スマートシステムで異世界革命

小川悟

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第5章 公的ギルド

閑話9 神々の文化交流④

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脳筋神々《かれら》が地球の拠点の1室で目を開くと満面の笑みの地球の主神様が目の前にいた。

「あらあらぁ~、ようこそ地球にいらしゃ~い!」

予想外の出迎えに、脳筋神々《かれら》は何が起きたのか理解できず固まっていた。

「もおぅ、こんなに固くなっちゃってぇ~。折角会いに来てくれたんだから、笑顔を見せてよぉ~」

地球の主神様は戦の神の胸を、人差し指でくねくねと胸筋を確認するようにしながら話した。

「ち、地球の主神様、今回はどうされたのですか?」

戦の神は地球の主神様が、自分の胸を弄ることを止めさせることもできずに、なされるがままで尋ねる。

「あらぁ? 聞いていなかったのぉ。今日、私がここに訪問すると連絡していたはずなんだけどぉ」

その答えを聞いて脳筋神々《かれら》は嵌められたと思った。
いつも脳筋神々《かれら》は文化交流に意味がないと、文化交流に参加を後回しにされてきた。しかし、今回は『第2回新文化交流隊』という早期の順番になったのである。

『第1回新文化交流隊』は拠点の整備を優先していた。
だから、実質的には新しい文化交流の1番目とも考えられる順番だったことに、脳筋神々《われら》は大いに盛り上がったのである。

「ふふふっ、楽しい文化交流になりそうねぇ~。じゅるりん」

地球の主神様が戦の神の顎に手をかけ、目を合わせながら話し、最後に長い舌で自分の唇を舐めたのである。

それを見た脳筋神々《かれら》は、地球の文化に毒された女神たちにセクハラだと騒がれていることを思い出していた。

(((立場を利用して嫌がることはダメ! 絶対にしてはダメ)))

心の中で弱い相手に、嫌がることをしていた自分達の行いが走馬灯のように浮かんでは消えていた。

すると部屋の中心が光り輝き、光の女神たちが姿を現した。

「「「光の女神!」」」

縋るような思いで脳筋神々《かれら》は叫んだ!

「こっちでは光子と呼ぶのよ!」

青筋を浮かせて光子が激怒して叫んだ。脳筋神々《かれら》はその剣幕に驚いていた。

そんな脳筋神々《かれら》を無視して地球の主神様に丁寧に挨拶する。

「地球の主神様、本日は新文化交流の拠点にお越しいただきまして、ありがとうございます。本日は文化交流と地球の主神様の歓迎会を兼ねて、森樹《しんじゅ》(森の女神)と農《みのり》(農業の女神)が地球で育てた食材を使った料理で、宴会を開きたいと思います。最大のおもてなしをします。お楽しみください!」

「あらあら、嬉しいわぁ~。そちらの世界(ノバ)の料理を堪能できるのねぇ」

「はい、今回は世界(ノバ)の料理と、両方の文化を取り入れた料理をお出ししようと思います。ただ、まだ文化交流を始めたばかりなので、料理の交流はまだ中途半端だと思います。なので地球の主神様のご意見をお聞きしたいと思います」

「ふふふっ、任せなさい。これでも私は料理が得意なのよぉ」

いつの間にか戦の神は地球の主神様と腕を組んでいて、会話する地球の主神様は戦の神の肩に頭を乗せていた。

光子と地球の主神様のやり取りを見て、戦の神以外はホッとした表情になる。そして戦の神を犠牲にして自分達は助かると思ったのである。

「では、準備できるまでは脳筋神々《かれら》とお風呂で汗でもお流しください」

光子のその一言で脳筋神々《かれら》に緊張が走る。

「あらあらあらあらぁ~、素敵な提案ねぇ。じっくりとお互いを知るには裸の付き合いは大切様ねぇ! お互いに洗いっこして交流を深めましょうね、あ・な・た。ふふふ」

戦の神は予想外の文化交流に心の中で号泣するのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


大広間で宴会が始まった。

「「「かんぱーーーい」」」

暑苦しい雰囲気がなくなり、さっぱりとした脳筋神々《かれら》が元気に乾杯すると、一気にビールを喉に流し込む。

「プハァーーー! やっぱり地球のビールは全然違いますなぁ!」

「そうよぉ~、それにビールの種類も沢山あるのよぉ。文化交流でノバの地ビールを造ってちょうだいね」

戦の神は開き直っていた。風呂では体の隅々まで洗われたのだ。
今晩だけ我慢すれば明日からは好きにできる。今日だけは精一杯地球の主神様を歓迎することにしたのだ。

他の脳筋神々《かれら》も同じように考えていた。

そして、そんな状況を悩まし気に見つめる萌《はじめ》(権能の神)がいた。さらに萌《はじめ》を心配そうに叡一《えいいち》(叡智の神様)と商《しょう》(商売の神)が見つめていた。

