スマートシステムで異世界革命

小川悟

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第6章 塩会議

第11話 意外と優秀?パート3

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冒険者ギルドのギルドマスターのイザークが、兵士たちに連行されているのを3人は見送る。

「しかし、本当に冒険者ギルドは組織ぐるみで不正をしているようだな……」

そう話したのはグラスニカ侯爵のエドワルドだ。

「我が領でもやっていそうだな。だが、自白させるのも強引に調査に入るのも難しいだろうな……」

エイブル伯爵のカークは遠い目をしながら呟くように話した。

「領地によって不正の仕方が違うのぉ。それに奴は王都の冒険者ギルドには、この地では誤魔化すのが難しいと報告して、自分の取り分を確保していたようだのぉ」

ハロルドはイザークの自白を聞いて、不正の金額や割合、方法が違うことに気が付いた。確かにダンジョンのあるエルマイスター領と、冒険者の仕事がほとんど護衛のグラスニカ領では同じようにはできないと思うのだった。

イザークは涙を流しながら素直に自白した。
不正の証拠を消すように王都から指示があったのだが、イザークは処分することに抵抗があったようで、個人的に証拠を隠していたらしい。

直ぐに兵士が押収したのだが、エルマイスター領ほどの証拠はなかった。不正の書類は彼の任期の分と、2つほど前のギルドマスターの証拠しかなかったのだ。

それでも複数の冒険者ギルドで不正の証拠が手に入ったので、今後の対応が大きく変わるだろう。

「しかし、襲撃については本当に知らなかったようだな。イザークも言っていたが、極秘任務だったのだろう」

エドワルドは複雑な表情で話した。
ハロルドが脅かしたことで、冒険者ギルドの不正の証拠は押さえることができた。しかし、元々の容疑は無罪だったのである。家族まで捕縛してハロルド式尋問をしなくて良かったと胸を撫で下ろした。

「あやうく冤罪で拷問をするとこでしたなぁ」

カークもホッとした表情をする。

「何を言ってるのじゃ!? これはよくやる脅しではないか。カークはよく一緒に同じことをしたではないか!」

ハロルドの説明にカークは口を開いて驚いていた。そして思い出したように話す。

「まさか戦場でやっていた、あの方法だったんですか!?」

「当り前じゃ! 今回は怪しいだけで何も証拠がない。だからよく戦場で使ったあの方法を使ったまでじゃ。お前もそれを分かっていて、うまいこと脅してくれたのではないのか?」

「あぁ~!」

カークは頭を抱えて、声を上げる。

「どういうことだ、あれは作戦だったのか!?」

エドワルドが2人のやり取りを見て、驚いて尋ねた。

「すみません。戦場ではよくあの手は使ったんです。頭の良い役人なんかは、あの手を使うとぺらぺらとなんでも話すんで」

「本当か! ハロルドがそんなことできるのか!?」

「エドワルド、それはいくらなんでも失礼だろう!」

ハロルドが渋い顔をしてエドワルドに文句を言う。

「でもハロルド殿、やる前は事前に役割を決めていたじゃないですかぁ」

「そんな時間などなかったじゃろう。明らかに何か隠していると分かったから強引に始めただけじゃ!」

「ハロルド、頼むから私の領では自重してくれ。領主が無暗に権力を振るったら、それこそ国が荒れるのだ」

エドワルドが疲れた表情でハロルドに頼み込む。

「本当に失礼な奴じゃ! だから言っておるじゃろう。儂は自重するように説教しながら移動してきたのじゃ。あやつに比べれば儂など可愛いものよ」

「ま、まて、一緒にそいつが来てるのか!? お前が説教するくらいの大馬鹿が一緒だと!」

ハロルドは焦るエドワルドが楽しいのか笑顔で答える。

「おう、そいつが自重を忘れたら、この町は焼け野原になるかのぉ。襲撃を監視していたタルボットとか言う奴を脅すために、奴の居た丘を吹き飛ばしてしまったぐらいじゃ」

エドワルドはどこまで信じて良いか分からなかった。しかし、ハロルドが自重するように話すぐらいの大馬鹿だということはわかった。

「それを早く言え! すぐにそいつを監視させる!」

「ガハハハッ、大丈夫じゃ。襲われないかぎり、暴走はしないじゃろ!」

ハロルドの話にエドワルドとカークは疲れた表情を見せる。

「もう今日は疲れた。ハロルドの話は明日聞くとしよう……」

「そうしてくれると助かります。久しぶりに『クレイジーオーガ』の片鱗を見て、戦場に行っていたことを思い出して疲れました……」

「そうか、明日はもっと驚く事になるぞ。ワハハハ!」

エドワルドとカークはジト目でハロルドを睨むのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


翌朝、テク魔車で朝食を子供たちと一緒に食べる。

結局、昨晩はハロルド様から特に連絡もなかった。提供された宿舎の寝室を見て、すぐにテク魔車に戻った。私がそうすると他の人達に伝えると、全員がテク魔車に戻ってしまった。兵士が交代で宿舎に残ることになったのだが、なぜか罰ゲーム扱いだった。

