スマートシステムで異世界革命

小川悟

文字の大きさ
上 下
124 / 224
第5章 公的ギルド

第25話 ルーナとイーナ

しおりを挟む
「キジェンはこの階層で大丈夫なのか?」

女性冒険者に意識を向けないようにするために、キジェンに質問する。

「アタルさん、それは失礼だろぉ」

キジェンは心外だと言う表情で文句を言う。

「失礼でもないだろ。俺達は7層より上で活動するんだからよぉ」

ダルトがキジェンをからかうように言った。

「それでも、ここを拠点にするんだから一緒だろ!」

相変わらず2人は文句を言いながらも仲が良さそうだ。

「まあ、怪我しないようにしてくれよ。孤児院の子供たちが心配するからな」

「あっ、その事で言いたいことがあるんだ。なんで俺達は孤児院へ行けないんだよぉ」

そういえば、まだ大賢者区画は解放していないから、公的ギルドのギルドカードを持っていないと入れないのだ。

「そ。そうですよ。俺なんか兵士に捕まって怖かったんですよ!」

キジェン達より若い、鹿獣人の冒険者が文句を言い出した。

「ハハハハ、マルコはフォミに惚れているからな。フォミが成人したから口説こうと町に戻ると必ず会いに行っていたからなぁ」

ダルトがからかうようにマルコと呼ばれた鹿獣人の背中をバシバシ叩いていた。

「ち、違いますよぉ~、孤児院の子は全員弟か妹のようなものですよぉ~」

「ほう、だったら嫁にはしないんだよなぁ。わはははは」

マルコはダルトを恨めしそうに見つめている。

ほう、青春しているなぁ。

「でも、この前フォミに会った時にアタルさんの嫁になると言い張ってたぞ!」

キジェン君、それは余計な発言だよ!

マルコが俺を睨みつけている。

「いや、孤児院にいる小さな子供まで、アタルさんの嫁になると言っていたぞ。何度も尻尾や耳を触られたから、絶対だと言っていたなぁ」

ダルト君、小さな子供だけだからね。

そこに予想外の参戦が入ってきた。

「子供でもませてる子は気にしますし、上の子から尻尾は特別だと言われているから、触り過ぎると良くないわね」

「そうそう、尻尾を触る人は自分のことを好きだと思うんだよねぇ」

「意識し始めて、本当に好きになりやすいんだよねぇ」

「だから、子供相手でも触るのは良くないですよ」

女性冒険者の獣人族がからかうように私を見ながら話し始めた。最後に話したウサギ獣人の女の子は顔を真っ赤にしている。

くっ、そこまでは知らなかった。

あの巨乳バニーちゃんに嫌われたようだ。可愛い子なのに……。

すると女性冒険者のひとりが立ち上がってこちらに歩いて来る。

「私は冒険者のルーナと言います。先日、奥様のクレアさまに良くして頂きました」

やはり、クレアから連絡のあった女性冒険者たちのようだ。

「初めまして、私はアタルと言います。先日は妻や雇っている子達がお世話になったようですね。妻のクレアから話は聞いています」

「えっ、ダンジョンでクレアさんと話を?」

あっ、不味いかなぁ~。

「公的ギルド経由で手紙が届いたのよ」

レベッカ夫人がフォローしてくれた。確かに買取所があるくらいだから、連絡手段があっても不思議ではないはずだ。

「もしかして、もうひとりの奥様のラナさんですか?」

ルーナさんが尋ねてきた。

「いいえ、私はエルマイスター家のレベッカよ」

レベッカ夫人が答えると、ルーナさんは驚いた顔をした後に頭を下げて慌てて謝罪を始めた。

「も、申し訳ありません。領主様の関係者で貴族のお方とは気が付きませんでした。どうかお許しください」

他の女性冒険者も顔色を変えている。キジェンやダルトも焦った表情をしている。

「わ、悪いのは俺です。レベッカ様のことを先に紹介するべきでした。お、お叱りは俺にお願いします」

おっ、キジェンも男らしい所があるじゃん。

でも、それほど気を使うことはないと思うけど。

「いえ、失礼な事を言ったのはこちらのお嬢さんだから、責任を取るのは貴女よね?」

「はい、もちろんです。ですが、他の仲間はお許しください」

あれっ、なんでそんな話になっているの?

