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第5章 公的ギルド
第13話 想定外の状況
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「ぜ、全員武器を捨てろ! 絶対に逆らうんじゃない!」
レンドは駆け引きどころではないと考え、まずはエルマイスター家と事を構えないようにしようとする。
「お待ちください、私達の間違いでした。すべて指示に従いますので穏便にお願いします!」
レンドは騎士に向かって頭を下げる。冒険者たちも慌てたように武器を放り出した。
「おいおい、なんか勘違いしていないか? 我が領の兵士は丁寧な対応したのに、難癖を付けてきたのはそちらだろう?」
「も、申し訳ありません!」
レンドには謝罪するしかできなかった。
この騎士とやり合うより、グランドマスターから聞いた、丸くなったと言われるエルマイスター家の領主であるハロルドと話し合おうと思ったのである。
「それで、そいつは未だに武器を捨てていないが、覚悟はできているんだな?」
信じられない展開に、武器を捨てることも忘れていたゼヘトは、言われてから自分が武器を持ったまま立っていたことに気付いて、慌てて武器を放り出す。
「ゼヘト、あれほどグランドマスターからエルマイスター家と関係改善に努めろと言われたのに、お前は何をやっているんだ!」
「す、すまない……」
すでにゼヘトは真っ青な顔になり震えていた。
レンドもゼヘトを庇うことなど考えていなかった。それどころかすべてをゼヘトの責任としてエルマイスター家に突き出しても構わないとさえ思っていた。
他のギルド職員や冒険者も問題を起こしたゼヘトに非難めいた顔を向けていた。
緊迫した雰囲気にギルド職員の子供で12歳ぐらいの少女が泣き始める。
「ちょうどあのくらいの少女を冒険者が剣で切ったんだよ。それも私と領主のハロルド様の目の前でな!」
それを聞いて冒険者ギルド一行の全員が驚いた。
冒険者とギルド職員はそんな話は聞いていなかった。ただ、前任のギルドマスター達が問題を起こして解任されたとしか聞いていなかったのだ。
レンドとゼヘトも報告は受けていたが書類で読んだだけであり、グランドマスターからは少しでも相手の弱みを見付けて穏便に済ませろと命令されていたのである。
報告書で領主や騎士団長、それに数名の兵士の目前で起きた事件だと書かれていた。
「本当に申し訳ありません。冒険者ギルドでも確認して被害のあった少女にもしっかりと賠償させて頂きます!」
報告には被害にあったのは孤児院の少女で、ポーションによる治療で助かったと書かれていた。レンドは調査という言葉は危険だと感じて、確認という表現で話した。
「それだけじゃないぞ! ギルドマスターが王都から連れてきた冒険者たちは、我が領で暴行や脅迫をしていた。先日もダンジョン内で、女性騎士を襲って返り討ちにあったばかりだ!」
信じられない話に、一行はうな垂れるしかなかった。
レンドも女性騎士を襲った話は初めて聞いた。
そして、信頼回復など非常に難しいと思った。そして、この状況でゼヘトのとった行動は最悪と言えるものだった。
(あそこでゼヘトは送り返すべきだった!)
「これが最後の忠告だ! 冒険者ギルドであろうと、領の方針には従ってもらう!」
「了解しました。全員兵士の指示に従って審査を受けて下さい!」
冒険者もギルド職員も頷いている。
「早速あんた達から審査を受けてくれ」
「わかりました。その前に騎士様のお名前を聞いて宜しいでしょうか?」
レンドはこの騎士は危険だと判断して、今後は他の者にも警戒するように指示するために名前を尋ねた。
「私はエルマイスター領の騎士団長でアランだ」
もしかして騎士団長ではないかとレンドは考えていた。最悪の相手と交渉しようとしたようだ。
グランドマスターからは領主のハロルドより、騎士団長のアランのほうが危険だと忠告されていたのである。
領主のハロルドは、将軍を辞めてから大人しくなったと、王都では言われていた。その代わりに、ハロルドの副官として一緒に戦争にも参加していたアランは、一番危険だと思われていたのである。報告書にも冒険者の首を刎ねたと書かれていた。
「それは失礼しました。騎士団長のアラン様と知らずに無礼な事を言ってしまいました。これから注意しますので、よろしくお願いします」
しかし、アランからは返事もしてもらえなかった。代わりに変な道具を指差してアランは命令する。
「この魔道具に手を置け」
見たことのない魔道具にレンドは手を置くのを躊躇して質問する。
「す、すみません。こんな魔道具は見たことがありません。これはどんな魔道具なんでしょうか?」
もしかして叱られるかと思ったが、アランは笑顔で答えてくれる。
「嘘を確認する魔道具だよ。犯罪をしていればすぐに分かるぞ。フハハハ!」
そんな魔道具があると聞いたことはない。アランの笑いから冗談を言っている可能性も考える。
「そんな魔道具は聞いたことがありません。本当なら私にも確認をさせて頂けないでしょうか?」
「ダメだ! エルマイスター家の極秘事項だ。それより早く手を置け」
これ以上はまたトラブルになると思い、素直に魔道具に手を置く。
「ふむ、本当にギルドマスターなんだな……、犯罪の称号は無いようだな…」
アランは魔道具ではなく、その上の何もない空間を見ながら呟いていた。
(本当に? 犯罪の称号!?)
