スマートシステムで異世界革命

小川悟

文字の大きさ
上 下
57 / 224
第3章 大賢者の遺産

第25話 女性活用の真意②

しおりを挟む
呆然とするレベッカ夫人やアランさん、サバルに気が付いて、自分が調子に乗って話過ぎて彼らを置き去りにしていることに気が付く。

「え~と、施設の設計図は見ましたか?」

アランさんに質問する。

「は、はい、見せて頂きました」

質問されたことで、アランさんは焦って返事してくれた。

「それなら。あの施設は地上に宿舎や会議室、執務室や食堂があるのは知っていますよね」

「「はい」」

「他にも工房や座学などの部屋があるのは気が付きましたか?」

「「いえ?」」

まだレベッカ夫人もアランさんも完全に復活していないのか、はいといいえしか答えてくれないようだ。

しかし、聞いてくれてはいるようなので説明を続ける。

「そこではポーション作成などの錬金術の訓練を、女性にしてもらおうと思っています」

「そんな事が可能なんですか。それになぜ女性に限定してしまうのです」

おっ、アランさんが復活したかな。

「え~と、まず女性に限定したのは、男性が余っていないですよね?」

「「「あっ」」」

おお、3人が反応しだした。

「それに、先程も言いましたが、女性のほうが魔力や魔法の扱いが上手いのもありますね」

「なんでそんな事が分かるんだ!」

サバルさんが発言したが、アランさんも同じことが気になったのか、何も言わずに私の返事を待っている。

しかし、私が答えるのを迷っていると、レベッカ夫人が話してくれた。

「これから話すことは極秘事項よ。お義父様と私、それと彼の護衛しか知らない話だから口外は禁止します。良いですね?」

「「は、はい」」

レベッカ夫人の雰囲気が固いので、アランさんとサバルも緊張して返事する。

「アタルさんは鑑定が使えるのよ。だから能力やスキルを確認できるのよ」

それを聞いてアランさん達は息を飲み唾を飲み込み、2人そろって私の方を見つめてくる。

「でも、私は鑑定を使うつもりはありませんけどね」

「「「なっ」」」

レベッカ夫人を含む3人がさらに驚愕の表情で私を見つめる。

だって、そんなに大人数を鑑定などしてられないし、男性の手など握りたくない!

「その代わり鑑定の魔道具を用意しようと思いまして、すでに地下の訓練施設には設置しましたよ」

アランさんとサバルさんは口を開いて固まり、レベッカ夫人は手を額に当てて唸ってる?

実際は鑑定の魔道具ではなく、スマートスキルのステータスの魔法陣を使うので、鑑定とは違うのだが。

レベッカ夫人が顔を上げて言った。

「私達の常識でアタルさんを判断してはダメだったわ」

そこぉ~! 2人そろって激しく頷かない!

レベッカ夫人の言い方もなんか酷いよぉ。

「でも、それなら訓練施設も女性優先にするのかしら? それはさすがに男性兵士たちが納得しないわよ」

アランさんとサバルも頷いて同意している。

「それは男性優先になるんじゃないかなぁ。でも、結果的には女性のほうが使うのは多くなるのかなぁ」

考えながら呟いてしまう。それに反応したのはサバルだった。

「結局は女性を優先するんじゃないですか。今も護衛だけがあそこで訓練しているし、危険な思いをして任務をこなす男性兵士が可哀想じゃないですか!」

ええ、なんでそんな話になってるの!?

勝手な発言をしたサバルだが、アランさんも咎めなかった。

「あのぉ、護衛だけあそこで訓練と言いましたけど、私は最初の検証だけ護衛にしてもらいましたが、クレアさん達護衛にはすぐに訓練はしないように要請しましたよ」

この話を聞いてサバルが反論する。

「そんな事は聞いていない。男性兵士も訓練させてくれと言ったら、女性だけにすると言われたと言っていたぞ」

何それ?

「それは誰に聞いたのか知りませんが、作業の邪魔になるので訓練しないようにクレアさん達にはお願いしましたし、自分達だけ訓練するのは良くないからと話したら、納得してくれて検証以外で訓練はしてませんよ。
その事はアランさんの息子さん達も聞いていたはずです」

あれ、なんで2人は驚いているの?

