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第6章 塩会議
第45話 領主vs商業ギルド③
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ハロルドの殺気立った雰囲気に会議室は異様な雰囲気になった。
「ハロルド、落ち着いて事前に決めた通りに話を進めるのじゃ。今にも奴らを殺しそうな殺気が溢れているぞ。何のためにそうならないように話し合いをしたと思っているのじゃ!」
ゼノキア侯爵がハロルドを叱りつける。ハロルドはゼノキア侯爵を睨みつけたが、すぐに大きく息を吐いて話した。
「ふう~、あまりにも能天気なこいつらの顔を見ていて、我慢できなくなったようじゃ。すまんが予定通り話を進めてくれ。じゃが、これ以上は我慢できそうにないぞ!」
ハロルドが少しは落ち着いてくれたと領主たちは安心した。しかし、それも相手の返答次第だと誰もが感じていた。
「それでは当事者のハロルド殿では感情的になるので、私から説明させてもらおう」
カークが予定通り話を進めることになった。
オルアットやギルドマスター達は何が起こっているのか理解できず。まるで他人事のように感じていた。
「オルアット殿は商業ギルドの代表として話に参加してもらう。必要なら彼らの弁護をしてもらっても構わない。しかし、この場で嘘の発言をしたり、誤魔化したりすれば、ハロルド殿が直接尋問することになる」
カークの説明にオルアットとギルドマスター達は混乱する。
話の流れでは何となくギルドマスターの誰かがハロルドの怒りを買うようなことをしたのだとわかった。その可能性が高いのはエルマイスター支部のギルドマスターであるブルハだ。そして、それに関して嘘や誤魔化しをすれば、あの殺気立ったハロルドの尋問を受けることになるのだ。
「私はずっと王都に居て、こちらには初めて訪問しました。事情がいっこも分かりまへん!」
オルアットはできれば自分は関係ないと逃げ出したい気分であった。
「だから商業ギルドのグランドマスターとして判断をしてくれ。事情は今から話す!」
カークはそう話すと目でグラスニカの執事に合図を送った。執事は頷くと部屋の外に声を掛けサバル達エルマイスターの兵士が会議室に入ってきた。そしてギルドマスター達を逃がさないように囲んだ。
「この契約書を見てくれ」
カークはオルアットに契約書を見せる。
オルアットは契約書の内容を確認する。内容としてはエルマイスター領の孤児へ仕事を斡旋する依頼が書かれていた。
オルアットは契約書を見て、ハロルドは見た目と違って親切な領主だと思った。領主が金まで出して孤児の行く末を心配するなど珍しいことである。しかし、契約書に不備もなく正式に領主と商業ギルドとの契約であることを確認すた。
その契約書を見てブルハの顔色が明らかに悪くなる。
「そしてこれが商業ギルドからハロルド殿に提出された報告書だ」
オルアットは報告書を見て、孤児たちが斡旋された先が丁寧に記載されているのを確認する。そして報告書はグラスニカのギルドマスターにより作成されていた。斡旋先はほとんどがグラスニカの農家なので、実際の斡旋はグラスニカの商業ギルドがしていたのであろう。
オルアットは商業ギルドがしっかりとした仕事をしていると思った。斡旋も報告書も領主相手なので丁寧に作成されていたからだ。
しかし、その報告書を見てブルハとグラスニカのギルドマスターの顔色が悪いことに気が付く。
オルアットの顔色も悪くなる。商業ギルドは表面的にはまともだが、違法スレスレで儲けを出すことも多い。そして、裏で非合法な商売や不正なども平気でやっている。
オルアットも人には言えないこともしているし、職員やギルドマスターがしていることに気付いても、気付かない振りをしていた。
しかし、それは絶対にバレないか、発覚しても大きな損害が出ない場合である。
国や貴族、他のギルドや教会相手でも、誤魔化すことはある。そういう場合は誤魔化して儲けた分を払えば済むぐらいなら、問題ないとさえ思っていた。
(まさか、上位貴族相手に不正をしてバレたのか!?)
