スマートシステムで異世界革命

小川悟

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第6章 塩会議

第9話 友人との再会

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グラスニカ領の領都に到着したが、何やら揉めているようだ。

私は説教のためにハロルド様の馬車に乗っていたので、ハロルド様に報告が上がってくるので状況がわかった。

先触れが領都の門に先行したが、ウマーレムにグラスニカの兵士が混乱してまずは騒ぎになった。何とか先触れがエルマイスターの騎士だと説明したが、一行が追い付いてしまい騒ぎが大きくなる。

ようやくグラスニカの騎士団が門に到着してなんとか落ち着いた。しかし、途中で襲撃にあったことを伝えると、また騒ぎが大きくなった。

グラスニカ領内でエルマイスター辺境伯が襲われたのである。
それに襲撃者が捕縛されていて、その尋問をしたいと伝えると、グラスニカの騎士団でも判断ができず、領主の判断を仰ぐことになった。

それから随分と待たされていると、グラスニカ侯爵が直接やってきた。そしてエルマイスター一行を見て騒ぎ出してしまった。

ハロルド様がテク魔車から出て挨拶したようだが、それからが大変だったようである。ウマーレムに感動して、テク魔車の中を見せろと言い出し、襲撃の話どころでなくなったようだ。

取り敢えずグラスニカ侯爵の屋敷で話をすることになったのだが、テク魔車に乗せろと侯爵が騒ぎだし、秘密も多いので断った。しかし、侯爵は納得しないので、最終的にウマーレムの後ろに乗って移動することになったのだ。

すでに町中から住民たちが騒ぎを聞きつけ集まっていた。そこにグラスニカ領主とハロルド様がウマーレムで移動を始めたのである。

なんかのパレードみたいじゃん!

テク魔車内から町中の様子を見ていると、次々と人が集まっていた。

調子に乗ったハロルド様とグラスニカ侯爵は楽しそうに住民に手を振っていた。


   ◇   ◇   ◇   ◇


グラスニカ侯爵の屋敷に行くと思っていたが、兵舎と思われる場所に到着した。目立ちたくない俺はサバルさんと一緒にテク魔車から降りると、すぐに自分達のテク魔車に戻る。

サバルさんが襲撃者を客車型テク魔車から降ろすと、グラスニカの兵士に引き渡していた。

そしてさらに移動して家に案内される。

「ここは貴族用の宿舎です。往来の激しい領地ですので貴族の護衛や従者用の宿舎です。ハロルド様は侯爵様のお屋敷に泊まりますが、こちらでも泊まれるように部屋は用意されています」

クレアは何度も来たことがあるのか知っているようだ。

中に入ると綺麗な応接室やリビング、会議室まである。しかし、宿泊用の部屋は従者や護衛用の簡素な造りが多い。2階には貴族やその家族用の部屋があるらしい。

こんな宿舎まで用意してあるのはエルマイスター領とは全く違って来客が多いのだろう。今回の塩会議なども開くぐらいである。しかし、………。

「これならテク魔車のほうが居心地は良いかなぁ」

何気に本音が漏れてしまった。しかし、一緒に降りてきた兵士や公的ギルドの職員たちも頷いている。

「ミュウもテク魔車が良い~!」
「キティもぉ~!」

うん、私もそっちの方が良いかなぁ。

後でハロルド様に確認してみようと考えるのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


ハロルドはグラスニカ侯爵と侯爵の屋敷に到着した。2頭のウマーレムの後ろに2人が乗って、2騎の護衛がウマーレムで帯同していた。

屋敷に到着するとハロルドは護衛の2名には宿舎に行くように指示する。

「エルマイスター領の噂は色々聞いていたが、あれを見ると噂は本当だったようだな」

グラスニカ侯爵は走り去るウマーレムを見てハロルドに尋ねるように話した。

「エドワルドの言っている噂が何か知らんが、色々珍しいことが起きているのは事実じゃのぉ」

ハロルドはグラスニカ侯爵をエドワルドと呼び捨てにしていた。
侯爵は爵位としては辺境伯より上だとか同格と言われている。しかし、それとは関係なく歳が1歳だけ上のハロルドとエドワルドは、昔からの友人でもあったので呼び捨てでお互いを呼び合っていた。

「それで、私やカークにいつもより早く集まるように連絡してきたのか?」

カークはグラスニカを挟んだ反対側のエイブル伯爵の名前である。
エイブル伯爵は2人から5歳くらい若いが、ハロルドが将軍をしていた時の軍師だったこともある。何かと3人は仲が良かったので2人はカークも呼び捨てにしていた。

