スマートシステムで異世界革命

小川悟

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第3章 大賢者の遺産

第33話 ぽよんがぁ!

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階段から降りて来たラナさんは、自信に満ちた表情で笑顔を見せる。

下着とインナーでこんなにも変わるのかぁ!

さすがに下着で降りて来る事はなかったが、体のラインがスッキリとして別人のようなスタイルに見える。

「「「すごいっ!!!」」」

護衛の女性たちはそう叫ぶとラナさんに駆け寄って行く。

み、見えないじゃん!

群がる女性たちでラナさんの姿が良く見えなくなり、もっと見たいと思う気持ちでイライラする。

「見えなくなった~」

ミュウも残念そうに呟き、キティは悲しそうに尻尾が垂れ下がっている。

残念だが今は諦めるしかない。女性たちがラナさんの事を褒めながら、次々と質問している。

「すごくスタイルが良くなってますよ~。そんなに下着といんなあ?を付けると変わるんですね」

「ええ、着てみて私も驚いたのですが、これまでのコルセットは頑丈に出来ているのですけど、やはりそれ自体の影響で自然なラインが出にくかったんですが、インナーだと厚みもないから、自然なラインが出るのではないでしょうか」

何かラナさんが誇らしげに話している。

「でも、そんなのでウエスト部分がコルセットより細く見えるのぉ。苦しんじゃない?」

「それがコルセットより苦しくありませんね。インナー全体で締め付けているので、締め付けられていることを感じるぐらいですよ。それに、肌触りが良いので、もっと着ていたくなるぐらいですねぇ」

「あとなんで胸がそんなに大きくなったの。どう考えても一回りは大きく見えるけど?」

うん、作った俺も聞いてみたい。

「インナーで胸が持ち上げられている感じですかね。それに胸を左右から押される感じがします。ほら、殿方にアピールするときに、腕で胸を寄せて大きく見せるじゃないですかぁ。それをインナーが常にしてくれていると感じですね」

そんな事を私は考えていないぞ!!!

正確な胸の位置や形が良く分からないから、胸を固定して締め付けながら、胸が大きい人は肩が凝ると聞いたから、支えると言うか持ち上げると言うか……。

とにかくワザとじゃなーーーい!

「「「うらやましい!」」」

何気に私を見て言うんじゃない。

「肌触りがとても良いので、まるでアタル様に優しく抱きしめて貰っている感じですわ。ホホホホッ!」

「「「アタル様に優しく……」」」

そこぉぉぉ、そんな表現をするなぁーーー!

クレアさんが跳び付くように、にじり寄って来る。

「なんで私は抱きしめてくれないのですかぁ?」

抱きしめてないからぁーーー!

「だ、抱きしめていませんから。イ、インナーを作っただけですぅ」

「では私には作ってくれないのですか!」

そんなこと言われてもぉ~。

「つ、作るつもりですよ。ただ、私も初めて作ったので、ラナさんに着心地を確認してから……」

「アタル様の初めて……」

そこぉーーーーー! 表現を考えてくれぇ~。

な、なんで、クレアさんも悔しそうに涙をぉ~!

「それに下着もピッタリで、お尻がキュッとアタル様に持ち上げられた感じなんですよねぇ~」

やめろーーー! 変な風に名前を使わないでぇ~!

「「「お尻を……」」」

くっ、言い訳を考えるんだぁーーー!

「ク、クレアさんは危険の伴う仕事ですから、安全に配慮したインナーを考えようかと。できれば防具や制服もまとめて作ろうかなぁ~と思って……」

「本当ですか!?」

おっ、何とか誤魔化せそうだ。

「も、もちろんです。クレアさんが怪我をしたら悲しいですから」

おお、満面の笑みぃ~。

「私達の分は無いのですか?」

「もちろん、護衛をして下さる皆さんの分も用意しますよ!」

あっ、しまったーーー!

クレアさんがまた悔しそうな表情に。

部下の安全より、独占欲なのかぁ!?

「も、もちろん、隊長のクレアさんは特別製ですけどねぇ」

ほぅ~、な、何とかなったぁ。

クレアさんの機嫌も直り、他の女性たちも嬉しそうにしている。

ラナさんが思惑ありげに微笑んでいるのが怖い!

もしかして、こうなる事を予想して女性たちを煽ったのだろうか?