オルアットはこのギルドマスター達ならやりそうだと思った。そして、これが商業ギルドにとってどれほどの損失になるのか、ギルドマスターだけの問題で済むのか考えるのであった。
「その顔色を見ると、自分達が何をしたのか分かっているようだな。すでに報告書の裏付け調査はグラスニカ侯爵の指示で終わっている。
ハロルド殿との契約を履行しなかったこと、嘘の報告書を提出したことを認めるか?」
「「……」」
カークが尋ねたが、ブルハもグラスニカのギルドマスターも真っ青な表情で返事もしなかった。
「ふぅ~、お前達はこの状況を理解しているのか。嘘や誤魔化しをすればどうなるのか具体的に説明しよう。お前達だけでなくお前達の家族や、関係したとみられる職員やその家族が拷問にかけられることになるのだぞ。私はハロルド殿がこれほど怒っているのを初めて見た。戦時中ですらこれほどの怒っている姿は見たこともない……」
カークも内心で焦っていた。彼らの返答次第では、これまでにないほど過激な行動にハロルドが出る可能性があるのだ。尋問ではなく明確に拷問と話して、自白を促したのである。
「おい、馬鹿なお前達の不始末で、これ以上商業ギルドに迷惑を掛けるんじゃない!」
(せめて自分達だけの犯罪や言うてや!)
オルアットはカークの話を聞き、ハロルドの噂を思い出していた。そして、下手をするとハロルドが噂以上の行動に出ると思って焦っていた。何とか商業ギルドという組織への影響を最小限にしたかった。
「申し訳ありません! ブルハ殿に儲かるからそのような報告書を出すように依頼されて……」
まずはグラスニカのギルドマスターが自白した。ブルハは泣き始めてしまい、言葉にならない様子だ。
目の前で悲惨な拷問を見ることは避けられそうだと、カークは内心でホッとしていた。
「そうですか……。あなたはエルマイスター家の依頼だと知っていましたよね……。
ふぅ~、あなたはたぶん極刑になるでしょう。しかし、家族や関係ないギルド職員に被害が出ないようにするために、質問には正直に答えてくださいね」
カークは諭すようにグラスニカのギルドマスターに話した。彼は極刑になると聞いて呆然としている。
「斡旋しなかった孤児たちは、どうしたのですか?」
彼は呆然としながらも答えた。
「奴隷にしてヤドラスのギルドマスターに換金をお願いしました……」
ヤドラスのギルドマスターも顔色が変わる。
「ヤドラスのギルドマスターはその孤児たちが奴隷になった経緯を知っていましたか?」
「はい、3人で全て相談して利益を分けたのです。奴隷が国内に居れば発覚する可能性が高いので、隣国に売るようにしました」
彼は目が虚ろで、涙を流している。しかし、それでも淡々と答える。
「ギルド職員でこの件に関わっている者はいますか?」
「いますが、詳しい事情は知りません。契約通り斡旋した孤児も居ますので、斡旋や報告書の作成を手伝ってもらいました。しかし、自分達だけで儲けるために、詳細な事情は説明せずにさせました」
彼はすでに心が壊れたのかなんでも正直に答えているようだ。嘘や誤魔化しをしているようには見えなかった。
オルアットは内心でホッとしていた。商業ギルドへの被害は最小限で済ませられると思ったからだ。
「あなたの家族を捕縛するために兵士があなたの家に行ったのですが、誰も居ませんでした。家族を逃がしたのですか?」
「家族……、家族! どうか家族だけはお許しください! なんでも答えます。だから家族だけは!」
彼はそこまで話すと気を失って倒れてしまった。家族と聞いて、何かが心の中で繋がったのだろう。
「領民は家族と同じじゃ! 家族を酷い目にあわされて、自分の家族だけ無事で済ませるつもりはない!」
ハロルドは噴き出す殺気を抑えようともせず話した。
それを聞いてオルアットが焦って説明する。