「は、早めに話を聞かないと、近隣のご当地アイドルを確認に行けなくなるよ?」

そう萌《はじめ》に尋ねたのは、商《しょう》だった。

「私と萌《はじめ》は早めに戻ることになっている。時間は貴重だぞ!」

追い打ちをかけるように話したのは叡一《えいいち》である。

「わかっている。今から話してくる!」

萌《はじめ》は震える手を握り締めて、ご当地アイドルの為に勇気を振り絞って立ち上がると、地球の主神様の所に向かっていく。

「地球の主神様、お楽しみのところをよろしいでしょうか?」

必死に震える声を抑え、萌《はじめ》は地球の主神様に話しかけた。

「あらぁ、こういうタイプも居たのねぇ~。知的で厳格な感じで自分の本性を隠すタイプねぇ。こういう子は殻を破ると実は凄いのよぉ~。じゅるり」

萌《はじめ》は地球の主神様の雰囲気に飲まれそうになる。
しかし、彼の頭にはたくさんのご当地アイドルのデータが浮かび上がらせて、何とか堪えることができた。

「少し確認したいことありまして、地球の主神様のお話が聞ければと考えています。できればお時間をいただけないでしょうか?」

「ダメよ!」

地球の主神様が真面目な顔になり、ここまで拒絶すると萌《はじめ》は思っていなかった。残念だが仕方ないと諦める。

「こんなに楽しい時間に真面目な話なんかできないわよねぇ~」

地球の主神様は戦の神に抱き着きながらそう言った。

「その通りだぞ、野暮なことを言うんじゃない!」

戦の神も今の状況に順応し始めて、地球の主神様に抱き着かれても嫌そうな表情をせずに言う。

「そういう、お・は・な・し・は、宴会後にじっくりと私の部屋でするものよぉ。後でお部屋にいらっしゃいね」

まるで捕食者の眼光で萌《はじめ》をみながら、地球の主神様は怪しい笑顔を見せながらそういうのであった。

全身から危険を知らせる警告音がなっていたが、ご当地アイドルのためと決心を固めて返事をする。

「それでは後で部屋へ訪問いたします」

「待ってるわねぇ~」

自分の席に戻る萌《はじめ》を、脳筋神々《かれら》は勇者を見るような視線を送るのであった。

席に戻った萌《はじめ》を、尊敬するように見つめる叡一《えいいち》と商《しょう》に目を合わせると萌《はじめ》言った。

「お前達も一緒に来るんだぞ!」

萌《はじめ》は自分一人で行く勇気などなかったのだ。

光子が地球の主神の席に挨拶にやってきた。

「地球の主神様、お味はどうでした?」

「まだまだねぇ。素材は驚くほど美味しいけど、それが生かしきれてないわね。両方の世界の料理の融合も上手くできていないわよぉ~。でも、期待の持てる内容だったわぁ」

「やはりそうですか。今度は料理の女神を連れてきます。その時はまた教えてください」

「任せてよぉ。私も楽しんでいるから大丈夫よ。明日からの彼らとの文化交流も楽しみにしているのよぉ」

地球の主神様は脳筋神々《かれら》を見回しながら答えた。

「光《ひかり》、光子、どういうことだ!?」

戦の神だけでなく、脳筋神々《かれら》も光子の返答に集中する。

「あら、各自の部屋に今回の文化交流の予定表を置いといたはずよ。地球の主神様は武術や戦術、武器や兵器について博識でもあるわ。だから、それらの訓練や知識、視察にも地球の主神様がご協力くださるのよ」

脳筋神々《かれら》は誰も予定表など見ていなかったのである。

「任せてねぇ。朝の訓練後は一緒のお風呂よぉ~!」

「「「お、おぉ~」」」

作り笑顔で返事する、脳筋神々《かれら》であった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


歓迎会も終わった地球の主神様の部屋に例の3人が訪問した。

「あらあら、3種盛りオードブルが用意されたのねぇ」

地球の主神様の発言に、3人はお願いだから自分達を食べないで欲しいと願うのであった。

「それで、お話とは何かしら?」

「今回我々の世界に転生したアタルのことです。彼はなにか我々の知らない力があるのではないでしょうか?」

長居したくない萌《はじめ》は単刀直入に質問する。

「あら、それはどういうことかしら?」

いつもの陽気な雰囲気が消えて、地球の主神様は真顔で聞き返してきた。

「我々の世界のシステムを一瞬で理解して、私や眷属よりも簡単に効率的な神のシステムを創り上げたのです。
彼が下界に行ってからも驚きの連続です。特に特殊なスキルがあるわけでもないのに、あの能力は不自然ではないでしょうか?」

「あら、気が付いたのね。そうよ、彼は地球でも特殊な能力を発揮していたわよ。そうでなきゃ、たった一人で次々とシステムなど構築できるはずがないのよ。まるで完成形が見えているかのような出来栄えでね」

「しかし、それなら我々の世界でスキルとして認識できるはずです!」

「それは無理よぉ。存在しないスキルは認識できるはずないでしょ」

地球の主神様の話を聞いて、神である自分達にも理解できないスキルが存在することに萌《はじめ》は驚く。

「なぜそのような力を彼は……?」

「私も分からないわ」

地球の主神様でも分からない。それは自分達にも理解できないということだ。

「まあ、気にしても仕方ないわねぇ。神々《わたしたち》は見守るしかできないのだからねぇ」

それ以上聞いても仕方ないと判断して、捕食される前に逃げるように自分達の部屋に戻るのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


3人が部屋から出ていくと、地球の主神の隣には白い髭を生やした老人が姿を現した。

「ホッホホホ、ようやく自分達で考えられるようになったようじゃのぉ」

「ノバ様、あとで私が嫌われないようにしてくださいよぉ」

「もちろんじゃ。神々もアタルもこれからが楽しみになってきたのぉ」

「だったら、男神に部屋に連れ込んでもよろしいかしらぁ?」

「ホッホホホ、儂は自由恋愛主義じゃ。セクハラはダメじゃぞ」

「大丈夫よぉ。すでに体を開きかけている男神がいるからねぇ」

「ホッホホホ」

最後に笑うと、ノバの主神はまた姿を消すのであった。
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