スマートシステムで異世界革命

小川悟

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第5章 公的ギルド

第5話 生産しましょう

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レベッカ夫人との話し合いの結論が出たので解散となった。

クレアはダンジョンでの護衛や訓練の反省、今後の計画をすると言って兵舎に向かい、ラナはレベッカ夫人とセバスさんに話があると言って、エルマイスター家の屋敷に行ってしまった。

私は自分が鬼畜ハーレムルートを選択したのではないかと不安になり、考えないように生産活動に集中するのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


最初に取り組んだのは公的ギルドカードの改造だ。

魔法溶液10でICチップ型に固めたものを作り『魔石ICチップ』と命名する。これをベースに公的ギルドカードを作ることで、飛躍的にギルドカードの性能が向上する。

魔石ICチップに蓄積できる魔力も増え、機能(魔法陣)や情報量も向上し、セキュリティも万全な基本システム端末となった。

魔石ICチップには、ステータスなどの個人情報を扱うことをメインとして、一般のカードは魔石ICチップだけ使ったギルドカードにする。

これまでのギルドカードをバージョン1.00として、魔石ICチップを使ったギルドカードをバージョン2.00とした。

さらに魔石ICチップの4倍の大きさで作った物を『魔石ROM』と命名する。

魔石ROMにスマートシステムの端末に近い機能を持たせるものを、『魔石ROM-S』と命名する。

魔石ROM-Sはスマートシステムのメインメニューの表示や魔石ICチップ、追加の魔石ROMとの連携機能が基本となる。

追加の魔石ROMに、様々なのスマートシステムの機能を選択して登録できるようする。

魔石ROM-Sと魔石ICチップ、追加の魔石ROMの組み合わせることで、スマートシステムの簡易端末に近い機能を持たせることに成功する。

そして魔石ROM-Sと魔石ICチップ、追加で3個の魔石ROMをスライム溶液でカード化させたものをプレミアム公的ギルドカードとする。


さらに特化型として魔石ROM-Tシリーズも作る。
特化型はその業務に必要な機能(魔法陣)だけ登録したもので、探索ギルドや商店ギルドなどに合わせた魔石ROM-Tと魔石ICチップだけでカード化したものになる。

例えば探索ギルドカード用魔石ROM-T1は亜空間経由で公的ギルドに送る機能や緊急通報、HP、MPの視覚内表示など利用できる。

商店ギルドカード用魔石ROM-T2は帳簿や在庫管理、公的ギルドへの発注など利用できる。

そして、それらに合わせてギルドカード発行用の魔道具も作り直す。
現状では特化型の発行はしないが、機能の追加や変更、バージョンアップも出来るようにする。

間違いなくやり過ぎだと自分でも分かっているので、公的ギルドカードで使用できる機能はすべて現状と同じにして、必要に応じて解除できるようにする。

ギルドカードについて書類をまとめて、ハロルド様とセバスさんに書類を送っておく。

ふふふっ、事前連絡は完璧だ! これで文句は言われないだろう。

次は汎用型魔力バッテリーの開発だ!


   ◇   ◇   ◇   ◇


魔道具の持ち運び用にボタン魔石を考えていたのだが、性能的に魔石ICチップや魔石ROMで問題無いと考え、ボタン魔石については保留とする。

塩抽出魔導ポンプ1号で使った、魔砂で魔力を補給するタイプの汎用型を考える。

まずは500mlのペットボトルサイズで試作する。
一度作った事もあるので、少しサイズが小さくなったが問題なく完成した。

これを『魔力バッテリー』と命名して、魔石ICチップを内蔵して設置型の魔道具用とする。

さらに小型化にも挑戦する。
最小サイズは単二電池と同じぐらいだった。これを『単二魔力バッテリー』と命名し、持ち運べる魔道具で魔力が多く必要な場合に利用することをする。

試しにテントの支柱に単二魔力バッテリー設置して魔力補給を試してみる。魔力に余裕があるので結界も強力にして、さらに安全なテントにすることができた。

魔法溶液10でどれほどの事ができるか試してみる。
自分の身長と同じぐらいの高さの、柱のようなものを魔法溶液10で作り。魔力の補給には単二魔力バッテリーを取付た。

何に使おうかと考え、同じものを合計で3柱作って記憶領域にすることにした。2柱でも良かったが3柱のほうが倒れにくいと考えたのである。この柱に魔石ROMを設置して、3つの柱に同じ情報を記録して、情報の紛失に備える。