「実はこの者達はすでにギルドマスターを解任しております。すでに代理のギルドマスターを派遣して、家族や資産も差し押さえるように指示しています」
オルアットは更に詳しく事情を説明する。そして説明しながらどうやって商業ギルドの損害が最小限に抑えられるか考えるのであった。
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「ふう~、あまりにも能天気なこいつらの顔を見ていて、我慢できなくなったようじゃ。すまんが予定通り話を進めてくれ。じゃが、これ以上は我慢できそうにないぞ!」
ハロルドが少しは落ち着いてくれたと領主たちは安心した。しかし、それも相手の返答次第だと誰もが感じていた。
「それでは当事者のハロルド殿では感情的になるので、私から説明させてもらおう」
カークが予定通り話を進めることになった。
オルアットやギルドマスター達は何が起こっているのか理解できず。まるで他人事のように感じていた。
「オルアット殿は商業ギルドの代表として話に参加してもらう。必要なら彼らの弁護をしてもらっても構わない。しかし、この場で嘘の発言をしたり、誤魔化したりすれば、ハロルド殿が直接尋問することになる」
カークの説明にオルアットとギルドマスター達は混乱する。
話の流れでは何となくギルドマスターの誰かがハロルドの怒りを買うようなことをしたのだとわかった。その可能性が高いのはエルマイスター支部のギルドマスターであるブルハだ。そして、それに関して嘘や誤魔化しをすれば、あの殺気立ったハロルドの尋問を受けることになるのだ。
「私はずっと王都に居て、こちらには初めて訪問しました。事情がいっこも分かりまへん!」
オルアットはできれば自分は関係ないと逃げ出したい気分であった。
「だから商業ギルドのグランドマスターとして判断をしてくれ。事情は今から話す!」
カークはそう話すと目でグラスニカの執事に合図を送った。執事は頷くと部屋の外に声を掛けサバル達エルマイスターの兵士が会議室に入ってきた。そしてギルドマスター達を逃がさないように囲んだ。
「この契約書を見てくれ」
カークはオルアットに契約書を見せる。
オルアットは契約書の内容を確認する。内容としてはエルマイスター領の孤児へ仕事を斡旋する依頼が書かれていた。
オルアットは契約書を見て、ハロルドは見た目と違って親切な領主だと思った。領主が金まで出して孤児の行く末を心配するなど珍しいことである。しかし、契約書に不備もなく正式に領主と商業ギルドとの契約であることを確認すた。
その契約書を見てブルハの顔色が明らかに悪くなる。
「そしてこれが商業ギルドからハロルド殿に提出された報告書だ」
オルアットは報告書を見て、孤児たちが斡旋された先が丁寧に記載されているのを確認する。そして報告書はグラスニカのギルドマスターにより作成されていた。斡旋先はほとんどがグラスニカの農家なので、実際の斡旋はグラスニカの商業ギルドがしていたのであろう。
オルアットは商業ギルドがしっかりとした仕事をしていると思った。斡旋も報告書も領主相手なので丁寧に作成されていたからだ。
しかし、その報告書を見てブルハとグラスニカのギルドマスターの顔色が悪いことに気が付く。
オルアットの顔色も悪くなる。商業ギルドは表面的にはまともだが、違法スレスレで儲けを出すことも多い。そして、裏で非合法な商売や不正なども平気でやっている。
オルアットも人には言えないこともしているし、職員やギルドマスターがしていることに気付いても、気付かない振りをしていた。
しかし、それは絶対にバレないか、発覚しても大きな損害が出ない場合である。
国や貴族、他のギルドや教会相手でも、誤魔化すことはある。そういう場合は誤魔化して儲けた分を払えば済むぐらいなら、問題ないとさえ思っていた。
(まさか、上位貴族相手に不正をしてバレたのか!?)