夜、暗くなってから、襲撃者を護送してきたテク魔車はストレージに戻したおいた。

朝食を食べていると、ハロルド様が宿舎に戻ってきて話があるという先触れがきた。急いで食事を済ませると、クレアと二人で宿舎に移動する。

私が宿舎の中に入ると兵士が慌てたように近づいてくる。何か焦ったような感じで、真剣な表情で尋ねてくる。

「アタル様、襲撃者を護送したテク魔車を片付けましたか!?」

「ええ、必要ないと思って片付けました。何か使う予定がありましたか。それならまた出しますが?」

あからさまに兵士はホッとした表情をする。後ろにいる兵士たちも同様のようだ。

「お願いです。そういうことは事前にお話しください! たぶんそんなことだと思っていましたが、盗まれたら大変なことになります!」

え~と、使用者制限もあるから盗めないと思うけどぉ。それに……。

「何事じゃ?」

ハロルド様が宿舎にちょうど来たようだ。兵士が簡単に事情を説明すると、私はハロルド様に会議室に連行されるのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


何故か朝から説教モードのハロルド様が目の前にいる。

「アタル、私は自重しろと言ったと思うがのぉ」

目を細めてハロルド様が話し始める。

「いや、その、使わないなら邪魔かなと思いまして……」

「そうかぁ、それはご苦労じゃったのぉ。
しかしじゃ、兵士がテク魔車やウマーレムを盗まれないように警備していると思わなかったのか?」

「う~ん、使用者制限もあるし、重量を考えても盗めないと思ったのかなぁ……」

言い訳にもならない理由を答える。私は盗まれるなんて全く考えていなかったのだ。だからその辺に置いた荷物を片付ける感覚で収納してしまった。

「確かに簡単には盗めぬのぉ。
しかしじゃ、あれほど目立ったら、よからぬ考えをする輩がでる可能性もあるじゃろ。そして盗めないとわかって破壊する馬鹿が居るかもしれん。兵士がそれに備えるのは当然じゃろ?」

「す、すみません!」

内心ではそれなら余計に片付けて良かったと言いたいが、せめて兵士には伝えておくべきだった。

「それにグラスニカの兵士も領主も、テク魔車の数を把握しておるのじゃ。それが急になくなったら、それこそ手の内がバレてしまうではないか!」

な、なるほどぉ。その考えは全くなかったぁ!

「それにじゃ、あれほどのテク魔車が盗まれるのではなく、買収された兵士に持ち去られたらどうするのじゃ!」

なんかハロルド様の後ろにいるサバルさんも頷いている。

いやいや、サバルさんや兵士は盗まないでしょ……だ、だよね?

「あっ、それは大丈夫です。遠隔でも使用者制限は解除できますし、テク魔車やウマーレムの位置は私には分かるようになっていますから!」

当然地図クラウドと情報の共有をしているのだから、テク魔車やウマーレムの位置情報も共有されている。今は私だけが簡単に確認できるのだ。

あれ、貴重な魔道具にも位置情報の共有を導入しておけば盗まれても安心なのか?

うん、これは早めに導入しよう!

「儂はそんな話は初めて聞いたのぉ。
しかしじゃ、取り返すまでに壊されたり、調べられたりしたらどうするのじゃ!」

「あっ、それも大丈夫です! 遠隔で魔方陣を書き換えれば、跡形もなく破壊することもできます。……あれ、でもテク魔車やウマーレムで使っている魔砂の量を考えると、この前の丘ぐらいなら簡単に消失してしまう可能性もあるのかなぁ……」

ハロルド様の額に青筋が……。サバルさんの顔色も悪くなっている。

「アタルゥゥゥ! 絶対に町中でそんなことするんじゃないぞ!」

もちろん、そんなことはやりませんからぁ!

しかし、ハロルド様の説教が暫く続くことになるのであった。
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