レンドはアランの呟きを聞いて驚く。
(鑑定の魔法と同じなのか!?)
レンドは資料で鑑定の魔法を極めると、犯罪などの称号が確認できると聞いたことがあった。しかし、それを確認できるような魔道具が存在するなど、聞いたこともなかった。
感心していたが、すぐにゼヘトが魔道具に手を置くのを見て不安に駆られる。
(ゼヘトは大丈夫なのか!?)
しかし、アランは少し残念そうな表情をして呟いた。
「てっきり犯罪歴があるかと思ったけどなぁ……」
レンドはその呟きを聞いてホッとする。
しかし、次々と魔道具に手を置くギルド職員を見るたびに不安になる。
今回はエルマイスター家との関係を改善することを優先したために、真面目なギルド職員を連れてきていた。結果的に最良の選択だったとホッとする。
しかし、最後のギルド職員を見て動揺する。彼は裏ギルド職員と呼ばれる内密の調査や非合法活動する職員である。
グランドマスターから今回の調査の為に派遣されてきたのである。
ゼヘトにすら彼のことは知らせていない。
彼は表情を変えることなく魔道具に手を置いた。
「ほう、本当に冒険者ギルドに彼のような存在が居るのだな」
アランは楽しそうに微笑みながら彼を見つめて話した。
レンドはアランが話した時に、彼も一瞬頬が引きつったように見えた。
「町に入る許可は出すが、余計なことして捕まるようなことはするなよ」
(あの魔道具は鑑定の魔道具と同じ!?)
しかし、レンドは鑑定の魔法で嘘が分かるなんて聞いたことがなかった。そして所属先まで分かるのは信じられなかった。
そして最終的に冒険者の中で3人が奥に連れて行かれてしまった。
レンドがアランに質問する。
「あの3人はどうなるのでしょうか?」
「あいつらは殺人の称号持ちだ。尋問することになるが解放されることはないだろう。それに2人は彼の関係者みたいだな」
アランは裏ギルド職員を指差して話す。
レンドは自分が知らない裏ギルド職員が居ることに驚いていた。そしてアランが自分の様子を窺って反応を見ていたことに気付く。
(もしかして非常に危うい状況なのでは!?)
殺人を犯したのが裏ギルド職員だとすると、ギルドマスターであるレンドは、自分も拘束されるのではないかと不安になる。
しかし、アランはそれ以上追及せずにレンド達を通した。
エルマイスター領の冒険者ギルドでギルドマスターをすることの大変さと、グランドマスターから依頼された任務の難しさを感じながら、レンド達は冒険者ギルドへ向かうのだった。
レンドは駆け引きどころではないと考え、まずはエルマイスター家と事を構えないようにしようとする。
「お待ちください、私達の間違いでした。すべて指示に従いますので穏便にお願いします!」
レンドは騎士に向かって頭を下げる。冒険者たちも慌てたように武器を放り出した。
「おいおい、なんか勘違いしていないか? 我が領の兵士は丁寧な対応したのに、難癖を付けてきたのはそちらだろう?」
「も、申し訳ありません!」
レンドには謝罪するしかできなかった。
この騎士とやり合うより、グランドマスターから聞いた、丸くなったと言われるエルマイスター家の領主であるハロルドと話し合おうと思ったのである。
「それで、そいつは未だに武器を捨てていないが、覚悟はできているんだな?」
信じられない展開に、武器を捨てることも忘れていたゼヘトは、言われてから自分が武器を持ったまま立っていたことに気付いて、慌てて武器を放り出す。
「ゼヘト、あれほどグランドマスターからエルマイスター家と関係改善に努めろと言われたのに、お前は何をやっているんだ!」
「す、すまない……」
すでにゼヘトは真っ青な顔になり震えていた。
レンドもゼヘトを庇うことなど考えていなかった。それどころかすべてをゼヘトの責任としてエルマイスター家に突き出しても構わないとさえ思っていた。
他のギルド職員や冒険者も問題を起こしたゼヘトに非難めいた顔を向けていた。
緊迫した雰囲気にギルド職員の子供で12歳ぐらいの少女が泣き始める。
「ちょうどあのくらいの少女を冒険者が剣で切ったんだよ。それも私と領主のハロルド様の目の前でな!」
それを聞いて冒険者ギルド一行の全員が驚いた。
冒険者とギルド職員はそんな話は聞いていなかった。ただ、前任のギルドマスター達が問題を起こして解任されたとしか聞いていなかったのだ。
レンドとゼヘトも報告は受けていたが書類で読んだだけであり、グランドマスターからは少しでも相手の弱みを見付けて穏便に済ませろと命令されていたのである。
報告書で領主や騎士団長、それに数名の兵士の目前で起きた事件だと書かれていた。
「本当に申し訳ありません。冒険者ギルドでも確認して被害のあった少女にもしっかりと賠償させて頂きます!」
報告には被害にあったのは孤児院の少女で、ポーションによる治療で助かったと書かれていた。レンドは調査という言葉は危険だと感じて、確認という表現で話した。
「それだけじゃないぞ! ギルドマスターが王都から連れてきた冒険者たちは、我が領で暴行や脅迫をしていた。先日もダンジョン内で、女性騎士を襲って返り討ちにあったばかりだ!」
信じられない話に、一行はうな垂れるしかなかった。
レンドも女性騎士を襲った話は初めて聞いた。
そして、信頼回復など非常に難しいと思った。そして、この状況でゼヘトのとった行動は最悪と言えるものだった。
(あそこでゼヘトは送り返すべきだった!)
