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第6章 塩会議
第26話 塩会議対策
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会議室でカービン伯爵とゼノキア侯爵が並んで座り、正面にエドワルドを真ん中にしてハロルド達も並んで座った。
「突然のことですまんな」
ゼノキア侯爵は真面目な顔で3人に謝罪する。
「いえ、驚きましたが問題はありません」
エドワルドはそう答えると相手の出方を窺う。
「お主たちがヤドラスへの調査を陛下に進言した時に反対したのは、間違っていなかったと儂は思っている。疑いだけで強引に調査を王家が命じるのは、私は良くないと思っている。それを許しては王家の暴走を助長する可能性もある。そしてありもしない進言をして、混乱を狙うような貴族も出てくるだろう」
ゼノキア侯爵は何の前置きもなく話し始めた。ハロルド達はやはり今回の塩会議で、最大の障害にゼノキア侯爵がなるのではと思った。
「そして塩の問題は今や国の懸念事項になっている。正直これほど塩の値段が上がることで、私も困っているのも事実じゃ!」
何となくゼノキア侯爵の話が、予想と違う方向に進んでいると3人も感じ始める。
「そこで秘かに隣国を調査させたのだが、隣国ではここ数年は塩の値段に変化はない。そうなると隣国の思惑か隣国の窓口の貴族の思惑、そして我が国の窓口の貴族のどれかが、塩の値段を高騰させていると考えられる」
3人は最初からヤドラスを疑っており、ヤドラスを調査すればすぐに解決できると考えていた。だからヤドラスを調査する方法を一所懸命考えていたのである。しかし、ゼノキア侯爵は隣国を調査することで、じっくりと原因を探ろうとしていたのである。
「それでゼノキア侯爵はどの辺が一番怪しいと考えているのですか?」
カークがさらに突っ込んだ質問をする。
「隣国で調べた内容と我が国に来ている隣国の外交官を調べた限りでは、国として何かしているとは思えない。怪しいのは隣国の窓口の貴族と我が国の窓口の貴族が手を組んでいると考えている。それ以外には価格を操作することは難しいはずだ」
3人はなるほどと感心する。
「だから今ある情報を含めて塩会議でヤドラスを追求する。できればもっと証拠を固めたかったのだが、これ以上は国内の疲弊が堪えられそうにない。少し無理押しになるが3人にも協力して欲しい」
ゼノキア侯爵の提案を聞いて3人は顔を合わせる。聞いた話では間違いなくゼノキア侯爵はこちら側である。しかし、たった今、話を聞いただけで判断するのは難しい。
「最初からヤドラスを調査していれば、そんな面倒なことをしないで済んだのではないかのぉ」
ハロルドが嫌味を言う。実はハロルドとゼノキア侯爵は昔から仲が悪かったのだ。勢いで好き勝手に進めるハロルドを、ゼノキア侯爵が諌めて行動を制限することが多かったのだ。
「ふん、お前はいつもそうやって暴走するから、止めないと何をしでかすか分からぬではないか! いつも尋問と言っては拷問をするし、将軍のくせに先頭に立って戦うし、カークもそのことは良く知っておるだろう?」
ゼノキア侯爵の話にカークだけでなくエドワルドも頷いていた。それを見てハロルドは目を見開いて驚いき、納得できないと顔に出る。
「ふ、ふんっ、儂らはすでに計画が出来上がっているのじゃ。陛下にも協力をお願いしておる。お主のような爺には教えてやらんのじゃ!」
ハロルドは子供の喧嘩のような口調でゼノキア侯爵に文句を言う。
「わははは、どうせお前のことだから、力押しで事を進めるのじゃろ。なんじゃ、ヤドラスに兵でも向けて騒乱でも起こすのか? それにお前も爺になっているではないか!」
「な、なにをぉ! この肉体を見よ。全盛期より儂は強くなっているのじゃ!」
ハロルドは立ち上がって腕の筋肉を見せつける。
「「止めてください!」」
余りにも子供じみた言い合いにカービン伯爵とカークが大きな声で止める。エドワルドは溜息を付いて話した。
「昔から2人が揃うとすぐにこれだ……。ハロルド、お前も少しは成長しろ! 自重が大事だと言ったのはお前ではないか!」
「そうじゃ、お前は自重を覚えるのだ!」
「ゼノキア侯爵もいい加減にしてください! せっかく国を変えるような計画を考えたのに、ゼノキア侯爵には教えませんよ!」
エドワルドは疲れた顔をしながら2人に注意する。
「ほほう、エドワルドも絡んでいるのなら、それなりに筋の通った計画のようじゃな。国の為になるなら儂は全面的に協力するぞ」
すでに貴族間の話し合いの場というより、昔からの仲間の言い合いになっていた。
「ハロルド、ゼノキア侯爵は堅物で小煩いが、国のことを真摯に考える人だ。どうせ後で話は伝わるし、協力を仰いだほうが私は良いと思う。計画を説明するぞ!」
「ふん、仕方ないのぉ。その代わり計画を聞いたら先程のことを謝罪してもらうのじゃ!」
(((謝罪かよ!)))
