スマートシステムで異世界革命

小川悟

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第5章 公的ギルド

第2話 探索ギルド

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ハロルド様とセバスさんは呆れた表情で私を見つめる。

「それは冒険者ギルドと同じような組織を創るということか?」

「はい、そうです!」

私が元気に返事すると、ハロルド様が溜息を付いて話し始める。

「それは無理じゃと思うぞ。冒険者は自由の好きな連中が多いのじゃ。それを役所が冒険者ギルドを始めても、誰も参加などしないじゃろ?」

本当にそうなんだろうか?

「そうですかねぇ。でも、生活の為に冒険者を選んだ人も多いですよね? 特にこの町出身の冒険者で他の町に行かずに、この町に残っているなら、自由より安定を求める気がしますよ。それに自由を大きく制限するつもりはありませんよ?」

「だとしても冒険者ギルドと喧嘩することになるのぉ」

えっ、今さら何を言っているんだ?

「え~と、もう喧嘩していますよね?」

「ククク、その通りでございますなぁ」

すでに冒険者ギルドとは喧嘩していることは聞いている。

「う、うむ、確かにそうじゃが。採算も運営する人材も居らんじゃろ?」

「冒険者ギルドから引き抜けば良いじゃありませんか? この町出身の冒険者ギルドで働いている人なら、安定した職場なら転職する人も多くなるのではありませんか?」

「それは間違いありません。先日の一件で冒険者ギルドを辞めたくても、生活の為に我慢して働いている人がいると、ハロルド様が嘆いていましたから」

セバスさんは冷静に判断して答えてくれる。

「じゃ、じゃが、採算が取れるとは……」

ハロルド様は納得できない様子だ。

「その辺は大丈夫ですよ」

そう話すとダンジョンで考えた事を説明する。

・ダンジョンは公的ギルドが管理する
・出入りも管理する(魔道具で犯罪者も確認)
・公的ギルドに加入しなくても利用可(差別化はする)
・数階層ごとに出張所を用意する(買取&宿泊&食事)
・10層の出張所で秘かに塩の採取をする
・10層は騎士団の常駐もする?

「こんな感じで探索ギルドを創れば、探索ギルドで活動する人もいると思いますし、今まで捨てていたものを売れて生活も良くなるし、探索ギルドがそれを売れば採算は確実に黒字になると思いますよ」

ハロルド様は、まだ納得できないのか顔色が浮かない。

「ついでに商店ギルドや職人ギルド、農業ギルドも作ったらどうですか? さらに住人用の一般ギルドとか平民ギルドとか作って、税金はギルドカードからの自動徴収にすれば効率的ですよね?
ああ、そうか塩の販売とかは公的ギルド経由にするとか、ダンジョン産の物資も公的ギルドで販売すれば、組織が同じだから無駄もなくなりますよ」

話しながらアイデアが次々と思いつく。
役所のシステムや大企業のシステム開発をしたときに、色々なノウハウも勉強したので、それらを参考にしてアイデアが思い浮かぶ。

まだ、納得できていないのか、ハロルド様の表情が険しい。

「将来的には他の領にも公的ギルドを創って連携させれば、流通も簡単になりますよ。実は郵便システムも考えたんですよ」

ダンジョンで報連相をするために考えたシステムを説明すると、2人は呆然とした表情となり、最後にハロルド様が呟いた。

「すべてのギルドは亡(無)くなるのぉ……」

「はい、領も国も、もしかしたら世界も変わるかもしれません」

どういうこと?

「世界がアタルに平伏すことになるじゃろう……」

なんでそんな話になるぅ~!


   ◇   ◇   ◇   ◇


「冗談はこれぐらいにして、話を進めるかのぉ」

冗談だったんかい!

「急激に色々な事を進めるのは難しいと思います」

セバスさんは普通に話を続けるのね。

「そうじゃのぉ、探索ギルドを創ることは検討してみるとしても、先に塩じゃのう」

「はい、塩が確保できるとなれば、領としても非常に助かりますし、他領の分を確保できれば国としても助かります。それに例の一件も強気に出れます」

例の一件? なんか政治的な臭いがして不穏な感じがする。

「ふむ、……ダンジョンで買い取りができれば、食料問題や資金も助かるのぉ。それに、ほれ、そっちの件もある程度解決できるしのぉ」

そっちの件? なんかわからない話ばかりだ。

「そうで御座いますな。そろそろ、そっちの関係者が領に到着しますし、その前にいくらか人材を引き抜いておくのも宜しいかと」

どっちの関係者だよぉ~!

なんの話をしているか全然わからない。

「アタル、ダンジョン内に施設など作れるのか?」

やっと自分に関係する話だ。

「はい、それも多少検証を進めました。絶対ではありませんが施設を造ることは可能だと思います。それにダンジョン内は魔力が濃いので、様々な魔道具が利用できると思います」

スライム溶液は最強のアイテムだ。ほとんど偶然だが、施設建設の方向性は見えている。

「買取になると、買取のできる人材の確保が必要じゃ。それにダンジョンで働くことも納得させねばなるまい」

「あ~、それについては、人材の確保は必要ですが、ダンジョンに行く必要はありませんよ」

「どうしてじゃ?」

「食堂の食事や、魔道具販売と同じように、素材を受け取ったら公的ギルドに送って買取価格を決めてもらえば大丈夫じゃありませんか? 最終的には収納が無理でも、公的ギルドカードで素材をギルドに送付できるようにしたいと考えています」

また呆れた顔をされてしまう。

「ギルドカードは止めてくれ。それこそ騒ぎになりそうじゃ」

「でも、兵士が間引いた魔物を全て納品できれば、領も助かるのではありませんか?」

「うっ」

「確かにそうですなぁ。当面は騎士団の隊長や副隊長だけでもできれば、相当な収入にもなりますし、町の食料事情も良くなります」

セバスさんも部分的には賛成のようだ。

「まあ、すべてを始めなくても順番にやりましょうか。あまり急ぎ過ぎるのも問題がありますしね」

「ふうぅ、アタルが言うんじゃない! 急ぎ過ぎているのはお主じゃろうが!」

………たしかに。

「どう考えても人材が全く足りませんね。アタル様から女性採用の提案があって進めていますが、さすがにすぐに現場には投入できません」

う~ん、それなら地球で作った社内システムを参考に事務作業を効率化できないかな?

問題なのは魔力の供給や、システムを構築するための巨大な魔石が必要だ。しかし、大量の魔砂が確保できているので、それを活用すれば問題は解決するはずである。

頼まれていた兵舎の問題や役所の改造も含めて一気にやる事も可能なはずだ。

それをハロルド様達に説明すると、また溜息を付かれてしまった。

「先程、急ぎ過ぎるのも問題だと言ったのはアタルだと思うがのぉ」

「ですが、その提案を優先的に進めてもらわないと、人材の問題で行き詰まるのは間違いありません」

「そうじゃのぉ。仕方ないのぉ」

そんな疲れ切った表情で言わなくてもぉ。

それから3人で優先順位を付けて今後の予定を話し合うのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


ハロルド様とセバスさんと話し合いをしている最中に、アタルが想定しないような話し合いが別の場所でされていた。

アタルはそれをすぐに知ることになるだが、大混乱になるのであった。
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