オルアットはこのギルドマスター達ならやりそうだと思った。そして、これが商業ギルドにとってどれほどの損失になるのか、ギルドマスターだけの問題で済むのか考えるのであった。
「その顔色を見ると、自分達が何をしたのか分かっているようだな。すでに報告書の裏付け調査はグラスニカ侯爵の指示で終わっている。
ハロルド殿との契約を履行しなかったこと、嘘の報告書を提出したことを認めるか?」
「「……」」
カークが尋ねたが、ブルハもグラスニカのギルドマスターも真っ青な表情で返事もしなかった。
「ふぅ~、お前達はこの状況を理解しているのか。嘘や誤魔化しをすればどうなるのか具体的に説明しよう。お前達だけでなくお前達の家族や、関係したとみられる職員やその家族が拷問にかけられることになるのだぞ。私はハロルド殿がこれほど怒っているのを初めて見た。戦時中ですらこれほどの怒っている姿は見たこともない……」
カークも内心で焦っていた。彼らの返答次第では、これまでにないほど過激な行動にハロルドが出る可能性があるのだ。尋問ではなく明確に拷問と話して、自白を促したのである。
「おい、馬鹿なお前達の不始末で、これ以上商業ギルドに迷惑を掛けるんじゃない!」
(せめて自分達だけの犯罪や言うてや!)
オルアットはカークの話を聞き、ハロルドの噂を思い出していた。そして、下手をするとハロルドが噂以上の行動に出ると思って焦っていた。何とか商業ギルドという組織への影響を最小限にしたかった。
「申し訳ありません! ブルハ殿に儲かるからそのような報告書を出すように依頼されて……」
まずはグラスニカのギルドマスターが自白した。ブルハは泣き始めてしまい、言葉にならない様子だ。
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「そうですか……。あなたはエルマイスター家の依頼だと知っていましたよね……。
ふぅ~、あなたはたぶん極刑になるでしょう。しかし、家族や関係ないギルド職員に被害が出ないようにするために、質問には正直に答えてくださいね」
カークは諭すようにグラスニカのギルドマスターに話した。彼は極刑になると聞いて呆然としている。
「斡旋しなかった孤児たちは、どうしたのですか?」
彼は呆然としながらも答えた。
「奴隷にしてヤドラスのギルドマスターに換金をお願いしました……」
ヤドラスのギルドマスターも顔色が変わる。
「ヤドラスのギルドマスターはその孤児たちが奴隷になった経緯を知っていましたか?」
「はい、3人で全て相談して利益を分けたのです。奴隷が国内に居れば発覚する可能性が高いので、隣国に売るようにしました」
彼は目が虚ろで、涙を流している。しかし、それでも淡々と答える。
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「いますが、詳しい事情は知りません。契約通り斡旋した孤児も居ますので、斡旋や報告書の作成を手伝ってもらいました。しかし、自分達だけで儲けるために、詳細な事情は説明せずにさせました」
彼はすでに心が壊れたのかなんでも正直に答えているようだ。嘘や誤魔化しをしているようには見えなかった。
オルアットは内心でホッとしていた。商業ギルドへの被害は最小限で済ませられると思ったからだ。
「あなたの家族を捕縛するために兵士があなたの家に行ったのですが、誰も居ませんでした。家族を逃がしたのですか?」
「家族……、家族! どうか家族だけはお許しください! なんでも答えます。だから家族だけは!」
彼はそこまで話すと気を失って倒れてしまった。家族と聞いて、何かが心の中で繋がったのだろう。
「領民は家族と同じじゃ! 家族を酷い目にあわされて、自分の家族だけ無事で済ませるつもりはない!」
ハロルドは噴き出す殺気を抑えようともせず話した。
それを聞いてオルアットが焦って説明する。
「実はこの者達はすでにギルドマスターを解任しております。すでに代理のギルドマスターを派遣して、家族や資産も差し押さえるように指示しています」
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