喧嘩を始めた2人以外は、そこは裏切るなと言うところだと思うのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
ハロルドでは冷静に説明できないのでカークが説明し、エドワルドが質問に答える形で計画の話をした。
「まさかそんなことが……」
カービン伯爵はカークの説明を聞いて驚いていた。国内で塩が手に入るのだ。それだけで国で一番の懸念事項が一気に解消されるのである。ゼノキア侯爵は腕を組み、目を閉じて考え込んでいる。そして徐に目を開けるとエドワルドに質問した。
「それは永続的に手に入るのか?」
「現状ではまだわかりません。しかし、すでに国の必要な塩の1年分以上が採取できています」
エドワルドがそう答えるとハロルドが補足する。
「採取量は未だに減ってはいないのじゃ。それに王領のダンジョンにも塩が採れそうな場所がある。そこでも採取できるか調査をお願いしておる」
「ふむ、永続的に採取できるのかどうかは、国としては重要なことだ。だが今回の塩会議にはそれだけあれば強力な武器になる!」
ゼノキア侯爵は冷静にアタルと同じような事を考えていた。一時的に塩が手に入るだけではその場しのぎでしかないことをよく理解しているのだ。そしてその事を同じようにハロルドが考えて次の手を打っていることにも驚いていた。
「それで、その塩を武器に交渉しようと言うのか?」
「いえ、本来であればヤドラス子爵は、隣国の貴族と徹底した値段交渉をして我々に値段を伝えるだけのはずです。塩が手に入ったからといって簡単に値下げをできるとは思えません」
ゼノキア侯爵の質問にカークは含みのある笑顔で答える。
「ふふふっ、意地の悪い話だな、そこで値下げをヤドラスが簡単に言い出せば、それこそ思う壺とということじゃな?」
ゼノキア侯爵も含みのある笑顔で答える。
「そこなんですがねぇ、今年は備蓄した塩でやり過ごすと言って、一切買わないつもりなんですよ」
カークの返答にカービン伯爵は驚いたが、ゼノキア侯爵は更に考えてから話し始めた。
「塩が手に入ることは隠して、やせ我慢すると見せかけるのじゃな。そうすればヤドラスは困って色々と動き出すということか?」
「さすがゼノキア侯爵ですなぁ。侯爵ならその後にヤドラスがどのように動き出すか想像もつくのではありませんか?」
「ほう、すでにそこも罠を張る作戦ができているようじゃのぉ」
「「はははは」」
カークとゼノキア侯爵のやり取りを聞いて、エドワルドはこの2人の方が悪人ではないかと心配になる。
「その罠も含めてじっくりと話しを聞かしてもらおうかのぉ」
ハロルドはいつの間にか話に参加できなくなっていた。悪辣な計略はこの2人にはかなわないと思っていたのだ。
健康ドリンクを飲んで引き続き話し合いを続けることになった。明日にはヤドラス子爵もグラスニカに来る予定である。それまでに話し合いを終わらせようとしたのである。
すでに日を跨いでいたが、この分だと朝までかかりそうだとみんな考えていた。
「突然のことですまんな」
ゼノキア侯爵は真面目な顔で3人に謝罪する。
「いえ、驚きましたが問題はありません」
エドワルドはそう答えると相手の出方を窺う。
「お主たちがヤドラスへの調査を陛下に進言した時に反対したのは、間違っていなかったと儂は思っている。疑いだけで強引に調査を王家が命じるのは、私は良くないと思っている。それを許しては王家の暴走を助長する可能性もある。そしてありもしない進言をして、混乱を狙うような貴族も出てくるだろう」
ゼノキア侯爵は何の前置きもなく話し始めた。ハロルド達はやはり今回の塩会議で、最大の障害にゼノキア侯爵がなるのではと思った。
「そして塩の問題は今や国の懸念事項になっている。正直これほど塩の値段が上がることで、私も困っているのも事実じゃ!」
何となくゼノキア侯爵の話が、予想と違う方向に進んでいると3人も感じ始める。
「そこで秘かに隣国を調査させたのだが、隣国ではここ数年は塩の値段に変化はない。そうなると隣国の思惑か隣国の窓口の貴族の思惑、そして我が国の窓口の貴族のどれかが、塩の値段を高騰させていると考えられる」
3人は最初からヤドラスを疑っており、ヤドラスを調査すればすぐに解決できると考えていた。だからヤドラスを調査する方法を一所懸命考えていたのである。しかし、ゼノキア侯爵は隣国を調査することで、じっくりと原因を探ろうとしていたのである。
「それでゼノキア侯爵はどの辺が一番怪しいと考えているのですか?」
カークがさらに突っ込んだ質問をする。
「隣国で調べた内容と我が国に来ている隣国の外交官を調べた限りでは、国として何かしているとは思えない。怪しいのは隣国の窓口の貴族と我が国の窓口の貴族が手を組んでいると考えている。それ以外には価格を操作することは難しいはずだ」
3人はなるほどと感心する。
「だから今ある情報を含めて塩会議でヤドラスを追求する。できればもっと証拠を固めたかったのだが、これ以上は国内の疲弊が堪えられそうにない。少し無理押しになるが3人にも協力して欲しい」