「ダメね。確かあなたには可愛い妹さんがいたはずよね?」

「お、お待ちください、妹は、」

「私が妹のイーナです。どんな罰でも受けるから姉をお許しください!」

「イーナ、下がりなさい!」

なんでこんなことになっているの?

レベッカ夫人、バニーちゃんを苛めないでぇ~。

「あなたにはアタルさんのお嫁さんになってもらうわ!」

何ですとぉーーー!

レベッカ夫人を見ると悪戯っぽく笑っている。

ルーナさんは固まり、イーナさんは俺を見た後に顔を真っ赤にしている。

目も赤いから、完全に真っ赤にして、可愛いなぁ~。

「また、アタルさんの毒牙の犠牲者が!」

キジェン君、それは失礼な発言だよぉ。

「ふふふっ、冗談よ。クレアに聞いた通り、アタルさん好みの女性だったから、ちょっとからかってみただけよ」

いやいや、やり過ぎだよぉ。

「レベッカ夫人!」

「あら、好みじゃなかった?」

好みだけど、ちがーーーう!

「そ、そういう問題じゃないですよぉ。立場を考えてみて下さい!」

「う~ん、確かにそれはそうなんだけど、……ルーナさん、私はそんなに怖いかなぁ?」

ルーナさんは困った顔をして答える。

「夫人は優しそうな方ですが、王都では貴族に失礼な事をすると、その場で殺されることもありますから……」

「なによ、それは! そんな奴は殺しちゃいなさい!」

いやいや、そんな事はできないから……。

この世界の事はまだ良く分からないけど、ダメな気がするぅ~。

「みんな気にしないようにねぇ。レベッカ夫人は冗談好きの変り者だから諦めてくださ~い」

場を和ませるために冗談っぽく大きな声で話す。

「アタル、ちょっと待ちなさい。失礼なのは貴方じゃない! 私は貴方が獣人を好きみたいだから、きっかけを作ってあげたんじゃない!」

いやいや、昨日危険だと言ったのは貴方じゃないですかぁ!

「さ、最近結婚したばかりの私が、すぐに別の女性に何かするわけないですよぉ」

「あら、動揺しているから、やっぱり彼女に興味があるのね。ふふふっ」

ふふふっ、じゃなーーーい!

「もしかして、私をからかうために先程のような冗談を言ったんですか?」

「ふふふっ」

ふふふっ、じゃなーーーーーい!

「みんな気にしないでね。レベッカ夫人はこんな感じで冗談が好きな親しみやすい人だから、大丈夫ですよぉ」

私は大丈夫じゃないけどね……。

「ルーナさんとイーナさんだったわね。巻き込んでごめんなさいねぇ。クレアから子供たちがイーナさんをアタルの好みの女性だと言ってたみたいだから、アタルをからかちゃった。てへっ」

くっ、人で遊ぶんじゃなーーーい!

「あっ、いえ、大丈夫です。でも、……レベッカ様は優しくて魅力的な方だと分かりました」

よ、良かったぁ。私のせいで迷惑かけたと思ったよぉ。

「それに、アタルさんはイーナの好みだと思います!」

「お、お姉ちゃん!」

「あら、あらあら、これは楽しそうな感じじゃないかしら」

なぜかレベッカ夫人が質の悪いおばちゃんに見えてきたぁ!

「イーナは男の人が恐いんです。王都では獣人だから恐い目にもあったから。アタルさんはクレアさんの旦那様と聞いてもっと強そうな感じの人かと思ったけど、正反対な感じでイーナ好みだと思います!」

「お、お姉ちゃん……」

思わずイーナさんと目が合ったら、また顔を真っ赤にして俯いてしまった。

可愛いなぁ……、ちがーーーう!

「あらぁ、あらあらあらぁ、楽しくなってきたわぁ」

レベッカ夫人、あなたは何がしたいんだぁ!

それに、ルーナさんが強そうな人の正反対と言ったけど……。

それって弱そうな人ということでしょうかぁ?

気になる事もあるが、取り敢えず私は悪くないと思う。
しおりを挟む

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 

★☆ 書籍化したこちらもヨロシク! ☆★

★☆★☆★☆ 『転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。』 ☆★☆★☆★

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 



ツギクルバナー
感想 154

あなたにおすすめの小説

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...