この柱は地下の魔力スポットに設置して、『大賢者クラウド』と名付ける。

これで大賢者屋敷の情報量は飛躍的に増やせるだろう。写真や動画などをハウスシステムから登録、閲覧できるようにする。

ここまで完成すれば、今まで懸案事項になっていた問題は一気に解決するだろう。

やはり魔力補給と記憶領域の確保が問題で、これまでハロルド様に頼まれても対処できなかったことも可能となるはずだ。

問題はやはり恒久的に魔砂が補給できるかということなんだよなぁ。


   ◇   ◇   ◇   ◇


その日の夕食は、メアベルさんの顔をまともに見る事が出来なかった。

そして食事中も食事後もラナとクレアが何か揉めていた。

聞いていない振りして所々聞こえた話をまとめると、今晩の私の相手を譲り合っているみたいだ。

クレアはダンジョン調査で何度か私の相手をしたので譲りたいと言い、ラナは2日続けては大変だからと言っているようだった。

やはり少し控えないとダメだと反省する。

結局はラナが2日続けて私の相手をすることになり、私はラナに相談する。

「大変なら我慢するよ」

できるだけ普通に話す。

「旦那様、違います! 今は大丈夫なんです。でも、これがずっと続くとなると不安で……。私も自分がこれほど旦那様を求めることになるとは……」

あっ、もしかして!?

ラナのステータスを確認すると、称号欄に神々の加護があり、それを開くと生命の女神の祝福とあった。

これってサキュバスフラグじゃね?

さしずめ私はインキュバスと言うところかぁ。

「旦那様、レベッカ様をお相手しても、私を……、ウングッ」

自分でレベッカ夫人を薦めておきながら、嫉妬して興奮するとは……。

こっちの自重はできそうにないです!

それどころかレベッカ夫人とのことを考えて、いつも以上に頑張ってしまいました。


   ◇   ◇   ◇   ◇


翌日から、私は生産に集中することで、生命の女神の加護インキュバスフラグに抗う事にした。

暫くは生産活動を続ける為に、午前中はスライムや木材、石材の調達に奔走する。
午後からは公的ギルドの地下に『公的クラウド』設置して、さらにすべての魔道具をバージョンアップさせていく。

さらに公的ギルドの建物を拡張して、探索ギルドや商人ギルド、平民ギルドのスペースを確保する。

ハロルド様に要求された、中央役所も全面的に改修して、地下には『役所クラウド』を設置する。

紙ベースであった事務仕事を、役所システムを構築して効率化を図る。役所システムは地球での経験が最も役だった気がする。

作業の前日に作業内容やシステムについて、書類だけハロルド様達に送ったのだが、やり過ぎだと叱られた。

しかし、書類を画面で確認でき、検索や表計算の便利さを知ると何も言われなくなった。

すでに潜り込んでいた密偵は、領内の村に配置換えしてあったので、情報が漏れることは無い。

ダンジョンから戻って10日しか過ぎていないが、領都プレイルは日々進化し続けたのである。


   ◇   ◇   ◇   ◇


明日からまたダンジョンに行くことになり、夜にハロルド様と食事する。

食事をしながらハロルド様は話し始めた。

「レベッカが一緒にダンジョンに行くことになったが頼むぞ」

なぜかレベッカ夫人も今回のダンジョンについて来ることになった。

「それは第7部隊のみなさんに言ってください。私は守ってもらう立場ですから」

今回はカルアさんとブリッサさんは一緒に行くが、クレアは残って第7部隊の管理と教育をするので一緒には行動しない。

今まで護衛をしてくれたカルアさんと4人の護衛は、そのままダンジョンに常駐することになり、帰りはブリッサさんが護衛してくれることになっている。

「それでもアタルが一緒ならレベッカも心強いはずじゃ頼むぞ!」

「わ、わかりました」

すでにレベッカさんは夜のローテーションに組み込まれている。もちろんハロルド様も知っているはずだ。

それも含めてのお願いなんだろう……。

サキュバスレベッカと一緒なのは私が一番心配だよぉ。

レベッカ夫人はやはりサキュバス属性(生命の女神の祝福)を持っていた。これはたぶん天然物の加護だと思う。

「それと明日には、王都から冒険者ギルドの新しいギルドマスターが来るはずじゃ。相手の出方次第ですぐにも探索ギルドを始めるぞ!」

その話は初めて聞きましたよぉ。

頑張って下さいとしか言えませんがなぁ~。

ダンジョン内で公的ギルドの買取を始めるのは決まっている。

これって、冒険者ギルドにとっては宣戦布告じゃないのかなぁ。

考え始めると不安で、自分の仕事だけ頑張ろうと考えるのであった。
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