「これが最後の忠告だ! 冒険者ギルドであろうと、領の方針には従ってもらう!」
「了解しました。全員兵士の指示に従って審査を受けて下さい!」
冒険者もギルド職員も頷いている。
「早速あんた達から審査を受けてくれ」
「わかりました。その前に騎士様のお名前を聞いて宜しいでしょうか?」
レンドはこの騎士は危険だと判断して、今後は他の者にも警戒するように指示するために名前を尋ねた。
「私はエルマイスター領の騎士団長でアランだ」
もしかして騎士団長ではないかとレンドは考えていた。最悪の相手と交渉しようとしたようだ。
グランドマスターからは領主のハロルドより、騎士団長のアランのほうが危険だと忠告されていたのである。
領主のハロルドは、将軍を辞めてから大人しくなったと、王都では言われていた。その代わりに、ハロルドの副官として一緒に戦争にも参加していたアランは、一番危険だと思われていたのである。報告書にも冒険者の首を刎ねたと書かれていた。
「それは失礼しました。騎士団長のアラン様と知らずに無礼な事を言ってしまいました。これから注意しますので、よろしくお願いします」
しかし、アランからは返事もしてもらえなかった。代わりに変な道具を指差してアランは命令する。
「この魔道具に手を置け」
見たことのない魔道具にレンドは手を置くのを躊躇して質問する。
「す、すみません。こんな魔道具は見たことがありません。これはどんな魔道具なんでしょうか?」
もしかして叱られるかと思ったが、アランは笑顔で答えてくれる。
「嘘を確認する魔道具だよ。犯罪をしていればすぐに分かるぞ。フハハハ!」
そんな魔道具があると聞いたことはない。アランの笑いから冗談を言っている可能性も考える。
「そんな魔道具は聞いたことがありません。本当なら私にも確認をさせて頂けないでしょうか?」
「ダメだ! エルマイスター家の極秘事項だ。それより早く手を置け」
これ以上はまたトラブルになると思い、素直に魔道具に手を置く。
「ふむ、本当にギルドマスターなんだな……、犯罪の称号は無いようだな…」
アランは魔道具ではなく、その上の何もない空間を見ながら呟いていた。
(本当に? 犯罪の称号!?)
レンドはアランの呟きを聞いて驚く。
(鑑定の魔法と同じなのか!?)
レンドは資料で鑑定の魔法を極めると、犯罪などの称号が確認できると聞いたことがあった。しかし、それを確認できるような魔道具が存在するなど、聞いたこともなかった。
感心していたが、すぐにゼヘトが魔道具に手を置くのを見て不安に駆られる。
(ゼヘトは大丈夫なのか!?)
しかし、アランは少し残念そうな表情をして呟いた。
「てっきり犯罪歴があるかと思ったけどなぁ……」
レンドはその呟きを聞いてホッとする。
しかし、次々と魔道具に手を置くギルド職員を見るたびに不安になる。
今回はエルマイスター家との関係を改善することを優先したために、真面目なギルド職員を連れてきていた。結果的に最良の選択だったとホッとする。
しかし、最後のギルド職員を見て動揺する。彼は裏ギルド職員と呼ばれる内密の調査や非合法活動する職員である。
グランドマスターから今回の調査の為に派遣されてきたのである。
ゼヘトにすら彼のことは知らせていない。
彼は表情を変えることなく魔道具に手を置いた。
「ほう、本当に冒険者ギルドに彼のような存在が居るのだな」
アランは楽しそうに微笑みながら彼を見つめて話した。
レンドはアランが話した時に、彼も一瞬頬が引きつったように見えた。
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(あの魔道具は鑑定の魔道具と同じ!?)
しかし、レンドは鑑定の魔法で嘘が分かるなんて聞いたことがなかった。そして所属先まで分かるのは信じられなかった。
そして最終的に冒険者の中で3人が奥に連れて行かれてしまった。
レンドがアランに質問する。
「あの3人はどうなるのでしょうか?」
「あいつらは殺人の称号持ちだ。尋問することになるが解放されることはないだろう。それに2人は彼の関係者みたいだな」
アランは裏ギルド職員を指差して話す。
レンドは自分が知らない裏ギルド職員が居ることに驚いていた。そしてアランが自分の様子を窺って反応を見ていたことに気付く。
(もしかして非常に危うい状況なのでは!?)
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しかし、アランはそれ以上追及せずにレンド達を通した。
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