「まあ、それもあるが他にも色々とな……」

「詳細は中で聞こう。カークも昨日到着している」

ハロルドは頷くとエドワルドについて屋敷の中に入っていくのである。


   ◇   ◇   ◇   ◇


ハロルドは大きなリビングに案内される。そこには自宅のように寛ぐ男がいた。男はハロルド達が部屋の中に入ってくると、立ち上がろうとせずに話しかけてきた。

「クレイジーオーガを襲った馬鹿共は生きていますかぁ?」

男はからかうようにハロルド達に尋ねる。

「ワハハハ、全員生きて捕らえてあるぞぉ!」

ハロルドも笑いながら平然と答える。

「それは、それは、本人達は殺された方が良かったでしょうなぁ」

「どうじゃカーク、久しぶりに一緒に尋問するか?」

男はエイブル伯爵のカークだった。彼は同情するように襲撃者の行く末を心配している。今度はハロルドがからかうようにカークに尋問に誘う。

「勘弁してください。ハロルド殿の尋問に参加したら、暫く食事が喉を通らなくなります」

カークは戦争の時のハロルド思い出したのか、嫌そうな顔で答えた。

「カーク、それほど単純な話ではないぞ。襲撃者は30人以上の現役の冒険者だ!」

2人の会話にエドワルドが割込み襲撃者の人数を教える。

「なんと! それは失礼を言いました。護衛は大丈夫でしたか!?」

カークはそれこそ数名から多くても10人以下の盗賊に襲われたと思っていたのである。30人以上の冒険者となれば盗賊とは思えない。そして撃退できたとしても被害があると考えた。

カークは慌てて立ち上がって深刻な表情で尋ねる。

「おう、怪我人などおらぬわ!」

ハロルドが自慢気に答える。

「それは……」

カークはそれだけ答えるのが精一杯だった。
30人の現役の冒険者となれば軍隊と同じである。それを無傷で討伐するのではなく捕らえたとなると、いくらハロルドやエルマイスター家の兵士が強くても理解できないのである。

それはエドワルドも同じ考えだった。
実際に捕縛された連中を見ていなければ、ハロルドが自慢するために大げさに話したと思っただろう。
それに確かに護衛の兵士たちに怪我人は居なかった。それどころか楽しそうに尋問の話をしていたぐらいだったのだ。

「ハロルド、詳しく話してくれ。正直、理解できないことが多すぎる!」

エドワルドがハロルドにそう話すと、カークも頷くのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


ハロルドはリビングでお茶を飲みながら2人に説明をした。アタルの技術的なことをある程度秘密にして話したので、嘘くさい話になってしまった。

しかし、2人はハロルドが何か隠していることに気付いて、今は起きた事実だけで話を進めることにする。

「襲撃者は間違いなく冒険者なのだな?」

エドワルドはもう一度確認のためにハロルドに尋ねる。

「間違いない。冒険者ギルドのギルドカードも押収してある。移動中に尋問したのだが、ぺらぺらとなんでも答えてくれたようだ。全然尋問などできなかったと兵士が嘆いておったわ!」

それは違うと2人は思っていた。
尋問とは質問して答えさせることで、無理やり聞き出すのは拷問だと言いたかった。しかし、ハロルドのことをよく知る2人は何も言い返さなかった。

そして彼らがなぜそんなことをしたのか、思い当たることをハロルドに尋ねる。

ハロルドは冒険者ギルドとエルマイスター家との間であったことや、冒険者ギルドの不正やその証拠を手に入れたことを簡潔に説明した。

「冒険者たちはキルティとかいう冒険者の手下のようじゃ。冒険者ギルドのサブマスターは襲撃には参加していないが、計画の立案には参加しておったらしい。しかし、彼らの自供だけでサブマスターのタルボットという奴を問い詰めるのは難しそうじゃのぉ」

ハロルドは残念そうに話しながらも、たいして気にしていなかった。すでに冒険者ギルドは敵対者になったという事実だけで十分だったのである。

「確かにそうだが、我が領内で冒険者が集団で辺境伯《ハロルド》を襲撃したのだ。これを簡単に見逃すわけことはできん。おい、冒険者ギルドのギルドマスターにすぐにこちらに来るように連絡しろ!」

エドワルドとしても自領内でハロルドが襲われたのである。面子は丸つぶれであった。襲撃された貴族によっては、責任を追及されても反論できない状況だった。

エドワルドの命令に執事が返事をして部屋を出ていく。

「時間的にも夕食の時間だ。夕食を食べながらギルドマスターの到着を待つことにしよう」

エドワルドの提案にハロルドとカークは頷くと一緒に食堂に移動するのであった。
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