「そ、それは本当ですか? あいつは尋問で護衛だけ訓練させているし、これからもそうすると言っていましたよ」

サバルも頷いている。

あぁ、そういうことかぁ。

「彼は訓練したいから護衛を交代するといったのですが、それを断ると兵士を交代で訓練に来させると言ったので、作業の邪魔になるからやめてくれと言ったら、暴言を吐いてハロルド様に叱られたのではないですか。その事はハロルド様も知っていますよね?」

「………」

あれほどの事があったのに正確な話が伝わっていない?

「あれほどの事があったのに、処罰された人の話を鵜吞みにして、彼は私を怒鳴りつけたのでしょうか?」

私はサバルを指しながら話した。

「………」

サバルだけでなくアランさんも黙ってしまった。

「アラン、納得のいく説明をしてくれるかしら?」

レベッカ夫人も話し方は変わらないが、怒っているのは雰囲気でわかる。

「そ、それは、息子の件は増長した兵士のいつもの戒めと思って、詳しい経緯は息子から聞いただけで、そのぉ、息子は護衛だけ優遇すると話して、それにサバルが同調した感じです」

驚くほどアランさんが小さく見える。

「お義父様に経緯を聞いてもないのかしら?」

「申し訳ありません」

レベッカ夫人はキッと彼らを睨み、私の方を見ると立ち上がって謝罪する。

「アタルさん、本当に申し訳ない。まさかこれほど騎士団が腐っているとは思いませんでした」

アランさんも立ち上がって頭を下げているが、悔しそうに顔を顰めてる。

「たしかに、たしかに護衛の件は誤解かもしれません。でも、やはり訓練施設を女性優先にするのは変わらないじゃないですか!?」

サバルが血だらけの顔で泣きながら訴える。

「よせ!」

「ですが……」

アランさんが止めるが、サバルは納得していないようだ。

「あ~、その事はきちんと説明しときましょうか。私も考えをまとめながら話していたから、中途半端な話をして、誤解させたようです」

そう答えるとレベッカ夫人とアランさんが座り直したが、サバルは正座したまま私を睨んでいる。それを無視して説明する。

「私は多くの女性を新規採用して、集中的に訓練させるべきだと考えています。少しでも早く訓練の成果が出れば、先程言ったような女性を活用した状況ができると思うからです」

それを聞いてサバルは更に睨んできて、アランが何か発言しようとしたが、手を前に突き出して止める。

「しかし、当面は男性騎士に頑張ってもらうしかありません。だから、訓練施設は男性兵士と言うか現役の兵士に優先的に使用してもらうべきだと思います」

サバルは疑うような目で俺を見ている。

「それなら、なぜ女性のほうが使う事が多くなるのですか?」

アランさんは冷静に訊いてくるがやはり不満そうだ。

「それは、通常任務の合間に訓練する人と、新規に採用されて最初は訓練だけするのでは、新規に採用された人のほうが訓練施設を使う事が多くなるだろうし、新規に採用するのは現状では女性ぐらいじゃないですか?」

あれ、間違ってる?

なぜかアランさんだけでなくサバルさんも口を開けて固まってしまった。

「あはははは、確かにそのとおりね。通常任務をしながらでは、訓練時間は限られるし、その空いた時間を新規に採用した人が使うなら、実質的な訓練時間は新人のほうが多くなるわね」

レベッカ夫人は何故か笑いながら納得してくれた。

「そうなんですよねぇ~」

「これではアラン達は自分達が強くなる事しか考えていなくて、アタルさんが本当に領全体の未来まで深く考えてくれてる事になるわね」

「ん~、それはどうなんでしょうか。彼らも領の事を考えて、自分達が強くなれば領の為になると考えていただろうし、女性に対する優しさも感じましたから。
まあ、さすがに碌に説明も聞かずに怒鳴られるのは、納得できませんがね」

アランさんとサバルは俯いてしまうのだった。
しおりを挟む

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 

★☆ 書籍化したこちらもヨロシク! ☆★

★☆★☆★☆ 『転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。』 ☆★☆★☆★

▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 



ツギクルバナー
感想 154

あなたにおすすめの小説

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...