何とか落ち着きを取り戻し、ラナさんが再びお茶を用意してくれ、テーブルでお茶を飲み始める。

女性たちは下着とインナーの事で盛り上がっているが、私はミュウとキティを膝に乗せ、抱きしめて落ち込んでいた。

女性との経験値が低すぎるぅ~。

ボッチだった自分には、仕事の会話以外で女性と話したのは……、買い物ぐらい?

考えるほどに落ち込んでしまう。

仕事なら……、あれっ、なんか忘れてない!?

そうだぁ、料理人について相談するはずだったぁ!

しかし、今の女子トークに割って入る勇気はない!

ヘタレと言われようが仕方ないじゃないかぁ!

「アタル、大丈夫?」

ミュウが心配そうに聞いて来る。キティも心配そうに私を見上げている。

癒してくれるのは、お前達だけだぁーーーーー!

少し強めに二人を抱きしめると、二人も抱きしめ返してくれるのだった。


少しするとノッカーの音がしたので人が来たようだ。ラナさんが女子トークを止めて扉に行く。

外の様子を確認して扉をすぐに開く。

「お、お義姉さん綺麗になったぁ!」

栗色の髪のまだ十代に見える少女は、ラナさんを見ると口に手を当て叫ぶように言う。

「やはり恋をする女性は綺麗になるのねぇ」

恋に夢見る少女のように、目を輝かせながらラナさんを見つめる。

「変な事言っていないで、ご挨拶に来たのでしょ!」

ご挨拶? 誰に?

様子を見ていた護衛の人達は奥のテーブルに移動する。

ラナさんが少女を連れて俺の所まで来て、彼女を紹介してくれる。

「弟の妻で、義理の妹となるメアベルです。まだお腹は大きくなっていませんが、弟の子を身籠っています」

だから少しダボっとした服を着ているのかぁ。

特に太っている訳でもないのに、この世界では珍しいと思っていたが……。

し、しかし、若すぎない!?

「メアベルです。アタル様には主人を連れ帰って頂いただけではなく、お金まで譲って頂いて、さらに住まいや仕事までお世話して頂けるそうで、本当にありがとうございます」

先程までの夢見る少女から、しっかりした幼妻に大変身したぁ。

ラナさんが相手だと、本当の妹のように甘えていたのかな?

しかし、お金って……、あっ、ポーション代金の一部を遺族に渡してくれと言った気がする。

「アタルです。ラナさんに全部押し付けて申し訳ないと思っていましたので、少しでもラナさんを手伝ってくれると、私も安心です。しかし、お腹の子が最優先ですので、絶対に無理をしないで下さいね」

そう話すとメアベルさんは嬉しそうに言う。

「本当にお義姉さんの言う通り、アタル様は優しい殿方なんですねぇ。私も何とか主人の跡継ぎの男の子を生むために、無理のない範囲で精一杯頑張ります!」

元気いっぱいで話すメアベルさんは、見た目は幼い感じだが、上手くやってくれそうだ。

「でも、男の子で良かったですねぇ。跡継ぎは男の子じゃないとダメなんですよね?」

なぜか静寂に包まれる。

あれ、なんかしちゃった?

メアベルさんが周りの様子を気遣って話をする。

「へへっ、まだ男の子なのかはわからないんですが、絶対に男の子を生みたいと思ってます」

「あれっ、でも、男の子ですよね。だって、あっ!」

色々あったので、念のため彼女のステータスを鑑定で見たのだが、妊娠(男)と出ていたので、性別鑑定の魔法とかで確認したのかと勘違いしたのだ。

「アタル様、それは本当でしょうか!?」

ラナさんがレベッカ夫人みたいに詰め寄って来たぁ。

あっ、ぽよんだぁ!

ち、違う、そうじゃない!

「ご、ごめんなさい。念のため鑑定したら、妊娠(男)と……」

そう話すとラナさんは私に縋りついて泣き始める。

「わ~ん、良かったぁ」

いつものラナさんと違い、普通の女の子のように泣く姿を可愛いと思う。

「お義姉さん、元気な男の子を絶対に産むからぁ。わ~ん」

メアベルさんがそう言うと、二人で抱き合って泣き始める。

あぁ~、ぽよんがぁ~!

その場にいる私を除く全員が、抱き合って泣く二人を温かい目で見守るのだった。
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