ゼノキア侯爵の提案を聞いて3人は顔を合わせる。聞いた話では間違いなくゼノキア侯爵はこちら側である。しかし、たった今、話を聞いただけで判断するのは難しい。
「最初からヤドラスを調査していれば、そんな面倒なことをしないで済んだのではないかのぉ」
ハロルドが嫌味を言う。実はハロルドとゼノキア侯爵は昔から仲が悪かったのだ。勢いで好き勝手に進めるハロルドを、ゼノキア侯爵が諌めて行動を制限することが多かったのだ。
「ふん、お前はいつもそうやって暴走するから、止めないと何をしでかすか分からぬではないか! いつも尋問と言っては拷問をするし、将軍のくせに先頭に立って戦うし、カークもそのことは良く知っておるだろう?」
ゼノキア侯爵の話にカークだけでなくエドワルドも頷いていた。それを見てハロルドは目を見開いて驚いき、納得できないと顔に出る。
「ふ、ふんっ、儂らはすでに計画が出来上がっているのじゃ。陛下にも協力をお願いしておる。お主のような爺には教えてやらんのじゃ!」
ハロルドは子供の喧嘩のような口調でゼノキア侯爵に文句を言う。
「わははは、どうせお前のことだから、力押しで事を進めるのじゃろ。なんじゃ、ヤドラスに兵でも向けて騒乱でも起こすのか? それにお前も爺になっているではないか!」
「な、なにをぉ! この肉体を見よ。全盛期より儂は強くなっているのじゃ!」
ハロルドは立ち上がって腕の筋肉を見せつける。
「「止めてください!」」
余りにも子供じみた言い合いにカービン伯爵とカークが大きな声で止める。エドワルドは溜息を付いて話した。
「昔から2人が揃うとすぐにこれだ……。ハロルド、お前も少しは成長しろ! 自重が大事だと言ったのはお前ではないか!」
「そうじゃ、お前は自重を覚えるのだ!」
「ゼノキア侯爵もいい加減にしてください! せっかく国を変えるような計画を考えたのに、ゼノキア侯爵には教えませんよ!」
エドワルドは疲れた顔をしながら2人に注意する。
「ほほう、エドワルドも絡んでいるのなら、それなりに筋の通った計画のようじゃな。国の為になるなら儂は全面的に協力するぞ」
すでに貴族間の話し合いの場というより、昔からの仲間の言い合いになっていた。
「ハロルド、ゼノキア侯爵は堅物で小煩いが、国のことを真摯に考える人だ。どうせ後で話は伝わるし、協力を仰いだほうが私は良いと思う。計画を説明するぞ!」
「ふん、仕方ないのぉ。その代わり計画を聞いたら先程のことを謝罪してもらうのじゃ!」
(((謝罪かよ!)))
喧嘩を始めた2人以外は、そこは裏切るなと言うところだと思うのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
ハロルドでは冷静に説明できないのでカークが説明し、エドワルドが質問に答える形で計画の話をした。
「まさかそんなことが……」
カービン伯爵はカークの説明を聞いて驚いていた。国内で塩が手に入るのだ。それだけで国で一番の懸念事項が一気に解消されるのである。ゼノキア侯爵は腕を組み、目を閉じて考え込んでいる。そして徐に目を開けるとエドワルドに質問した。
「それは永続的に手に入るのか?」
「現状ではまだわかりません。しかし、すでに国の必要な塩の1年分以上が採取できています」
エドワルドがそう答えるとハロルドが補足する。
「採取量は未だに減ってはいないのじゃ。それに王領のダンジョンにも塩が採れそうな場所がある。そこでも採取できるか調査をお願いしておる」
「ふむ、永続的に採取できるのかどうかは、国としては重要なことだ。だが今回の塩会議にはそれだけあれば強力な武器になる!」
ゼノキア侯爵は冷静にアタルと同じような事を考えていた。一時的に塩が手に入るだけではその場しのぎでしかないことをよく理解しているのだ。そしてその事を同じようにハロルドが考えて次の手を打っていることにも驚いていた。
「それで、その塩を武器に交渉しようと言うのか?」
「いえ、本来であればヤドラス子爵は、隣国の貴族と徹底した値段交渉をして我々に値段を伝えるだけのはずです。塩が手に入ったからといって簡単に値下げをできるとは思えません」
ゼノキア侯爵の質問にカークは含みのある笑顔で答える。
「ふふふっ、意地の悪い話だな、そこで値下げをヤドラスが簡単に言い出せば、それこそ思う壺とということじゃな?」
ゼノキア侯爵も含みのある笑顔で答える。
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カークの返答にカービン伯爵は驚いたが、ゼノキア侯爵は更に考えてから話し始めた。
「塩が手に入ることは隠して、やせ我慢すると見せかけるのじゃな。そうすればヤドラスは困って色々と動き出すということか?」
「さすがゼノキア侯爵ですなぁ。侯爵ならその後にヤドラスがどのように動き出すか想像もつくのではありませんか?」
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「「はははは」」
カークとゼノキア侯爵のやり取りを聞いて、エドワルドはこの2人の方が悪人ではないかと心配になる。
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