を続けているのか気になる。
実は定期的にレベッカ夫人や執事のエマから連絡は入っていたのだが、やはり何かあったんじゃないかと心配になってきたのだ。
前方に領都プレイルの外壁が見えてくると、余計に気が焦ってくる。
そして門が見える位置まで来ると、門の周辺にはシアやカティ、そしてフォミやシャルの姿も見える。そして私のケモミミ天国も待ち構えている。
横を見るとミュウも涙目になっている。ミュウは姉のシャルとずっと一緒に過ごしてきたのだ。たぶん私よりも嬉しいに決まっている。
領主一行と王子一行が一緒だから、門番は敬礼して通してくれるようだ。
我慢できなくなった私とミュウは、一緒にテク魔車から飛び降りると子供たちに走り寄る。
「ただいまぁ!」
私は手前で立ち止まると、そう言った。
「「「お帰りなさ~い!」」」
まるで練習したように声を揃えて答えてくれた。
そしてシアとカティ、フォミが抱きついてくる。シャルにはミュウが抱きついて、泣き始めていた。やはり寂しかったのかもしれない。
シア「ばかぁ、帰ってくるのが遅いよぉ~」
フォミ「どうせ向こうで浮気してたんでしょ!」
う、嬉しいけど、浮気と言われてグラスニカのケモミミ天国が浮かんでいた。
う、浮気なんかじゃないからぁ~!
「おねえちゃ~ん! ニャンデ!?」
キティも王子夫妻のテク魔車から飛び降りてきたようだ。カティはすぐに私から離れて抱きついてきたキティを抱きしめるのではなく、頬を左右に引っ張っている。
「あんただけ一緒に行ってズルい!」
うん、見なかったことにしよう。
王子夫妻のテク魔車を見ると、キティを追いかけようとテク魔車からメリンダ様も飛び降りようとしたのか、王子が抱きしめている。すぐに我々の横でテク魔車が止まると、メリンダ様が驚いた表情で近付いてきて、キティ達に話しかけてた。
メリンダ「驚かさないで。馬車から飛び降りたら危ないのよ」
キティ「ぎょめんにゃしゃい」(ごめんなさい)
メリンダ「あなたがキティちゃんのお姉さんのカティさん?」
カティ「は、はい。この人だれ!?」
カティは突然綺麗な女性に声を掛けられて焦っている。
キティ「みょりんじゃおにゃーちゃん!」(メリンダお姉ちゃん!)
カティ「にょりんだお兄ちゃん?」
アタル「頬から手を離さないと何を言っているか分からないよ」
カティ「あっ!」
収拾がつかなくなってるぅ!
「私は第2王子のジョルジュ、彼女は妻のメリンダだよ」
「え~、おじさんが王子さまぁ?」
「なら、こっちはお姫さまだぁ!」
「やっぱりお姫さまはきれいだぁ」
「でも、このおじさん強そうだよ?」
シア「ダメよ! おじさんとじゃなくお兄さんと言わないと!」
フォミ「アタルお兄ちゃんだったら、晩御飯食べさせてくれなくなるよ!」
ちょいちょい、何か私が無理やりお兄さんと呼ばせてるみたいじゃん!?
「別におじさんでも良いけど、アタル殿がお兄さんなら、私もお兄さんと呼んで欲しいなぁ」
「殿下! そのような場所で馬車から降りたら、警護の兵士が困るのじゃ!」
ハロルド様がテク魔車から身を乗り出して大声で話した。
「でんか?」
シア「でんかお兄さん!」
「「「でんかおにいさん!」」」
うん、子供は本当に恐ろしい!
「わ、わかった。メリンダ、取り敢えず馬車に戻ろう」
「は、はい!」
メリンダさんは寂しそうにキティ達に手を振り馬車に戻った。
ハロルド様と王子夫妻のテク魔車は先に町の中に入っていく。
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